金融リスクが回避された

中国には金融企業の不良債権の比率を低いレベルに引き下げる能力と条件がある。

中国人民銀行前行長 戴相龍

 中国金融業の不良資産の比率がわりに高いが、全般的に見て、金融業の運営は穏健、安全の状態にあり、長年続いている金融リスクが回避され、しかもちくじ解消されている。中国には金融企業の不良債権の比率をできるだけ速く低いレベルに下げる能力と条件がある。

 このように言ったのは、次の要素を考えたからである。

 中国経済が持続的に急成長している、A人民幣が安定している、B外貨準備高が速やかに増えている、C外債管理の諸指標はいずれも国際の警戒水準線をはるかに下回っている、D広い意味での公共部門の債務のGDPに占める比率が相変わらず国際の警戒水準線を下回っている、E証券市場と保険業が規範的に発展している、F金融機構の不良債権の比率がちくじ下がっている、G国民が改革においての中国銀行業の発展に対し自信がある。

 もちろん、中国金融業にも差し迫って解決しなければならない問題が存在している。例えば、1992年から2001年までに企業は株式市場から合計7755億元を調達したのに、金融機構からの借金は逆に86000万億元増えた。企業が銀行融資に大きく依頼する状況は根本的に変わっていないため、新たな金融リスクが生じる可能性がある。

 金融リスクを解消するため、中国政府は今後さまざまな面から金融改革を強化する。例えば、@現代化した金融企業制度をつくり、銀行業の国際競争力を高める、A国有独資商業銀行に対する総合的な改革を推進し、2006年までに、外資銀行に内国民待遇を与えるとき、国有独資商業銀行を強い国際競争力を持つ現代化した金融企業に改造する。

 このほか、金融市場をいちだんと整備し、とりわけ資本市場の発展に重点を置き、社会資金の利用率を高める。また、金融監督・管理レベルを絶えず高め、金融リスクを防備、解消し、預金者や投資者、納税人の利益と国の金融安全を守る。監督・管理法規を整備し、監督・管理制度を厳格にし、監督・管理方法を改善し、監督・管理手段を強化し、監督・管理体制を完全にする。

 中国はいちだんと対外開放の金融政策を充実させ、外国の直接投資を奨励するとともに外債を抑制し、証券投資市場を慎重に開放する。市場の需給によって決定される管理付きの人民幣変動為替レート制度をいちだんと完備にし、人民幣為替レートの安定を保つ前提の下で人民幣為替レートの形成メカニズムを改善する。外貨準備状況はレートに大きな影響を及ぼすが、為替レートは経済の基本面や金融システム、外貨管理制度、外貨市場の需給によって決定づけられることがより多い。人民幣対米ドルの為替レートは1986年から1994年までの8年間に2倍下落した。1994年から2002年までの8年間に名目レートは5%上がったが、実質レートは40%以上上がった。以上は、人民幣為替レートが次第に下落から安定へと、さらに向上に転じたことを裏付けている。中国の経済成長は速いが、金融業はわりに脆弱で、外貨供給を規制しなければならない。このため、現行の人民幣為替レートは基本的に実況を反映しているものであり、安定を保つべきである。