2008年五輪のメーンスタジアムはどこに建てたらいいか

 2008年北京五輪のオリンピックパークと五?松スポーツ文化センターの87ヵ所の施設の企画設計案が716日から北京で公開に展示され、毎日の参観者数が4000人以上に達したため、展覧期間を予定の10日間から13日間に延長せざるを得なくなった。

 北京五輪は37ヵ所の競技施設が必要であり、そのうちの32ヵ所が北京にあるという。そのうち、19ヵ所の施設と6ヵ所の臨時施設を新規建設するが、その他は現有の施設を利用する。北京市は331日から、北京のオリンピックパークと五?松スポーツ文化センターの企画設計案を公に募り、賞金総額は107万ドルにも達している。

 73日、企画設計案の審査評定作業が始まった。審査評定委員会は第29回五輪組織委員会の代表、著名な企画設計専門家、学者、五輪の組織と運営をよく知っている専門家など13人からなり、それには、国外の方が7人、国内の方が6人いる。

 714日、評定の結果が公表され、アメリカのササキ(SASAKI)社が天津華匯工程建築設計有限公司とともに北京オリンピックパークの企画設計1等賞を受賞したほか、独自に五?松スポーツ文化センターの設計2等賞をも受賞した。後者の1等賞は空白であるという。

 設計案についての討論に争議のあるのは、五輪の標識的建物を北京の中軸線に建てるかどうかという焦点である。

 700余年前、蒙古人のフビライが元朝の大都を造営した時、什刹海の東側に南北の中軸線を引き、これに基づいて北京の位置を確定した。明朝(1368年)初期に中軸線が南へ延ばされ、16世紀に北京の外城が建造されて、長さ7.8キロ、南の永定門から北の鐘鼓楼に至り、正陽門、故宮、景山などの雄大な建物に貫く中軸線が形成され、北京の標識となった。

 この中軸線が並々ならぬ意義を持っているため、その上に新しい建物を建てるかどうか、どのように建てるかなどは、北京市民ないし全国人民が関心をもつ的となっている。

中軸線に新しい建物を建てるべきである

 貝氏建築事務所、中国系アメリカ人建築大家貝聿銘氏の子息貝建中氏 オリンピックパークの軸線の設計が非常に重要で、方法が多くあるが、重要なのは各種の機能を空間と有機的に整合することである。設計風格が多様化にしてよく、建築の虚軸を設けないのはその一種にすぎない。北京の在来の中軸線は実軸であり、正陽門、天安門など多くの大型建物を貫いており、パリの軸線とかなり違っている。従って、オリンピックパークを中軸線も建てることも考えられる。

 清華大学建築学院教授、大地建築事務所の彭培根董事長兼建築士 北京には世界でもよく知られている中軸線がある。それは明と清の時代に念入りに作ったもので、北京の都市建設枠組みの重要な特徴であり、旧北京の王城の風格を示す標識の一つである。近代化した北京を建設する過程で、この中軸線をよく守り、建設し、それが新北京の誇りとなるようにすべきである。

 世界のその他の著名な都市、例えば、アメリカのワシントンにも中軸線がある。それは北京のと同様に、いくつかの著名な建物がつらがってなったもので、カピトル、ワシントン記念碑、リンカーン記念堂などがある。だから、都市建設で中軸線を都市の幹線道路に建設するのは誤りであり、少なくとも誤解である。しかし、現在、北京で車を運転する人は誰だって北京に中軸道路があることを知っている。これは都市の企画者に対する批判となるだろう。鐘鼓楼からさらに北へ行くと、中軸線に標識的建物がなくなるが、その両側にはずらりとビルが建ち並んでおり、まるで脊柱の両側が骨増殖症に罹ったようで、とても見にくいものである。中軸線にいくつかの標識的建物を建てなければ、それが断ちきられ、捻じ曲げられて、北京の重要な特徴の一つが近代的な北京を建設する過程で消え失わせてしまう可能性がある。

 幸いにもオリンピックパークが中軸線に建てられることになったが、これは歴史がわれわれの世代に与えるチャンスである。2008年になると、中軸線の最北端は面積の大きい都市森林公園が現れる。つまり、鐘鼓楼から森林公園までの7.5キロに及ぶ中軸線にはどんな標識的建物を建てたらいいかを工夫する必要があるというわけである。私は、五輪のメーンスタジアムより適当な建物がないと思っている。もちろん、私の考えでは、パンダロータリーのところで観光タワーを建てるならもっと理想的になる。こうすれば、中軸線全体が一体化して、距離上のリズム感がとても適切である。その時になれば、景山に登って、南の方を見下ろすと金色に輝く故宮が見え、北の方を眺めると近代化した北京のシンボルである中国最初の五輪のメーンスタジアムが見える。

 しかし、残念ながら、今回受賞した8つのオリンピックパーク企画設計案のうち、7つが北中軸線に何も設計していないのである。私はそれを中軸にブランクを残す案と称している。コンクールに参加した設計案のうち、メーンスタジアムを中軸線に設計したものが20余件ある。つまり40%ぐらいの設計が私の設計思案と同じというわけである。

 一つの競技場だけを中軸線に建てると、その重みが足りないのではないかという見方がある。私はそう思わない。初めての北京五輪が中国にとって何を意味するか。それを多く言う必要がないと思う。昨年五輪招致に成功した時、全国挙げて喜び祝った雰囲気から答案を探し出せる。これほどの盛会のメーンスタジアムが中軸線に建ててはいなけいのだろうか。恐らく多くの人は、スポーツやオリンピックなどを特別重要な事と思っておらず、そのため、スポーツ施設をあまり重視しないのであろう。その実、ワシントンの中軸線に大きなケネディグラウンドがある。それと比べて、われわれが企画しているのはオリンピックパークであり、オリンピックを突出させないなら、何を突出させるというのか。

 私の知るところでは、関係部門はすでに1等賞の受賞者に、今後、その設計案を基礎として実際に企画する時、中軸線に重みのある建物を建てるように設計してほしいと話した。最も重みのあるものは国立スタジアム、つまり2008年五輪のメーンスタジアムであると堂々と言えると思う。

 総装備部工程設計研究総院の趙峰国家1級登録建築士  オリンピックパーク企画設計案の募集任務書は、「都市の中軸線を延ばし、発展させ、文化的内包を具現する」とはっきり強調している。われわれの案は受賞した案の中で国立スタジアムを中軸線に置く唯一のものである。中軸線を発展させるという要求を打ち出したのに、中軸にブランクを残す案に授賞し、そして「後人にピリオドを打たせる」と解釈したが、これは少し責任逃れの感じがして、自信を欠いているように見える。歴史がわれわれに与えたことはなぜ後人におしやるのか。われわれの世代がそのような資格がないとでも思っているのだろうか。

中軸線は五輪施設で終わるべきである

 北京五輪施設案審査評定委員会の劉太格主席 今回の評定で、われわれは未来に未知数を残している。オリンピックパークは中軸線の北端にあるが、中軸線は北京にとって非常に重要である。しかし、われわれの評定で中軸線に設計した建物が一つも選ばなかった。この中軸線にどんな建物を建てるべきか、現段階ではまだ自信がないと思い、この問題を後人に残し、将来の名手に解決してほしい。

 今回の評定で、中国の山水のムーとを融け込ませた設計案が評定委員たちの好評を博した。機能がよく、緑化と生態を重視するとともに、都市としての北京の文化理念を具現する設計案でなければ入選できなかった。中国の建物の特色は何か。山あり水ありは重要な特色である。そのため、選定された設計案はいずれも水の設計を盛り込むものである。オリンピックパークの北部は森林公園となり、これは山や水の設計にために条件を作り出している。北京では、水があるところは喜ばれている。

 マサチューセッツ工科大学環境設計修士、米ササキ設計社アジア事務処の趙堅総監 ササキ社がオリンピックパーク設計案コンクールで1等賞を受賞したが、これはオリンピックパーク建設のプレリュードに過ぎず、受賞案も実際の企画案わけではないことを説明しなければならない。

 企画設計は単体建物ほど具体的ではなく、施設の枠組みと構造を提供するだけである。要するに、われわれは北中軸線に建物を建てる可能性を全然排除していない。また中軸線に6つの節目を設計したが、今では、とりあえずいくつかの広場と最北端の森林公園を節目に置くと構想している。

 われわれは、中軸線が北京の特徴であり、オリンピックパークの企画は北中軸線の延長に結末をつけ、答案を与えるべきであることをよく知っている。この答案は紫禁城が中心となる旧北京の中軸線を歴史と文化の意味で発展させ、延ばすべきであるとわれわれは見ている。5000年にわたる中華文明の背景と比べ、2008年五輪の施設だけでは重みが足りないのは明らかである。

 企画する範囲の長さはパンダロータリーから森林公園までちょうど5000メートルであり、この距離がわれわれに与えるインスピレーションは5000年の中華文明史と吻合するものである。そのため、われわれは中軸線に中華文明の発展の里程標を代表するいくつかの広場を設計したが、重点として唐宋広場の設計を行った。広場の企画はあいまいなやり方がとられた。少なくとも目下では、どんな標識的建物を中軸線に建てるかについては、われわれはまだはっきりと答えることができない。言い換えれば、最北端の都市森林公園そのものがよい答案である。それは大自然を代表するものである。われわれの文明は自然から生まれたものであり、最後も自然に帰するのである。ほかならぬこのため、われわれは中軸線に沿って文明と自然をつなぐ川を設計したのである。

 五輪の競技場は中軸線の終点とされるべきではない。オリンピックの主題をいま一つの軸線に設計し、そして森林公園の中で文明の中軸と合流させる。これについて、われわれの案の中に文明軸線(広場)、五輪軸線(競技施設)グリーン軸線(水系)という3本の軸線を設計し、3本とも自然を象徴する森林公園で合流する。そのうち、文明軸線が中軸線であり、その企画の構想がまだぼんやりしているが、はっきり言えるのは、2008年五輪が文明の発展を象徴する中軸線の終点とすべきでないため、五輪施設が中軸線に設計されないことである。

 われわれの案が文化や時間と空間の構想で評定委員たちを感動させた。設計案に署名がなく、評定委員も署名できないにしても、われわれの設計案は13人の評定委員のうちの12人に投票され、次の作業に大きな空間を残したと評定委員たちに見られている。