「回復的成長」か、それとも「新しい資金導入ブーム」か

南風

 ここ2年来の外国投資の大幅な増加に対し二つの見方があるが、それは回復的成長であると見る人が多い。専門家によれば、中国は外国投資の産業構造、投資の質、投資源の構成をいちだんと改善し、外国投資を潜在するものから現実的なものにするには、六大制約要素を克服する必要がある。

 今年上半期の外国直接投資(FDI)のデータが公布されると、18%を超えるというわりに高い伸び率は経済界の関係者をほっとさせた。このような伸び率で続けていけば、年間の外資利用額は500億ドルの大台を突破する。これは6年もの間外資導入額がずっと500億ドル以下の線を上下していた中国にとっては、いうまでもなく一種の標識となる高い伸び率である。

 1995年以後の5年間に中国の外国直接投資の伸び率はわずか1.6%であり、マイナス成長の年さえもあったのに、昨年は14.9%伸び、今年上半期はさらに18.69%伸びたという伸び率はとても目につくものである。

 1999年、2000年の中米取決と中欧取決の締結および昨年の中国のWTO加盟はその面では確かに功績があり、外国投資家にとって、それはいっそう開放した市場といっそう公正で透明した法律政策環境であること意味している。

 ここ2年の外国直接投資の増加について、「回復的成長」と言う人もいれば、中国のWTO加盟後の「新しい資金導入ブーム」の到来を予示するものだと見る人もいる。この二つの表現の仕方の違いは、中国の今後の外国直接投資に対する違った分析と予測から来ている。

 「新しい資金導入ブーム」と見る人は、今後の外国直接投資の導入をより大きく期待している。彼らはWTO加盟は経済環境に大きな影響を及ぼし、その役割を見くびってならない、としている。

 しかし、「回復的成長」と見る一部の学者はそう楽観視していない。

 なが年外資研究にたずさわっている対外経済貿易研究院の馬宇氏は次のように見ている。

 当面の国内の経済環境は1992年、1993年と比べてかなり違っている。当時中国の外資利用基数が低く、需要の飽和程度および製品競争の圧力がともに今日に劣っていたため、外国企業に進出の広い空間を提供した。

 現在は違う。市場競争が激しくなっているだけでなく、外国企業の資質に対する要求もますます高くなっており、しかも開放の深化にともなって、国内の在来の外資導入の強みも小さくなっている。資質の高い人材、効率の高い管理システム、近代的なインフラ、金融サービスおよび関係ある付帯産業などは外国企業がより関心を寄せるものとなっている。これらの新しい外資導入要素の中に、国内にないものがたくさんある。

 当面の中国の外資導入の情勢が回復的成長にすぎず、WTO加盟後の23年内に中国の外資規模は400億ないし500億ドルのレベルに保たれる。しかし、2005年前後になると、法律・法規の整備、市場参入の拡大、投資環境の改善につれて、外国投資が著しく増加し、今後の5ないし10年間は年間約700億ドルに達する可能性がある。

 国務院発展研究センターの趙晋平氏はこれまでの中国と世界のFDIを系統的に研究した後、中国の外資導入は1995年後に急速成長期が終わり、平穏成長の段階に入り、第105カ年計画期は増加の趨勢を保つが、これまで20年間の平均水準に達するのが難しく、年平均伸び率が5ないし10%になる見込みである、と語った。


回復的成長が現れたのはなぜか
 

 ここ2年外資導入に回復的成長が現れた原因について、馬宇氏は次のように分析している。

 一、中国の安定した経済成長は世界経済が低迷する中で、外国投資家にすばらしい投資のチャンスを提供した。今年上半期の中国経済の成長率は7.8%で、昨年は7.9%であった。これは世界経済の成長率のほぼ3倍であり、安全で安定した投資は経済低迷期にある国際資本の最も重要な選択である。

 二、WTO加盟は外国投資家にすばらしい予期を提供し、外資の中国市場への急速な進出を促している。法律・政策の相応の整備、投資分野のさらなる拡大、関税の引き下げおよび非関税障壁の減少などは、客観的には外国投資家により公開、透明した、運営コストがより安く、リスクがより小さな企業経営環境を提供している。

 三、世界における新しい産業構造調整は中国の外国投資吸収拡大にチャンスを提供した。主に技術進歩に頼ることから主にコストダウンによる市場拡大に頼ることに変わる戦略調整は、中国の情報産業への外国投資にすばらしいチャンスを提供している。2001年中国が導入した外国投資の中でも情報産業への投資は増加の最も速いものである。インテル、モトローラ、フィリップスなどの大手企業が続々と中国への投資を増やし、台湾の大多数の電子企業が大陸部に移転することは、上述の背景と関係がある。

 自動車、化学工業、鉄鋼などの在来産業の移転趨勢も著しい。安価生産の要素および広い市場によって、中国もこの種の投資にとって最適のところの一つとなっている。

 四、中国が世界の多国籍投資に占めるシェアは非常に小さく、しかも特殊性をもっているため、全世界における多国籍投資の減少は中国にあまり大きなマイナス影響を及ぼさないばかりか、逆に有利となる可能性がある。


解決を待たれる問題が多い

 専門家は、中国は外国投資産業の構造、投資の質、投資源の構造をさらに改善し、外国投資を潜在するものから現実的なものにするには、六大制約要素を克服する必要がある、と見ている。

 まず、中国では完備した市場経済法律体系がまだ形成されていない。異なる所有制の市場参入と貸付・租税などの面の差別待遇、主に行政管理によってもたらされた透明度の不足、法治化の薄弱と低い開放度による国際慣例、国際ルールとの不一致などによって、中国の現行の法律制度が立法基礎、法律・規定などの面で市場経済と外国投資の要請に適応していない。

 次に、審査・認可制を中心とする管理体制と管理方式は外国投資の進出と運営を制限している。

 第三は、新しい投資分野の開拓が緩慢である。サービス貿易分野の開放が単なる「試行」でなければ、これら分野への外国投資は短期間に大幅に増えるだろう。

 五、新しい外国投資方式を採用するのが難しい。国有資産管理体制改革の遅れによって、資産の効率と収益がなくなり、株主権譲渡かまたは売却の方式で外資を導入するのが難しく、基本的法律・法規と市場化した所有権取引市場およびそれ相応の仲介サービス機構の不足によって、外国投資家がスムーズに投資できないようにしている。

 六、外国投資を引き受ける効果的なキャリヤーが不足している。国有企業が体制、メカニズムの面で外国投資と融け合いにくく、郷鎮企業、民営企業は資金、技術、市場ネットワークの面でハイレベルの外国投資にマッチするのが難しい。今後外国投資を導入する主力となる民営企業が投資市場参入と審査・管理の面で制限を受けるだろう。

 七、これまでの外資導入の強みが小さくなり、新しい競争の強みがまだはぐくまれていない。労働力、土地などの安価な生産要素の吸引力が相対的に弱くなり、国内市場の持続的低迷も市場の吸引力を小さくするが、技術革新能力が弱く、労働力の資質が低く、市場メカニズムが健全でなく、市場の競争が規範的でなく、サービスシステムが完全でなく、しかも効率が低く、サービスが悪く、料金が高いなどの問題がまだ根本的に改善されていず、投資環境が全般的な競争力を欠いている。

 WTO加盟はいうまでもなく、中国の外資導入にとってはプラスの要素であり、国内の市場化改革を速め、上述の六つの制約要素のちくじ解決に役立つものである。中国がWTOに加盟する時に行った約束は、農業開放、関税引き下げなどを除き、最も核心的なものはサービス分野の市場開放問題である。しかし、これらすべての問題は一度に解決することができず、23年内に順調に完成するのを期待できない。そのため、その外資導入も直ちに効果を上げることができない。