いかにして銀行の体制改革を行うか

−−北京大学光華管理学院の肢ネ寧院長を訪ねて

国有独資商業銀行はいかにして株式制改革を行うか

 肢ネ寧氏はこれについて次のように語った。早くも20世紀80年代に経済学界では国有独資商業銀行を株式制銀行に改める提案が出されたにもかかわらず、重視されず、10数年の時間を無駄にした。というのは、業界と学界をとわず、大多数の人が株式制改革を行うほかいまのところ国有独資商業銀行に中国のWTO加盟後の外資銀行業の挑戦に対処する別の効果的な対策をまだ探し出していないことを徐々に認識するようになったため、この問題はようやく議事日程に組み入れられた。

 いかにして株式制改革を効果的に推し進めるか。国が株式を保有する前提のもとでは、選択できる案は大体三つある。

 第一の案は、各銀行が分解して上場するかまたはグループに分けて上場することである。この案は工業企業に対しては一般には適用するが、銀行業には適用しない。なぜかというと、一方では、商業銀行の資産負債が全国で統一的に計算されるので、預金額が貸付額より多い支店もあれば、預金額が貸付額より少ない支店もあり、資金を統一的に配分するので、分解して上場することやグループに分けて上場することに適しない。他方では、現在世界じゅうの銀行の発展の趨勢は併合であり、銀行は規模が大きくなれば、その強みを現すことができるが、国有独資商業銀行が分解して上場するかグループに分けて上場すれば、規模が小さくなり、競争における強みもなくなるのではないだろうか。当然ながら、ここでは商業銀行の主要業務である預金と貸付業務を指している。主要業務でない経営機構を商業銀行から分解して、上場公司に改めるわけではない。

 第二の案は、交差持ち株である。つまり数行の国有独資商業銀行が株式を交換し合い、同時に株式制銀行に改めることである。この案は私営銀行の再編に適用するかもしれないが、当面の中国の国有独資商業銀行の体制改革には適用しない。というのは現在中国にある数行の国有独資商業銀行はそれぞれの歴史的背景と経営の特色があり、それぞれ問題を抱えている。これらの銀行に株式を交換し合い、交差して株式を保有させるならば、当面至急に解決が待たれている資金充実の問題を解決できないばかりか、数行の国有独資商業銀行の既存の問題を交差持ち株実行後に設立された銀行に持ち込んで、状況をより複雑にし、解決しにくくし、効率がさらに低下する可能性がある。

 第三の案は、「全体として体制を改革し、段階に分けて実行する」という案であり、この案は上述の二つの案より勝っている。全体として体制改革を段階に分けて実行するというのは、商業銀行の主要業務を分解するかグループに分けることをせず、全体としての体制改革を三つの段階に分けて行うことを指している。第一段階は、多元的な投資を主体とする有限責任公司に改め、第二段階は、投資の主体をいっそう多元化する株式有限公司に改め、第三段階は、上場公司に改める。三つの段階を実行するのにかなり時間がかかるが、それは必要なことであり、慌てて上場公司に改めるやり方は、より多くの問題を生み出すだろう。この三つの段階のうち、最も難しいのは第一段階である。つまり投資パートナーを探して共同で有限責任公司を設立することである。投資パートナーは他の国有独資商業銀行ではなく、非国有独資の商業銀行、工業、商業、交通・輸送などの企業を含む非銀行の金融企業または非金融企業であるべきである。こうして設立される有限責任公司制の商業銀行は、もとの国有独資商業銀行と比べて、実質的な進展をとげ、続いて全体としての体制改革の第二段階、第三段階の実行に役立つのである。

商業銀行はいかにして混業経営に転換するか

 混業経営は方向であり、大勢の赴くところであり、また情勢に迫られたものでもある。分業経営から混業経営への転換は避けることができない。金融リスクの発生および混業経営によって新しい問題がもたらされるのを防ぐため、対応措置をとることができる。

 例えば、金融持ち株グループ公司を設立するというような措置をとることができる。既存の株式制商業銀金および国有独資商業銀行は第一段階の改革を実行した後に設立した有限責任公司制の国有持ち株商業銀行は金融持ち株グループ公司になることができる、これは現行の法律が許していることである。商業銀行はこの金融持ち株グループ公司傘下の独立法人であり、依然として預金と貸付業務を主としている。金融持ち株グループ公司の下には他の機構を設けることができ、これらの機構も独立法人であり、それぞれ投資業務、保険業務、信託業務、証券業務などに従事する。具体的な業務に従事する公司がすべて金融持ち株グループ公司傘下の子公司であり、独立法人でもあるため、子公司と子公司との間には相変わらず「防火壁」があり、金融リスクの発生と蔓延を避けることができる。金融持ち株グループ公司は各子公司の親公司として、全局を統一的に掌握することができ、各業務分野の競争と各子公司の経営状況に基づいて調整することができる。こうして、子公司にとっては、依然として分業経営を実行し、それぞれの分業があり、それぞれの強みを生かすことができる。親公司にとっては、混業経営を実行し、グループ全体の経営と発展の戦略および各子公司の協調は親公司が考慮すべき問題である。「親公司は混業、子公司は分業」というパターンは現行の法律条件の下で実現することができる。このパターンは中国の商業銀行がWTO加盟後の新しい情勢に適応するのに役立っている。

農業信用社はいかにして株式制改革を行うか

 農業信用社の株式制改革は基本的には、若干の都市信用社が株式制改革を通じて都市商業銀行を設立するやり方を参考にすることができる。農業信用社の状況が複雑であるため、整備を行って条件が整った農業信用社を株式制の農業商業銀行に体制改革するかまたは農村合作銀行、農村貯蓄銀行に命名するべきである。規模が大きい場合は県か県クラス市が設立することができ、条件の整っていない場合はいくつかの県か県クラス市が共同で設立することができ、また地区クラス市が設立することもできる。農村商業銀行を設立する過程に新しい資本金を投入しなければならない。新しい資本金が投入されれば、農業商業銀行ははじめて生気をもつことができる。民営企業、郷鎮企業、都市部の個人経営商工業者、農村の専業農家、都市と農村の住民は、いずれも資本を投入して新しい株主になることができる。それと同時に、設立後の農村商業銀行は株式制の商業銀行である以上、有限責任公司か株式有限公司にマッチする制度を確立し、健全な法人管理構造を確立しなければならず、政府は銀行の経営管理に干与せず、株主総会、董事会、監事会および董事会が招聘した総経理がそれぞれ職責を履行する。

 農業商業銀金は一般には厳格な分業経営のパターンをとるべきである。つまり預金と貸付業務を扱うだけで、業務を投資業務やその他の業務分野に広げるべきではない。これは主に農村商業銀行の規模が大きくなく、専門の金融要員が足りないことと関係があり、このほか、歴史上農村信用社の不良債権が多いこと、資金を誤って投入すること、政策決定にミスがあることと関係がある。「親公司は混業、支公司は分業」というパターンは新規設立の農村貯蓄銀行に適用しないものであり、少なくとも今後の一時期内はそうではない。

民間資本はいかにして銀行業に進出するか

 現段階では、中国の民間資本はわりに充足している。計算によると、現在の民間資本は12兆元に達し、都市・郷村の個人経営商工業者の資本、民営企業の資本、都市・農村住民の手元にあるわりに速く現金に変えられる財産を加えれば、民間資本の潜在力はもっと大きくなる。これら現実的な民間資本と潜在的民間資本の八分の一か十分の一が国内の銀行業に進出しさえすれば、少なくとも1兆余元、多ければ2兆余元になる。これは銀行業の改革を速め、中国の商業銀行の実力を強めるのに役立つ資本投入であり、かならず銀行業の様相に大きな変化を生じさせるだろう。

 民間資本の銀行進出はいろいろの方式があるが、ここでは次の三つの例をあげる。

 国有独資商業銀行が株式制銀行に改める中で、民間投資家は株主になることができる。既存の株式制銀行は資金・株式を増やす中で、民間投資家は新たな株主になることができる。農村信用社が農村商業銀行に改める中で、民間投資家は同じく株主になることができる。

 株式制商業銀行(国有独資商業銀行から転換した株式制商業銀行を含む)が上場した後、民間投資家は株式購入を通じて上場銀行の株主になる。

 民間投資家は商業銀行法の規定に基づいて、有限責任公司制の商業銀行の設立を申請することができ、金融主管機構の認可を経て、このような商業銀行は民営の株式制商業銀行となる。