開放を速める中国の観光業

           羅中雲

 今年の「国慶節」連休期間に、四川省農民の程鉄生さん(58歳)は北京に遊びにきた。賑やかな天安門広場に立って、程さんは「若い頃、私は栽培の達人として祝日に北京を訪れたことがあるが、その時は車代や宿泊代は全部国がもってくれた。今では、自費で天安門広場を訪れる観光客がこんなにも大勢いる。これは思いもよらなかったことだ」と感慨深げに語った。

 程さんがそれより思いもよらなかったのは、長江上流の辺ぴなところにある彼の村が内外観光客の憧れる観光地となったことである。村ではリュックサック姿の外国人観光客がよく見かけ、彼らは農民の家に泊まったり、地元の農民に中国語を教えてもらったりする。中国は豊富な観光資源に頼って、世界各地の観光客を引き付けている。

 中国の観光業は1980年代の初めからずっと急速に成長する勢いを保ち、今では中国経済の新たな成長要素となり、ますます多くの外国企業の関心を集めている。中国のWTO加盟後、観光業は外資に対する制限をさらに緩め、国際化のテンポを速めている。

 国家観光局企画発展・財務司の魏小安司長は、中国がWTOに加盟した時に行った約束に従って、2003年から外国旅行社に株式を保有させ、2005年末以前に外商が独資で旅行社を設立するのを認めることになっているが、国家観光局は旅行社業の対外開放を積極的に速めるため、今年は一部の国際化の大手旅行社が持ち株ないし独資旅行社の設立を試行するのを認めることにした。

市場の大きな潜在力

 20年の飛躍的発展を経て、中国の観光業では、入国観光を主導とし、国内観光を基礎とし、出国観光を補充とする発展の枠組みが一応形成されている。

 国家観光局のデータによると、2001年の中国の観光業の観光による外貨収入は前年比9.7%増の178億ドルに達し、全世界市場のシェアを3.8%占め、初めてドイツとイギリスを抜き、アメリカ、スペイン、フランス、イタリアに次いで世界第5位に上がった。年間に観光客を延べ3320万人受け入れ、昨年より6.2%伸び、相変わらず世界第5位にランクされた。国内観光による収入は前年比10.9%増の35224000万元に達し、観光サービスによる総収入は前年比10.5%増の4995億元に達し、伸び率は国民経済より3.2ポイント高いものである。

 国家観光局責任者の予測によると、2020年までに、中国はアジアの観光大国から世界の観光強国への歴史的飛躍を実現し、入国観光客数は延べ13500万人ないし1億4500万人、観光による外貨収入は520億ないし750億ドルに達し、国内観光による収入は19000億ないし27000億元に達し、観光総収入は国内総生産の8%に相当する33000億元に達して、中国観光業は世界の観光強国に仲間入りするという。

 世界観光機関の責任者は寧夏回族自治区銀川市で開催された世界観光デー中国メイン会場での祝賀イベントで、これまでの10年間に中国の観光業が人々の予測以上に大きく、持続的な発展をとげ、2002年に中国が受け入れた国際観光客総人数は他のアジア国より多く、世界観光機関の予測によると、2020年には中国はフランス、スペイン、アメリカなどの観光大国を超えて世界で最も多く国際観光客を引き付ける観光目的国となるだろうと語った。

開放がスピードアップ

 中国がわりに早く対外開放した業種の一つとしての観光業に投資する外資の重要な地位は誰の目にも明らかである。おおまかな統計によると、20年来、観光業の外資直接投資利用総額は200億ドルに達し、同期の国内観光投資額より50%も多いものである。そのうち、観光客向けのホテルは150億ドル、観光リゾートは20億ドル、観光区の建設は10億ドル、観光休暇用の別荘とマンションは20億ドルである。長年来、中国の観光業優遇政策と審査・認可に対する便利な政策が少なく、これはある程度観光業の外資導入の伸びを阻んだ。近年、中国政府は観光業を支柱産業として盛り立て、1998年に開かれた中央経済工作会議では、観光業は不動産業、IT産業とともに国民経済の新たな成長要素に確定された。

 現在、中国に国家クラス観光リゾートが12カ所、省クラス観光リゾートが100カ所近くあり、納税、貨物輸出入の面で優遇政策が実行されている。国家観光局は優先的に発展させる観光プロジェクト43件を公表し、「中国観光業開発建設プロジェクトバンク」に観光資金導入プロジェクト433件を収録し、投資総額が800億元を超えている。

 それと同時に、中国の20余の省クラス政府は経済発展の重点として観光業を支持し、優先的に発展させる産業とし、相応の奨励政策を制定している。とくに、観光資源が豊富で、経済的水準が高くない西部の10省・直轄市はなおのことそれを支柱産業として育て上げ、発展させている。

 北京の2008年オリンピック主催権の取得も北京ないし全国の観光業に深遠な影響を及ぼすだろう。北京市観光局の于長江局長の予測によると、2008年の北京の観光業による収入は47億ドルになると見込まれている。北京はオリンピック開催というビジネスチャンスをつかみ、「北京オリンピック観光行動計画」に基づいて各項目の計画を作成し、開放拡大を通じて外資導入に力を入れ、外資の旅行社市場進出、外国独資旅行社の設立を認める。

 国家観光局政策法規司の張堅鐘司長によると、国家観光局はWTO加盟時に行った約束を守る基礎の上で、次のような具体的な措置をとって、対外開放にさらに力を入れている。

 一、外資が持ち株か独資の形で観光サービス業に進出し、実力と信用があり、先進的な管理経験をもつ世界の著名な旅行社を観光市場に進出させ、外資の旅行社市場進出に対する区域的制限をちくじ取り消す。

 一、外資観光プロジェクトの審査・認可の手続きと原則を積極的に協調、規範化させ、外資観光プロジェクトの法律、法規を整備し、公開、審査・認可の手続きと基準を規範化、簡素化させて、公正、公平となるようにはかる。

 一、観光投資先導メカニズムを整備し、各地とくに中西部地区の外資観光プロジェクトを科学的に指導、協調し、外資が強みを持つ産業目録に組み入れる。

 一、国際観光業の発展の趨勢と要請に基づいて観光業の体制改革を深化させ、観光経営と業種管理体制を完全なものにし、観光サービスの質を向上させ、観光業の新たな成長要素を育て上げ、新しい投資分野とプロジェクトをすかさず導入し、観光業の対外開放を拡大する

ホットスポットとなる旅行社

 政策などの要素に制限されているため、数年前まで旅行社への外資投入がほとんどなかった。ここ数年来、とくに中国のWTO加盟後、旅行社業種に対する制限がちくじ緩められ、一部の国際観光企業が中国市場に進出し始めるようになった。

 昨年12月6日、中国康輝旅行社はアメリカ三番目の大手観光業者のローゼンブルス社と「羅森・康輝国際ビジネス観光サービス有限公司」という合資公司を設立する契約を結んだ。合資公司の主な業務は企業の戦略的パートナーとして、企業の出張費に対する系統的な管理と集団買付を通じて、資源を合理的に利用し、ユーザーに24時間の全方位サービスを提供し、こうして企業が効果的にコストをおさえ、出張費を節約することに役立たせ、企業の管理職に全面的、系統的なデータと分析レポートを提供する。

 昨年に設立された中外合弁旅行社にはこのほか、首都旅行社株式公司が株式の半数以上を保有する北京神舟国際旅行社グループ有限公司がフランスのアコーグループと共同投資して設立した「北京首旅雅高旅行社有限公司」があり、株式は中国側が51%、フランス側が49%を占めている。同公司の常洪安総経理は、われわれは全国に支店を設置し、具体的なやり方はブランド特許加盟である。そのほか、同旅行社は北京市の公共交通などの部門と協力し、市場の現有業務と異なる新製品を売り出す予定である。

 今年1月28日世界企業ベスト500に仲間入りしているアメリカンエクスプレス社は中国国際旅行社総社と合弁で「国旅運通旅行社有限公司」を設立した。中国がWTO加盟後に最初に設立した合弁観光企業として、国旅運通旅行社有限公司は多国籍企業、地域的企業および国内企業にビジネス観光管理サービスを提供し、ビザ申請手続き、国際・国内航空券とホテルの予約、会議サービスおよびその他の地上サービスを提供する。それまでは、同業務は国内旅行社ではまだブランクの状態であった。予測によると、中国のWTO加盟後、ビジネス観光は急速に発展し、現段階は毎年のビジネス観光支出はアジアビジネス観光市場の17%を占める40余億ドルに達している。

 上海市観光管理委員会によると、現在、アメリカ、日本、ヨーロッパなどで第10位以内にランクされる旅行社が中国に進出し始め、中国がWTOに加盟した時におこなった約束より3年余りも早く上海で合弁、独資の旅行社を設立した。。