慎重を欠く挙動

――200212月、アメリカは中国の国力増強が中米衝突を招く恐れがあるというレポートを発表したのに続いて、弾道ミサイル防衛を明らかにし、国際社会に不安を与えている。

周溢?

(外交ペン・クラブ秘書)

 20021216日、アメリカの「国防週刊」は「アジアの展望――軍事情報革命」と題する分析レポートを発表した。このレポートによれば、たとえアメリカの軍事力が順調に転換したとしても、中国大陸の経済と軍事の急速な発展は依然として将来二つの強権間の衝突を招く恐れがある。それと同時に、ブッシュ米大統領は1217日に弾道ミサイル防衛を始めるようを軍隊に命じた。軍部の計画によると、2004年までに、アラスカ州フォートグリーリーに地下発射型迎撃ミサイル10基を配備するという。

 今でも、アメリカ国内に依然として冷戦思惟をかたくなに固持し、中国の国力増強が中米衝突を招くと断言するものが少数いる。これはまったく理性を欠いた見方である。中国経済はここ数年わりに速く発展してきたにもかかわらず、経済強国と比べればまだかなり大きな格差がある。当面の世界経済総量は34兆ドル近くであり、そのうち、アメリカは30%、日本は15%、ユーロ地域は31%それぞれ占めているが、中国はわずか12000億ドルしか占めておらず、4%にもならないものである。中国の生産総額は日本の4分の1、アメリカの9分の1に過ぎない。たとえ2020年になっても、中国の国民経済はただ中等先進国のレベルに相当するだけである。軍事上では、中米間の軍事力の対比はなおさら大きな格差があり、イギリス、フランスなどの国と比べてもその格差は小さくない。中国の当今の強大は以前と比べて言ったものである。戦略から見て、中国はある程度台湾問題の牽制を受けている。

 中国経済の発展はアメリカの脅威にならないどころか、逆にアメリカ経済に対しある程度の促進的役割を果たすだろう。アメリカは世界最大の先進国であり、十分な資本と技術の実力を持っている。中国は世界最大の発展途上国であり、巨大な市場と豊富な労働力資源を持っている。中米両国の経済は相互補完性がある。中国の発展はアメリカを含めた世界各国にとって挑戦ではなくてチャンスである。中国の経済成長は世界経済の回復に確かなメリットをもたらした。2002年、中国では西部の天然ガスを東部に輸送する工事が全面的に着工し、工事は全面的に対外開放して、中国最大の中外協力プロジェクトとなり、アメリカのエクソンなどの大手会社は同プロジェクトの協力者となった。中国の市場は巨大であり、推算によれば、今後5年の中国の輸入額は15000億ないし2兆ドルに達する見込みであり、これはアメリカの企業、特にハイテク企業にとって得難い吉報である。

 経済のグローバル化は生産要素の全世界での移動をもたらし、世界各国の経済関係は日ましに密接となっている。大手多国籍企業はグローバルな競争のプレッシャーと潜在的な巨額の利潤の誘導の下で、空前の多く国と地域にまたがる投資を通じて生産・販売システムを再構築している。中米間を含めて、各国の間には互いに密接な利益関係があるという態勢が形成されている。世界大手企業ベスト500社とアメリカの多くの大手企業はすでに中国に進出している。たとえ経済紛糾が発生しても、WTOなどの機関を通じて調停することができる。そのため、アメリカは中国を仮想敵と見なす必要がない。

 それでは、ブッシュ大統領が急いで弾道ミサイル防衛を実施するのはなぜだろうか。

 弾道ミサイル防衛は、大量破壊兵器によってもたらされる「壊滅的な破壊」を防止するためのものであるという。しかし、アメリカの十数の情報機関は2002年初めに提出した評価報告の中で、アメリカが今後直面する最大の脅威は決していわゆる「ならず者の国」の大陸間弾道弾(ICBM)ではなくて、通常兵器、あるいはハイジャックや爆発といった伝統的なテロ襲撃であり、たとえ大量破壊兵器であっても、テロニストは自動車や船など通常の運搬手段をより使いたがっていると指摘した。

 そのため、ブッシュ政権の弾道ミサイル防衛は依然としてアメリカの「絶対的な安全」という戦略的考慮から出たものである。しかし、それと同時にその他の国、特に極東地域の安全と安定をないがしろにした。しかも計画はアメリカの軍需産業グループの欲望を満たすためでもある。専門家の推測では、この陸上中層ミサイル迎撃システムだけでも約640億ドルを費やさなければならないが、多層迎撃システムなら2000余億ドルの投資が必要である。これは共和党の幕裏の支持者であるアメリカの軍需産業グループにとっては、かなりのメリットがある。

 20003月、ブッシュ氏は大統領選挙の中で、もし自分が当選するならば、急速に短距離と長距離ミサイルを迎撃する防衛システムを確立することを公約した。共和党は2002年のアメリカ中期選挙の中で圧勝すると、ブッシュ氏はすぐ目標を2004年の大統領総選挙に転じた。アメリカの世論は、ブッシュ氏はタイムテーブルがあり、20049月、つまり大統領総選挙前の2カ月間に弾道ミサイル防衛を一応完成するというものである。ブッシュ氏はこの防衛システムの力を借りて自分と共和党の大統領選挙の成功を勝ち取ることを望んでいる。

 ブッシュ大統領のこの行為は慎重さを欠くものである。アメリカと旧ソ連が締結した「弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約」はグローバルな戦略的均衡と安定を維持する基礎である。アメリカが一方的にこの条約を脱退したことは世界を驚かせたが、今また弾道ミサイル防衛に着手することは、なおさら国際社会の憂慮を呼んでいる。アメリカのこの行動はグローバルな戦略的均衡を破壊し、新たな軍備競争を招き、世界と地域の安定を脅しかねないだろう。

 ロシア外務省は20021218日に声明を発表し、アメリカが17日に決定した弾道ミサイル防衛に対し遺憾の意を表明するとともに、アメリカが両国の指導者で合意した戦略的協力パートナーシップに優先的に関心を寄せ、宇宙の軍備競争を含めた戦略的防衛兵器の競争を引き起こさないよう希望を表明した。同日、イワノフ・ロシア外相はまた、アメリカの弾道ミサイル防衛がロシアを含めたその他の国の安全の利益を損なわないようにと警告した。

 アメリカ政府はとらぬタヌキの皮算用をするばかりで、自分の行動が新たな軍拡競争を招く深刻な結果を少しも考えていないようである。これは世界平和にとって決して福音ではないだろう。