北京の観光知識(五)

北京そぞろ歩き

 もしも時間がたっぷりあって、また北京を深く理解し、そのもっとも古い風情を体験しようと思うなら、なんと言っても自分の足で歩きまわるのがいちばんだ。ここでは、古都の名に恥じぬ魅力を十分に具え、そぞろ歩きにはうってつけのコースをいくつか紹介しよう。これらの界隈では、都心に残る自然と静けさを楽しめることもできれば、北京っ子のゆったりした風情を味わえるとともに、その活気あふれる生活をかいま見ることもできる。

什刹海コース

 北京内城部に位置する、悠久の歴史と文化を物語る観光地の一つである什刹海は、前海、後海、西海の三つの湖からなっている。夏は柳の枝が垂れ、蓮の花が咲き乱れ、鏡のように静かな湖面が、冬は天然のスケート場となる。両岸にはよく保存されている皇族の庭園があり、縦横に交錯する路地と民家が遠景の鐘楼、鼓楼とよくマッチしている。一般的なコースは、鼓楼から銀錠橋を通って什刹海に入るという歩き方。まず橋の上から、旧時の「燕京(北京)八景」の一つ「銀錠観山」(銀錠橋から山を眺める)にトライしたあとは、後海の南岸を歩いて恭王府の庭と郭沫若故居を見学し、北京の「小吃」(軽食)や手工芸品を売る「什刹海古玩市場」をひとまわりするのがお勧めコース。さらに時間の余裕があれば、後海の北岸にある宋慶齢故居(もと醇親王府)を見学し、さらに足を伸ばして鼓楼や鐘楼に登ってみるのもいい。

成賢街コース

 東城区の安定門内に位置する東西に走る路地で、北京城内に現存する数少ない古い街路の一つである。そびえ立つ牌楼(鳥居形の門)、エンジュの古木が生い茂る小路、木々の緑に覆われて隠れ建つ古い家屋、それらの一つ一つから古い北京の姿がしのばれる。この界隈には牌楼が四基もあり、通りの東側と西側には扁額に「成賢街」と書かれたものが各一基ずつ、国子監の両側には扁額に「国子監」と書かれたものが各一基ずつ、国子監の両側の道の北側には満州文字と漢字で書かれた下馬牌が一枚ずつある。

 成賢街の散策のついでに国子監や孔子廟、雍和宮も見学することができる。

 国子監は元代に創建され、元、明、清三代の最高学府だったが、現在は首都図書館となっている。敷地の庭にはコノテガシワが高く生い茂り、しっとりと静かなたたずまいである。清代には、皇帝はみな即位するとここに来て学問の講義をすることになっていた。ここはまた、皇帝が外国人留学生を接見したところでもあり、国内外の人材が集まったところである。

 国子監と隣接したところには孔子廟がある。孔子は中国古代の著名な思想家、教育家で、聖人と奉られてきた。孔子廟は敷地が広く、赤い壁に黄色い瑠璃瓦が美しく映えている。先師門の中の両側には、元、明、清三代の科挙合格者の名前が刻まれた高い石碑が立ち並んでおり、現在は首都博物館となっている。

 成賢街を東側に出ると、道の向かい側には、漢族、満族、モンゴル族、チベット族などの各民族の建築様式が渾然一体となった、ユニークなスタイルをもつ北京最大の仏教寺院――雍和宮がある。

文津街コース

 北京市内の中心部に位置する文津街は、東は美術館から西は西安門にいたるまでの通りで、外国人から北京でいちばん美しい通りと称賛されている。この通りは古都北京の粋を集め、静かで典雅な古都の様相を保っている。美術館から西へ行くと、革命的伝統を持つ北京大学の「紅楼」があり、中国近代史上の著名な事件の数々を思い出させる。さらに進むと、静けさのただよう道、古いお濠、青空に映える故宮の角楼、幻影を見ているような心地にさせられる北海公園の白塔が目に入り、鏡のような湖面には、夏はボート、冬はスケートを楽しむ人々の姿が見える。また、赤い壁に黄色い瑠璃瓦、小ぢんまりと緑に覆われた団城、渋い趣の国家図書館の分館などが、訪れる人々の目を楽しませてくれる。