幹部の公開選抜

封けい

 一人の普通の若者が雲南省の幹部公開選抜を通じて指導者のポストについた。

 昨年の初夏のある日、雲南テレビ局の編集者程郁儒さんが家族と世間話をしていたとき、今年4歳の甥は、「役人になりたいが、どこに申し込んだらいいのか」と尋ね、大人たちを笑わせた。彼らはどこへ行って入学、就職、入隊あるいはピアノを習うのに申し込んだらよいかという質問には答えられるが、役人になるのにどこに申し込んだらよいかには答えられなかった。

 しかし、面白いことは、その二、三日後、政府がそれに回答したのである。雲南省の各メディアは、地区クラスと庁クラスの幹部を公開選抜し、条件にかなった人はすべて公開選抜に参加するできることを通知する政府公告を一斉に掲載した。

 程郁儒さんは申し込んだ。いろいろの厳格な試験、考察を経て、最後に入選した。今年96日、程さんは雲南民族映画製作所の副所長に任命されるという通知を正式に受け取った。

 程さんは1987年に復旦大学報道学部を卒業したあと、雲南省に来て仕事をした。程さんは前後して『雲南日報』と雲南テレビ局で8年間働き、記者、編集者、テレビ時事政治ニュース番組のキャスターを務めたことがある。公開選抜が始まる前、副高級技術職名は持っているが、行政職務にはまだついたことがないため、普通の行政抜擢プロセスで選抜すれば、当時の職階から五段跳びで副庁クラスに抜擢される可能性がないのである。

 その実、公告を見たばかりとき、程さんは、これは結果のない試験であるかもしれないし、自分と関係がないと思った。

 当時、程さんの周りの多くの人も彼と同じような考えがあったかもしれない。というのはその後まもなく、公告の発表者は意外も、申請者数が予想よりはるかに少ないことを発見したからである。公告が示しているように、全省の公開招聘職務は35あり、どの職務の申請者数も10人以上に達したはじめて有効と認められ、申請者数が足りない職務は取り消される。申込締切日に、約3分の1の職務は申込者数が足りないため、取り消さざるを得なかった。

 言うまでもなく、政府は心を尽くしたこの改革がいい加減に終わるのを望んでいない。ある日、程さんの勤め先の雲南省放送・映画・テレビ庁は会議を開き、申請条件にかなう30余人が全員講堂に呼ばれ、局の主要指導者は幹部公開選抜の意義を分析し、みんなが積極的に招聘に応じて申し込み、改革を支持するよう希望を表明した。雲南省の各庁・局もこのような会議を開いた。

 会議が終わったあと、程さんは指導者のポストから引退した、ぜんぜん見知らない大先輩から携帯電話をもらった。彼は「君の製作した番組を見たことがある。君がよくできると思うから、申し込むべきだ」と語った。

 こうして、程さんは申込表をもらい、記入したあと関係部門に出した。程さんはその時、大先輩の好意に逆らいたくないことを考えていただけで、その結果にあまり大きな望みをかけていなかった。

 延期した申込締切日までに、約1600の人が申し込んだ。有効と認められた招聘ポストは32で、操作プロセスに基づいて、一つのポストは上位3名を選ぶことにした。つまり、最終的に96人が今回の試験を通じて地区・庁クラスの幹部を務めるかあるいは地区・庁クラス幹部の選抜候補者となる。

 8月中旬のある日、程郁儒さんは競争者と一緒に雲南大学に設けた試験場に入った。試験場の外にある「競争を通じて優秀なものを選ぶ」「公開、公平、公正」など大きな字を書いた横物はとても目についた。教学棟は立ち入り禁止となり、すべての人は証明書に頼って出入りし、試験場の内外の守衛、試験監督官はそれぞれ部署につき、試験場の空気はとても厳粛であった。

 試験は一般教養科目と専門科目に分かれ、それぞれ二日の午前に行われ、時間はどちらも3時間であった。一般教養科目の試験内容は政治理論、管理、法律、国情などの基本知識であり、専門科目の試験は申し込む職務と関係ある試験問題を出した。程さんによると、試験問題がうまくつくられており、知識を考察すれば実際的な問題を解決する能力をも考察するものであった。試験問題もかなり多く、どの科目の試験でも彼が書いた答案の字数は5000華字以上である。

 1ヵ月後、程さんは公開選抜弁公室から筆記試験に合格し、面接試験は半ヵ月以後に行われるという電話を受け取った。

 面接試験は療養所で行われた。98日、筆記試験に合格した160余人が試験所に到着すると、持っていた通信用具はすべて預けられた。規定によれば、面接試験を受ける二日間は、外部といかなる通信連絡もしてはならず、さもなければ直ちに資格を取り消される。

 各人の具体的な面接試験時間はその抽選で決められた。程さんは翌日の午前に面接試験の現場に入った。これは中型会議室で、真中に環状のテーブルがあり、彼は一人でテーブルのある側に向かって座り、向こう側に10余人の選考委員会委員が座っている。ほかに2人の監察員、4人の記録係がいた。また、その試験の全過程はビデオ・カメラで録画された。試験場の紀律が簡単に短く読み上げられたあと、選考委員は「あなたは時事政治を知っていますか」「現在、外国訪問中の国の指導者は誰ですか」「公開選抜についての見方を話して下さい」「あなたが就任したら、どのように仕事を展開するか」「教師の日はいつですか」「いま、あなたが大勢の教師の前にいると思って、即席のスピーチを発表して下さい」「80%の従業員が仕事のない状態にある企業の責任者に任命されれば、あなたはどうするつもりですか」と選考委員は次々と質問した。質問に答える時間は3分間以上、5分間以下と要求された。選考委員たちはまた「緊張しますか」「自分の答えに満足しますか」などといったような気軽な質問もした。

 程さんは、面接試験は順序、試験問題、進行ひいては試験場の設置がいずれも綿密で、受験者の知識表現力、臨機応変能力、判断・分析能力、具体的な問題を処理する能力、心理的素質などにとって大きな試練であると語った。程さんは最後に8.6点の成績で面接試験に合格し、今回の幹部公開選抜の最終入選者の一人となった。

 その後、入選者はトレーニングを受け、学習し、関係地区へ参観、考察に行った。同時に、各メディアは入選者の基本資料を公示し、省党委員会組織部は公示期間の各方面から提出された状況を取りまとめ、整理し、組織部門は関係者を各部門へ派遣して考査を行った。一人の考査は数十人の関係者との談話をしてはじめて完成した。

 最初の採用者は面接試験を受けた15日後に赴任した。残った人は予備幹部リストに入れられ、適当な時機とポストを待つことになった。現在、程さんも正式に任命され、16年間のジャーナリストの生活を終え、全く新しい仕事を始めた。

 程郁儒さんは「プレッシャーがきわめて大きく、以前、個人の決定と行為は自分が責任を負いさえすればよかったが、現在、周りの人に対しても責任を負う必要があるので、問題をより緻密かつ慎重に考えなければならない。そのほか、技術者から管理要員になるには業務知識、管理知識を含め、多くの新しいものを学ぶ必要がある」と語った。

 今回の幹部の公開選抜にふれ、程さんは次のように語った。

 政治体制改革の切り口と重要な構成部分として、幹部選抜制度の改革が大胆かつ着実に進められていることを感じており、「公開、公平、公正」という原則は日ましに完全なものになり、実施されることができるようになっている。そのほか、組織部門は幹部選抜に非常に気を遣っていることがわかり、現在、大勢の予備幹部がすでに予備幹部人材バンクに入れられ、その動きは組織部門に注目されており、幹部陣は豊かな予備資源を備えている。