和すれば栄える

APECの生命力はその「大家族の精神」にある

APEC高官  王嵎生

 アジア・太平洋経済協力機構(APEC)の発足以来、特にシアトルでの指導者非公式会合の開催以来、全般的に言って、APECの発展は健全かつ急速に発展し、世界の注目を集め、積極的な成果を少なからず上げたと言える。しかし、問題もいくつか存在している。これらの問題はAPECの基本的性質、発展の方向、各加盟国の根本的利益およびそれによって生まれた異なる考え方と処理方式にかかわっている。より広い範囲あるいは世界的範囲から言えば、これは実際には冷戦時期に、21世紀に向かって、どのような国際経済関係を奨励、樹立すべきかにもかかわっている。長年来のAPECでの私は実践、観察、体得によれば、これらの問題は主に次のいくつかの面に集中している。

 1APECが政府フォーラムとしての性質を変え、参与の範囲を経済以外まで拡大し、「大家族の精神」を少数の加盟国が構想する「共同体」に発展させる必要があるのかどうか。

 2APECは引き続き「方向を導く場所」としての役割を果たすのかそれとも交渉の場なのか。

 3APECの政策決定、決定および執行は自由意思を基礎とするのかそれとも契約あるいは強制性を基礎とすることに逐次転換するのか。必要な柔軟性を引き続き堅持するのかどうか。

 4APECの運営と重要な問題に対する決定は、引き続き話し合いを通じて合意に達するという原則を堅持するのかそれとも「弾力的な話し合いを通じての合意」および「実質上の多数」を実行するのか。 5APECビルの二大支柱である貿易投資自由化と経済技術協力がバランスを保ちながらつくりあげ、バランスが完全に崩れてビルが揺れ動き、ひいては転覆することがないようすることができるのかどうか。

 以上のことをまとめれば、APECの発展方向と性質、その運営の原則及び発展の重点と速度ということになる。

 APECは初めから「実質的な内容がある「政府(経済)フォーラム」であり、その目的と主旨はわりに明確なものである。それは空論のクラブでもなければ、閉鎖的あるいは排他的なグループでもない。それは大きな権威のあるもので、域内ないし世界の「方向を導く役割を果たしている」。しかし、それは交渉の場ではない。そのすべての重大な問題についての政策決定、規定はいずれも自由意思を踏まえ、交渉ではなくて、話し合いを通じて行われ、協定を結ぶのではなくて、共通の認識と承諾を求めるのである。1993年、指導者がシアトルで共同で受け入れたのは「共同体」ではなくて「大家族の精神」である。1996年のスビク会議と1997年のバンクーバー会議は「APEC方式」に基づいて、「大家族の精神を高揚する」ことに一致同意し、昨年の上海会合はなおさらこのような「大家族の精神」を盛り上げ、「上海精神」はほとんど「大家族の精神」の代名詞となった。しかし、長年来の実践が立証しているように、いわゆる「共同体の精神」はずっとAPECの上をさ迷っているのである。

 現在、APECに注意に値する趨勢がひそかにに発展している。つまり指導者がすでに一致同意し、毎回の宣言と声明に書き入れた基本的問題に対し、原則的には肯定し、具体的には否定するという態度と手口をとっていることである。実践が立証しているように、APECが旺盛な生命力を保てるのは、なによりもまずそれが共同体をやるのではなくて、政府経済フォーラムと「大家族の精神」を堅持しているからである。20世紀最後の10ないし20年の間に、東アジア地域が急速な発展と飛躍をとげたが、それは経済グループに頼ったのではなく、政治あるいは軍事安全グループに頼ったのではなおさらない。改革・開放と協力および有無相通じ、優位を互いに補完することに頼ったのである。   

 APECに大きな多様性(特にその経済発展レベルと発展段階が異なっている)が存在している。APECが必要としているのは共同体のようなグループではなくて、政府経済フォーラムとしての「大家族の精神」である。このような精神のみAPECの大きな多様性を相互補完性、相互必要性に転化させることができ、APECが平等なパートナーシップを構築し、区別して対処し、経済発展レベルの格差を逐次縮小し、共通の繁栄を求めるという戦略的目標を達成するように導くことができるのである。

 国に法律があり、家に規則があるという。APECは共同体の性質ではないが、アジア・太平洋地域の「大家族」として、やはり「大家族の精神」が必要である。このような「大家族の精神」は実践の中で逐次形成される「APEC方式」である。このような独特な協力方式は多様性を認め、自主と自由意思、話し合いを通じての一致を強調し、弾力性と漸進性を認め、集団で奮闘の目標を制定し、各加盟国が自国の実状に基づいて基準に達するように努めることである。それはAPECの大家族のむつまじさや健全な発展に対し決定的な役割を果たしている。実践が立証しているように、「APEC方式」を堅持し、「大家族の精神」にのっとって問題を解決しさえすれば、APECは栄え、貿易投資自由化の分野でもあれ経済技術協力の分野でも、事をわりにスムーズに運ぶことができる。逆に「APEC方式」から離れると、矛盾はすぐ激化し、問題も処理しにくなる。

 第10APEC指導者非公式会合は「911」事件後に開催された二回目のAPEC指導者非公式会合であり、アフガニスタンに対するアメリカの反テロ戦争がまだ完全に終わっておらず、イラクに対する武力行使が一触即発の状態にあり、新しいラウンドのWTO交渉の進展が緩慢で、国際経済情勢には不確実な要素がたくさんある。このようなマクロ環境の下でAPEC会議を開く場合、各加盟国はなおさら引き続き「大家族の精神」を発揚し、自主と自由意思、話し合いを通じての一致の原則を堅持し、APECにいちだんと世界の平和と発展を促し、公正かつ合理的な国際政治・経済新秩序を確立する上で役割を果たさせるべきである。