農村での「税金・費用の改革」

 ―――「農民の負担軽減を目的」とした農村での税金と費用の改革は一部試験的な範囲を越えて、全国的な改革の模索へと変化し始めるとともに、最終的には郷・鎮の機構改革が進むだろう。

唐元かい

 安徽省は中部に位置する典型的な農業地帯だ。省都・合肥から東に100キロの西埠鎮。「税金と費用の改革で、われわれの納税額はおよそ半分に減った」。地元の農業税務所に2002年度分の税金を納めに来た農民の顔に笑みが浮かぶ。

 税金・費用の改革で「費用徴収の乱用」は抑制され、農産物の収穫高に基づいて徴収する農業税と農業特産税の調整も行われた。

紆余曲折の過程

 中央政府は農村での税金・費用の改革を、20003月から安徽省全省で試験的に実施。2001年までに全国に広げ、2002年にはほぼ終了する計画だった。だが、各地でその準備が進められていた去年4月、国務院は改革の拡大を暫定的に遅らせることを決定したとの緊急通達を出した。一時期、これについて内外のメディアによる様々な憶測が紙面を賑わせた。

 紆余曲折について、国務院農村税費改革工作小グループ弁公室の楊遂周常務副主任は「これは調整の1歩だ」と話す。

 さらに楊常務副主任は、直接的な原因として(1)試験的改革を進める中で出てきた一部の問題が円満に解決されず、特に農村の義務教育の難しさ、また農村部政府の正常な運営に必要な経費が不足している判断した(2)国際・国内経済情勢の変化、米国や西側の経済低迷、また国は財力を集中して金融情勢の変化による国際的な影響に対処しなければならない―――の2点を挙げた。

 朱鎔基総理は去年7月、安徽省での改革を視察した際、「本来は加速させることを期待する」この改革が相当の困難に直面し、全国的に展開するには大きなリスクがある、と認めている。にもかかわらず、改革は停止されておらず、緻密な検討と対策を重ねて、現在ではより加速される勢いにある。

 推進加速を示す文書として、国務院弁公庁が今年4月に公布した『2002年に農村の税金・費用改革の試験的作業の拡大を円滑に進めることに関する通知』がある。通知は、国務院は「積極的かつ安定的に、能力に応じて実施し」、試験的改革を20の省(自治区、直轄市)まで拡大する、としている。これは事実上、農村での税金と費用の改革が一部試験的な範囲を越えて、全国的な改革の模索へと変化し始めたことを意味する。

 農民にとって夏の穀物の刈り入れに忙しい季節はまた、農村の幹部が税金や費用を徴収する重要な時期でもある。今年はまさにこの時に、試験的改革が全国の大部分の地区で展開されることになった。

困難かつ掘り下げた変革

 改革が紆余曲折する過程で、深層部にある問題が集中的に明らかになってきた。こうした問題を解決するには、改革自体のみならず財政制度や義務教育、農村の政治制度を含む全方位に掘り下げた変革を行うことが必要だ。

 本質的に言えば、農村での税金と費用の改革は農村経済の利益を大々的に調整するものであり、その目的は現行の農業や農村部の税金・費用制度の改革と改善を通じて、分配制度を適正化し、国や集団、農民の間の分配関係をスムーズにして、「耕作した者が利益を得る」ことを真に実現することにある。対象範囲が広く、影響も甚大であることから、1949年以来の土地革命、改革開放初期に実施された家庭請負制に継ぐ「農村の第3次革命」と呼ばれる。

 2000年に始まったこの改革の方向性は、農業税や農業特産税、付加価値税、「個別会議」で資金・労働力の調達を検討することを柱とする農村の税金・費用制度の枠組みを確立することにある。改革の内容は、賭殺税や郷・鎮による統一資金調達、教育専門資金など農民から徴収する行政事業性の費用の徴収と政府関連基金を取り消す;農業税政策と農業特産税の徴収方法を調整し、農業税の新税率の上限を7%に規定する;従来からの徴収・使用方法を改革し、農業税額の20%を上限に付加価値税を徴収して従来の財源に充てるというものだ。

 税金と費用は、数多くある郷・鎮政府にとって主要な財政収入源の一つ。改革で直面している最大の障害は、いかに地方政府の財政収入減を補うかである。

 全国人民大会の審議は今年67日、全国政治協商会議は724日に閉幕したが、往年と同様、代表や委員からは農民の農業税を取り消すか、または数年以内に徴収を免除することが提言された。これについて政策決定機関で論議が交わされたが、最終的にいずれも否定された。原因は明らかだ。現在一部の地区、特に主要な農業県では財政収入の7080%が農業税によるもので、一旦取り消せば、財政は立ち行かなくなる。

 しばらく前、楊常務副主任は「中央政府は2002年に試験的に行う省を確定した際に、中央の財政を農村に回すと同時に、省も一定の財政援助をして改革を支援し、不足分は関連する改革を通して自ら解決することを明確にした」と説明した。

 だが、朱鎔基総理は「農村での税金・費用改革の柱は、農民の負担を明らかに減少させ、また農村の正常な事業と発展に必要な経費、殊に義務教育の経費を保証することだ」と言明している。

 農村部にある小中高等学校の運営は地方政府が責任を負い、教師の給料など教育関連経費は郷・鎮政府の財政の70%以上を占める。改革の過程で、「改革」によって教師の給料支払いが滞っている地方もあり、政府もこれを重視。朱鎔基総理は安徽省視察の際、改革が義務教育に影響を与えている問題について、地方政府幹部や教師から事情を聞いた。

 中央政府は試験的改革を推進するため巨額のコストを支払っている。2000年に安徽省に供与した資金は11億元、去年は17億元まで増加。今年は165億元を計上しており、2001年に安徽省やその他の省に支給した分を加えると累計2451000万となる。この数字は試験地区の改革前の農業税収入総額を上回る。

 国務院税金・費用改革作業小グループ弁公室の黄維健副主任は「中央の支出は農村部政府の正常な運営を維持するためのもので、また義務教育への正常な拠出に対する適切な補助でもある。“前門を開き、後門は閉じる”だ。でなければ、農民は負担に反発するだろう」と説明する。

郷・鎮機構改革の推進

 実際、農村部政府の財政の逼迫は決して改革によるものではなく、改革が実施されたことで、多年にわたる“持病”がこぞって出てきたからだ。

 暫定試算では、2000年に開始された改革プランによれば、中央政府は200億〜300億元を困難な省・自治区・直轄市の農村部に補助金として支給しても、県・郷政府では400億〜500億元の財政支出不足が生じる。政策決定機関はこれを機に機構改革に大なたをふるうことを期待していた。

 農村政府の体制と機構改革は、税金・費用改革案で示された「関連改革」であり、この改革が提起した課題は、県・鎮政府の人員と支出の削減である。

 現在、郷・鎮の数は45000、政府職員は1280万人。すべての試験地区は関連改革を行うことで、300億元という資金不足を自ら解決しなければならない。

 雑誌『中国改革』の温鉄軍編集長は「以前、一部の試験地区で改革が成功しなかったのは、現行の体制下では、政府が農村を管理する制度のコストが高すぎるからだ。数万ある農村部の政府が“自己膨張”の問題を解決しさえすれば、政府と農民の経済関係はかなり円滑になる」と指摘する。

 財政体制改革と機構改革はもともと“システム的な問題”だ。各級政府の職能が定まっているため、現段階では、改革はすぐには進まないかもしれない。

 だが、安徽省など早期の試験地区では、郷・鎮機構のリストラ、財政体制の改革がすでに始まった。税金・費用改革とともに、政府や村民委員会では公務員全体の10%に相当する3万人余りを削減、また村民委員会は正式手続きを経ずに採用した職員11万人を解雇している。