目鼻ついた民航の再編

穆 梓

 最新の消息によると、数年間下準備をした中国民間航空(以下、民航と略称)の再編は今年全面的に行なわれ、中国民航総局傘下の公司は3大グループに再編されるが、その時には資本金500億元前後の民航という「空母」が水面に浮かび上がる見込みがある。

 再編は成功を収められるかどうか、民航の巨額の赤字を解消できるかどうか、民航業を良性循環させることができるかどうか。これらの問題に答えるにはまだしばらく待たなければならない。

再編案を確定

 再編後の3大グループは、中国国際航空公司が中国航空公司、西南航空公司と連合して編成した航空公司グループ(本文では「中航」と略称)、東方航空公司が雲南航空公司と連合し、西北航空公司を合併して編成した航空公司グループ(本文では「東航」と略称)、南方航空公司が北方航空公司、新疆航空公司と連合して編成した航空公司グループ(本文では「南航」と略称)である。

 中国民航総局の劉剣鋒局長は最近、「この3大グループはすでに具体的な再編案を作成した。目下、国家発展計画委員会を中心として、再編案について各方面の意見を求めている。国家の認可を得れば、再編は実行段階に入る」と語った。

 中航は本部を北京に設け、中国国際航空公司の鳳凰のマークを統一的に使用する。中航は118機の航空機、2300人の従業員、5605000万元の資産を擁している。東航は473億元の資産、118機の航空機、25000人の従業員を擁している。進展がスムーズに行けば、東航は年内に連合を完成し、2003年前に、国内外の投資家を導入して株権の変革に参与させ、再編を完成する。南航は501億元の資産、180機の航空機、34000余人の従業員を擁している。

 人々が最も関心をもっているのは、新しいグループがゆるい連盟であるかどうかということである。連合再編弁公室の魏振中主任はこれについてこう語った。今回の民航の再編は、民航改革という大業にかかわり、再編が実現されれば、行政と企業が分離する。これは民航の人たちが早くからもっている共通の認識である。だから、実質的な連合がなければ、再編は何の意味もないと言える。

 中航は主要業務と副業を切り離す制度を実行する。3公司の航空資源は中国国際航空公司が統一的に整合、運営する。航空輸送業務以外の業務とその関連資産の整合と体制改革は、中航傘下の各専門公司が行う。

 中航の発足後、3公司の従業員、資産、債務、業務、機構は実質的に再編される。魏氏の話では、協議と準備の過程で、3公司の協力は非常にしっくりし、資産問題で何の気まずい問題も発生しなかった。というのは、3公司とも連合の利点をよく知っているからである。それは@「規模の大小を問わず、何でも揃っている」という各航空公司の弊害の克服に役立ち、コストを下げ、運営効率を高めることができる。Aスケール・メリットを実現し、国際競争力を向上するのに役立つ。B財産権関係を明確にし、現代企業制度を確立し、経営メカニズムを転換するのに役立つ。

 強味から言えば、中国国際航空公司の国際線が国内のトップであり、西南航空公司の国内線が強く、中国航空総公司が資本運営の面で豊富な経験を持っているので、この3公司の結合が最もよい組み合わせだと見られている。

 中航の再編の目標は最大ではなく、最強を追求することである。その長期目標は世界の先進的な国際航空公司となることである。魏氏は、民航の再編計画は今年半ばにグッドニュースが伝わってくる可能性があると楽観的に予測している。

 また、報道によると、中国民航総局の総体改革案は最近作成され、主に次のような内容がある。@中国民航総局は企業の職能を果たさなくなり、政府の管理職能のみを担う。Aすべての空港は地方による管理を実行する。B航空交通管制は独立したシステムになり、民航総局に直属する。C3大グループは改革と再編を完成した後民航総局から離れる。

 再編にともない、各航空公司は内部改革を速め、強い勢いでグループに加わることを目指している。中国国際航空公司は現代企業制度の基準に従って、企業の職位を改めて設定し、2級単位を17も減らし、スタッフの終身制も初めて打ち破られ、競争してポストにつく方法で総公司クラスの80%の職位を調整した。また、「親方五星紅旗」制度も打ち破られ、昨年は200人が解雇させた。そのうち、雇用契約を結ばなかったスチュワーデスが29人いるが、これは中国国際航空公司の歴史上初めてのことである。

再編を行うのはなぜか

 民航は1998年に全業種に初めて24億元の赤字を出したのに続いて、昨年上半期にまたも21億元の巨額赤字を出し、営業業績がひどく悪くなった。

 このほか、民航は次のようにいろいろの問題を抱えている。

 国際競争力がわりに弱い。現在までのところ、世界の主要航空大国はすでに航空輸送産業の構造調整を完成し、スケール・メリットを実現し、航空会社が連盟化、大型化、グループ化した。中国地区の国際航空市場では、中外航空輸送の競争の力関係に大きな問題が現れた。首都国際空港の出入国旅客数を例として見ると、外国航空が輸送した国際旅客数は1977年は延べ6万人、1987年は延べ59万人、1997年は延べ267万人と幾何級数的増加を呈している。外国航空が輸送した国際旅客数は国際旅客全体の47%を占めたが、1997年は61%に上昇した。

 企業構造に大きな欠陥が存在している。3年前、国は民航の3大企業グループ(国際航空、東方航空、南方航空)を含む120社の国有重点企業で現代企業制度改革を試行し、一定の成績をあげたとはいえ、「財産権がはっきりし、権利と責任が明確で、行政と企業が分離し、管理が科学である」という現代企業制度の基準とまだかなり大きなギャップがある。それは主に、体制改革と企業改革のテンポが遅く、行政と企業が職能を取り違えていることに現れている。業種主管部門は企業と市場も管理すれば、国を代表して航空輸送企業の国有資産も管理しなければならない。このような2重の身分は、行政と企業を切り離す改革が理論上でも実践上でも徹底的に行うのが難しいことを決定付けている。

 産業構造がアンバランスである。資源配置構造と効率から見れば、1999年末現在、全国に合わせて510機の航空機があり、それぞれ数十社の航空公司に属していたが、これはアメリカの航空会社1社が擁している航空機の総量にも及ばないものである(アメリカ航空の1997年の航空機保有機数は990機)。中国の航空公司の規模が経済的でない問題が非常に際立っている。

 航空輸送産業の資産負債率が高すぎ、収益が低い。民航輸送業種の属性はその資産構造の中で長期負債が非常に大きな比率を占めることを決定付けている。民航輸送企業が航空機を購入し、リースする資金源は主に銀行融資と国際資本市場の融資である。1985年から民航は高速発展をとげたが、これは主として債務によって推し進められたものである。資産総量の増加につれて、資産負債構造もますます不合理になってきている。1998年、民航直属企業の債務総額は13485000万元にも達し、企業の資産負債率は平均72.1%であった。そのうち、航空公司の債務総額は1126億元で、平均資産負債率は83.4%であったが、全国の交通輸送企業の平均資産負債率は45.3%であり、全国の国有独立採算工業企業の平均資産負債率は65%であった。これほど高い資産負債率によって、民航は利息の重荷を負っている。高すぎる資産負債率がすでに航空輸送産業の発展をゆゆしく阻んでいると言える。

 民航輸送企業にとって、企業の融資負債は多かれ少かれ国の信用を担保としており、航空公司は国有企業であり、企業の所有権は国に属しているが、実際の出資者がおらず、そのため、国の権益に対し本当に責任を負うものがいない。一部の国有企業にとって、債務の規模が警戒ラインを超えると、政府と駆け引きをする可能があるが、または変通の方法で債務を減免することができ、債務の過大と経営の大幅な欠損で、企業が破産に直面するのを心配する必要がない。そのため、大半の航空公司は長年来、むさぼるような投資の意欲と衝動に駆られ、債務融資を一向に恐れず、ごく少数の航空公司の資産負債率はなんと113%にも達し、資産債務を相殺することができなくなっている。だから、航空輸送産業全体に対する大規模な構造調整および戦略的再編は、どうしてもやらなければならないことだと言えるであろう。

再編は何をもたらすか

 再編は中国民航改革の突破口にすぎず、たとえ計画に基づいて3大グループをつくっても、民航はすでに「3部分に分けられた」とは言えない。なぜなら3大グループは23社の非直属航空公司のチャレンジに直面するだけでなく、自身にも内部整合、体制強化の任務に直面している、と見る専門家がいる。さらに、「どらや太鼓が打ち鳴らされても、芝居は必ずしも開演するとは限らない」と心配する人もいる。とりわけ、WTO加盟後は、国際航空業界の巨頭たちと同じ市場で競争をしなければならないので、政策的再編のみに頼るだけではとても足らず、まだまだ長い道をあゆまなければならない。

 再編完成後の市場が、3大グループに独占される局面が現れるだろうか。

 海南航空株式有限公司の陳峰董事長はこう見る。当面の状況から見れば、独占しようとしてもたやすくできないことである。改革はある意味では独占を打ち破り、競争の方法で全業界の進歩を促し、航空輸送サービスの質を高め、よりよく大衆に奉仕するためである。3大グループはスケール再編のほか、改革と管理の面で重い任務に直面している。海南航空は規模が3大グループよりはるかに小さく、歴史も短いが、われわれの努力を通じて、競争の激しい市場で立脚地を探せることを望んでいる。

 民航業界の再編の中で、3大グループは中国航空の輸送の主力となるが、3大グループに加入したくないが、自力でやっていけない中小航空公司は生存の試練に直面しており、再編を通じて自らの力を大きくしなければ、買収、合併される。そのため、健全な発展に頼ってのみはじめて市場競争の中で立脚地を獲得することができるのである。

 再編後の中国民航は大衆にどんな実益をもたらすか。ある業界筋はその利点を次の4点に締めくくっている。

便利になる交通

 幹線と支線の便数の配置がより合理的になる。例えば、上海=北京線はほぼ1時間1便で、南京=北京線は今でも最も多い時に一日12便で、南京=広州線は一日8便以上であるが、夜行便は次第に増える。例えば、海南航空の南京=寧波線の便数も陸続と1時間1便に増え、名実ともに「エア・バス」となる。また、国際線の便数も増えるという。

 航路審査・認可権の移譲は、航空公司が新しい航路を開設する積極性を引き出した。これまでの決まりによれば、新しい航路の開設は航空交通管制、航路誘導、離着陸技術保障などにかかわるため、各クラス関係部門の審査・認可を経なければならず、半年かかるのが普通である。審査・認可権移譲後、国内線の資源配置はより合理的になる。

行き届いたサービス

 インターネットとeビジネスの発展は中国民航の効率とサービスの質の向上にチャンスをもたらした。いまのところ、国内の各空港はいずれも乗客が12時間前搭乗手続きをすることとなっている。空港がほとんど市内から遠く離れているため、乗客は数時間前に行かざるを得ず、空港までの時間と待合時間は飛行時間よりも長い。この問題を解決するため、民航が国外から先進技術をちくじ導入するという。各航空公司の航空券売り場では今後「自動離陸システム」を使用するということである。

順調な貨物輸送

 航空貨物輸送市場は航空公司の新たな成長要素となっていおり、とりわけこの2年間は2桁の数字で成長している。それにしてもまだまだ商品流通の必要を満たすことができず、とりわけ貧困地区の貨物輸送市場は内地より立ち遅れ、輸送力、運賃などの要因も航空貨物輸送市場の発展を束縛している。再編後、各航空グループや公司は貨物輸送という大きな市場をいよいよ重視し、貨物輸送の面で重要な措置を取ることになろう。例えば、貨物専用機を買ったり、地方の民営企業と貨物輸送を主業とする公司を設立したりすることがそれである。

運賃の自由化

 さまざまな原因で、運賃は高く、単位あたり距離の運賃が国人の一人あたりGDPと極めてつりあわなかった。体制のほか、コストが高いことも主な原因である。例えば、エア・バス320の値段は4億元近く、毎年の高額のリース費用と銀行の利息で、航空公司は大変な重荷を背負わされるはめになった。そのうえ、燃料油値上がりを予備する措置がなく、燃料油価格は普段の時は国外よりも高く、国際燃料油価格が上がれば、なすすべきがなく、運賃を上げるほかはない。それだけでなく、資源の面では、各航空公司が各自に運営しているため、航空資源の消耗が大きすぎ、人員が過剰になり、どうしようもなく航空券の価格を値上げするのが必然である。航空公司の責任者は国内航空公司の人員過剰について次のように述べた。欧米先進国の航空会社は人的資源の十分な活用を重視し、従業員と航空機の比例は180であるが、国内の航空公司は1200であり、再編後はいくらか下がるだろう。さらに、資源の合理配置、資本構造の変化を通じて負債率をいくらか下げる。コストが下がると、運賃も自然に安くなる。

 このほか、民航が再編を完成したあと、運賃を決定する方法は徹底的に変わる。新たな方法は現在の中国民航総局ではなく、航空公司によって決定される。国家発展計画委員会は中国民航総局と新しい運賃決定案を検討、制定する。その時になれば、弾力的な運賃も実現する可能性があり、運賃は適当に下がるだろう。