経済学者が金融リスクを語る

中国では、銀行の不良債権は多いが、金融リスクはそれほど大きくなく、回避できる範囲内にある。

中国経済体制改革研究基金会秘書長 樊綱

 私は日本を訪問した時、「中国では金融危機がいつ爆発するか」と日本の学者に問い詰められた。「危機がすべての国にもあるもので、われわれはずっと金融危機を回避、解消するように努めており、できるだけそれを未来へ押しやるように努力を傾けている」と答えた。

 日本人の質問はわけがないものではない。中国銀行業の問題は国際の関心を引き起こしており、この問題を解決する活路は改革を速めるしかないのである。

 最新の発表によると、中国の国有銀行の不良債権のGDPに占める比率は26%〜27%である。銀行から資産管理公司に移された14000億元の資産(売却部分を差し引いて、まだ11600億元が残っている)を加えれば、不良債権総額は大体GDP40%を占めている。銀行の不良債権について言うなら、中国は世界でも最高の国の一つだと言える。

 おもしろいことに、不良債権がこれほどあるのに、中国の銀行は相変わらず運営し、国民は取り付けに行かないどころか、銀行に金を預けているのはなぜか。最新統計によると、中国の銀行預金は8兆元を上回っているが、経済成長率は78%を保っており、金融危機が発生していない。これから見ても、より広い角度から中国の金融問題を見る必要があることがわかる。

 中国の銀行不良債権はある意味では国債に属するものである。性質について言えば、国有銀行は事実上「国の信用」に頼っており、国が崩壊しない限り、国有銀行は倒産するようなことがない。債務が発生する原因について言えば、不良債権の多くは国が国有企業の運営を維持するために企業に与えた補助であるが、ただそれは財政を通して行うのではなく、国家銀行を通して行ったにすぎない。この意味では、経済理論に基づければ、それは「準国債」に属するものである。資産管理公司に移されたものはなおさら「準国債」に属する。これらは最後に国が国債で返済することになる。

 他方では、これまでに、GDPに占める国債の比率は16%前後に過ぎず(全国人民代表大会が20023月に公表した数字による)、世界でもほとんど最低であり、発展途上国ではなおさらそうである。

 銀行の不良債権と国債を一緒に分析すれば、中国の国債の比率はあまり高くはなく、たとえ外債を加えてもそうである。アジア金融危機からでも、外債が多すぎるのは金融危機を来たす主な原因である(GDPに占める短期外債の比率は韓国は40%弱、タイは30%弱であった)。中国のGDPに占める外債の比率は15%、そのうちの多くは政府間の長期債務であり、短期商業外債はGDP1%しか占めていない(当時、東南アジア諸国の外債の多くは短期商業債務であった)。

 銀行の不良債権、政府の債務および外債はともに国家債務であり、最終的には全社会によって償還される。この三者は合わせてGDP6070%を占めているが、長期外債を入れなければ、5758%にすぎない。この比率は規制できる範囲内のものと言うべきである。

この理由だけに、中国は不良債権を多く抱えているが、金融リスクがそれほど大きくなく、回避できる範囲内にある。中国に金融危機があると言っても、アジア金融危機のような外部リスクではなくて、内部のものである。つまり、実際に発生した銀行の不良債権による信用貸し出しの減少であり、それはすでに発生している。

 外部の金融リスク(対外支出危機)に至っては、経済学の角度から見れば、中国は非常に安全とだと言える。中国の貿易黒字は毎年200億ドルを上回り、経常口座は余剰が保たれ、資本口座の外国直接投資が絶えず増え、しかも外貨準備が2300億ドルに達している(2002年は2600億ドルに達する見込みである)。発展途上国としての中国は資金に欠ける国であり、これほど多くの外貨準備を擁するのは合理的ではないが、それが果たすのは主に金融保険の役割である。

 以上の分析は、中国の金融体制に問題がないと言っているのではない。金融リスクが短期内に発生しないことは、目下の体制で運営していき、どんな問題を解決しなくても、今後金融危機が発生することはないというわけでもない。事実上、中国の金融システムに問題が少なからぬ存在しており、中には銀行体制や資本市場の問題もあれば、銀行体制と資本市場が通じ合ってから起こる金融リスクもある。われわれは改革を加速してこそはじめて、金融危機発生の可能性を避けることができるのである。

著名な経済学者 蕭灼基

 ここ数年、金融危機が東アジアの多くの地方と中南米の一部の国で発生したが、その原因は同じではない。一部の国は外向型経済を強調し、GDPに占める貿易輸出入の割合が大きすぎたため、国際市場の不安定による影響を非常に受けている。すべての国と地域で金融危機が発生した具体的な原因は完全に同じではないが、それを深く分析すれば、根本的な原因は、現在経済のグローバル化が加速したため、これらの国と地域の経済や金融の実力も、また金融の運営体制と監督・管理体制も経済グローバル化と金融グローバル化の情勢に適応しなくなったことにあると言える。

 では、その中からどんな教訓を得ることができるのか。これらの国と地域に存在している問題は中国にも程度の差こそあれ存在していると言うべきである。例えば、外向型経済の面では、20年来、中国の輸出入貿易は大幅に増えており、GDPの増加に大きな役割を果たした一方、それが大きすぎて、国際の不安定の影響を大きく受けている。2002年の経済成長が速かった要因の一つは輸出入貿易であり、1月から10月までの輸出入貿易は20%を以上増えた、つまり、その年の経済成長と国際市場の変動による影響があまりに大きかったため、この趨勢を保っていけば、中国経済の不確実性が大きくなることになる。

 ここ数年実施された積極的な財政政策が国の経済に大いに役割を果たしたと言うべきであり、しかも今では、財政赤字も国債負担もまだ国際の警戒基準線を越えていない。例えば、2002年の財政赤字は3089億元で、GDP3%にならず、まだ警戒基準線以内にある。しかし、積極的な財政政策を推し進めるリスクがますます大きくなる。というのは財政赤字という国債が増えると、結局は、今後の財政収入で補償しなければならないため、今後の負担を重くし、歴史的な重荷となり、同時に、国の投資が一応計画化、行政化のやり方を実行するため、今後の投資体制の市場化改革を難しくするからである。これらすべては今後の発展にある程度影響を及ぼすと言うべきである。

 ここ2年の資本市場の不安定には大きなリスクが潜んでいる。こうした状況を逆転させる措置を取らなければ、資本市場の発展はどうしても多くの困難にぶつかる。だから、政策部門は適時に効果的な政策措置を講じるべきである。現在、一部の具体的な政策は資本市場の発展を推し進めにくいものであり、根本的な政策措置をとるべきであり、つまり体制と政策の革新を行うことである。例えば、外資の中国資本市場進出のテンポを速め、適格の機構が深?証券取引所と上海証券取引所に進出することを許すばかりではなく、中外投資基金と中外投資管理公司の設立によって外資の中国市場進出を加速するなどより多くの方法をとらなければならない。われわれは対外開放を加速することで金融市場と資本市場の発展を促進しなければならない。