グリーン都市の建設に力を入れる上海市

 上海の都市建設はここ数年すさまじい発展を遂げている。市区の地図が半年ごとに1回更新されるほどだ。一方で、公共緑地は増えつづけている。

 長期にわたり、上海は緑地カバー率と1人当たり公共緑地面積で全国大中都市の最下位にランクされていた。だが、ここ10年余りの間に、緑化事業は脅威的な発展をとげ、ここ3年間では、新規整備された緑地は過去最高を記録、816ヘクタールに達した。別の556ヘクタールの公共緑地整備も急ピッチで進められている。今年末までに1人当たりの公共緑地面積は7平方メートル、緑地カバー率は27%に達すると予想される。

 現在、市街地では、1人当たり公共緑地面積が過去の「新聞紙ほど」から「1室ほど」までに増え、緑化指標で大中都市のトップクラスだ。都市の持続可能な発展で大きな成果をあげたのを評価されて、9月初めに国連から表彰された。

 上海は世界の大都市と同様、人口が密集しているが、だからこそ、緑化面積を拡大する必要があった。

都市の庭園化進む

 今年メーデーにオープンした大寧霊石公園。面積は68平方メートル、投資総額は124000万元。東西と中心部の3大エリアからなる。東は水系が主体。面積7万平方メートルに及ぶ人口湖があり、湖上に架けられた三つの石橋が連なり長い回廊となっている。浙江省から運ばれた3000余トンの白い砂で建造した3000余平方メートルの砂浜は、子供たちにとって格好の遊び場だ。中心部に沼沢が広がる。原木を敷いた歩道が密生したアシの中をくねくねと曲がりくねっている。西には起伏する山々には樹林が広がり、亭や滝、噴水、池などが点在している。

 この公園は、ここ数年の間に上海に建設されている公共緑地の一つ。市街地に緑を増やして生態環境を改善するため、上海は市区の周辺に「緑の肺」としての役割を担う緑地整備を大々的に進めていた。非都市化地区の緑化計画総面積は約670平方メートル、全市の面積の10分の1を超える。長江口島にある面積は約50平方キロの横砂島には「横砂生態林島」を建設、2020年までに緑地カバー率は90%以上に達する。

 全長98キロの市外地を走る環状線の建設と市区周辺の緑化事業が今、同時に進められている。年末までに市区周辺の両側に幅100メートルのグリーンベルト建設は終わる予定で、一部はすでに完成。今後数年にグリーンベルトの幅は500メートルに拡大される計画だ。

 年初に作成された「上海緑化システム計画」によると、2005年までに環状、楔形、回廊、公園、樹林を特徴とした緑化がほぼ形成され、市区の中心部では500メートル以内に公共緑地が造成されなければならないことになっている。郊外には森林をモチーフに4ヵ所にテーマ・パークと数ヵ所に大型の生態林を建設する計画。全市の森林カバー率を20%以上、2020年までには30%以上まで高め、緑化率35%以上を達成するのが目標だ。

 緑地整備のほか、上海は既存の緑化資源の利用にも力を入れている。緑化が整備された公共機関や公共の場所はレンガの塀が設けられているので外からは見えないため、関係機関はこの数年来、塀を取り除き、柵を設けて市民に見えるようにするよう求めてきた。また、市内にある公園は半数が無料開放されている。来年までにはすべての公園が無料開放になるという。

緑化による様々な効果

 韓玲さん一家は人口が密集する海寧路に住んでいる。今年の夏、四川北路にある大規模な緑地が整備された後、韓さんの母親は毎朝5分ほど歩いてここで健康づくりに励んでいる。以前は、古希を迎えた母親は公共バスで2駅乗るか、20分間歩いて黄浦公園まで出かけていた。

 新しく完成した緑地では、定年退職した人たちが世間話に花を咲かせたり、将棋をさしたり、子供達がウォーキングしたり、観光客が写真を撮ったり、恋人たちがのんびりと歩いている姿をよく目にする。

 ここ3年ほどの間、上海には外国から多数の植物が輸入されている。各公園は290余種、135万本を導入し、現存の品種の3分の1を超える。

 美しい花々や様々な木が植えられたことで、緑地や公園の景観は様変わり、生態環境のバランスにプラスとなる植物が人々の生活を豊かにしてくれた。四季折々の花々、1年中緑を保つオオクスノキ、樹冠が茂るトチノキ、形の美しいオウレンなどが植えられ、以前のプラタナスだけの街は一変。成長の速いモガシ、活着率の高いフヨウは空気の浄化にも役立つ。毛のないムラサキツユクサ、イソノキ、根系の密集するツルニチニチソウなどは舞い上がるほこりや塵を防止する。またシランや葉の幅が広いニラなどを輸入する予定だ。

 上海市の中心部の黄浦や盧湾、静安の3区では、1平方メートル当たりの人口密度は5万人で、この地区に住宅を取り壊して緑地を整備するコストは1平方メートル当たり12000元。「巨額の資金を出して緑地をつくる価値はあるのか」。その答えは緑化の総合的な効果が与えてくれた。

 上海市気象科学研究所の観測では、市中心部の延安中路に大型緑地が整備された後、黄浦や盧湾、静安の3区が交わる4.5平方キロの範囲では、789月の3カ月間、中間と夜間の平均気温は程度の差こそあれ下がり、ヒートアイランド現象が急速に緩和された。区域内では塵の降下量も大幅に減り、環境の質で2級の国家基準に達した。生態環境の改善で「緑化経済チェン」の理論が実証された。まず利益を受けたのは、緑地周辺の不動産業者だ。過去閑古鳥が鳴いていたビルは一夜のうちに引っ張り凧となり、古城公園に面したビルは14000万元で高額落札された。植物が豊かで、景観が美しい緑地は人々の憩いの場だ。観光業や商業の発展も促した。「上海緑地1日巡り」コースを今、計画中。大型緑地の建設は年間、作業員など2万人の雇用を創出しているほか、苗木栽培や植物保護など関連産業の発展も牽引し、その役割は計り知れない。

緑化意識の向上

 友達の誕生日に何を贈るか。今年春、上海大学文学院の何人かの女学生が議論したところ、クスノキを1本植えるという結論が出た。上海市はこの数年、春にボランティア植樹が行なわれているが、この結論はそれに啓発されたものだ。自分でお金を出して苗木を買い、自ら植えて自ら育てる。苗木は1本僅か30元。こんな誕生日の贈り物は格別意義がある。

 上海人の緑化意識は今、急速に高まりつつある。

 上海市園林緑化監視チームの江黎洪さんは、コールセンターで仕事を始めて7年になる。以前は緑地の破損や植物の盗みなどの訴えが多かったが、ここ数年来、こうした問題は著しく減ってきたという。こうした苦情は前年同期より14ポイント減少。市民が今一番関心を持つのは緑化の質だ。コミュニティーの緑地を増やしてほしい、管理を強めてほしい、樹木を定期的に剪定してほしいといった希望や家庭での植物栽培に関する問い合わせが増えてきた。「これは上海市民の資質と緑化意識の向上を反映したものです」と江さんは話す。

 ここ数年来、春になると、市民向けの緑化相談が何回も行なわれている。今年は市の緑化作業員や定年退職者、文学者や芸術家ら1万人近く20余りの緑地公園で緑化保護について市民の質問に応じた。