北京で初の直接選挙 コミュニティー自治組織

 中国北京市東城区九道湾社区(地域社会 コミュニティー)で817日、直接、非同数(定数以上の候補者を立てること)選挙によって新しい社区居民(住民)委員会のメンバーと社区代表会議代表が選出された。地域社会の住民がコミュニティーの管理者を直接選挙するのは北京市では初めて。

 同日の選挙会場は小学校の運動場に設けられた。会場では「民主的権利を大切にし、厳粛な1票を投じよう」、「社区づくりを強化し、共に温かい地域社会を築こう」という標語がひときわ目を引いた。選挙大会は午前9時にならないと始まらないのに、8時半には会場は選挙民でいっぱいになった。老人ヤンコー隊が開会前の時間を利用して、楽しい音楽に合わせ、ヤンコーや扇子舞を踊った。

 九道湾社区は常住住民が2700人余り、外来常住人口が120人、社区駐在単位(単位は企業、機関、官庁、団体などの総称)が4つ。北京市東城区民政局責任者の説明によると、この地域は自然環境、人口密度、住民構造が北京内城の平屋密集地区の平均的特色をもっており、ここで社区自治組織の直接・非同数選挙の実験をすれば、他の平屋型社区の参考になるという。

 選挙には伝統的意味の地元純住民だけでなく、社区にある単位の代表および選挙民の条件にかなう70人余りの外来者の代表も参加し、さらに外部から来て工業、商業に従事している人2人が社区代表会議代表の候補者になった。

 福建出身の廖振華さんは九道湾で水産物を売っている。彼は「北京市の社区選挙に参加できるとは思ってもみなかった。北京市が外来者を平等に扱い、尊重していることを物語るものだ。自分も社区の一員であることが分かった」と語っていた。

 選挙形式にも前進がみられる。すべての選挙民が直接選挙に参加する。初めて非同数選挙が行われた。候補者の選出にはすべて民主的手続きがとられ、自分で名乗り出る人も、10人以上で推薦された人もいる。候補者はすべてさまざまの場で選挙民と何度も顔を合わせ、質問に答え、選挙運動をしている。

 選挙の準備作業は2カ月余りにわたったという。同日の選挙ではまた、東城区の公証員が招かれて現場で監視をした。

 投票が始まると、選挙民は整然と投票所で投票した。気の早い数人の選挙民は、面倒とばかり、会場中央の椅子のうえで用紙に記入していた。1組の老夫婦が会場脇の木陰で、老眼鏡をかけて誰に投票するか念入りに打ち合わせている姿はたちまち記者たちのシャッターの対象となった。

 選挙委員会はこの日、身体の不自由な老人、障害者のために移動投票箱を設けた。しかし家人に車椅子を押してもらい、現場で投票した老婦人もいたという。

 夜915分、選挙結果が判明した。前九道湾社区居民委員会主任の曹建軍さんが居民委主任に再選された。劉桂嬌さんら21人が社区代表会議代表に選ばれた。

 北京市社会科学院の馬仲良副院長は、地域社会の自治組織を直接、非同数選挙で選ぶのは、末端の民主主義を強化する有効な方途であり、コミュニティーづくり全体の水準を高め、コミュニティー構成員の民主主義意識、コミュニティー意識、自治意識と参加意識を強め、コミュニティーへの帰属意識を深めることができると語った。

 社区居民委員会は地域社会住民の自己管理、自己教育、自己奉仕、自己監視のための大衆的自治組織。中国の関係法律は「居民委員会の主任、副主任及び委員は、当該居住区の選挙権を有するすべての住民又は各世帯の代表によって選出される。住民の意見に基づき、各住民小組で23人の代表を選出することもできる。居民委員会の任期は3年で、再任を妨げない」と定めている。