国際化の人材競争にいかに対処するか
――専門家たちが語る

暁 風

 欧米同学会と天津開発区の共催による「21世紀における中国と国際人材競争シンポジウム」が先般天津開発区で催された。これは欧米同学会が1996年から始めた年に一度の「21世紀の中国」というシンポジウムシリーズの6回目である。国内外の専門家および各地の開発区と企業界の代表300余人が参会し、当今の社会発展における人材の地位、新世紀における国際人材の激しい競争の状況、中国がこの新たな局面にいかに対処するかなどの問題についてさまざまなアングルから突っ込んで検討した。

人材は第一の資源

 丁石孫(全国人民代表大会常務委員会副委員長、欧米同学会会長)

 天然資源が日増しに欠乏し、ハイテクが日進月歩している今日において、総合的国力の競争はますます人材と知力資源の開発と使用を突出させている。人材資源の開発は世界各国が経済と社会を発展させる戦略的高地となり、人材は経済・社会発展の第一資源となり、資金よりも重要な資本となっている。規模が大きく、資質の高い人材陣を保有することができるかどうかは、国際競争における一国の成敗にかかわる重大な戦略的問題となっている。人材争奪は国際化の傾向を呈しており、先進国は自身の強大な経済力と優遇条件に頼って、全世界のハイテク人材を引き付ける大きな力を形成し、また発展途上国に対しても人材資源の圧力となっている。情報革命、知識経済およびグローバル化のチャレンジを前にして、いかにして優秀な人材を育成し、国際人材をひきつけ、中国の特色をもち人材が頭角を現すメカニズムを構築するかは、新世紀における中国の現代化建設と発展の回避できない現実的課題となっている。

 張学忠(国家人事部部長)

 当今の新技術革命、知識経済の発展、経済のグローバル化、とりわけ中国のWTO加盟の要求と比べて、中国の人材の人数と資質はまだ新世紀のチャレンジに適応することができない。中国は資質の高い人材を至急必要としている。

 激しい国際競争を前にして、中国は人材問題をかつて見ない位置に置いている。

チャレンジとチャンスが併存

 才譲(安泰科学技術株式有限公司総裁、欧米同学会MBA協会会長)

 先進国と比べて、中国は当面の人材競争の中で明らかに劣勢に立っている。一方では、国外の多国籍企業が大挙して中国に進出し、その豊富な資金力と優遇を利用して国内の優秀な人材を網羅し、人材競争の中で人に迫る勢いを見せている。他方では、中国の在来の人事管理体制と人材観はまだ国内の人力資源の発展をある程度制約している。このほか、人材の市場化程度がまだ低く、開放度がまだ足りない、人力資源の資質が全体としてまだ高くなく、人材の構成と配置があまり合理的でない、ハイテク人材の国外流出がひどい、関係法律・法規がまだ整備されておらず、社会保険制度の健全化が待たれているなど多くの問題が存在している。

 現代の人力資源管理制度を確立し、効果的な人材競争戦略を制定、実施して、人材競争の面で優位を保つことは、中国が国民経済と産業を持続的かつ穏健に発展させるカギとなっている。

 金芸(CO-CHAIRMAN,JINTETSU TRADING CO.LDT,Australia.

 WTOはすべての加盟国にとって有利と不利の両面がある。まず、それが人材市場を含めて中国の市場に小さからぬ衝撃を与えているのは確かであるが、同時に、中国の国民と企業に外国へ行って、人材市場を含めて外国の市場を探すことに便利を提供していることをも見て取るべきである。人材市場の開放につれて、最初の10年間に、人材の流失は不可避なことであり、ひいては非常に重大なことになる可能性もあると見られている。これは主に人力資本市場の経済法則に基づくものである。

 したがって、多くの部門が高給で人材を引き留めることがまだできない状況の下で、自身の潜在力を掘り起こす方法で人材を引き付けるべきである。その効果的な方法には、激励メカニズム、良好なコミュニケーション・メカニズム、人材信頼メカニズムなどが含まれている。

 苗柔柔(仏リヨン大学)

 現在、中国が国際人材競争の劣勢におかれているにもかかわらず、市場は絶えず変わるものである。中国は市場発育の初級段階にあり、それを越えることをはかるべきである。市場を深く、仔細に研究し、重要な業種、重要な学科を選んで発展させ、人材の高地を構築しなければならない。こうしてこそはじめて成功を収めることができるのである。中国は自国の国情に基づいて事を運び、競争の中で盲目的に潮流についてゆかず、国内外から各クラス、各分野の人材を探し集めるようにすべきで、かならずしも他の人と争うようなことをする必要がない。

 李大西(国際華人科学技術工商協会[CASB]主席、CASB海外創業投資有限公司董事長)

 国際人材市場で競争し、国際観をもつ高級人材を導入することは取るべき措置であるが、国内の現有の人材に対し大規模のトレニングを行い、管理者とりわけ各クラス指導者に観念の面で国際とリンクさせることは、なおさら非常に差し迫ったことである。

 蒋凡(オーストラリア中国文化教育交流センター主任)

 中国はすばらしい高等教育資源があり、大規模な高等教育網をつくりあげているが、地理、文化、習俗、歴史などの原因により、西側の高等教育と比べて、一部の分野や学科が中国の特色をもっており、人材の風格も違うため、中国の人材市場のグローバル化を難しくしている。

 この問題を解決する経済的かつ効果的な方法は、国外の優れた高等教育資源を利用し、大学の共同運営を通じて中国の人材育成をグローバル化の基準に達させるようにし、世界に公認される専門人材を育成することである。

海外の人材バンク

 張学忠(国家人事部部長)

 現在は海外留学生が帰国して起業する絶好な時機である。中国では人材資源開発の条件がほぼ整い、人材資源配置の面で市場メカニズムが重要な役割を果たし始めている。

 中国政府は従来から留学生を重視しており、終始留学生を中国の人材陣の重要な力と見なしている。国は「留学支持、帰国奨励、去来自由」という方針を制定し、帰国して仕事をする海外留学生を優遇する政策を制定し、留学生がさまざまな形で祖国に奉仕することを積極的に奨励している。例えば、経費投入、報酬支払い、知的所有権保護、良好な仕事と生活条件づくり、出入国への便利提供、人事代理サービスなどの面で政策的支持を提供する。海外留学生が帰国して起業することに舞台を提供し、創業パークで仕事をする留学生に経費の面で一定の資金援助を与える、留学生帰国創業サービスシステムを積極的に構築するなどがそのいくつかの例である。

 世界の先端技術と知識を身につけ、国際の規則に精通し、市場運営をよく知っている留学生は大いに実力を発揮する機会がある。

 金芸(CO-CHAIRMAN,JINTETSU TRADING CO.LDT,Australia.

 中国は改革・開放を実行して20年らい、合わせて数十万人の留学生を国外に派遣し、留学生はほとんどすべての分野に分布し、当今の世界の先端管理パターンを身につけている。これらの海外留学生を利用すれば、疑いなく極めて大きな人力資源を得ることになる。例えば電信、金融、農業など分野で計り知れない推進的な役割を果たすことができる。多ルート、多段階で海外留学生を引き付ける活動を展開するのは、非常に重要である。

 人材導入は主に次のようないくつかの形をとることができる。@ハイテク産業ベルトを建設し、事業で人材を引き付ける。Aハイテク取引会を通じて人材を引き付ける。B海外で責任者を招請する。C投資リスト、政策ガイド、特恵政策を市場に発表する。D戸籍、人事、所有権、分配、教育制度などの体制面の障壁をよけて、人材の自由流動を実現する。E国際化の人材招請制を実行し、一人がいくつかの職を兼任することを許す。F人材を共同で育成、使用する。Gネットワークを通じて「頭脳」のみを導入する「バーチャル人材導入」を実行する。

斬新な大学を創設

 湯敏(アジア開発銀行中国駐在事務所首席経済学者)

 左小蕾(銀河証券の高級経済学者)

 われわれは、海外中国人資源を利用して、中国でメカニズムがまったく新しく、世界一流のレベルをもつ大学を速く創設すべきだと考えている。ここに言う斬新な大学は少なくとも以下の特徴を持たなければならない。

 管理は中国の現行の教育管理体制の制約を受けずに全面的に国際とリンクすべきである。この大学は全世界で一流の中国人と外国人科学者と教師を招請することができる。その収入も国際標準に達しなければならない。

 この大学の創設準備は「世界クラス」の学長によって進められなければならない。世界クラスの学長があってこそはじめて、世界の関心を引くことができ、十分な経費を調達することができ、また世界クラス人材を集めることができるのである。

 大学創設と運営の費用は主としてひいては全額国内外の民間から調達する。国際上の民営大学の資金調達と基金管理の慣例に基づいて、大学の命名権、大学の学部、研究所、および各建物について入札を行うことができる。海外中国人と華僑は従来から祖国の教育事業に関心を寄せる伝統をもっているからである。

 国は特殊の大学を創設することを支持すべきであり、それには資金調達メカニズム、管理メカニズム、土地使用政策、および大学経営の産業など一連の政策が含まれている。

 このような大学を創設するのは非常に必要だとわれわれは考えている。世界一流の人材を導入し、一流の人材を引き留めたいなら、国際とリンクする大学を創設するのはこのうえなくすばらしい方途である。一流の大学を創設すると同時に、一流の研究と生産の拠点をつくり、中国の科学研究レベルおよびハイテク産業の発展をより高い段階に押し上げる。このほか、斬新な大学は大学管理、学科設置から融資の調達に至るまではいずれも国内の大学に対しすばらしい手本の役割を果たし、中国の高等教育体制のさらなる改革を促すことができる。