「シルクロード 絹と黄金の道」展が開催

―日中国交正常化30周年記念

 日中国交正常化30周年を記念して、東京国立博物館、()日中友好協会、NHK、NHKプロモーションと中華人民共和国新疆ウイグル自治区文物局の共催による「シルクロード 絹と黄金の道」展が820日から106日まで開催されている。

 シルクロードは中央アジアのオアシスを結んで通る古代の東西交通路であった。昔、中国産の絹がこの道を通じてインド、イラン、ローマなどに運ばれたことに由来して名づけられた。一般には中国の長安(西安)から天山山脈を経て西のトルキスタン、イラン高原から地中海東岸のローマに至るコースを指すが、広義には、北アジアのステップ路と海上ルートの南海路も含む。日本にとっては西のローマと東の長安、さらに奈良までを結ぶ、草原・オアシス・海を経由する巨大な文化・交易のネットワークであった。

同展は、シルクロードが貫通するきわめて重要な中継地であった新疆ウイグル自治区の文物局から絵画、彫刻、文書、工芸、考古など様々な分野から、金銀製品と絹織物を中心に約150点の作品を厳選し、紀元前8世紀頃から約2000年間にわたるシルクロード沿いの各地、各民族に花開いた文化を5つの内容に分けて展示する。

一、草原の道

モンゴル高原と黒海北岸をつなぐ天山山脈北側を通る草原の道(ステップロード)は、ヘロドトスの「歴史」(紀元前5世紀)に触れられているほど古くから利用されていた交通・交易道であった。このコーナーでは、スキタイ・匈奴・フンなど遊牧系の諸民族が残した金銀製品、青銅製の生活用品、絹織物などを出品する。

二、オアシスの道 西域北道

 西域北道は、天山山脈南麓のカシュガルから東へアクス、クチャ、カラシャール、トゥルファンを経由して敦煌まで、各地のオアシスを結ぶ交通・交易道であった。トゥルファン盆地は、北の草原地帯から南のタリム盆地への出入り口にあたる。このコーナーでは、13世紀頃の遊牧民の装身具を中心に、舎利容器、色鮮やかな染織品を出品する。

三、オアシスの道 アスターナ

 トゥルファン盆地は640年以降、唐王朝に支配され、西域で最も深く漢文化の影響を受けたところであった。このコーナーでは、漢族支配者や官僚層を埋葬したアスターナ・カラホージャ古墳群から発掘された、華やかな唐文化の余韻を留めた男女の俑、絵画、双六盤、絹織物などを展示する。

四、オアシスの道 西域南道

 崑崙山脈北麓沿いのオアシスをつなぐ西域南道は、カシュカルで北道と分かれ、ヤルカンド、ホータン、ニラ、ミーラーンや楼蘭を経由して敦煌で北道とふたたび合流する。北道沿いの各地では、岩の断崖に開かれた石窟寺院が多数あるのに対し、南道沿いの各地には地上に寺院が多数建てられた。楼蘭、ミーラーンやニヤからは漢字の織銘が入った後漢〜晋時代(15世紀)の絹織物が多数発見されている。いまも鮮やかな色彩を保つ絹製品の数々は、まさに絹を運ぶ道であったシルクロードの繁栄ぶりを偲ばせてくれる。

五、様々な民族

 いまの新疆ウイグル自治区では、かつてインド・ヨーロッパ系の言語、インド・アーリア系の言語やイラン系の言語トハラ語などを話す人々が主要住民であった。このコーナーでは、木簡、経典、墓碑や通行証のような様々な文字資料を展示し、シルクロードを行きかった様々な民族の足跡を辿る。

同展は東京展終了後、1023日〜1216日まで、大阪歴史博物館で巡回開催する。

本誌東京特派員  賀 雪鴻