巨大な市場潜在力をもつMMS

 ――携帯電話マルチメディア情報サービス(MMS)が中国で始まった。産業間の変革をもたらし、市場の将来は明るい。

唐元かい

 中国移動通信グループ(チャイナモバイル)は101日、MMSを開始。カメラ付きMMS機能を備えたカラー液晶携帯電話が市場に参入した。

 20004月に設立されたチャイナモバイルは現在、国内最大の移動通信会社だ。MMS業務の開始は産業間の変革をもたらし、市場競争はますます熾烈となる。

 8月、熾烈な競争を経て、チャイナモバイルのMMS4大サービスセンターのプラットフォームと設備はエリクソンと華為が落札した。

 今回の入札総額は1000万ドル。購入された4台の設備は北京と上海、武漢、広州の4都市に配備され、全国で初めて開始するMMS通信の拠点となる。この中で優位に立てられるかが極めて重要だ。エリクソンは「金額的には大きくないが、戦略的意義は大きい」と話す。

 MMSの特性は、カラー絵図や写真、動画、音声、文字を送信することができ、情報はMMSをサポートする情報端末の間で伝送されるほか、インターネットを通じてマルチ情報をどのメールアドレスにも送信、またショートメッセ―ジの形でMMSをサポートしない一般携帯にも送信できることにある。

 現在、携帯電話所有台数は約2億台。マルチ情報サービスの登場前、携帯ショートメッセージ・サービス(SMS)はメディアから「フィンガー・カルチャー」現象と呼ばれ、多くの人に受け入れられてきた。統計によると、少なくとも30%以上の利用者がショートメッセージは欠かせない通信手段と考えており、この比率は増加しつつある。昨年のメッセージ送信量は190億本、今年は倍増すると見られる。今年上半期までにすでに282億本、6月だけでも単月では過去最高の853000万本に達した。調査によると、頻繁に使用する1525歳の若者では1日平均5.2本。待ち合わせ時間や場所の指定、祭日の祝賀メッセージ、友人とのジョークなど利用目的は様々だ。電報や電話、手紙など伝統的な通信手段に比べ、快速性や至便性、経済性、娯楽性、含蓄性などが人気を集めた。

 SMSが始まって以来、チャイナモバイルの業務量は急増。経済利益はむろん、より重要なのは、この成功でMMSの運営モデル構築に弾みがつき、自信を深めたことだ。チャイナモバイルは51日から、チャイナユニコムのユーザーとの間でもショートメッセージを交換できるサービスを開始、障害が1つ取り除かれた。MMS面での日本や韓国の成功も、国内企業を鼓舞することになった。516日、チャイナモバイルは香港のCSL社との間でMMSを利用した祝賀カードの相互送信に成功し、技術上の可能性が実証された。その後、チャイナモバイルは「2002年に音声とカラーで世界を結ぶ」をキャッチフレーズにMMSを開始した。

「この市場は有望だ」。ほとんどすべての携帯端末メーカーやコンテンツ(情報の内容)配信会社は話す。

「これは移動通信網のブランドを新たに塗りかえるチャンスだ」。騰訊公司の曾李青副社長はMMS市場でシェアを狙うと強調する。

 新浪や網易などインターネット情報サービスを提供する企業も、チャイナモバイルにすぐに追いつくと自信を示す。新浪は今後、実験的価値を備えた製品を打ち出す方針だ。一方、騰訊は最も利用度の高いソフトの1つである「騰訊QQ」や動画などで優位に立っている。捜狐公司の張朝陽会長は「技術面ではしっかりと準備ができている。あとは市場が熟すのを待つのみだ。その時には時宜を逃さず関連製品を参入させる」と話す。

 同時に、携帯電話メーカーの市場への自信もその製品から窺える。大多数の携帯は一般の文字によるショートメッセージしかサポートできず、MMSには対応していない。メーカーは「MMS業務の開始で買い換えブームが必ず起きるだろう。30年前にモノクロテレビがカラーに代わったのと同様、MMSに対応する携帯に代わるのは必至だ」と指摘する。ノキアやLG、ソニー、エリクソンなども近々、MMS機能を備えた携帯電話を発売する計画だ。

 ノキア中国本部の趙科林副総裁は「年末までに製品の半数はMMS機能を備え、2003年にはすべての新製品はMMSに対応したものになる。力を傾ければ、発展に向け新たなチャンスが生まれる」と強調する。中国市場で技術をリードするだけでなく、業界全体を率いて移動通信の次の成長段階へと進む、これがノキアの方針だ。

LGは最近、中国で初めてマルチ情報サービスを提供する「LG CU8080カラーディスプレイ」などの第3世代携帯電話を発売した。ヨン・アクロ副会長は「発売はわれわれの中国市場に対する大きな自信を示すものだ」と語った。

 LGの自信は3つの点による。第1は、中国がMMSCDMAの普及を加速させていることだ。第2は、中国企業との協力で現地化の経営モデルが実現したこと。現在、数多くの携帯電話販売会社と直接または間接的な協力関係を結んでおり、なかでも山東浪潮グループと合弁設立した浪潮LGデジタル移動通信技術研究開発有限公司によって、CDMA対応携帯電話の生産と供給、販売の各段階で現地化が実現されたことで、コストは削減された。第3は、LGのもつ先端技術と中国国内でのブランド効果だ。

 業界関係者は、MMSとういう商業モデルは各分野に価値をもたらす点でメリットがあると評価する。通信事業者について言えば、音声以外の新たな情報伝送業務を開拓することで、営業収入やユーザーの信頼度を高めることができる。コンテンツ会社にとっては、MMSを踏み台に高付加価値のある大規模市場で業務を展開することができる。一方、広告会社もMMSに強い関心を示している。消費者との間に音声・色彩を媒体にした架け橋が構築されれば、取り引き情報と物流・配送を一体化することができる。メディアにとっても、現代的なメディアの消費に関する全基準を満たせることから、MMSの提供は巨大なビジネスチャンスであり、高速、目的の直接的達成、個性化、音声と視覚を兼ね備えたメディアが可能となる。開発メーカーは各段階で最大の潜在的受益者だ。MMSによって、興味ある情報をダウンロードし保存するサービスやツールソフトに対するニーズが大量に掘り起こされるからだ。

 もちろん、各段階で、最大の利益を受けるのは間違いなく末端のユーザーだ。チャイナモバイルの魯向挙副社長はマルチ・ショートメッセージ業務を101日に開始して同月23日までに、北京だけでも利用は4000台を超え、将来の見通しは非常に明るい」と強調した。

 チャイナモバイルは10月下旬、全国各地の携帯電話大手メーカー、コンテンツ・サービス開発会社、システム設計会社などを集め、MMSの機能や将来の定価、販売ルートの共有、販売促進策の策定などについて意見を交わし、各社が協力を強化して、完備された「通信事業者―設備メーカー―応用開発メーカー―携帯端末メーカー―コンテンツ提供会社―ユーザー」という“産業価値チェーン”の構築に努力することで合意した。どの段階で問題が生じても、それは市場全体の運営に影響を与えることになるからだ。

 新浪の蒋顕斌副総裁は「今の段階で、携帯電話間の互換性という問題を進展させるのは不可能だろう。それは実際には、コンテンツ会社の製作コストを引き上げるからだ」と指摘する。

 一方、騰訊と捜狐といったコンテンツ会社は「問題はあるが、発展の過程で徐々に解決される。市場全体を制約する重大な問題になることはない」との考えを強調している。