資料一

中国の指導者が台湾問題について
発表した綱領的意義のある談話の要旨

葉剣英氏が新華社の記者に発表した談話

1981930日)

 1979年の元旦、全国人民代表大会常務委員会は『台湾同胞に告げる書』を発表し、祖国の平和統一をめざす大政方針を明らかにして、台湾同胞、香港・澳門同胞および海外の華僑同胞をふくむ全中国の各民族人民の熱烈な支持と積極的な反響を受けた。台湾海峡には緩和の空気が現われた。ここでわたしは、この機会を借りて、台湾祖国復帰、平和統一実現の方針、政策をいっそう明らかにしたいと思う。

 中華民族が分裂状態にある不幸な局面を一日も早く終わらせるために、われわれは、中国共産党と中国国民党両党が対等な立場で交渉をおこない、第三次合作を実行し、ともに祖国統一の大業をなしとげることを提案する。双方はまず、人を派遣して接触し、十分に意見を交換する。

 海峡両岸の各民族人民は、互いに通信しあい、身内のものが団らんし、貿易をおこない、理解を深めることを切実に望んでいる。われわれは、郵便物交換、通商、航路開設、肉親・友人訪問、観光および学術・文化・スポーツ交流のために、双方が便宜を提供し、関係とりきめを結ぶことを提案する。

 国家の統一が実現してのち、台湾は特別行政区として、高度の自治権を享有することができ、また軍隊を保有することができる。中央政府は、台湾の地方の事柄に干渉しない。

台湾の現行社会・経済制度を変えず、生活様式を変えず、外国との経済・文化関係を変えない。個人の財産、家屋、土地、企業の所有権と合法的な相続権および外国の投資は、侵犯されない。

 台湾当局と各界代表は、全国的な政治機構の指導ポストにつき、国政に参与することができる。

 台湾の地方財政が困難におちいったとき、中央政府は情況をみて補助をあたえる。

台湾の各民族人民、各界の人たちで祖国大陸に帰って定住したいものにたいしては、適切にこれを受け入れ、差別あつかいをせず、自由に行き来できるよう保証する。

 台湾の工商業界の人たちが祖国大陸に投資し、各種の経済事業をおこすことを歓迎し、その合法的な権益と利潤を保証する。

 祖国の統一については、すべての人に責任がある。われわれは、台湾の各民族人民、各界の人たち、大衆団体がさまざまなルートを通じ、いろいろの方式で提案をおこない、ともに国是を協議することを心から歓迎する。

ケ小平氏 中国大陸と台湾の平和統一についての構想

1983626日)

 問題の核心は祖国の統一である。平和的統一は、すでに国共両党の共通の言葉となった。それは、互いに消滅しあうことではない。われわれは、国共両党がともに民族の統一を実現させ、中華民族のために貢献するよう望んでいる。

 わたしは台湾の「完全自治」という言い方に賛成しない。自治には限度がなくてはならないし、限度がある以上、「完全」とはいえない。「完全自治」とは、一つの中国ではなくて、「二つの中国」を意味する。体制を異にしてもかまわないが、国際的に中国を代表するのは、中華人民共和国だけである。われわれは、台湾地方政府が独自の対内政策をもつことを認める。特別行政区としての台湾は、地方政府であるが、他の省、市の地方政府であるが、他の省、市の地方政府あるいは自治区と異なり、統一した国の利益を損なわないという条件つきで、それらにないある種の特別な権力をもってもよい。

 祖国統一後、台湾特別行政区は独立性を持ち、大陸と異なった体制を実施してよい。司法は独立してもよく、最終審判権を北京に移す必要はない。台湾はまた軍隊をもってもよいが、大陸に対する脅威となってはならない。大陸は台湾駐在要員を派遣せず、軍隊のみならず行政要員も置かない。台湾の党、行政、軍隊などの体系は、いずれも台湾自身によって管理される。中央政府はさらに台湾のために定員の枠を残す。

 平和的統一とは、大陸が台湾を消滅することでもなく、もちろん、台湾が大陸を消滅することでもない。いわゆる「三民主義による中国統一」は、現実的ではない。

 統一を実現させるには、適切な方法が必要である。だから、われわれは中央と地方との話し合いという形ではなく、両党の対等な会談をおこない、第三次合作を実行することを提案している。双方が合意に達した後、正式に発表してもよい。しかし、決して外国の介入を許さない。それは、中国がまだ独立していないことを意味し、後に限りない憂いを残すだけである。

 われわれは前人がなしとげ得なかった事業を全うする決意である。かれらがもしこの事業をなしとげることができたなら、蒋氏父子をはじめ中国の統一事業に力を尽くしたすべての人々の歴史は、いまよりよく書かれるだろう。もちろん、平和的統一の実現には、一定の時間がかかる。焦らないといえば、それはうそになる。われわれのような年をとったものは、やはり一日も早く実現させたい。接触を多くし、理解を深めるべきである。われわれはいつでも台湾へ人を派遣することができるし、見るだけで何も話し合わなくともよい。また、かれらが人を派遣してくるのを歓迎し、その安全、秘密を保証する。われわれは言ったことを必ず守り、小細工はしない。

 中米関係は最近やや好転したが、アメリカの当局者はまだ「二つの中国」あるいは「一つ半の中国」という政策を放棄してはいない。アメリカは自国の体制をこの上なくすばらしいもののように吹聴しているが、しかし、大統領選挙の時、大統領就任直後、中間選挙の時、次期の総選挙を控えた時とでは、それぞれ言うことが違っている。アメリカはまた、われわれの政策が不安定だと言っているが、われわれの政策はアメリカよりはるかに安定している。

江沢民主席 祖国統一の大業達成促進のために引き続き奮闘しよう

1995130日)

 中華民族はなが年の歴史の変遷を経て、いろいろな苦難をなめ尽してきたが、いまこそ祖国統一の大業を完成し、全面的な振興を実現するときである。これは台湾にとってもチャンスであり、全中華民族にとってもチャンスである。ここでわたしは現段階において両岸関係を発展させ、祖国の平和的統一の進行過程を促すいくつかの重要な問題について、次のような見方と主張を提出したい。

 一つの中国の原則を堅持することは、平和的統一を実現するための基礎と前提である。中国の主権と領土を分割することはけっして許されない。「台湾独立」をつくり出すいかなる言論と行動にも、だんこ反対すべきである。「分裂、分治」、「段階的な二つの中国」などの主張は、一つの中国の原則に背くものであり、これにもだんこ反対すべきである。

 台湾が外国と民間的な経済・文化関係を発展させることに、われわれは異議を唱えない。  一つの中国の原則のもとで、しかも関連ある国際組織の規約にもとづいて、台湾がすでに「中国台北」の名義でアジア開発銀行、APECなどの経済的国際組織に参加している。しかし、われわれは台湾が「二つの中国」、「一つの中国、一つの台湾」をでっちあげることを目的としていわゆる「国際生存空間を拡大する」活動をおこなうことに反対する。国を愛するすべての台湾同胞と有識者はみな、このような活動をおこなうことは問題を解決できないばかりか、逆に「台湾独立」勢力にさらにほしいままに平和的統一の進行過程をぶちこわさせることを認識するようになるであろう。平和的統一を実現してこそ、台湾同胞ははじめて全国各民族人民とともに、世界における偉大な祖国の尊厳と栄誉を真に存分に分かち合うことができるのである。

 海峡両岸の平和的統一交渉をおこなうことは、われわれの一貫した主張である。平和的統一交渉の過程で、両岸各党派、各団体の代表的な人士を吸収してそれに参加させてもよい。わたしは199210月に開かれた中国共産党第14回全国代表大会でおこなった報告の中で「一つの中国を前提とするかぎり、どのような問題についても話し合うことができる。両岸の正式交渉の方式について台湾当局と討議し、双方がともに適切と認める方法をさがし出すのも、その一つである」と述べた。われわれの言う「一つの中国を前提とするかぎり、どのような問題についても話し合うことができる」にはもちろん、台湾当局が関心を寄せているさまざまな問題も含まれている。われわれはたびたび双方が「両岸の敵対状態を正式に終わらせ、平和的統一を徐々に実現する」ことについて交渉することを提案した。ここで、わたしは改めてこの交渉をおこなうことを厳粛に提案し、またその第一歩として、双方がまず「一つの中国の原則の下で、両岸の敵対状態を終わらせる」ことについて交渉をおこない、合意に達することを提議する。これを踏まえて、共同で中国の主権と領土保全を守る義務を担うとともに、今後の両岸関係の発展について想を練る。政治交渉の名称、場所、方式などの問題に至っては、早く平等な協議をしさえすれば、いずれは双方とも受け入れられる解決策を探し当てることができる。

 平和的統一の実現に努め、中国人同士は戦わない。われわれは武力行使の放棄を承諾していないが、それは決して台湾同胞にではなくて、外国勢力の中国統一への干渉と「台湾独立」の企みに対するものである。台湾同胞、香港・澳門同胞、海外在住の華僑同胞がわれわれのこの原則的な立場を理解してくれるものとわれわれは確信している。

 21世紀の世界経済の発展に目を向けて、両岸の経済交流と協力を大いに発展させ、それを両岸経済の共同の繁栄に役立たせ、中華民族全体に幸せをもたらすようにしなければならない。われわれは、政治面の意見の食い違いが両岸の経済協力に影響を与え、それを妨害しないことを主張している。われわれは引き続き長期にわたって台湾業者の投資を奨励する政策を実行し、「中華人民共和国台湾同胞投資保護法」を貫徹する。いかなる情況の下でも、われわれは台湾業者のすべての正当な権益を確実に保護する。引き続き両岸同胞の相互往来と交流を強化し、相互理解と相互信頼を増進しなければならない。両岸の直接の郵便物交換、通航、通商は、両岸の経済発展と各方面の交流の客観的必要であり、両岸同胞に利益をもたらすものでもあり、実際的段取りを追ってその実現を速めるべきである。両岸の事務的協議を促進する必要がある。われわれは、互恵互利を踏まえて、台湾業者の投資の権益を保護する民間協定について話し合い、それを結ぶことに賛成する。

 中華各民族の息子と娘がともに築き上げた5千年のさん然たる文化は、終始全中国人を結びつける精神的きずなであり、平和的統一を実現させる重要な基礎でもある。両岸の同胞は共同で中華文化の優れた伝統を受け継ぎ、発揚しなければならない。

 2千百万の台湾同胞はその本籍が台湾省であるかその他の省であるかを問わず、みな中国人であり、血肉を分けた同胞、兄弟である。台湾同胞の生活様式および主人公となる願望を十分尊重し、台湾同胞のすべての正当な権益を保護しなければならない。わが党と政府の各関係部門は、駐外機構を含めて、台湾同胞とのつながりを強め、彼らの意見や要求に耳を傾け、彼らの利益に関心と配慮を寄せ、できるだけ彼らの困難解決を手助けしなければならない。われわれは、台湾の社会が安定し、経済が発展し、生活が豊かになることを望み、台湾の各党派が理性と前向きの、建設的な態度で両岸関係の発展を促すよう望む。われわれは、台湾各党派、各界の人士がわれわれと両岸関係と平和的統一について意見交換をすることを歓迎し、彼らが参観や訪問に来ることも歓迎する。およそ中国統一のために貢献した各方面の人士であれば、歴史は彼らの功績を永遠に銘記するであろう。

 われわれは、台湾当局の指導者が適切な資格で訪問に来ることを歓迎する。われわれは、台湾側の招きに応えて台湾に赴くことも望んでいる。国是について話し合ってもよく、まず若干の問題について意見交換をしてもよい。互いに訪れ、見て回るだけでも有益である。中国人のことはわれわれ自身がやり、いかなる国際の場にたよる必要もない。両岸は目と鼻の先にあり、切に向かい合っており、とにかく行ったり来たりすべきであって、「死んでも往き来しない」ようなことがあってはならない。