反テロと経済発展が同時に進行

 ――反テロ協力の強化は東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国外相会議(AMM)の重要な成果であるが、ASEANのメンバーが最も関心を持っているのは反テロではなくて、経済発展である。

肖 賛

 ASEANの定例外相会議は729日から81日までブルネイの首都バンダルスリブガワンで開かれた。これは「9.11」事件後ASEANとアジアおよびその他の地区の重要な国の外相の初めての会合であった。参会者は反テロ、地域安全、区域協力、ASEAN経済一体化などの議題について共通の認識に達し、実り豊かな成果を上げた。

 反テロ面での協力強化は今回の会議の重要な成果の一つである。ASEAN地域フォーラム会議の23のメンバーは会議直前、テロリストの資金調達活動を共同で制止するとの決意を表明する声明を発表し、次ぎのように述べた。反テロは国際社会の共通の職責であり、ASEAN地域フォーラムのメンバーは手を携えてテロリストおよびその共謀者が関係国の金融システムを利用してテロ活動のために資金を調達するか、または正規でない金融機構を利用して不法に資金を集めることを防止する。また、テロ資金調達の制止についての国連の関係決議に基づいて、国際金融監督機構との協力を強化し、国際通行のテロ資金調達対策とマネーロンダリング制止措置および金融システムの監督・管理措置をとって、金融システムの純潔性を保ち、積極的に関係情報を交流する。声明はまたテロ資金調達活動を制止し、取り締まることについて一連の具体的な提案を行ったが、その中には、テロリストの資産を凍結し、国連などの機構の関係決議を執行し、多国間の協力を強化し、法的秩序がまだ健全でない国に技術サポートを提供し、定期的な評価を行うことなどが含まれている。

 パウエル米国務長官はASEAN地域フォーラム(ARF)年次総会出席の機会を利用して、ASEAN6カ国に対し上つらだけの歴訪を行い、ブルネイのモハメド・ボルキア外相とそれぞれアメリカ政府とASEAN10カ国を代表して「協力してテロリズムを取り締まる共同宣言」に調印した。この「共同宣言」はパウエル国務長官のASEAN訪問の主な成果であり、アメリカとASEANの反テロ協力のために新たな基礎を築いた。このことは、アフガニスタンで戦争を起こし、テロ組織アルカイダに大きな打撃を与えたアメリカが、東南アジアを反テロの第2戦線と見なし、ASEANと反テロで積極的に協力を図る姿勢を十分に物語っている。

 しかし、ASEAN諸国の多くが、テロリズムについてアメリカほど大きな痛手とは思っていないことも、見て取るべきである。ASEAN諸国は反テロについての認識、対策などの上ではアメリカと明らかな食い相違があり、アメリカがテロリズムに下した定義に完全に賛同しているわけではなく、アメリカが反テロを利用してこの地域における軍事的存在を定着させるのを懸念している。タイ首相は729日、タイを訪問したパウエル米国務長官に、タイにはいかなるテロ組織も存在していない、と強調した。カンボジア内務府も730日に、国内にあるテロ組織の活動が徹底的に粉砕され、国内でのテロ組織の基礎が取り除かれたが、国際反テロ協力に対するASEAN諸国の約束はまだ情報交換、テロ資金調達取り締まりなど具体的な分野に限られていると発表した。

 事実上、ASEAN諸国が最も関心を持つのは反テロではない。ASEAN外相定例会議の主催国ブルネイのハサナル・ボルキア国王兼首相は開幕式で演説を行い、次のように述べた。目下、ASEANの最も差し迫った任務は経済を発展させることである。ASEANの経済回復は実質的な進展をとげているとはいえ、依然として困難を多く抱えている。ASEAN諸国が昨年のASEAN主脳会議のアピールに呼応し、一体化の推進を加速する行動をとり、メンバー間の発展面の格差を縮め、本区域の経済活力と投資家の自信を確保するよう望んでいる。

 経済の競争力について、ボルキア首相は次のように述べた。東南アジアは経済競争力の増強する強い政治的願望が必要である。われわれの潜在力を疑う人はあまりいないが、われわれが潜在力を引き出せるかどうかについては、多くの人は半信半疑である。そのため、ASEANは目標の実現を促す強い願望と確実な行動が必要である。ASEANは幾千幾万にのぼる民衆の組織として、何よりも先ず解決せねばならないのは経済成長の問題であり、各国の閣僚にとって、これは最大の挑戦である。東南アジアの過去は輝かしいものであったが、1997年に金融危機が始まってから、その光栄がなくなった。その後の5年間に、東南アジアはたゆまぬ努力を払って、暗い影から抜け出た。しかし、行く手に困難が依然として少なからずある。アメリカをはじめとする株式市場は今月揺れ動き、世界情勢もめまぐるしく変化しているが、これらはASEAN諸国の政府にとって、対処しにくいことである、と述べた。

 区域内の経済発展に努めるほか、東南アジアは区域外の国々との経済往来を一刻も忘れてはいない。アメリカは東南アジアの最大の貿易パートナーであり、アメリカとの経済関係はずっとASEANに重要視されている。ASEANの役人はこのほど、東南アジアはアメリカとの協力範囲を拡大するのを望んでおり、この範囲は政治、安全、貿易、経済、発展をカバーすべきであると表明した。また、この役人は、アメリカが措置をとって発展と協力を促進し、保護貿易主義政策を取り消すべきであるとも見ている。1992年以降、ASEANとアメリカの区域協力いくらかスローダウンした。それはアメリカがこれらの国と別々に両国の協力関係を発展させることに傾いているからである。アメリカとの貿易往来から明らかに利益を受けたのはベトナムである。今年1月から5月までのベトナムの対米輸出は75%も急増して、57480万ドルに達した。世界銀行の報告によると、ベトナムの昨年の輸出はそのGDPの半分を占めたという。今年上半期のベトナムの経済成長率は6.7%であるが、ベトナムは今年のGDPが少なくとも7%伸びるものと見積もっている。

 東南アジア諸国にとってアメリカが優越した地位を占めているが、アジアの隣邦の経済が盛んに発展していることを無視するわけにはいかない。協力で発展を図り、平和を促すことは、ますます多くのアジア諸国の共通の認識となっている。地域協力の進展が明らかに速くなることは当面おnアジア地域情勢の発展の際立った特徴の一つとなっている。10+3協力はアジア地域協力の重要な推進力となっている。マレーシアはずっとASEANと中日韓の協力関係の推進に取り組んでおり、マハティール首相はその理想を東アジア同盟と呼んでいる。中日韓3カ国の経済成果は世界に公認されるものであり、とりわけ中国経済の飛躍的発展は世界経済が激動する中で目立っており、アジア経済に対し促進的役割を果たすのは言うまでもない。ASEANが強調する区域経済協力に中日韓の参加がなければ、進取を求めない色彩を帯びるであろう。ASEANは引き続き中国、日本、韓国と経済協力を強化するとともに、政治と安全分野でも対話と協力を逐次展開し、まず最も差し迫った、過去と違った安全分野から対話と協力を始めるであろう。

 このほか、参会した各側は「ASEAN一体化行動活動計画」および人的資源の開発、情報技術、インフラ建設、区域経済一体化など4つの分野の協力計画を認可し、ASEANの最も重要な任務がいちだんとASEANの一体化を深化させ、経済協力を促し、ASEANの実力と競争力の強化を確保することであると強調した。