北京の観光知識(三)

寺廟・教会・モスク

 北京に居住する人々の中には、中国の56の各民族の人が含まれており、北京には宗教・信仰の多様性が表れている。寺廟、教会などは景色のよいところに建てられているものが多く、またしばしば歴史の一こまを内包しているため、多くの観光客や信徒が訪れる場所となっている。

雍和宮

交通:地下鉄、11613路線バス「雍和宮」下車

開場時間:8:3016:00

 北京市街区の北東部にあるラマ教(チベット仏教)の寺院。清代の康熈33年(1694年)に建立され、もともとは胤禎(清の雍正皇帝)が即位する前の屋敷で、「雍親王府」といった。雍正3年(1725年)に行宮となり、「雍和宮」と改名され、乾隆9年(1744年)に改築されてラマ教寺院となった。敷地面積は66400平方メートルで、三つの牌楼と5つの堂宇からなり、漢民族、満族、モンゴル族、チベット族の建築様式の特徴を合わせ持つ荘厳な建物は壮観である。

臥仏寺

交通:360333路線バスを利用

開場時間:8:3017:00

 北京市街区から30キロ離れたところの香山の東側にある。唐代の貞観年間(627650)に創建され、1300年の歴史をもっている。中には釈迦牟尼の巨大な涅槃銅像があり、「臥仏寺」の名はこれに由来する。仏殿の正面の壁にかかる扁額に書かれた「得大自在」とは、「人生の真義を得ることは、最大の自由をも得ることだ」という意味である。仏殿の上にはまた「性月恒明」と書かれた扁額がかかっているが、これは「仏性は月のように、永遠に明るく輝き照らしている」という意味。三世仏殿の前にある菩提樹の古木は、釈迦牟尼が菩提樹の下で涅槃に入ったことを象徴している。

碧雲寺

交通:360333路線バスを利用

開場時間:8:3017:00

 「西山の台殿数々あれど、碧雲寺にまさる壮観なし」と言われ、西山景観区の中で最もりっぱで美しい寺院である。香山の東麓の斜面に沿って、山門から頂上まで階段状に建築物が建て連ねられている。それぞれ様式の異なる建物が次から次へと姿を現し、尽きることのない感じを与えている。

 碧雲寺は、元代に建立された当初は「碧雲庵」といわれ、皇帝や后妃たちの遊覧場所であった。清代の乾隆13年(1748年)に大規模な増築が行われた。また、1925年に亡くなった孫文の遺体が後殿に一時安置されたため、後殿はその後「中山記念堂」と改名されて、今でも孫文の衣服と帽子がここに収められている。

大鐘寺

交通:302367路線バスを利用

開場時間:8:3017:30

 北三環路の北側にあり、大鐘殿の中に巨大な銅鐘があるため、この名がつけられ、別名「中国古鐘博物館」とも言う。明代の永楽年間(15世紀)につくられた巨大な鐘は、造形が精美で、その純朴な鐘の音は長く尾を引いて、早朝には5キロ余りも離れたところまで伝えられるという。鐘の内側と外側には、17種類の仏教の経典から計227000余文字がぎっしりと鋳出され、その字体は整っていて力強く、明代の書法家である沈度の真跡と伝えられている。永楽大鐘は、悠久の歴史、すばらしい書法芸術、精巧な鋳造技術で内外に名を馳せ、「中国鐘王」と呼ばれている。また寺にはこの鐘以外にも、元・明・清三代のさまざまな銅鐘が100個ほど陳列されている。

潭柘寺

交通:展覧路から長距離バス、夏季は前門から観光バスを利用

開場時間:8:0017:00

 この寺は「先に潭柘寺ありて、後に北京あり」と、北京の街ができる前から存在していたと言われるほど古い歴史を持つ寺である。北京市西郊の門頭溝区にある潭柘山の山腹にあり、山の上に「竜潭」と柘(ヤマグワ)の木があるのがその名の由来で、北京郊外で最大規模の古刹の一つである。

 潭柘寺は晋代(265420)に建立され、「嘉福寺」と呼ばれていたが、唐代には「竜泉寺」、金代には「万寿寺」と改称され、その後も明・清両代にまた何度か改名したが、俗名の「潭柘寺」の名が最も広く流布している。

山の斜面に沿って各殿堂が階段状に建てられており、周囲の自然とみごとに溶け合って、深山幽林の中で往時をしのぶにはうってつけのところである。

戒台寺

交通:展覧路から長距離バス、前門から観光バスを利用

開場時間:8:00-17:00

 北京西郊の馬鞍山の上にある古刹で、唐代に建立され、明、清代に何度も増築、改修された。寺の中には中国最大の戒台があり、昔はここで信徒に対して説法を行った。当時は、多くの人々がこの寺の名を慕って説法を聴きに来たという。戒台殿は寺の北西にある堂宇にあり、中には「樹精進幢」と書かれた乾隆帝の親筆の大きな扁額がある。現存する戒台は明代につくられたもので、台面は一辺の長さが約10メートルの正方形、高さは約3.3メートルあり、漢白玉(大理石に似た白色の石)を3つの階段に分けて積み重ねたもので、精緻な彫刻が施されている。戒台寺はまた古松のあることで有名で、中には樹齢千年を越えるものもある。

法海寺

交通:331336路線バスを利用 

 石景山区模式口村の北、翠微山の南麓にあり、明代の正統4年(1439年)に建造された。寺内の壁画は、中国で保存状態の最もよい明代のもので、中国ないし世界の壁画芸術の中で重要な位置を占め、文物界と美術界からたいへん尊重されている。壁画の面積は2367平方メートルで、そこに描かれているのは、十方世界の仏と衆生、二十諸天、天竜八部衆、飛天仙女、動物・花卉などすべて仏教世界の事象である。明代の宮廷画師によって描かれたもので、その技巧はずば抜けており、描線がなめらかで躍動感にあふれている。

 法海寺は周囲をなだらかな山に囲まれ、松やヒノキなどの木々がうっそうと生い茂り、涼しくもの静かで、行楽にも、往時探訪にも、秋の景色を味わうにも恰好の場所である。

白雲観

交通:19路線バス、114路線トロリーバス「白雲観」下車

 「天長観」とも呼ばれ、西便門外にあり、北京で最も大きい道観(道教寺院)であるとともに、中国北部の道教の中心でもある。

 唐代の開元年間(713714)に創建され、1200年の歴史を持っている。金代の明昌3年(1192年)に再建されて「太極宮」と改名されたが、金代の泰和3年(1203年)に火事で焼け、ほとんど焼き尽くされてしまった。元の世祖(フビライ)の時代に、著名な道士である邱長春の住居となり、その遺体もここに埋葬されているため、道教界はここを祖庭として崇めている。邱長春の死後、その弟子が建物の東側に道観を建造し、「白雲観」と名付けた。明代末期に大火で焼失し、清代の康煕45年(1706年)に修復された。その後、乾隆、光緒年間にも修復されている。

 道教に関するさまざまな知識や興味深い事柄を得ようとするなら、白雲観を見学するのが最適である。現在は、中国道教協会もここに設置されている。

天主教南堂

交通:48路線バスを利用

電話 66037139

北京でも最も古いカトリック教会である。清代の順治年間(17世紀中頃−末頃)にキリスト教イエズス会のドイツ人宣教師であるアダム・シャールが、イタリア人宣教師のマテオリッチの建てた教会の跡地に建造したもので、330年余りの歴史をもっている。保存状態が完全で、内装は豪華である。ミサは毎朝6:30から、日曜日は午前中いっぱい行われている。

牛街清真寺

交通:1061路線バスを利用

電話 63532564

 北京にはイスラム教を信仰する回教徒が18万人近くおり、一般公開されているイスラム教寺院が40カ所余りある。そのうち規模の大きいのは、中国の古代建築とアラビア建築の特徴を合わせもつ牛街のイスラム教寺院で、近代に建てられたものである。元代に建てられた東四のイスラム教寺院には、さまざまな『コーラン』の異本が収蔵されているが、そのうち元代の写本は、500余年の歴史を持ちながら破損のない完全なもので、きわめて貴重な一品である。