外国企業、対中投資を加速

 この数年、外国企業の中国への投資は大幅に増え、また投資分野も拡大しており、世界の著名な大企業は続々、中国戦略の調整に乗り出している。一方、中国も積極的に政策措置を調整し、外国企業により規制の緩和された環境整備を進めている。

南 風

 投資環境の改善が進み、また世界貿易機関(WTO)加盟の効果が現われるに伴い、外国企業による対中直接投資は大幅に増大している。対外貿易経済合作部の統計によると、今年上半期に新たに設立が認可された外資系企業は15155社、前年同期に比べ26.39%増加した。外資は契約ベースで同31.47%の増の4399000万ドル。実際利用ベースでは2457900万ドルで、同18.69%の増となった。7月を見ると、新規認可は3371社で前年同月比63.09%の増、契約外資は同51.64%増えて1036300万ドル、実際利用ベースでは496300万ドルと、41.78%の増加となった。

 専門家によれば、年間を通じた実際利用外資は500億ドルを超え、直接投資は過去最多を記録する可能性がある。

全国各地で投資ブーム

 上海では昨年末のWTO加盟以降、外資の導入は増加を続けて現在、1日平均1220万ドル、投資する国・地域はすでに100の大台を超えて102に達している。

 上海市外国投資工作委員会の劉錦屏副主任は「今年上半期には、キューバやアフリカのベナン、ブルネイ、エジプトなどが初めて投資したが、これは、益々多くの国が中国の経済発展と対外開放に関心を寄せていることを示すものだ」と指摘している。統計では、上半期に新規認可された外資系企業は1342社で、前年同期に比べ8.31%増加した。外資は契約ベースで同30.33%増の521700万ドル、実際利用ベースでは同12.24%の増の233000万ドル。総投資額が1000万ドルを超える大規模プロジェクトは103件で、全体の3分の2を占めた。

 長江デルタに位置する経済が発達した江蘇省でも、外資利用は非常に活発で、この10年来で伸び幅は最大となった。今年上半期の新規認可プロジェクトは2598件で、前年同期比63.91%の増。契約外資は同119%増の995000万ドル、実際利用ベースでは同35.8%増の483000万ドル。総投資額が3000万ドル以上のプロジェクトは39件、1億ドル超は12件を数える。契約外資額で同省は3年連続して全国でトップ。

 7月末現在、同省の蘇州には世界ベスト500社のうち81社が進出するなど、外資導入は伸び続けている。今年7月までに新規に認可された外資系企業は前年同期に比べ89.22%増えて1457社、契約外資は658600万ドルで同167.58%の増、実際利用ベースでは248300万ドルで同42.3%の増加となった。

 中国海洋科学技術産業のモデル地区である天津塘沽海洋ハイテク開発区でも、導入外資は倍増。上半期に認可された企業は12社で、前年同期に比べ133%増加した。契約外資は同402%増の48525200万ドル、実際利用額は同377%増加して33374800万ドル。

多分野に拡大する投資

 外国企業は伝統的工業のほか、金融や保健、サービス、商業など多分野で投資を加速させている。

 このところ、中国銀行への外資参入のニュースが広がっている。全国初の株式制商業銀行である中国交通銀行の最新情報によると、シティバンクなど多くの外国銀行が同行と実質的な接触を行っており、遅くとも今年11月末までには、外国銀行が同行の15%の株式を取得するという。中国建設銀行の張恩照頭取も先ごろ開かれたシンポジウムで、外資という戦略的投資家を引き入れて株主や経営構造を改善をめざすこの国有商業銀行の計画に、数行の国際的な大銀行が強い関心を寄せていることを明らかにした。

 外国保険大手もまた、中国市場で投資ブームを巻き起こしている。広州の信誠生命保険会社の増資申請は6月初めに中国保険監督管理委員会から認可され、双方は従来の50%を基礎に、それぞれ50%の同率で増資を行い、合弁企業の登記資本は2億元から5億元となった。このほかにも、合弁保険会社の設立準備または新規開業が相次いでいる。恒安生命保険会社と「合弁覚書き」に調印した英国のスタンダードライフは、65000万元を拠出する計画。中糧グループと提携したGNUは設立当初に25000万元を出資する。

 外資保険大手による中国市場への資金投入は、一段と増加している。これは中国市場の巨大な吸引力を反映したものであり、この数年の運営実績を裏付けるものでもある。初めて増資を行った太平洋LNGライフの保険料は5億元を突破、今年4月の新規契約数では上海の外資(合弁を含む)保険会社でトップとなった。

小売業のウォルマートは年末に北京に1号店を出す計画で、フランスのアオハムも北京で出店地を選択中。ドイツのメトロや米国のコンビニ「7-11」も現在、北京の不動産会社や商業関連企業と提携を模索中だ。

外国企業の中国戦略

 「確固とした中国戦略が無ければ、グローバル化は実現できない」。ゼネラル・モーターズのワーグナー最高経営責任者(CEO)の弁だ。

 多国籍企業は中国での投資構造で今、戦略的な調整―――国境を越えた買収、ハイテクの開発と地域本部の移転を進めており、中国は「世界の工場」と地域的な開発センターになりつつある。以前は外資の「進入禁止区域」だった分野が今、中国がWTO加盟でなした確約が履行されるに伴い、多国籍グループにとって新たな投資目標となっている。

 昨年の下半期以降、世界的に著名な移動通信設備メーカーのアルカテルは現金による買収・合併(MA)で、中国で最も成功した合弁企業である上海ベルの持ち株企業となった。エマーソン・エレクトリックは、華為グループ傘下の電気業務部門を買収。グリーンクールは上場企業のケロン・エレクトリックに株式参入。ロイヤルダッチシェルは中国石油化学と合弁協定に調印するなど、各業界で優位にある多国籍グループは期せずして、対中投資でMAによる戦略を選択している。

 業界関係者は「海外からの戦略的投資によって、わが国の輸出市場は高度なものになるだろう。何故なら、投資家が重視しているのは廉価な労働力だけではないからだ」と指摘する。

 多国籍企業は中国に生産・製造技術を移転させると同時に、新製品や新技術の重要な拠点の構築に着手している。

 暫定統計によると、マイクロソフト中国研究院やインテル中国研究センター、ヒューレット・パッカード・デジタル信号処理技術研究センターなど、海外企業が国内に設立した研究・開発センターは120を超える。雑誌『フォーチュン』は、中国は「新たな世界の技術センター」に発展しつつある、と評している。

 中国対外貿易経済合作部外国投資管理司の高官は、多国籍企業の国内の研究・開発機関は今後5年以内に倍以上になると予測。

 地域本部や営業センターの設立はこの数年、対中投資で1つのブームとなっている。

 上海・浦東にあるアルカテルのアジア太平洋地区本部は、同地区の16カ国・地域の市場のほか、中国国内の22の投資企業や研究・開発センターを協調管理している。

 上海香港銀行、シティバンク、マッキンゼイなども相次いで地域本部や営業センターを上海に移しており、米国のアルストンや日本の東陶、モトローラは北京を選択した。

 『フォーチュン』が先ごろ公表した調査結果で、多国籍企業の92%以上が数年のうちに中国に地域本部を設立する考えのあることが分かった。

 中国人民大学経済学院の黄泰岩副院長は「先進国の経済成長が減速している中、中国経済は依然として健全な成長を維持している。WTO加盟後の将来に向けた発展で、外国企業の投資意欲はこれまでになく高まっている。特にわが国が独占してきた業界の改革、電信や保健など高利益業種の開放が、世界の資本を吸収する巨大な力となっている」と指摘する。

「世界的に見て、中国は今、多国籍企業にとって最も安全は場所」。これが世界経済が低迷する状況の中、多国籍企業が行った最新の戦略的調整の主要な特徴だ。

外資の変化に適応した調整

 外国企業の投資状況の変化に合わせるため、8年間実施されてきた『広州市外資系企業管理条例』は、適応できない個所が増えてきたことから廃止された。

 深センでは、工商局が『外資系企業の登記・登録作業を円滑に行うことに関する若干の規定』を公布した。新規定は従来の政策・法規と比較して、登記・登録政策を緩和する、生産・開発を業務範囲とする企業が「実業」や「科学技術」など業界用語を単独使用することを許可する、現地法人の行政区画名を企業名のトップに置くことを許可するなど、多くの点で規制がなくなった。このほか住所、営業面積の制限、登記資本、支店の期限なども緩和されている。

 全国各地や政府も、外国企業の投資状況の変化に合わせて関連する政策、措置の調整に着手している。

 魏建国・対外貿易経済合作部長によると、WTO加盟後、政府は新たに以下の8項目の政策・措置を講じている。

1)外資導入に関する法律・法規システムを健全化し、導入政策の統一性を維持するとともに、政策の透明度を高める。今後、各地方、各機関が制定する外資導入に関する法規と政策は、すべて対外公布するものとし、公布後に一律、実施することができる。

2)投資方向を誘導し、投資構造を合理化する。伝統的農業への投資を奨励して、現代的農業を発展させる。外資を積極的に導入して電子情報やバイオテクノロジー、新素材、航空宇宙などハイテク産業を発展させる。研究・開発センターや地域本部の設立を奨励する。外資を積極的に利用して石油化学、化学工業、建材など基礎産業を発展させ、先端技術や装備で機械や軽工業、紡織など伝統的産業を改造する。引き続きエネルギーや交通、都市建設などインフラ整備への投資を奨励し、関連産業や輸出型企業の設立に外資を積極的に導入する。

3)ハイテク産業への投資を奨励して、技術刷新を図る。国家機関は現在、ベンチャー企業やハイテク産業目録、外資の研究・開発センターなどに関する法規の制定作業を進めている。

4)サービス業の対外開放を段階的に推進する。

5)国有企業の再編に外資を導入する。国家機関は現在、多国籍企業による買収・合併と外資導入の問題を積極的に検討しており、現有の国有企業の株式と資産を外資に譲渡する政策をさらに明確化、適正化していく。国有の中小規模企業やグループ企業がさまざまな形態で合弁・提携することを許可する。

6)引き続き中西部への投資奨励政策を実施する。

7)輸出の拡大を奨励し、国内の関連産業を発展させる。合弁貿易企業の試験的実施範囲と条件を緩和し、企業の輸出権を拡大させ、輸出購入センターの設立や、条件に合致する企業の輸出割当額の応札を許可する。

8)買収・合併による外資導入や投資形態の拡大を模索する。国は現在、買収・合併方式による投資に関する法律や法規の制定作業を進めており、経営権の譲渡や基金、株式市場への参入、BOT(設備建設から運営までを一貫して手がけ、一定期間後に設備を譲渡する)などの外資導入方式にふさわしい規定や方法を完備し、上場規模や合弁のファンド会社の設立をさらに拡大する。