日ロが頻繁に接触するのはなぜか

――東京は国際影響力の拡大、朝鮮との関係改善およびエネルギー協力などの問題でモスクワの力を借りることを望んでいる。ロシアは資金と技術の面で日本の協力が必要であるだけでなく、アジア太平洋経済圏への参入およびその他の対外経済協力の面でも日本の支持が必要である。

姜躍春(中国国際問題研究所 副研究員)

 2003年1月9日から12日までの4日間に、小泉純一郎首相はロシアを公式訪問した。訪問中、小泉首相はプーチン・ロシア大統領と双方関係の現状と発展の見通しについて討論し、一連の重要な国際問題、特に朝鮮半島の情勢について突っ込んだ意見交換を行った。会談後、2人の指導者は今後の両国関係を指導する『行動計画』に調印した。その内容には政治的対話を深め、平和条約締結のために努力し、国際舞台で政策協調を強化し、経済協力を強化し、治安と国防分野の協力を強化し、文化交流と人的交流を促進するなどの6つの方面が含まれている。小泉首相はこの『行動計画』が日ロ関係を発展させる「航海図」であると称し、プーチン大統領は『行動計画』が二国間の協力を深化させる「系統的な文書」と見ている。2人の指導者はともに、2003年は日ロ関係が「テイクオフ」し、発展する年であると確信している。

 朝鮮が再び核計画に取り組み始めた後、ロシアの役割が西側に注目されている。ロシアは国際社会とともに朝鮮を説得するとともに、できるだけ日朝両国に存在するいくつかの具体的問題を解決する面で日本側に援助を提供したいと表明した。そのため、小泉首相の今回のロシア訪問は一方では日ロ関係推進の面で試しに突破口を探すことができ、他方では朝鮮半島問題解決の面でロシアの支持を求め、東北アジア地域に対する発言権を強め、日本外交の新しい空間を開拓し、東北アジア地域における日本の地位を高める目的に達し、同時に小泉首相の政治的資本を増やすことができる。

 そのほか、日本はエネルギー消費大国であり、日本の使う石油の90%以上は中東から輸入している。アメリカやEUと同じように、日本もロシアとの協力を通じてエネルギー輸入の多元化を実現することを望んでいる。そのため、ロシアとのエネルギー協力強化も小泉首相が今回モスクワを訪問するにあたって考慮した重要な問題である。

 新しい世紀に入ってから、日ロ間のハイレベルの相互訪問が増え、経済協力が著しい進展をとげている。2000年4月、森喜朗首相はプーチン大統領とサンクトペテルブルクで会見し、両国が戦略的協力と地域協力の推進、広範な経済協力の実施、平和条約の締結という三つの分野で「同時に進める」ことに同意した。2000年9月、プーチン大統領は日本を訪問し、双方は平和条約締結、経済協力展開などの問題を討議し、国際実務面における相互協力の共同声明、経済貿易分野における協力強化の綱要に調印し、2年間中断していた関係正常化のプロセスを回復した。2001年6月、小泉首相はプーチン大統領と会談し、広範な分野で協力する重要性を再確認し、成果をあげた基礎の上で平和条約を締結することに同意した。両国は関係経済貿易問題について協議する日ロ経済貿易政府委員会を設立した。

 貿易紛争を解決し、投資環境を改善するため、双方はまた貿易投資促進機構の設立を決定した。日本の大型経済貿易代表団も次々とロシアを訪問した。日本の公表した数字によると、2001年の日本の対ロシア輸出は40%増え、対ロシア直接投資は前年より2倍増えた。そのほか、ロシア側は日本がシベリアと朝鮮半島との鉄道接続工事とサハリンの石油と天然ガス開発プロジェクトなどに参与するのを歓迎している。

 日本側から見れば、ロシアとの関係強化は、その外交戦略の重要な構成部分である。日本は国際影響力拡大、朝鮮との関係改善などの問題でモスクワの力を借りることを望んでいる。2002年に川口外相はロシアを訪問した際、国際関係の中で、日ロ関係は「互いに補充し合い」、「日米中ロの相互関係は東北アジア地域の発展と安定に対し重要な意義がある」と強調した。小泉首相は今回の訪問に先立ち、メディアの記者に、今回の訪問の目的はプーチン・ロシア大統領と一緒に「日ロ関係に新しい活力を注ぎ込む」ことにあると語った。日ロ関係を「実質的な新たな段階」に高めるため、日本は関係安定、平和条約締結、経済分野および国際問題の面での協力という対ロシア関係の基本方針を打ち出した。

 日ロ両国の人的、商品、資金の交流は日本の八大国との二国関係の中で最も薄弱なものである。その貿易額は日米貿易額の40分の1、日中貿易や日本とEUの貿易額の20分の1にすぎない。日本は世界最大のエネルギー輸入国であるが、ロシアは世界で数少ないエネルギー輸出国の1つである。日本の石油はずっと中東に依存し、中東情勢はアメリカのイラク攻撃情勢の進展に従って緊張に向かい、この背景の下で、ロシアのエネルギーの対日吸引力は大幅に増加している。

 ロシア側から見れば、プーチン大統領は就任してから、「東西を同時に重視し、ヨーロッパとアジアのバランスを保つ」という外交政策を積極的に推進し、西はNATOの東への拡張とWTO加盟を積極的に受け入れ、東は東北アジア地域でさらに大きな役割を果たすことを望んでいる。特にロシアは目下経済回復期にあり、資金と先進技術の面で日本との協力をさし迫って必要としているばかりでなく、アジア太平洋経済圏への参入とその他の対外経済協力の面でも日本の支持が必要である。第2次世界大戦の交戦国として、ロシアは今なお日本と平和条約を締結していない。近年来日本のいわゆる「政治経済不分離」の原則がいくらか緩んだにもかかわらず、ロ日関係に依然として実質的な進展が見られない。日ロの経済貿易関係が活力に欠けているだけでなく、ミサイル防御などの安全問題の面でも、両国はしばしば衝突することがある。プーチン大統領が推し進めている「バランスを保つ」対外政策に基づけば、明らかにロ日関係の現状はロシアの国益に合わないのである。

 昨年、川口外相はロシアを訪問した際、政治関係の発展が緩慢であるため、ロ日の経済貿易協力もひどく立ち遅れているが、双方は平和条約締結を通じて両国関係を完全に正常化させ、両国関係を斬新のレベルに高めるべきであると表明した。ロシア側も、ロ日の経済貿易関係が両国の間に巨大な潜在力があることとつり合わないとしている。プーチン大統領は、ロシア側は日本との協力の全面的発展に力を尽くすと表明するとともに、ロ日双方は二国間の経済問題をより積極的に発展させるべきであると特に強く指摘した。調印したばかりの『行動計画』が両国の今後の経済貿易協力強化のために新しい活力を注ぎ込み、特にロシアのサハリン島の石油と天然ガスの採掘、ロシアのシベリア鉄道大幹線の現代化改造、極東とシベリアの林業などの面の協力は一定の成果をあげることができると見られる。

 しかし、両国が最も大きな障害の面でいかなる進展も見られないため、新しい枠組みが両国関係に注ぎ込んだ活力と実質的進展も限られたものになろう。日ロ間の最大の障害は依然として領土問題である。いわゆる領土問題は第二次世界大戦の時ソ連に占領された国後、色丹、歯舞、択足などの4島を指す。第二次世界大戦終結後、日本はずっとソ連とそのあとのロシアが「北方4島」を帰還するよう求め、また「北方4島」解決の問題を両国の平和条約締結と結びつけている。日本側は従来から領土問題を解決しないと日ロ平和条約を締結できないと主張している。日ロ両国の領土問題をめぐる論争が長期にわたって解決されていないため、両国関係の基礎としての平和条約もなかなか締結されず、両国関係の発展はそのため影響を受けている。小泉首相の今回のモスクワ訪問は依然としてこの原則を緩めていない。日本の言う日ロ関係を「実質的な新たな段階」に高める本当の目的は領土の紛争を解決し、日ロ平和条約を締結することにある。ロシアが日本と共に日ロ間のすべての歴史的に残された問題を解決したいと表明したにもかかわらず、両国国民の感情に影響を及ぼすこの主権問題を解決するのは決して容易なことではない。