政治面でますます活躍する私営企業家

――多くの私営企業家が全国人民代表大会の代表と中国人民政治協商会議全国委員会の委員になり、省クラスの政府機構で仕事をする人もいる。これは中国共産党第16回全国代表大会後の新しい現象である。

夏 林

 第10期全国人民代表大会と全国政治協商会議の第1回会議が開幕したばかりだが、この二つの会議の代表と委員の中に私営企業家が多くいる。

 全国人民代表大会は中国の最高国家権力機関と国家立法機関であり、毎年会議を一回開き、任期は一期5年である。中国人民政治協商会議全国委員会(全国政協または人民政協と略称)は、中国共産党の指導下の多党合作と政治協商の重要な機構であり、中国の政治生活の中で社会主義民主を発揚する重要な形態の一つである。現在、人民政協は中国共産党、民主諸党派、無党派民主人士、人民団体、各少数民族と各界の代表、香港特別行政区と澳門特別行政区の人士、台湾同胞と帰国華僑同胞の代表および特別招請人士からなっている。人民政協の主な機能は政治協商、民主監督、政治参与と政治討議である。全国政協は毎年会議を一回開き、任期は一期5年である。

 中国共産党第16回全国代表大会(2002年11月)閉幕後のわずか数カ月の間に、一部の非公有制経済人士が速やかに中国の政治舞台に上がり、その人数の多いことは新中国成立以来まれに見るものであり、わりに高い職務を担当している人もいる。

 1月21日、8億元以上の資産を擁する42歳の私営の浙江省伝化グループ董事長(取締役会長に相当)徐冠巨氏が浙江省政治協商会議副主席に当選した。徐冠巨氏の伝化グループは浙江省の規模最大の私営化学工業企業であり、いまはファイン・ケミカル、物流、ハイテク農業などの近代的な企業を多数擁している。氏は浙江省工商業連合会会長の身分でこの職務に当選したのである。

 さる1月、重慶市の力帆実業グループ董事長の尹明善氏はこの市の政治協商会議副主席に当選した。同氏は1970年代末に中国で改革・開放が実行されてから最初に省クラス政治協商会議指導グループに入った私営企業家である。

 1月29日と1月31日に閉幕した北京市政治協商会議、人民代表大会で新たに当選した委員と代表の中で、新顔が人々の注目を集めている。市第12回人民代表大会代表の中で、民営企業の人数は15人もおり、前期より大幅に増えた。北京市政治協商会議の第10期委員の中で、非公有制経済の人士が47人おり、前期より17人増えた。この2つの機構の関係者は「これほど多くの非公有制経済人士が代表や委員に当選したことは、歴史上初めてのことである」と語った。上海、遼寧、河北、青海でも同様な状況が見られた。

 事実上、非公有制経済の人士が地方の人民代表大会と政治協商会議で活躍していることは珍しいことではなく、それ以前に、彼らが省クラスの職務を担当したことがないだけである。全国工商業連合会の統計によると、過去の5年間に、非公有制経済人士のうち、県以上の各クラス人民代表大会代になった人は9065人、県以上の各クラス政治協商会議委員になった人は3万2025人いる。

 私営企業家がそれぞれ中国の東部と西部の2つの重要な省の省クラス政治協商会議の指導部に参加したことは、中国共産党第16回全国代表大会後に現れた新しい現象である。

 浙江省政治協商会議委員・私営企業家の邱継宝氏は、徐冠巨氏の当選は、彼個人の栄誉だけではなく、これにもまして民営企業家の光栄であり、「われわれは中国の特色のある社会主義事業の建設者としての平等な地位が体現されている」と語った。邱継宝氏は中国共産党第16回全国代表大会の代表である。

第16回党大会が彼らの政治参与の基礎を固めた

 徐冠巨氏の当選について、地元の人びとは遅かれ早かれのことだと思っている。浙江省は民営経済の本場であり、非公有制経済は浙江省の経済総量の4分の3を占め、私営企業は社会経済の重要な構成部分として、その代弁者が地方の高級指導ポストにつくのは全く考えられることである。

 昨年、有名な社会学者陸学芸氏が中心となって行った研究は、私営企業家階層の階層意識が次第に生まれていると指摘した。報告は、今日の中国の社会階層構造の変化に従い、私営企業家の階層はますます大きくなっており、彼らの間に共通する特徴がますます際立っており、彼ら自身も次第に大体同じな見方をもつようになっている。これは主に次の互いに関係ある二つの問題の上に集中していると述べている。

 1つは私営企業家が普通的に社会階層構造における自分の政治的地位に関心を持っているが、これは実際には自分の前途と運命に関心を持っていることである。もう一つは自分の合法的権益、特にその私有財産の安全に関心を持っている。

 報告が指摘しているように、在来のイデオロギーの妨害で、私営企業家階層の政治的地位はずっとその経済的地位とマッチしておらず、彼らの社会政治活動への参加が大きく限られている。経済実力の増強と階層人数の増加に従い、私営企業家階層はかならずそれ相応の政治的要求を提出し、政治への参与をある程度実現して、その階層の意識と合法的権益を表明する。

 これは中国の私営企業家の政治的生態の最新の現れであるかも知れない。中国共産党第16回全国代表大会の後、このような生態が驚異的なスピードで変化しているのは明らかである。

 アナリストによると、非公有制経済の人士が中国共産党第16回全国代表大会の代表になったあと、新しい階層の多くの人物は全国各地の各クラス人民代表大会と政治協商会議の代表や委員になったことは、とても大きな現実的、象徴的意義がある。北京大学人民代表大会と議会研究センター実行主任の蔡定剣氏は、「これは歴史的発展の必然であり、新しい階層の経済実力が強くするに従い、彼らは必ず政治上の発言権を求める」と語った。

 2001年現在、全国で登録された個人経営商工業者は2433万戸、私営企業は202万8500社あり、登録資本金は2兆1648億元であった。

 昨年11月に開かれた中国共産党第16回全国代表大会は「すべての合法的な労働収入と合法的な非労働収入」を保護することを提出するとともに、私営企業家などの新興社会階層がみな中国の特色のある社会主義事業の建設者であることを提出した。社会学者の呉志誠氏は、これは尹明善氏のような「先に豊かになった人」の自分の財産の安全に対する心配も取り除けば、私営企業家の政治的地位も正式に確定したと語った。

 呉氏は「新しい社会階層の社会の栄誉と政治的待遇を求める強い願望は、国からいちだんと認められている。これは中国が政治の民主化を推進する重要かつ具体的な現れである」とも語った。  

政治参与・政治討議の願い

 どの角度から見ても、これら新たに政治的舞台に上がった非公有制経済の人士はみな新しい社会階層の代弁者であり、しかも強い政治参与・政治討議の願いをもっている。

 尹明善氏は、自分は「非公有制経済界の提案と声に真剣に耳を傾け、それを関係方面に伝え、国の政治に参与し、国の大事を討議し、全市の非公有制経済の大発展を促進するためにたゆまず努力する」と語った。

 徐冠巨氏は、政治協商会議の副主席として、必ず政府が非公有制経済の人士と連係する橋わたしの役をりっぱにつとめ、政府が非公有制経済を管理する助手をりっぱにつとめると語った。

 2億元余りの固定資産を擁し新たに北京市人民代表大会代表に当選した王建華氏は、「わたしは非公有制経済界の提案と声を国の意志に高める」と語った。

 より多くの非公有制経済の代表、委員は、驚くほどの責任感と広い視野を見せている。彼らの議案、提案は往々にして個人の産業と分野を越えて、社会生活の各方面にかかわっている。

 浙江省人民政府参事室参事の金士希氏は、優秀な民営企業家を指導ポストにつかせるのは、実際には私営企業家という階層と政府を結ぶルートを増やすことで、私営企業の困難と動きを直接政府に伝えることもできれば、政府公務員の資質、意見、欠点をすかさず指導層に伝えることもできると考えている。

 統計によると、中国の各クラス人民代表大会と政治協商会議の代表、委員になった私営企業家の人数はだんだん多くなり、政治参与・政治討議の面でますます際立った役割を果たしている。

 中国共産党重慶市委員会統一戦線工作部副部長、市工商業連合会党グループ書記の徐登全氏によると、重慶市の今回の人民代表大会と政治協商会議では、統計によると、非公有制経済の代表と委員は前期と比べて大幅に増え、総数はそれぞれ58人と93人で、増幅は30%以上に達した。これは、重慶市の政治生活の中で非公有制経済の代表人士がますます重要になり、彼らが特に政治参与・政治討議の面で果たす役割もますます際立っている。

 国家統計局の公表したデータによると、私営経済は中国経済の中で国有企業と民間企業に次いで第3位を占めている。2001年末現在、中国に132万3000社の私営企業があり、企業総数の43.7%を占めている。改革・開放の中で一歩先行した浙江省では、商工業分野の非国有経済の比率はすでに1978年の38.7%から現在の95%以上に上がった。

どのように両者の関係にバランスを保たせるか

 私営企業家として、公共利益を代表する代表者としての政治協商会議副主席との間で、どのように両者の関係にバランスを保たせるか。

 富を擁することは一種の責任であり、富が多ければ多いほど、社会に対する貢献もますます大きくなり、そのため、まず企業を立派に経営しなければならないと徐冠巨氏は語った。

 副主席に当選した尹明善氏は次のように述べた。「以前の認識は片寄ったものである。つまり、全力あげて会長を立派につとめ、工商業連合会の仕事をよくやることだけを考え、企業のことはさほど重要でなくなったように思ったが、いまは企業をりっぱに経営することが依然としてとても重要だと感じており、企業が大きくなり強くなってこそはじめて非公有制経済の発展を実現することができる。企業の日常の経営管理をより多く職業の経営者にやらせなければならず、なんでも自分でやるわけにはいかない。力帆グループは高級指導グループを調整したばかりで、職業経営者の力を強化し、経営管理がいっそう秩序立つようになり、董事長はいっそう超脱している。こうすれば、私はより多くの時間と精力をさいて工商業連合会と省政治協商会議副主席の仕事をやり、全市の非公有制経済の大発展促進のためにたゆまず努力することができる」。

 尹明善氏の指導する重慶市力帆グループは、全国最大のオートバイメーカーの一つである。10年前、9人がわずか20万元の資金に頼って創業を始めたが、いまは力帆グループの年産額が40億元前後に達し、年間の利益と納税額はそれぞれ1億元に達し、年間の輸出による外貨獲得額は1億ドルを越えている。それと同時に、企業はまた社会に4万のポストを直接あるいは間接的に提供している。

 昨年末現在、重慶市の非公有制経済の従業者は50余万人に達し、全市のGDPの中で非公有制経済は42%以上を占めている。重慶市は2005年までに非公有制経済のシェアを国有経済を追い越して55%以上に高めることを計画している。この目標を実現するため、重慶市はいま全市の非公有制経済の快速、健全な発展を促進するために積極的な努力を払っている。他方では、非公有制経済の発展は非公有制経済人士の健全な成長にも頼っており、企業の経営者たちの政治的自覚と経営管理資質のいかんは、企業の発展に直接影響を及ぼすであろう。