イノベーション精神に富む大会

        本誌記者 李建国

 閉会したばかりの中国共産党第16回全国代表大会は中華人民共和国の歴史的盛会である。新しい世紀における偉大な体制転換期に、同大会は指導者の正常な交替を完成したばかりでなく、それにもましてさらに中国の未来のために新たな青写真を描き出した。

 118日から14日まで北京で開かれた中国共産党第16回全国代表大会は、新しい世紀における中国共産党の最初の全国代表大会である。同大会は新しい世紀における中国の指導者を選出し、今後一時期の中国の社会と経済の基本的な発展方向を確定したが、これはアジア太平洋地域ないし世界の政治、経済の枠組みに深遠な影響をもたらすであろう。

 江沢民中国共産党中央委員会総書記は大会の開幕式で「小康(いくらかゆとりのある)社会を全面的に建設し、中国の特色をもつ社会主義事業の新局面を切り開こう」と題する基調報告を行った。

 江沢民氏は報告の中で「情勢に迫られて、前進しなければ後退する」と形容した。中国は今世紀の最初の20年間に、10数億の人民に実益を得させるより高いレベルの小康(いくらかゆとりのある)社会を力を集中して建設しなければならない、つまり国内総生産(GDP)が現在の5倍に増え、いまのアメリカの実力のほぼ半分に達することである。

行動綱領となる「3つの代表」の思想

 多くの代表が述べたように、この会議はイノベーション精神にあふれるものであった。それはとくに「3つの代表」の思想が正式に党の規約に書き込まれたことに現れている。「3つの代表」の思想は毛沢東思想、ケ小平理論とともに、中国共産党の国を治める理論の基礎となり、中国共産党が新世紀に入る綱領である。

「三つの代表」とは、中国共産党が終始中国の先進的生産力の発展の要請を代表し、中国の先進的文化の前進の方向を代表し、中国の最も広範な人民の根本的利益を代表することを指す。それは完ぺきな思想体系であり、豊富な思想的内包を持っている。

 新しい指導層の構成は海外メディアが第16回全国代表大会に関心を持つホットスポットの一つである。これはなんら疑いもないことである。しかし、それよりも理論、綱領が無視されることができない。中国共産党の行為準則によれば、理論基礎、政治綱領が決定された後、幹部が重要な要素となる。幹部は政治綱領を執行する道具であり、幹部はいろいろな原因で変動する可能性はあるが、党の綱領はかなり長い期間が存在する。この会議は最後に「三つの代表」の思想を新しい党規約に書き込み、毛沢東思想、ケ小平理論とともに中国共産党の理論基礎となり、それによって新しい世紀における中国共産党の新しい理論綱領となった。

 江沢民氏は報告の中で、中国の特色をもつ社会主義事業の新しい局面を切り開くには、ケ小平理論の偉大な旗印を高く掲げ、「三つの代表」の重要な思想をあくまで貫徹しなければならないと強調し、次のように述べた。

 「三つの代表」の重要な思想を貫徹するカギは、あくまで時代とともに前進することであり、核心は党の先進性を堅持し、本質はあくまで人民のために政権を握ることである。「三つの代表」の重要な思想を貫徹するには、全党は終始時代とともに前進するという精神状態を保ち、絶えずマルクス主義理論発展の新しい境地を開拓しなければならない。

 ケ小平が1992年に広東など「南部を視察し」、一連の重要な談話を発表して、各地で空前の改革・開放旋風を巻き起こした。同様、江沢民氏の「三つの代表」の思想も最初は広東という南部の最も開放した省を視察した際に打ち出したものである。

 20022月末、江沢民氏は広東省高級幹部大会で初めて「三つの代表」の思想を打ち出した。続いて、上海、浙江、江蘇など経済発展が比較的進んでいる東部沿海の各省を視察した際に、またこの思想が中国共産党の「党建設の根本、政権担当の基礎、力の源泉」であると強調した。特に20017月に開かれた中国共産党創立80周年祝賀大会では、江沢民氏は「三つの代表」の深い内包とその弁証法的関係を系統的に述べ、「三つの代表」は完ぺきで、科学的で、重要な思想理論体系となった。2002531日、江沢民氏は中国共産党中央党学校で行った講話の中で再び「三つの代表」の思想を豊富にし発展させた。

 北京師範大学中国共産党史博士コース大学院生の呉宏亮さんは次のように見ている。80余年来、中国共産党の三世代の指導者は前後してマルクス主義中国化の三大理論成果を確立し、中国の社会主義現代化の発展に直接影響し、それを推進してきた。

 毛沢東思想はマルクス主義中国化の1番目の理論成果である。毛沢東を中核とする第1世代の中国共産主義者は、武装闘争の方式を通じて新中国を樹立し、中国は「東アジアの病人」というレッテルを捨て、巨人の姿で世界にそびえ立ち始めた。

 ケ小平理論はマルクス主義中国化の2番目の理論成果である。ケ小平を中核とする第2世代の中国共産主義者は、中国人民を導いて改革・開放を行い、ケ小平は「貧困は社会主義ではない」、「一部の地区、一部の人が先に豊かになるのを認め、それを励まし、逐次共に豊かになるように」と述べた。ケ小平理論によって中国は現代化の道を歩み始めた。

 江沢民氏が打ち出した「三つの代表」の重要な思想は、マルクス主義中国化の3番目の理論成果である。江沢民氏を中核とする第三世代の中国共産主義者は、中国が小康(いくらかゆとりのある)社会に全面的に入り、社会主義現代化の発展を速める新しい歴史的段階に「三つの代表」の重要な思想を打ち出したが、これは中国共産党の80余年にわたる奮闘の歴史的経験に対する総括でもあれば、新しい世紀における中国の現代化建設の行動指針でもある。

 マルクス主義中国化の三大理論の成果は同じ流れをくむものである。

 会議のテーマから見ると、「三つの代表」という「重要な思想」はすでに正式に中国共産党の未来の指導的思想となっている。しかし、それには江沢民個人の名前が付け加えられておらず、それとは反対に、江沢民氏は「三つの代表」が「全党の集団的知恵の結晶」であると説明した。

 「三つの代表」の思想が党規約に書き込まれたために中国の現代化建設の行動指針となったにもかかわらず、江沢民氏は報告の中で新しい世代の指導者の今後の絶えまないイノベーションのために余地を残し、「実践は止まるところがなく、イノベーションも止まるところがない。われわれは先人を突破しなければならず、後人も必然的にわれわれを突破する。これは社会が前進する必然的な法則である」と述べた。これは共産党が時代とともに前進しなければならない要求でもある。

中華民族の偉大な復興に新しい力を添える

 大会開催前に、海外の世論は普遍的に「個人企業の社長」が入党できるという話題についてさかんに報道した。その実、これはうわべから見るととても形象的なようで見えるが、あまりにも簡単化した言い方である。

 江沢民氏は報告の中で、「三つの代表」の重要な思想を貫徹するには、すべての積極的要素を最も広く最も十分に動員し、絶えず中華民族の偉大な復興に新しい力を添えなければならないと述べた。 その中の「新しい力」に含まれる範囲は「個人企業の社長」よりずっと広いものである。

 江沢民氏は、「社会変革の中で現れた民営科学技術企業の創業者および技術者、外資企業に招聘された管理者と技術者、個人経営業者、私営企業主、仲介組織の従業員、自由業者などの社会階層は、いずれも中国の特色をもつ社会主義事業の建設者である」と述べ、また「祖国の富強のために力を貢献する社会各階層の人たちと団結し、彼らの創業精神を励まさなければならず、彼らの合法的権益を保護しなければならず、彼らの中の優れた人たちを表彰しなければならず、……」と述べた。

 江沢民氏は昨年の中国共産党創立80周年祝賀大会における講話のように、相連なる2つの言葉の中で直接これらの先進分子を入党させると表明しなかったが、報告の中で「党建設の強化、改善」について論述するくだりに、「その他の社会階層の先進分子を党内に吸収する」ことを巧みに言い表している。

 江沢民氏は、「党の綱領と規約を認め、自覚をもって党の路線と綱領のために奮闘し、長期にわたる試練を経て、党員の条件にかなった社会階層のその他の先進分子を党内に吸収し、全社会に対する党の影響力と凝集力を増強しなければならない」と述べた。

 5年前の第15回全国代表大会の報告が含蓄であるのと違って、第16回全国代表大会の報告の中で、江沢民氏は「人民と社会に有益なすべての労働を尊重、保護しなければならない。肉体労働であろうと、頭脳労働であろうと、簡単な労働であろうと、複雑な労働であろうと……すべての合法的な労働による収入、合法的な非労働収入は、いずれも保護しなければならない」と明確に表明した。

 江沢民氏の報告は、共産党が以前「搾取」と言った「金が金を生む」非労働収入が合法でさえあれば、いまは保護しなければならないことを意味している。

 江沢民氏は、「人々が事業をやるのを励まし、人々が事業をやりとげるのを支持する社会的ムードを作り出し、手放しですべての労働、知識、技術、管理、資本の活力が競い合ってほとばしり、社会の富を創出するすべての泉が十分に湧き出るようにして、人民に幸せをもたらすようにしなければならない」と述べた。

 江沢民氏はまた、「個人財産を保護する法律制度を完全なものにしなければならい」と明確に提起した。アナリストは中国共産党が来年3月に全国人民代表大会が開かれる時期に、「私有財産保護」関係の条文を憲法に書き込むか、あるいは更に具体的な法律を制定して私有財産を保護する可能性がきわめて大きいと見ている。

 江沢民氏は、個人経営、私営などの非共有制経済に経済成長を促し、就職を拡大し、市場を活性化させるなどの面で重要な役割を十分に発揮させなければならないと述べた。

 中国共産党は理論の面でこのように提唱するだけでなく、実際行動の面ではすでにこのようにしている。最近開かれた広東省党代表会議で、私営企業、中外合弁企業、株式制企業の18人の代表が出席し、中国共産党の81年の歴史の先例をつくった。今回の党大会の代表の中に多くの省が推薦した民営企業と外資企業の代表が入っている。

 「飛躍」印ミシンで世界にその名を知られている浙江省飛躍グループ理事長の邱継宝さんは、第16回全国代表大会期間に、大会プレスセンターが慣例を破ってわざわざ邱さんを単独で内外メディアの集団インタビューに応じさせるという特別の光栄を浴した。邱継宝さんの記者会見は多くの記者を引きつけた。というのは、氏が数億の金をもつ大社長でもあれば、第16回全国代表大会の代表でもあるからだ。

 かつて皮靴職人だったが、そのあと出世したこの大社長は、「わたしは共産党を信仰しているから入党した。この党は積極的で、光栄な党である」。私営企業主の入党は、「共産党に活力と力を持ってくるだけである」。もし幾千幾万の私営企業主が中国共産党の綱領を認め、入党するならば、「党にとって利益になるだけある」と述べた。

 中国最大の外資企業のモトローラ(中国)電子有限公司で10年間働いた同公司党委員会書記の尹国豊さんは、「モトローラは共産党の改革・開放政策の不断の充実と発展に伴って発展してきたものである」。「アメリカの独資企業で党の活動を展開した時、これまで出会ったことのない新しい問題にぶつかった。『三つの代表』の重要な思想から離れ、改革の精神がなければ、仕事を推し進めることができない」。モトローラ社にいる300余人の中国共産党党員はみんなそれぞれの持ち場の中堅であり、一貫してアメリカ側管理者に尊重、信頼されていると語った。

 江沢民氏は報告の中で、「生産力を解放し発展させる要求に基づいて、共有制を主とし、多種所有制の経済が共に発展する基本的経済制度を堅持、改善する」。「なんら揺るぐことなく共有制経済を強固にし発展させなければならない」、「なんら揺るぐことなく非共有制経済の発展を励まし、支持し、導かなければならない」。「各種の所有制経済は完全に市場競争の中でそれぞれの強みを発揮し、互いに促進し合い、共に発展することができる」と協調している。

 邱継宝さんは江沢民氏の報告をしきりにほめた。江沢民氏の述べた2つの「なんら揺るぐことなく」という言葉に対し、「われわれの私営企業はいっそう自信をもった」と語った。   

 江蘇省の民営企業家の?聖達さんは2001年、フォーブスによって中国金持ちの第75位にランクされたが、?さんは第16回全国代表大会の後、中国の民営企業の発展環境がますますよくなると信じている。われわれはみんな農民出身で、商売が大きくなると、力を尽くして社会に報い、農民、農業、農村のためにいくらかでも事を多くするだろうと語った。

 「これは強いシングルであり、新しい社会階層として、私営企業主が社会栄誉と政治待遇を求める強い願望は国にいちだんと認められた」と中国社会科学院研究員の陸学芸さんは語った。

小康(いくらかゆとりのある)社会を全面的に建設

 シンガポールのある中国問題オブザーバーはこう見ている。第16回党大会が「小康(いくらかゆとりのある)社会を全面的に建設する」ことを大会のテーマの一つとし、しかも報告の見出しに書き込んだが、これはイノベーションの精神に富む壮挙である。なぜなら、「小康(いくらかゆとりのある)社会」はわりに裕福な生活を意味しており、裕福な生活を目標として党の代表大会の報告に書き込むことは以前になかったからである。

 江沢民氏は報告の中で、「われわれは今世紀の最初の20年に、力を集中して、十数億の人口に実恵をもたらす、より高いレベルの小康(いくらかゆとりのある)社会を全面的に建設し、経済をいっそう発展させ、民主をいっそう健全にし、科学と教育をいっそう進歩させ、文化をいっそう繁栄させ、社会をいっそう調和させ、人民の生活をいっそう豊かにするようにしなければならない」と宣言した。

 これは新世紀における中国の特色をもつ社会主義事業の新たな起点であり、現代化建設の新しい目標である。

 国務院研究室主任の魏礼群代表はこう見ている。以前と比べて、「小康(いくらかゆとりのある)社会を全面的に建設する」という表現は前に「全面的」という三字を増やしただけにもかかわらず、その内包はいっそう豊富になり、意義はいっそう深遠になった。小康(いくらかゆとりのある)社会を全面的に建設することは、人民大衆の生活水準と質を高めるだけでなく、それにもまして中国の特色をもつ社会主義の経済、政治、文化などの分野の全面的建設にいっそう目を向け、わが国の経済と社会を全面的に発展させるものである。

 江沢民氏の表現を借りれば、「第三段階の戦略的目標」と称される戦略は三つの段階的目標に分けることができる。つまり、今世紀の初めから、最初の10年間に第10次五カ年計画(2001~2005)と2010年の奮闘目標を達成する、最初の20年間に小康(いくらかゆとりのある)社会を全面的に建設する、50年後(今世紀中葉)には、中国を富強、民主、文明の社会主義国に築き上げることである。

 改革・開放の初期、「二倍増」、「小康(いくらかゆとりのある)社会の実現」はケ小平から中国の「雄々しい志」と称された。この改革・開放の設計者は中国の現代化を「三つの段階に分けて推し進める」という戦略を打ち出し、その奮闘目標は次の通りである。

 一、20世紀80年代末からの10年内に、一人当たりGNPを1980年を基数(250ドル前後)として倍増させ、衣食問題を解決する。

 二、20世紀90年代の初めから20世紀末までの10年内に、一人当たりGNPをもとの基礎の上でさらに倍増させ、一人当たり800-1000ドル前後、つまり「小康(いくらかゆとりのある)レベルに達し、貧困を基本的に取り除く。

 三、50年前後を経た21世紀の中葉に、一人当たりGNPはさらに倍増して4000ドル前後、つまり中等先進国のレベルに達し、現代化を基本的に実現する。

 ケ小平が計画した前の二段階の目標は、全体としても、平均値もすでにほぼ実現し、総体的に「小康(いくらかゆとりのある)レベルに達した。しかし、国家統計局の制定した「全国人民の小康(いくらかゆとりのある生活)レベルの基本的な基準」に照らしてみると、中国はいままだ低いレベルの「小康(いくらかゆとりのある)生活に置かれており、しかも国際で公認されたいくつかの重要な指標が含まれていないため、小康(いくらかゆとりのある)社会の基準と指標体系は今後なお調整、補充する必要がある。

 田承忠代表は次のように語った。現在すでに達成した全体としての「小康(いくらかゆとりのある)レベルは全国の基本面と平均値について言ったものである。現段階の中国経済の発展がまだ不均衡で、一部地区の人民がまだ「小康(いくらかゆとりのある)レベルに達していないことを見て取らなければならない。2000年には、中国には衣食問題を解決していない人がまだ一部おり、都市部ではかなりの人数の一時帰休者の生活も比較的苦しいものであった。小康(いくらかゆとりのある)社会を全面的に建設するのはほかでもなく、都市と農村の間、地域と地域の間、階層と階層の間の発展の不均衡を解決し、格差を縮小し、共に富裕になることを実現するためである。先に東部地域を発展させることから中西部地区、農村地区の発展を加速することに至るまで、国はバランスの取れた発展を実現する。

 胡安梅さんは湖北省山岳地帯から来た小学校の校長(28)で、自分の考えている小康(いくらかゆとりのある)社会の話になると、元気一杯になる。「その時になれば、わたしたちは今の都会の人々と同じような暮らしができ、女の子たちはつぎはぎのある服を着るのではなくて、きれいなスカートを着、年中食べたいものを食べることができ、農家も二階建て以上の家に住み、オートバイや乗用車、電話、テレビ、冷蔵庫、電気洗濯機などを持つようになるだろう。これらのものは都会の人にとってごく普通なものであるが、山岳地帯では珍しいものである」。彼女は自分の最大の願いは一日も早くすべての農村地区が小康(いくらかゆとりのある)生活ができることだと語った。

 代表たちは次のように語った。今後20年、中国の一人当たりGDPは3000ドル以上に達するが、この数字は先進国と比べて確かに高くはないが、中国の実状から見れば、大した事である。中国は社会主義国であり、共なる富裕になる道を歩んでいる。世界の4分の1の人口を占める中国人民が真に小康(いくらかゆとりのある)生活ができれば、世界にすばらしい貢献をすることができると言える。