上海市、「居住証制度」で人材を導入

唐元かい

 今年615日、上海市は人材を集めるため、中国で率先して「居住証制度」を実施し始めた。銭学鋒さんおよびその他数十人の国内外から招かれた人材、国内各地から働きに来た人は、その直系親族とともに、「上海市居住証」を取得して「新しい上海人」となった。

 「新しい上海人になるのは、あるいは再び上海人になるのは本当にいい」、「B」という標識がプリントしてある国外居住者の「上海市居住証」をみつめて、銭学鋒さんはとても興奮した。彼は上海に生まれ、1980年代末にアメリカに留学し、グリーンカードを取得した。2000年、38歳の彼は上海に戻って、ソフトバンクチャイナベンチャーキャピタル有限公司の副総裁に就任した。

 銭学峰さんはアメリカ国籍をもつ妻と二人の子供のためにも上海市居住証の「副証」を申請した。これがあれば、子供たちは上海の普通の生徒と同じように通学できるようになる。

 「上海市居住証」は所持者が上海市で居住し、勤務する証明であり、これで社会保険など個人と関係ある事柄を処理する。同証には所持者の基本的情況、居住地変更情況など人口管理に必要な情報が記録されている。その適用者は本人の合法的な身分証明証を所持し、上海に半年以上居住し、本科以上の学歴かまたは特殊な才能があり、本人の国籍あるいは戸籍を変えない形で上海で働くか創業する国内外の人びとである。

 居住証所持者は、次のような待遇を享受する。一、上海で企業を設立し、科学技術活動に従事し、子女の通学を解決し、特許を実施し、出入国手続きをすることができる。二、関係規定に基づいて、上海市行政機関の招聘を受け入れるか企業・事業体に就職し、上海市の専門技術職務評定に参加することができる。三、「居住証」を所持する外国居住者は、規定に基づいて納税後の人民元の所得を指定銀行で外貨に両替して外国に送金することができる。四、「居住証」を所持する国内住民または外国籍に入っていない留学経験者は、上海市の基本養老保険と基本医療保険に加入することができ、そのうちの「居住証」を所持する国内要員は規定に基づいて上海市で住宅公共積立金を納入、活用することができる。

 上海市人事局によると、3カ月足らずのうちに、4000余人の各種の人材が「新しい上海人」になったという。

 しかし、統計によると、上海の1300万の人口のうち、中国国籍に入った外国人はわずか数十人であり、常住外国人も5万人足らずで、上海人口の0.4%しか占めておらず、外国人が総人口の15ないし20%を占めるという国際大都市の比率とかなり大きな差がある。ニューヨーク市の常住外国人の総人口に占める比率は上海の42倍であり、香港のこの比率は7.1%に達している。アメリカの人口は世界総人口の二十二分の一しか占めていないが、世界の二分の一の大学院生、三分の一の本科生、四分の一の科学技術者を擁している。

 1992年、上海市が導入した人材に発給したのは「勤務寄寓証」であり、その所持者は子女の通学や社会保障などの面で上海の市民と同じような待遇を享受することができなかった。2000年、上海市人事局は労働と社会保障局と共同で「導入人材勤務証」を発給して、導入した人材の社会保障問題を解決したが、子女の通学などその他の問題は相変わらず未解決のままであった。上海を優れた人材の集まるところにするため、「居住証制度」が機運に乗じて生まれた。

 一連の人材政策改革によって、上海市を「人材の集まるところ」に建設する活動がいちおう効果をあげている。第5回全国国勢調査のデータによると、上海市の人材は国内でかなりの強みを持ち、人材総数は1795000人に達し、1994年より69%増え、人口一万人当たりの中等専門技術者と大学生の比率はともに全国各省・市の中で上位を占めている。昨年末現在、上海に常住する外国人および香港・澳門・台湾地区の専門家が約48000人に達し、全国の4割近くを占めた。上海に戻って短期間勤務する留学経験者は約2万人で、全国の約五分の一を占めた。

 人材が集まることは観念の変化をもたらしただけでなく、それにもまして経済と社会の発展を促した。たとえば、昨年、上海は383人の留学経験者を導入して、382社の企業を創設し、登録資本金は人民元7000万元を超えた。そのほか、人材が集まることは上海の技術を大幅にレベルアップさせた。「中芯国際」、「宏力トランジスター」二大集積回路メーカーは、ともに国際一流の技術陣がつくりあげたものである。「中芯国際」の1000余人の従業員のうち、博士と修士が五分の一を占め、アメリカ、イタリア、シンガポール、中国台湾地区の高級人材が四分の一を占めている。

 各地の人材を一歩進んで導入するため、現在上海は二つの基本的段取りを確定している。第一歩は2005年前後に全国の人材を誘致、活用し、文化背景の異なる人材を受け入れ、国内の人材をりっぱに養成し、アジア人材の集まるところにつくり上げる。2015年に国際人材の集まるところを基本的につくり上げ、現代化国際大都市の要求に基づいて、人材の構成と人材の資質の国際化、人材活動空間の国際化を基本的に実現する。

 スポーツ、伝統的工芸美術、漢方医薬、農・林業、牧畜獣医、室内装飾など15業種の主管部門と業界協会が起草した15種類の特殊人材の居住証申請の評価方法は、一歩進んでの論証を経て、居住証政策の「評価システム」の付加システムとして実施する。

 現在、「上海市居住証」取得者のうち、学歴が専門学校以下の人が20%で、高校卒の美術スタッフもいれば、中等専門学校卒の芸能者もおり、大多数は職称と学歴がともに高くない技術労働者と管理要員である。これに対し、上海市人事局は、上海市は今後人材政策の重点は人材の弾力的移動を重視し、さし迫って必要とする優秀な人材を残らず上海に導入することであり、以前の人材導入条例に規定された「学歴は本科以上、職称は中級以上」の制限を受けなくなった。これは職称、証書、学歴が上海の人材を判断する唯一の基準でなくなることを意味している。

 上海人事局の孫路一局長によると、今後、上海市は毎年社会に人材開発目録を公表し、その年度に差し迫って必要で、導入する必要のある人材を詳しく羅列して、上海で発展したい内外人材が上海の政策がわかるようにする。