順調に進む青海・チベット鉄道の建設

 ――レールはすでに80余キロ敷設し、高原の凍土、酸欠などの技術上の難題を効果的に解決し、生態系均衡を確保している。

黎 江

 926日、青海・チベット鉄道の最初のいちばん長いトンネルである昆侖山トンネルが貫通した。このトンネルは全長1686メートル、標高4600ないし4800メートルの長年凍土地帯に位置し、青海・チベット鉄道建設のいちばん重点的な制御工事である。その貫通は青海・チベット鉄道の建設が重大なブレークスルーをなしとげたことを示している。

 927日、「長江第一橋」といわれる長江源特大橋の主体工事が予定より307日繰り上げて竣工した。この標高4600メートルの沱沱河をまたぐ特大橋は全長1389.6メートル、現在までに、同橋の146本の穴明け杭が非破壊チェックを受けたが、合格率は100%に達した。

 伝えられるところによると、青海・チベット鉄道建設の諸作業が順調に進んでいる。914日までに、投資額は累計50余億元に達し、工事の品質検査合格率は100%で、工事の質の優良率は99%に達した。

レールを80キロ以上敷設

 青海・チベット鉄道は現段階では世界の標高最高の、高原および連続性永久凍土地帯を通る距離が最も長い鉄道である。寒冷、酸欠、低圧のほか、傾斜度と温差が大きく、風砂と雷電が多いなどのマイナスの要素もあり、そのため、敷設作業に多くの困難がもたらされている。

 一般的に言って、当面、国内で製造したレール敷設機、橋梁架設機、ディーゼル機関車の最大傾斜度の適応能力は1.2%であるが、平均標高4000メートルの青海・チベット高原ではその効率は40ないし50%低下する。その上、酸欠のために燃料の燃焼が不十分で、大量の廃ガス、有毒ガスを発生して、環境を汚染する。青海・チベット鉄道の設計上の最大傾斜度は2.0%であり、いずれも連続が長く、傾斜度が大きいため、この世界鉄道建設史上のめったに見ない技術上の難題を解決するには、現在の敷設・架設設備とディーゼル機関車の改良が非常に重要である。

 鉄道部第一工程局グループは技術者を組織して実地調査を行い、青海・チベット鉄道敷設と橋梁架設のカギとなる技術を研究し、一連の具体的な解決策と措置を打ち出した。実験が立証しているように、改良後のレール敷設機、橋梁架設機とディーゼル機関車は、2.2%の坂道で作業しても、動力性能が良好で、制動性能が信頼でき、設備の運転が正常で、環境への汚染が極めて少なく、青海・チベット鉄道の施工の必要を完全に満たすことができる。

 629日にレール敷設を始めてから現在までに、鉄道部第一工程局は一日あたり3000メートルのレールを敷設し、3.5空洞分の橋梁を架設するスピードで、鉄道をラサの方向に伸ばしている。同局は一日あたりレールを6575メートル敷設し、橋梁を6.5空洞分架設するという最高記録をつくった。このスピードは平原地区のスピードと同じで、しかも安全と品質を保証することができる。現在までにレールを80余キロ敷設したが、今年の年末に昆侖峠までレールを敷設し、全長は115キロに達する。冬は、気候などのためにレール敷設を停止する。

施工が始まった凍土区間

 計画中の青海・チベット鉄道の格爾木(ゲルム)=ラサ区間は550キロの長年凍土地帯を通らなければならない。長年凍土地帯での施工は世界的な技術上の難題である。中国科学院アカデミー会員で凍土学の権威である程国棟氏は「青海・チベット鉄道の成敗のカギは路盤にあり、路盤の成敗のカギは凍土にある」と語った。

 凍土は土壌が低温の状況の下で凍結した土地である。凍土の特性は鉄道の建設に対し非常に大きな影響がある。凍土は凍結した状況の下では氷のように、温度が下がるにつれて、体積が膨脹する。こうなれば、建設した路盤とレールが体積が膨脹した凍土に押し上げられる可能性がある。夏になると、解けた凍土は体積が縮小し、レールもそれに従って下がる。鉄道施工の中で凍土に凍結と溶解が代り代り現れるならば、路盤の裂け目から水や泥がしみ出し、レール全体に高くなったり低くなったりする現象が現れ、正常な開通に大きな影響を及ぼす。

 青海・チベット鉄道は現段階では世界の永久性凍土地帯を通る距離が最も長い高原鉄道である。程国棟氏は、凍土問題はカナダ、ロシアなどの国にもあるが、それは高緯度の凍土に属し、特性の面では高標高の凍土と多くの違いがあると語った。そのため、青海・チベット鉄道の建設は主に、中国の科学技術者が長年来青海・チベット高原の凍土に対する研究と認識に頼って進められていいる。

 中国の鉄道専門家は凍土地帯の鉄道建設技術をすでに40年間も研究してきた。昨年8月に入ってから、青海・チベット鉄道の建設部門は昆侖山、風火山トンネル、清水河、北麓河、沱沱河などで5つの凍土工事テスト区間を設け、大量のデータを入手し、青海・チベット鉄道の凍土施工のために重要な参考を提供した。

 青海・チベット鉄道全体の調査設計は鉄道部第一調査設計院が担当している。林蘭生院長は、いかなる凍土でも、われわれがその状況をはっきりつかめば、それを処理する方法を考え出せるととても自信ありげに語った。

 たとえば、青海・チベット鉄道建設の風火山トンネルは標高が世界最高(4905メートル)、凍土地帯最長の高原の永久凍土トンネルであり、全部永久凍土層以内に位置している。トンネル内の施工の熱量は周囲の凍結した岩石に大きな影響を与え、爆破後は溶解圏を形成し、溶解する岩石の全体性を小さくし、この区間の地下氷河は溶解後積水となり、トンネルの正常な施工に影響する。そのため、トンネルを掘進する時は温度を下げて、周囲の岩の安定性を維持する必要があり、コンクリートの凝結に役立てるため、コンクリートで保護層を築く時は温度を上げなければならない。これは永久凍土トンネル施工の最大の難題である。施工を担当する鉄道部第20工程局の技術難関突破グループは大量の実験的研究を行ってから、土を含む氷層地帯の施工という世界な技術上の難題を攻略した。

高原の生態の道

 青海・チベット鉄道の施工は青海・チベット高原の2つの自然保護区――三江源自然保護区、ホフシル自然保護区の300余キロを通らなければならない。そこは気候が寒く、酸素が少なく、生態環境が独特、原始的で、その上敏感、脆弱であり、破壊に遭うと回復するのが難しい。そのため、青海・チベット鉄道の環境保全は世界の注目を集めている。

 青海・チベット鉄道指揮部の盧春房指揮長は次のように述べた。鉄道沿線の生態環境を保護するため、青海・チベット鉄道が全線の環境保全工事に用いる投資が12億元に達する予定である。これは中国の鉄道建設史上初めてのことである。青海・チベット鉄道はまた初めて全線環境保全監理制度を実行し、総指揮部は第三者に全線の環境保全に対する全過程のモニタリングを委託した。

 土をとることで地表の植生を破壊するのをできるだけ減らすため、国土資源部はわざわざ土をとる区域を指定し、区域以外の地表の植生があるところでやたらに土をとることを厳禁し、すでにとったが一時使わない土も、勝手に積み上げてはならない。

 鉄道の建設者は意識的に高原生態環境を保護している。鉄道部第一工程局は列車で陝西、山西などから黄土を運んできて、臨時住所の周りに敷き、その上に樹木と草花を植えた。

 長江の源の工事現場では、鉄道部第三工程局はさまざまな措置をとって、同地の環境を汚染されないように保護している。鉄道部第三工程局責任者の沈勇氏は、「穴あけ杭の工事で生んだ泥水は、いずれも二回の沈澱処理を行っており、沈殿していない泥水を直接川に流し込むのを厳禁している」、「沈澱池の浄化した水は、路床の施工に使ったり歩道にまいたりしている。その他の廃棄物や廃滓も集中的に青海・チベット道路の廃棄された土を掘った穴の中に埋めている。現地の植生を愛護し、野生動物を驚かせないなどは、なおさら従業員たちが従う準則である」と語った。

 鉄道部第十二工程局の工事現場はホフシル自然保護区にある。この高原の浄土に来て施工する初の日から、効果的な措置を取って同地の木や草を保護している。清水河地区はもともとよい砂石資源があり、そのまま採掘するならば、多くの費用を省くことができるが、ここで石を採取すれば、代々この地で暮らしている動物を驚かすだけでなく、脆弱な植生を破壊するため、ここから560キロ離れた植生のない区域で採石場をつくることを決定した。一立方メートルあたりの石材運賃は約20元増えるが、その額は石材そのものの価値に相当する。工事は120万立方メートルの石材が必要であり、これだけでも2400万元の運賃を余計使うことになる。「運賃を多く使っても、この美しい土地を保護しなければならない」と鉄道部第十二工程局指揮部党委員会書記の師加明氏は語った。

 今年6月、ちょうどチベットカモシカが移動して子を産む季節である。これらのメスのチベットカモシカに順調に青海・チベット鉄道建設現場を通過し、ホフシルの卓乃(ゾナイ)湖へ行って子を産ませるため、ホフシル保護区で施工する青海・チベット鉄道の建設部門である鉄道部第十二工程局と第十四工程局は4日間施工を停止してチベットカモシカに道を譲った。農民の臨時就労者と工事機械は現場から撤退し、同時にチベットカモシカに警戒心を起こさせ、怖がらせる彩色の旗を抜いた。620日前後に、2万余匹のメスのチベットカモシカは青海・チベット鉄道のホフシル五道梁の施工地帯を通過し、卓乃湖、太陽湖一帯へ行って子を産んだ。1カ月余りの間に、2万余匹のチベットカモシカが相次いで生れた。84日から、1000匹にのぼるメスのチベットカモシカはここに集まり、青海・チベット鉄道の施工地帯を通過して、もとの棲息地に帰る。チベットカモシカの親子に施工現場の機械の音に驚かされずに安全に通過させるため、施工指揮部は、その日から、ここで施工する鉄道部第十二工程局と第十四工程局は夜間に工事を停止することを決定した。同時に青海・チベット道路のこの区間も夜間に3時間通過を禁止して、チベットカモシカの親子に道を譲る。その時間は10日間ほどかかる。

 労働者の劉金炉さんは「夜に工事現場に隠れて、かわいいチベットカモシカが喜んで通過するのを見ると、とても感動を覚える」と語った。

 国家発展計画委員会の曾培炎主任は「ここでは、野生の動物は主人であり、わたしたちは客であり、わたしたちは通らせてもらっている」と語った。ホフシル自然保護区を通る鉄道については、工事を設計する中で、できるだけよけて通る案をとった。それと同時に、沿線の野生動物の生活習慣、移動の法則などに基づいて、青海・チベット鉄道は格爾木からタングラ山にいたる一帯に25本の野生動物の通路を設け、工事および土をとる場所と時間を適当に調整し、チベットカモシカの正常な生活、移動、繁殖を保障している。このようなやり方は、中国の交通史上初めてのことである。

酸欠の難題を解決

 青海・チベット鉄道は標高4000メートル以上の地帯を960キロも通過する。鉄道の最高点は5072メートルである。鉄道部門の推計によると、標高4700ないし4900メートルまでのところの酸素含有量は海面の45%ないし47%に相当する。ここにきた人はだれでも一般に息苦しくなり、息が切れ、頭がくらくらし、痛くなり、手足に力がなく、夜に眠ることができない。高原反応の重いものは脳水腫と肺水腫にかかることがある。高原での鉄道建設は、人の生理極限に対する挑戦である。鉄道部は人を本とし、健康を保障することを打ち出した。

 現在、青海・チベット鉄道の建設者は24000余人おり、施工関係者はすでに標高4500メートル以上の昆侖山とタングラ山の無人地区と凍土地帯に入っている。しかし、どの工事現場ヘ行っても、施工関係者が余り見えない。途中、できあがった路盤が昆侖山の麓に入り込んでおり、何列も並んでいるボーリング機械と行ったり来たりする大型トラックが見られる。ここは以前の鉄道建設のように人海戦術をとるのではなく、「機械化、工場化、専業化」の工事を実行し、山の下で組み立てられるものは山の上で組み立てず、機械を使えるものは人手に頼らない。現在使われている近代的な機械設備は6000台近くあり、高原の施工関係者とその労働強度をできるだけ減らし、青海・チベット鉄道は施工を設計する時からすでに人を本とする理念を体現している。

 施工関係者の高原酸欠の問題を解決するため、青海・チベット鉄道に参加する各建設部門は各種の異なった手段をとっている。

 昆侖山トンネルの中では、施工関係者は重さ4キロの酸素ボンベを背負い、気を引き締め、秩序立って働いている。青海省から来た回族労働者の馬易思海さんは「トンネルの中は酸素がとても希薄だ。酸素ボンベがあれば酸欠の状態がなくなる。酸素ボンベを背負って作業すれば健康が保障される」と語った。

 施工関係者の健康を保障するため、鉄道部第五工程局第四公司は4時間交替作業制度を定め、毎日トンネル内の労働者に十分な酸素を提供し、トンネル内の空気の質を定期的に検査し、救急センターをトンネルの入口に設け、工事現場に高圧酸素室を作り、従業員の寮にも酸素ボンベを配備している。それと同時に、四半期ごとに従業員に対し健康検査を行い、体の調子が悪い者を発見したら、直ちに格爾木に送って治療を受けさせるようにしている。

 青海・チベット鉄道の沿線に三級医療機構保障システムを確立し、高圧酸素室などの先進的医療設備を配備している。現在、344名の医療関係者が鉄道建設の現場で回診し、負傷者と患者に効果的治療を行うようにしている。病状の重い患者は、直ちに入院して治療を受けさせるようにし、重症患者はできるだけ早くいちばん近い格爾木かラサに送るようにしている。こうして、工事現場の施工関係者の傷病は2時間以内に効果的治療を受けられる。現在、青海・チベット鉄道の工事現場に高原病で死亡した例が一件もない。

資料

青海・チベット鉄道第2期工事

 青海・チベット鉄道第2期工事である格爾木=ラサ区間の建設は、200128日に国が行った重大な戦略的政策決定である。この区間の鉄道の全長は1118キロで、そのうち清海省内は564キロ、チベット自治区内は554キロである。格爾木=ラサ区間の鉄道は大部分が海抜の高い地域にあり、国は合計2621000万元を投入し、工期は6年である。

 2001629日、青海・チベット鉄道の格爾木=ラサ区間は全線で本格的に着工した。1年間に投入した資金は24400万元で、完成した路盤や操車場、駅などの土石量は1478万立方メートル、架設した橋梁の総延長は19912メートル、トンネル貫通距離は2800メートル、暗渠の総延長は9060メートルであった。

 2002629日に、青海・チベット鉄道の格爾木=ラサ区間は格爾木の南山口駅から正式にレール敷設を始めた。これは着工1年後の青海・チベット鉄道の建設が重要な段階的成果をあげたことを示している。

 今年から、青海・チベット鉄道の建設は難関攻略段階に全面的に入った。青海・チベット鉄道建設総工期6年という要求に基づいて、全線の建設は格爾木=望昆(ウォンクン)区間、望昆=安多(アンド)区間、安多=ラサ区間の3区間に分けて進められる。施工は北から南へと逐次推進し、区間に分けて建設し、レールを敷設する。2002年に望昆=タングラ山区間の凍土工事の施工を繰り広げ、重点は望昆=楚瑪爾(チュマル)川区間、格爾木=望昆区間のレール敷設である。2003年にタングラ山以北の凍土工事を引き続き完成し、レールを秀水河まで敷設する。2004年の重点はタングラ山以南の工事であり、レールを通天河まで敷設する。2005年には路盤工事が全部竣工し、レールを安多まで敷設する。2006年年末には全線のレール敷設を終える。200771日までに全線のすべての付属工事を完成する。