中国株式市場を建て直すか
今年初め、著名な経済学者の呉敬璉氏の「株式市場は大きなばくちだ」という言論は、株式市場について空前に激しい論争を引き起こした。中国の監督管理部門が監督・管理を強化するにつれて、論争はだんだん収まっているが、7月に入ってからの株式市場の暴落によって、株式市場についての論争は再び引き起こしされた。
今年後半に入ってから、中国株式市場に規則違反事件が次々と発生し、中国証券監督管理委員会はたえず調査、処分し、メディアはしきりに事件を暴露するとともに、広範な投資家も次々と自信をなくし、それに国有株保有量減少という政策が当を得なかったこととアメリカのテロ事件の影響を加えて、株価指数はわずか数ヵ月で2245から1600以下に急落し、人々は株式の成り行きを懸念し始めた。
10月22日、株式相場全般は1514まで落ちこんだ。その夜、中国証券監督管理委員会は国有株保有量減少案をの一時停止という通達を出した。上海と深?の両株式市場はすぐにも大幅に反発した。
国有株保有量減少政策の一時実行停止によって、論争は新たな段階に入った。許小年氏は、これは聡明なやり方ではなく、政府が株式市場下落のすべての責任を負うのに等しいと見ている。許氏によれば、中国株式市場の今回の下落は革命的な調整である。中国株式市場再建という性質をおびる許氏の一連の論調は、各方面からほとんど一辺倒的批判を受けた。呉暁求氏らの経済学者は政府の一時停止措置を高く評価し、今回、欠点のある規則の改正は政府が実際に即して政策を決定することを示していると見ている。論争の実質は、中国株式市場に対する双方の評価および発展についての考えの違い、つまり中国株式市場に必要なのは漸進的な改革なのか、それとも革命的な嵐なのかにあった。ここに一部の経済専門家の見方を掲載する。
中国株式市場を完全な市場に建て直す
中国国際金融公司研究部主任、経済学者許小年氏 国有株保有量減少の一時停止は聡明なやり方ではなく、これは政府が株式市場下落のすべての責任を負うのに等しい。実際には、責任の多くは国有株保有量減少にまったくあるのではなく、株式市場を調整するのは、主として仲介機構、証券業者、上場公司が規則に違反して操作し、投資家に自信をほとんどなくさせたからであり、また株価の上昇が本当のものではなく、基本的なサポートがなく、市場そのものに構造的な欠陥があることにも原因がある。
政府の措置は、政府側に確かに株価指数の最低限があることを市場に示したのに等しく、人々は「株価指数を監督・規制の目標としない」という中国の証券監督管理部門の約束がいったいどれほど信用できるかを疑わせざるを得ず、投資家に株式市場が「株価指数下落――政府後押し――株価指数反発、バブル形成――バブル破滅」という悪循環に戻るとを考える理由がなおさらある。
株市市場に対する政府の干与は市場に対する人々の正常な予期を乱し、証券市場システムのリスクを大きくした。このほか、監督管理層の隠れた保険もリスクと収益のアンバランスをもたらし、株価シグナルの変形と資源の誤まった配置をまねいた。それより重大なのは、政府が信用を失うことである。政府が圧力に屈服したと人々は意識すると、合理的であるかどうかをとわず、今後政府の政策を真剣に対処しなくなる。
中国株式市場の今回の下落は革命的調整である。目下の市場調整は避けることのできないものであり、健全なものでもある。株価指数が「わりにきれい」な程度――あるいは1000に下落したとき、政府は「空売り」メカニズムなど一連の建て直し手段を導入し、もう一度健康で完全な資本市場をつくるであろう。
ある学者は、株式市場が低迷を続けていけば、金融市場に非常に大きな影響を及ぼすだろうと語り、資本市場の資金チェーンが切れ、証券業者が取り付けで金融危機を引き起こすのは政府に株式市場を救わせるためであると喧伝している。資金チェーンの問題について、もし銀行と企業の規則違反資金、またはリターンを保証する信託管理の資産であれば、これらの資金チェーンはもともと存在すべきではなく、早く切れていいのではないか。われわれの推算では、最も悪い状況では、証券業の問題で引き起こされる銀行の不良債権の比率は2、3％増える可能性がある。しかし、そのままにしておくならば、銀行の不良債権がより多く出てくる。他方では、株価指数が30％下がって、チェーンが切れるとなれば、われわれの証券機構がリスク管理の面で重大な問題があることを物語っているのではないのか。本当にそうすれば、政府に資金チェーンが切れた結果に責任を取らせる理由はあるだろうか。
経済学と金融学の常識が教えているように、証券業者は銀行での取りつけ問題が存在せず、たとえ証券業者が取りつけをしても、金融システム全体に与える衝撃は銀行での取りつけと本質的な違いがある。銀行は預金を利用して融資を放出し、信用をつくり、大きくするが、証券業者は信用づくりに参与せず、投資家が1元を引き出せば、社会信用の損失もは1元だけで済む。
中国の銀行資産の多くは国家銀行が所有し、銀行での取り付けは国の信用危機に発展する可能性があるので、政府に国の信用を守る責任がある。国内の多くの証券業者も国有部門であるが、その株主は国有法人であるため、投資家の取り付けが国に及ばないので、国の信用にかかわることがない。したがって、証券業者が経営の困難を解決する方式は、決して株価を引き上げて、投資家の利益を損なうべきではない。
あまりにも責任を負わない軽率な観点
経済学者の蕭灼基氏 このような言い方は早くからあった。例えば、中国株式市場の弊害が利益より大きいとか、中国株式市場は賭博市場だとか、中国株式市場は建て直す必要があるとかがそれであり、理論的には関連がある。その言い方に下心があるとは言えないが、一種の観点でもある。私はそれに同意することができない。その理由は二つある。一つは、中国株式市場をどう評価するかというと、中国株式市場が果たした作用は積極的なものが主流であり、成績が著しいものであり、発展も非常に速いと思い、建設資金の調達、経済体制の転換、資源配置の最適化、経済効果の向上、国家税収の増加、国際とのリンクの加速などに寄与したと言うべきである。例えば、国内外の資本市場から調達した資金は1兆元に達し、株式取引の印紙税は昨年末までに1200余億元であったが、現在は1400余億元になったかもしれない。これは国の経済建設を支持する面で非常に大きな役割を果たす。
ここで建て直しは何を意味をしているかを分析してみよう。1200社が市場から1兆元の資金を調達したが、どのように投資家に戻すのか。6500万の投資家が株式市場に投入した金は2、3兆元もあると思うが、その資産の損失は誰が弁償するのか、多くの投資家がこれらの資金を使って高速道路、空港、企業を建設しているが、工事が止まると、その損失は誰が負担するのか。
株式市場の建てなおしにコストの問題があるだけでなく、どんなパターンをつくるかにかかわることでもある。大計にかかわることなので、このような話をする時は慎重に考えなければならないだ。
当面、中国株式市場は資金がないわけではなく、自信がないのである。資金はあるが、自信がなければ、人々は株式市場に投資する勇気がない。董輔?氏は今年初め次のように述べた。子供を大事にするように、中国株式市場を大切にしなければならない。これは非常に重要である。子供は転び、家の中の物を壊すことがあり、大人はこれを見てとても腹が立つが、子供は畢竟子供だから、だんだん大きくなる過程がある。株式市場にこのような問題が出たからと言って、それを何の取り柄もないものとと考え、もう一度建て直すようなことをしてはならない。それをもう一度建て直すというのは非常に軽率である。
経済学者の董輔?氏 このような観点は実際には操作できないものである。すでにつくった市場をつぶしてもう一つをつくるのはできないことである。こうのような概念を提出するのは株式市場を大きく傷つけ、広範な投資家に自信を失わせ、中国株式市場が完全にだめだと思わせる。実際には、中国株式市場は絶対にそのようなものではなく、問題はたくさんあるが、十数年らい非常に大きな成果を上げ、問題は第2位のものにすぎない。われわれの目的はさらにそれを整備し、改善し、いっそう規範化させることであって、建て直すことではない。とりわけ株式市場に対する投資家の自信は非常に重要であり、一旦投資の自信が揺れると、自信を持ち直すのは非常に困難である。だから、このように言うのはあまりにも無責任だと思っている。
首都経済貿易大学の紀宏博士 ここ数年、中国株式市場に規則違反のことが次々と現れ、少なからぬ上場公司の質も低下しつつある。しかし、この株式市場が必要であるかどうかは投資家が選ぶことであって、専門家が結論付けることではない。株式市場を全面的に否定するのは実に少なくとも政府の管理能力を否定することである。証券市場は現代市場経済の非常に重要な構成部分であり、マクロ経済の最も敏感で、最も影響が大きい一部分である。そのため、政府は株式市場を座視することができないのである。
今日、中国株式市場では、意外な暴利を得る機会はますます少なくなり、政策を利用してぼろもうけをした資金はここではこのような金儲けの機会はあまりない。しかし、「株式市場建て直し論」は、これらの資金にまたも金もうけのチャンスを与えるだけでなく、建て直しによって再び政策を利用してぼろもうけをするチャンスをも与える。ところが、株式市場は政府が開設、管理するものであり、政府に自ら開設、管理する株式市場を締めさせるのは、せいぜい某利益グループの幻想にすぎない。株式市場の運行が経済実体に及ぼす影響はほぼ1、2年遅れているが、われわれはいまから株式を重視しなければ、1、2年後、それは同様にマクロ経済に大きな報復を与えるであろう。