日本は国際社会でどんな役を演ずるのか

 小泉純一郎日本首相がさる1月東南アジア諸国連合(ASEAN)5カ国を歴訪した。これは小泉政府が新たな内外情勢の下でアジア外交を盛り返し、地域における主導的役割を発揮しようとしていることを示している。それと同時に、日本は一貫してその国際地位の向上と国際安全保障の面における役割の発揮に力を尽くしており、歴史的重荷を下ろし、国際実務に参与し、その政治大国の戦略目標を達成しようと焦っている。以下は3人の国際問題専門家が日本の果たす国際的役割について行った分析である。

                            ――編集部

アジアで主導的役割を発揮しようとするのか

中国国際問題研究所研究員  孫 承

 19日から15日まで、小泉首相はASEAN5カ国を歴訪した。これは小泉政府が新しい内外情勢の下でアジア外交を盛り返し、地域の主導的役割を果たそうとしてとった重要な措置である。

 小泉首相の歴訪には次の背景がある。日本経済が10年間の停滞しているため、対外経済貿易関係の拡大を通じて、国内経済の回復と構造改革を促し、経済面の苦境から抜け出そうと望んでいる。しかし、日本経済が長年にわたって停滞状態に陥いているとき、中国経済は安定成長を保ち、驚くべき成果をあげ、特に昨年11月、中国がASEANと自由貿易区設置に関する協定を結んだことは、日本に大きな衝撃を与えた。このため、日本はASEANと諸国との伝統的関係を強化し、ASEAN諸国に対する影響を拡大し、前世紀80年代末から90年代初めにかけて日本がアジア経済の中で発揮した役割をもう一度発揮しようとして焦っている。

 今回の歴訪の目的と日本の新しいアジア外交戦略の構想は小泉首相がシンガポールで行った重要な演説の中に集中的に表されている。小泉首相は演説の中で、21世紀に日本とASEAN諸国が「率直なパートナー」として協力を強化し、「共に進む」ことを表明した。小泉首相が打ち出した協力の内容は次の通り。1、日本はASEANの改革を一歩進んで支持し、ASEANが経済競争力を高め、多角的貿易体制に参加し、金融改革を行うことに協力をする。2、地域の安定を守る面でASEANとの協力を強化し、貧困を減らし、紛争を予防し、特にテロ活動に反対する、海賊に打撃を与える、エネルギーの供給を保障するなど「多国間の問題」を解決する面で協力を強化する。3、人材の育成を含めて未来に向けて協力する。42003年を日本とASEANの交流の年に確定する。5、日本とASEANの包括的経済協力案を打ち出す。6、東アジア開発会議を開催する。7、安全保障面の協力を強化する。小泉首相はまた「拡大された東アジア共同体」構築の構想を打ち出したが、その内容はASEAN――中国、日本、韓国(10+3)の提携の枠組みを踏まえて、オーストラリア、ニュージーランドを拡大された東アジアコミュニティ(共同体)の中核なメンバーに吸収し、東アジア地域が排他性的な地域にならないことを保証し、アメリカの役割とその他の地域との協力が影響を受けないことを保証するというものである。

 1977年の福田首相の後に東南アジアを歴訪した歴代の日本首相が行ったアジア外交演説と比べてみれば、小泉首相の演説に2つの特徴が見られる。1、情勢に順応して東アジアとの協力を積極的に参与し、同時に、日本とASEANの協力を東アジア協力の基礎とすることを強調することで、日本が地域協力における主導的地位を保とうとすることを示している。日本の各主要紙・雑誌は小泉首相のアジア外交構想を報道するとき、これは中国の地域的影響がたえず拡大していることを意識し、日本のアジア地域における主導的役割を維持しようとしているのだと指摘している。2、日本はさらに軍事大国にならないという承諾を再確認せず、地域安全保障面での役割発揮は初めて小泉首相の演説の中で打ち出したアジア外交構想に組み入れられた。これは「911」事件後、安全問題が世界にあまねく重視される状況の下で、日本が機会を捉えて地域安全保障の役割を発揮する面で新たな突破を遂げようとすることを示している。

 小泉首相のアジア外交構想は日本がアジアにおける影響と地位を維持しようとすることを表明している。しかし、この構想は実現できるかどうかに対し、世論はあまねく疑念を抱いている。小泉首相の構想は実行面で多くの困難にぶつかるだろう。最も主要なのは日本が近い将来に短期間内に衰退の局面から抜け出すのが難しいため、日本が地域で役割を発揮することは制限される。日本の新聞報道によると、日本は今回「小切手外交」をやらず、ASEAN諸国に政府が対外開発援助を削減することを説明した。当面の円安はASEAN諸国の日本経済の役割に対する憂慮をいちだんと深めている。日本はシンガポールと結んだ自由貿易協定(FTA)を手本として、ASEANのその他の国とも類似の自由貿易協定を結ぶことを望んでいるが、日本の農産物問題は解決するのが難しい。小泉首相も、日本とASEAN諸国の国情と経済力の相違がとても大きく、自由貿易区の設置を前提として討論を展開することができないと語った。これも日本が東アジアの経済協力に自信がないことを示している。経済、政治などの面に東アジア諸国と現実的な相違が存在しているため、日本は東アジア地域の経済協力に対し期待を抱くと同時に協力の前途を憂慮している。これによって、日本が全力あげて東アジア地域の経済協力に参与し、それを推進するのは難しくなるだろう。

 

反テロで日米の軍事協力に新しい内容が盛り込まれた

国防大学戦略研究所研究員 丁邦泉

 ブッシュ政府は政権を握ってから、日米安全同盟は「依然としてアジア・太平洋地域の平和と安全な礎だ」と何回も強調し、米日関係を全面的に格上げすることを表明した。日本政府はこれに積極的に呼応し、アメリカが同地域でとっている政策と戦略に進んで歩調を合わせている。昨年上半期だけでも、両国は安全保障分野における両国の協力を深めると同時に、両国の経済貿易協力を強化するため、首脳会談と外相会談をそれぞれ2回、国防相会談を1回行った。

 近年来、日米協力の矛盾と問題が増えている。アメリカは日本により多くの防衛費用と義務を担うよう求めているが、日本に駐在する米軍の軍紀が弛み、つねに地元住民の不満を買っている、アメリカは朝鮮民主主義人民共和国に対し強硬路線をとっているが、日本は日朝国交正常化の交渉を推し進めるため、韓国の対朝接触と和解の政策を支持している。日本はアメリカのミサイル防衛計画、「京都議定書」など問題の上でもアメリカと異なる立場を表明した。昨年6月末、小泉首相が訪米した期間、双方は両国間の政治と軍事の同盟関係を強化することを明らかにし、経済協力強化を強調したが、成果は限られたものであった。しかし、「911」テロ事件の発生および日本がアメリカのテロリズムに打撃を与える軍事行動を積極的かつ断固として支持することは、日米両国の軍事協力に新しい内容を提供した。

 ここ20年来、日本はずっとその国際的地位の向上と国際安全保障の面で役割を果たすことに力を尽くしており、海外派兵がその最も重要な措置だと見なされている。近年はずっと平和維持行動の範囲を拡大しようとしている。湾岸戦争で日本が突破を遂げたと言うならば、「911」事件と米国が指導する反テロ戦争は日本に同盟国の名義で海外派兵を拡大するよい機会を提供した。

 早くも20018中旬に、日本政府は国連平和維持軍の主要行動への参加の禁令を解除し、同時に兵器使用標準を緩める方針を確定した。「911」事件の発生後、日本は直ちにアメリカに「世界の反テロ戦争」を無条件かつ全面的に支持すると表明した。日本は他の国より先にテロリズムの容疑者に対し行動をとり、ただちにビン・ラディンと「基地」組織と関係があるといわれる組織の資産を凍結した。また反テロと関係がある外交問題を担当する反テロ大使を任命した。昨年919日、小泉首相はアメリカの軍事行動を支援する政府の七つの措置を発表した。その中には軍事行動をとった米軍に医療、運送、補給など面の支援を提供する、できるだけ速く措置を取って、日本駐在米軍の施設、区域と日本の重要な施設の防衛を強化する、自衛隊の艦艇を派遣して関係情報を集めさせる、周辺と関係ある国に対し人道と経済面から必要な援助を提供するなどが含まれている。日本防衛庁はさらに「調査研究」と「情報収集」の名義で、海上自衛隊の「イージス」駆逐艦と補給艦などをアフガニスタンに対する軍事打撃行動に参加する米国第7艦隊の航空母艦とともにインド洋に派遣することを決めた。

 最も意義があるのは、日本国会が自衛隊が非殺傷兵器を使用し、捜索・救助行動を展開することを許すことおよび難民に人道主義援助を提供する「反テロ特別措置法」など3つの関連法案を可決し、自衛隊がアメリカが指導する反テロ闘争への「有限参与」のために法律面の障害を一掃した。つづいて、日本は1500人の自衛隊隊員を派遣してアメリカの反テロ行動を援助することを決めた。「反テロ特別措置法」は実際には日本憲法と防御政策の制限を突破するものである。その可決と実施は、今後可能な憲法改正に「既成事実」の根拠を提供し、戦後の日本が戦時に海外に派兵する先例を作り、日本自衛隊が海外で軍事行動をとる範囲を大幅に拡大し、世界の安全保障分野における日米の協力、米日安全同盟の役割の範囲拡大のために新たな実質的内容を増加した。日米軍事協力はここから新たな段階に登った。

 

政治大国の戦略目標

新華社国際部アジア太平洋編集室主任  Gang 冶

 政治大国の戦略目標の実現は、日本が20世紀に実現できなかった夢である。経済大国としての日本は、新世紀にこの夢を実現させようとするなら、まだかなりの道を歩まなければならない。核心の問題は、日本がまずアジアと世界各国に信頼してもらえるような政治責任感をもつことである。

 戦後、日本は経済を大いに発展させ、50年代の回復、60年代のテイクオフ、70年代の高速成長を経て、30年足らずで、戦争の廃墟の上にアメリカに次ぐ第2の経済大国を築き上げ、経済高速成長という奇跡をつくった。経済の急速な興起と強大に伴って、日本は経済大国の地位に満足せず、政治大国になり、国際政治実務の中でその他の大国と同じような役割を果せることを望むようになった。80年代の初めに、中曾根内閣は日本を政治大国に変える戦略目標を正式に打ち出した。今日でも、日本は依然としてこの目標を実現するたゆまぬ努力を払っている。

 現在、政治大国は日本では依然として明確な定義がのい概念である。しかし、日本の一部の政治家の著述の中から、そのひな形をうかがい知ることができる。それはつまり日本をその経済的地位に適応し、強大な軍事力をもち、米、露、英、仏などの国と同じような「普通の国」につくりあげることである。

 その実、日本は今日の国際社会でさまざまな重要な役を演じている。日本はG7首脳会議の唯一のアジアの国、国連第2の会費納入大国であり、安全保障理事会の非常任理事国に当選する回数が最も多く、国連の平和維持行動に参加し、世界のホットポイントに広く介入し、経済力を後ろ盾として絶えずその国際実務におけるその発言権を増大している。ある意味から言って、日本の総合的国力とその発揮できる大国の役割によって、日本が政治大国になることがもはやはるかなる夢ではなくなったようである。しかし、世人の目に、特にアジア諸国人民の心の中に、日本は政治大国からはまだかなり遠い距離がある。というのは日本が政治責任感に欠けているからである。これは日本が過去の侵略の歴史を徹底的に清算せず、深く反省せず、侵略戦争を美化する言行が日本で氾濫するのを許していることに現れている。

 長年来、日本は敗戦国の暗い影から抜け出そうと努めている。憲法第九条の中の「戦争を放棄し、武力の行使を放棄し、陸海空軍とその他の戦力を保有しない」という条項を改正し、あるいはさらにその中に「平和を維持するため、自衛隊は国際社会に出入りすることができる」という条項を加えることを主張する政治家が一部いる。これらの人は、憲法は不朽の大典ではなく、時代の移り変わり、周囲環境の変化、日本国民自身の需要と要求の変化に従って、憲法も相応に改正されるべきであることを根拠としている。彼らの目的が戦後憲法の束縛から抜け出し、自衛隊の頭の上にはめた「金のたが」をはずし、自衛隊の専守防衛の枠を打ち破り、自衛隊を堂々として国際舞台に進出させることにあるのを見てとるのに難しくない。1992615日に、日本国会が可決した「国連平和維持活動に関する協力法案」は、自衛隊の海外派遣に法的根拠を提供した。ここ数年来の「周辺事態法」、「反テロ特別措置法」などの関係法案の可決により、日本自衛隊の活動範囲はなおさら本土から周辺地区ないしより遠いところにまで拡大された。ここから日本が歴史の重荷を下ろし、国際実務に参与し、政治大国の地位を確立することに焦っている意図を見てとるのも難しくない。現実では、今日の日本の行動が憲法第九条の規定をはるかに超えており、その上侵略の歴史に対しあいまいな態度をとっているため、人々が日本の軍事力の発展に警戒心を持つのは道理がないわけではない。

 日本のあるベテラン政治家はかつて本の中にこう書いた。「戦後の日本は平和憲法の導きの下で繁栄したのである。現在、世界平和を守るため、日本は軍事面で国力に相応する貢献をすべきだと主張する人がいる。世界に貢献をする面で、日本はこれを除いて歩む道がないというのだろうか。今日の現実に直面して、日本は決して軍事大国の道を歩むことができないだけでなく、強大な軍事力をもつ政治大国になることを図るべきでもない。

 日本は安保理常任理事国になれるかどうかを日本が本当の意味でのの政治大国になる重要な目印と見なしている。現段階では、日本が安保理常任理事国になることに賛成する国はいったいどれぐらいあるのか。日本は各国との理解と信頼を増進すべきである。かつて日本の侵略を被ったアジアの大多数の国からすれば、日本に対する信頼は日本の過去の歴史に対する深い認識と反省および各分野における誠意ある協力によって決定づけられる。