公務員試験を受ける農民

馮建華

 ――県レベル以下の行政機関は社会から公務員を募集するようになり、旧制度の下でそれから締め出されていた農民はいまでは公務員となることができるようになった。  

 98日の朝7時ごろ、山東省高家埠頭村の農民の呂東昌さんは35キロ離れた省都済南市に設けられた試験場に駆けつけ、山東省の行う県レベル機関公務員試験に参加した。自分の運命を変える可能性のある今回の試験に対し、呂さんは「いま私たちは公平な競争に参与するチャンスに恵まれたので、頑張らなくちゃ」と語った。

 山東省は1997年に初めて戸籍身分の制限を打ち破って、条件にかなった農民が郷・鎮機関(最も末端の行政機関)の公務員試験に出願することを認め、その年は990名の農村青年が試験を受け、そのうちの41名が採用されて、農民が以前とてもあこがれていた国家幹部――公務員になった。

 2002年、山東省は農民が公務員試験に出願する範囲を県クラス(郷・鎮より1級上)にまで拡大し、条件にかなった農民1413名が試験に出願し、2700余の職位をめぐって競争を繰り広げた。

 政府の人事管理をいっそう科学化、法制化させ、政府の行政面の資質を高めるため、1994年に国家人事部は「国家公務員採用暫定規定」(以下、「規定」と略称)を公布し、国家公務員の「採用するとき必ず試験する」採用制度を初歩的に確立した。公務員の試験採用は法制化、規範化の軌道に乗り始める。「規定」は試験に出願する人たちの都市・農村の身分に対し明確な限定をもうけていない、つまり農民も国家公務員の試験に出願できることだ。その後、各省・市は続々と具体的な政策を制定して、この規定を実施するようになった。

 このような身分と地域の制限を打破する公務員選抜方式は全国の30余省・直轄市・自治区で採用されている。1996年から、すでに17188人の農民が公務員選抜試験にパスして、地方国家機関に入って、国家公務員となった。

 国家人事部の関係責任者によると、農民が国家公務員の試験に出願することを認めたことは、中国の行政機関幹部採用の伝統的な人事制度にすでに根本的な変化が生じ、配属、派遣、移動など数十年も使用してきた採用方式が、全面的に社会から公開募集、選択、採用する新しい公務員採用制度に取って代わられたことを示していると語った。

遅ればせの公平

 23歳の党華さんは2000年に済南市のある放送テレビ大学を卒業した。卒業する時、就職先を探せなかったため、農村戸籍によって彼女の身分が農民であることが決定づけられていた。卒業後、彼女は市内へ行って働き、前後して三回も仕事を換え、その後済南市のある飲料公司で臨時工として働いた。党華さんは、働いている時いちばんがまんできなかったのは「田舎者」と言われることであると語った。

 党華さんは農民が公務員試験に出願できることを知ってから、今年9月に試験場を受け、済南市の面接試験にパスした三人の農民出願者の一人となった。党華さんは、「私たちは都会の人と同等なチャンスを持ちたかっただけ」と語った。

 山東省社会科学院研究員の于洪生氏は「この政策の実施は進歩し、農民は遅ればせの公平を獲得した」と語った。

 しかし、一部の地方では、農民が公務員試験に出願する問題の実際操作の面でまだ若干の問題が存在している。一部の地方では、「規定」の中で出願条件の最後の一つ――「採用主管機関の認可したその他の条件を持つ」のこの「権利」によって、「非農業戸籍」、「当市戸籍」などの条件を不文律の規定として農民公務員の試験出願が制限されている。

 これに対し、北京大学政府管理学院の石志夫教授は、一部の地方が農民公務員の試験出願を制限することは、かなりの程度において計画経済体制下の中国で都市と農村を分けて管理するパターンが実行されたという客観的な原因によってもたらされたものである、つまり戸籍制度の上で農業戸籍と非農業戸籍に分け、利益、就職機会などの面でそれぞれ異なる待遇を与えることであると語った。

市場公正制度を充実させる  

 山東省人事庁採用移動処の責任者は、「身分の境界を打ち破って、公平な競争に参加するチャンスを農民に与える、これは人を使う観念の大きな突破である」と語った。  

 石志夫教授によれば、「全体から見て、現在の農民はもはや以前のような完全に土地に頼って『耕作する人』ではなく、ちくじ教養を身につけ、経営が分かり、うまく管理できる新しいタイプの勤労者となっている」。  

 山東省人事庁の提供した資料は、1997年同省の選抜した41人の農民公務員に対する数年の追跡調査を通じて、長年の農村生活の実際的経験および農村問題に対する深い理解に頼って、これら末端の農村から来た郷・鎮機関公務員の仕事ぶりは全体から見てすばらしにものであることを顕示している。

 身分の境限界を打ち破って、農民に公務員試験出願を認めるという山東省のやり方に対し、『人民日報』は評論を発表し、「この実践は、社会主義市場経済の市場公正制度を充実させ、市場経済体制の建設を推進することに対し、深い意義がある」と述べている。

  焦連合庁長の見方では、現在、農民が直接省、市などのクラスのより高い公務員試験に出願することをまだ認めていないが、事実上国家機関の門はすでに農民に向かって開けている。関連規定によれば、国家公務員は異なるポスト、クラス、種類の機関の間で交換することができ、仕事をりっぱにやりさえすれば、末端政府に勤務する農民公務員も同様に選抜、交流を通じて、より高いクラスの行政部門で、仕事をすることができる。しかも、戸籍改革のたえまない深化に従って、農民がクラスのより高い公務員試験に出願する最大の障害である農業戸籍の身分によってもたらされる一連の問題が消えなくなる。そのため、国家公務員の門は遅かれ早かれ農民に向かって大きな開けられる。