住民自治の重要な一歩

                                                             

 ――ここ数年、一部の大都市がコミュニティー住民委員会の直接選挙を試行し始めた。このことは末端の民主化に歴史的進歩が現れたことを十分に示している。

羅中雲

 817日、北京市東城区の九道湾というコミュニティーで住民委員会の直接選挙が行われた。午前9時、満18歳になったばかりの住民の王兆欣さんは秘密投票室で心の中の理想的な候補者を選び、それから投票用紙を投票箱に投じ、自分の人生の初めての政治的権利を行使した。彼女は「彼らがわたしたちの選んだ人だから、今後わたしたちがコミュニティーの生活で困難にぶつかった時または選んだ人の仕事に対して意見がある時、正々堂々と彼らを訪ねて問題を反映し、助けを求めることができる」と語った。

 調べによると、九道湾コミュニティーは典型的な旧市街区の平屋区域であり、1000余世帯、2000余の住民が住んでおり、100余人のよそ者が住んでおり、そのほか、機構が四つある。今回の選挙はよそ者74人を含む1990人のコミュニティー住民が選挙権を獲得し、彼らは北京市東城区公証処の現場監督の下で、何回かの直接投票を行って、11人の正式候補者から9人のコミュニティー住民委員会のメンバーを選出し、つづいて、直接選挙と一定の定員割当の原則に基づいて21人のコミュニティー代表会議代表を選出した。最後に、選挙前に800票余りの指名を獲得した曹建軍さんが再び1494票の圧倒的な優位で、新しいコミュニティー住民委員会の主任に当選した。彼女は「今回の選挙はとても透明したものである。2000年にここで選挙が行われた時、住民委員会主任は住民委員会のメンバーたちが指名し、230人が相談して、選び出したが、今回はコミュニティーの2000人近くの住民が参加したので、確かに以前よりずいぶん民主的になった。同時に、こうするとわたしたちに一定の圧力がかかってくる。仕事をちゃんとやらなければ、住民は不満を覚え、一票を投じてくれない」と語った。  

 河南省から来た劉桂嬌さんは今回の選挙でコミュニティー代表会議の代表に当選した。彼女は「これはわたしが北京に来てから10年このかた初めて自分の選挙権を行使した。以前は北京の人が選挙してもわたしたちのようなよそ者と関係がなく、自分がコミュニティーに面倒をかけないならばよいと思っていた」と感慨深げに語った。  

 北京市東城区民政局の于秀清局長によると、九道湾コミュニティーの今回の選挙は北京で行われた初めてのコミュニティー直接選挙でもあり、その成功はその他のコミュニティーの自治組織の選出に対し非常に重要かつ参考になる意義がある。来年東城区の133の住民委員会の交代選挙はこのような方式で行われる。

 広州市は今年1月に、東園新村で同市の初めてのコミュニティー直接選挙を行った。現在、このような方式はすでに市内の各コミュニティーで推し広められ、わりに定着した選挙方法となっている。そのコミュニティー住民委員会のメンバーは二つの部分からなっている。一は住民の直接選挙であり、プロセスは選挙委員会を設立する、有権者の登録を行う、候補者を推薦し、10人以上の住民が連名で1人の候補者を推薦することができ、正式候補者名簿は選挙日の5日前に公表する、投票して選挙を行う、罷免し、補欠選挙を行う。選挙する時、法に依って無記名投票を行い、投票用紙を秘密に書き、投票用紙を公開集計し、その場で選挙結果を公表する。選挙は3回に分けて行われる。まず有権者全体が選出した「有権者代表」が投票で住民委員会主任1人を選出し、つづいて投票で副主任1人を選出し、最後に投票でその他の委員を選出する。この3回の選挙はいずれも差額選挙である。二は街道が現有の住民委員会のメンバーの中から推薦するが、住民に異議を申し立てる権利がある。これらの人たちは街道が推薦して、各区の人事局、組織部の審査を経た専従要員であり、責任をもってコミュニティーの公共事務、公益事業などを主管する。

 北京市社会科学院の馬仲良副院長は、コミュニティーの自治組織の直接差額選挙は、末端の民主政治建設を強化する効果的な方法であり、同時にコミュニティーの建設全体のレベルを高め、コミュニティーのメンバーの民主意識、コミュニティー意識、参与意識を強め、コミュニティーに対する認知感、帰属感を深め、その自己管理、自己教育、自己サービス、自己監督の能力を高めることができると見ている。

関係法律が保障 

 中国の都市の最高行政管理機構は市政府であり、その下はこの市の一つの区を管理する区政府であり、さらにその下は街道(町内会)事務所であり、街道事務所は責任をもって管轄区域内の街道を具体的に管理する。これらの機構はそれぞれ一級の政府を代表し、行政権力を行使する。住民委員会は街道事務所に直接従属し、住民の自治管理組織であり、都市の最も小さな管理機構であるが、行政権力を持たない。

 1989年に公布した「中華人民共和国都市住民委員会組織法」は、都市住民委員会の性質、任務、人員構成、選出方法などに対し規定を行っている。同法によると、住民委員会は住民が自己管理、自己教育、自己サービスする末端の大衆的自治組織である。その職責は主に居住地区の住民の公共事業、公益事業を主管し、民間紛糾を調停し、和解させ、関係方面に協力して社会治安を守り、当地の政府あるいはその出先機関に協力して、住民の利益と関係のある公共衛生、計画出産、優待・救済、青少年教育などを立派にやり、当地の政府あるいはその出先機関に住民の意見、要求を伝え、提案を提出することである。

 住民委員会の構成と選出方法の面では、同法は次のように規定している。住民委員会は住民の居住状況、住民の自治に役立つ原則に基づいて、一般には100世帯ないし700世帯の範囲内に設立する、住民委員会は主任、副主任、委員5ないし9人からなり、居住地区のすべての選挙権を持つ住民あるいは一戸ごとに代表を出して選出し、または各住民グループが2ないし3人の代表を選出し、選挙で選出することができる。住民委員会の任期は一期3年であり、そのメンバーは続けて当選して再任することができる。居住地区の満18歳の住民は、民族、人種、性別、職業、家庭出身、宗教信仰、教育程度、財産状況、居住期限を問わず、いずれも選挙権と被選挙権がある。住民委員会は必要に応じて人民調停、治安防衛、公共衛生などの委員会を設置する。

 伝えられるところによると、新しいコミュニティー住民委員会の区分基準は世帯数を考慮するだけでなく、地域性、認知性、利益性などのコミュニティー構成要素をなおさら強調し、住民の地縁面の認知感、生活上の帰着感に基づいて、コミュニティーの相対的な独立性、完全性を強調し、実際に生活共同体を構成して、コミュニティーの自治の便宜をはかる。以前の住民委員会の人員、資金、物資はすべて政府のものであり、コミュニティーは独立性がなかったが、現在のコミュニティー住民委員会は住民が民主的に選出したものであり、人件費が区クラス政府から支出されるほか、コミュニティー住民委員会はコミュニティーの資源を利用して経済を発展させるが、あるいはコミュニティーの寄付を受け入れることができる。そのほか、コミュニティー住民委員会の一期の任期は3年で、直接コミュニティー住民会議に対し責任を負い、その監督を受け入れる。

選挙の形式はなおも模索する必要がある

 コミュニティーの直接選挙は都市の末端選挙の民主化に深遠な影響をもたらした。中国社会工作者協会の馬学理副会長によれば、コミュニティーの直接選挙の推進は、経済改革の推進につれて、社会構造が「部門の人」から「コミュニティーの人」に移行し、コミュニティーがすでに人々により多くの帰属感、認知感、凝集力をもたらす新しいタイプの居住空間となっていることを示しており、同時に民主的権利を行使して自己管理、自己教育、自己サービスを実行するコミュニティーの民主化過程が前に向かって推進したことを示している。

 確かに、直接選挙を通して選出したコミュニティー住民委員会などのコミュニティー機構は直接有権者全員に対し責任を負わなければならないため、仕事の重心は以前と比べて明らかな変化が生じ、政府を代表して行政権力を行使するという以前のやり方を改め、真にコミュニティーのサービス機構となり、国の法律を遵守する前提の下で、なにごともコミュニティーの住民の利益を核心として仕事をするようにしている。北京市の九道湾コミュニティー住民委員会の直接選挙の翌日に、新しく当選したコミュニティー住民委員会は第1回メンバー会議を開き、どのように有権者の合理的な要求を実行に移すか、どのように住民代表会議に住民委員会に対する監督機能を発揮させるか、新しい指導グループが分業してから、どのように住民に理解させ、よりよく住民にサービスするか、どのように住民の要求に基づいてコミュニティーにヘルスパークをつくるかなどを討議した。伝えられるところによると、ヘルスパークは新しい指導グループが住民たちにささげる最初のプレゼントとなる可能性があるが、その案について住民代表会議と協議しなければならない。

 しかし、コミュニティーの直接選挙は目下全国において試行の段階にあり、その具体的なやり方は各地で大きく異なっており、進度も同じではない。特に選挙権のある人を確定する面やコミュニティー住民委員会のメンバーの職責分担などの面では、明確にし統一する必要のあるところがたくさんある。

 2000年に上海市で行われた住民委員会の直接選挙は、満18歳、当地の戸籍をもつ住民はすべて、選挙権と被選挙権があり、戸籍が当地にない人はそこに住んでいても選挙権と被選挙権がないと規定した。今年1月、広州市は市全域の町でコミュニティー住民委員会の直接選挙を行い始めたが、コミュニティーにいるよそ者のうち、広東省籍に属する人だけ選挙権と被選挙権があると規定している。広州市民政局コミュニティー建設処のある責任者によると、現在すでに公表した関係法規はこれについて具体的な規定がなく、広州市のこのやり方も省民政庁の指示を仰いでから決めたものである。北京市の九道湾コミュニティーの直接選挙はよそ者に全面的に開放している。調べによると、このコミュニティーに常住しているよそ者が100余人おり、年齢が18歳とそれ以上のものが70余人おり、彼らは今回初めて直接選挙の選挙権と被選挙権を獲得した。

 現行の住民委員会組織法は、コミュニティーにある企業と事業体に選挙権があるかどうか、よそ者がコミュニティー管理に参与できるかどうかという問題について明確に規定していない。このことはすでに関係部門の高度の関心を引き起こし、民政部はこれらの問題を突っ込んで検討し、各省、直轄市、自治区のコミュニティー建設を推し進める意見を吸収し、下半期に全国人民代表大会常務委員会に住民委員会組織法を改正する意見を提出する。その時は、コミュニティーにおけるよそ者の地位などの問題が明確化され、よそ者は選挙権を持つ可能性があるだけでなく、コミュニティー住民委員会のメンバーに選ばれる可能性もある。

 選出されたコミュニティー住民委員会のメンバーがどのように自らの職責を行使するかも、住民の民主的権利が真に体現されることを保障する一側面である。これらの人の中の多くが自分の仕事があるため、住民委員会では兼職しかできない。このため、一部の専従要員がコミュニティーの環境衛生、安全・防衛、その他の日常事務の管理に具体的に参加する必要が出てくる。先般、公安部、民政部などは共同で通達を出し、住民の選挙を経て、当地のコミュニティーの人民警察がコミュニティー住民委員会のメンバーに参加し、治安パトロールを組織し、繰り広げ、コミュニティーの安全ネットワークシステムを構築することを提案した。