アメリカの「フセイン政権転覆行動」は中国にも響いている

 この行動による国際原油価格高騰などの問題は中国の関係業界にも影響を及ぼしている。

         唐元カイ 

 「ここんところ、私は毎日のようにアメリカのフセイン政権転覆のために金を払っている」と北京のタクシー運転手の葉偉さんが冗談半分に言った。

 この間に、ガソリン価格が何回か値上がりし、93#ガソリンは一カ月前はまだ1リットル3元足らずだったが、2月1日には3.2元になった。

 中国民用航空総局は昨年10月10日、「国際燃油価格の値上がりで、国内航空券の値段が6%ほど上がる」と発表した。今年は国際航空機用燃油の値段が1トン当たり380元値上がりしたため、中国民航の国内線の航空券は2月10日から17%値上がりした。それと同時に、一部の航空公司の上場株価は著しく下落した。

 このほか、ポリマーやプラスチック原料などの価格は10%前後上昇し、プラスチック製品とゴム製品の値段も変動している。例えば、北京のプラスチックの値段は1トン当たり6800〜6900元で、今年2月以前より100元上がった。また、天然ガスなどエネルギーの価格も上昇した。昨年末に、瓶詰め(14.5キロ)の民用液化ガスの小売価格は2週間足らずのうちに3〜4元値上がりした。そのほか、電力、石炭、繊維などの工業部門や食糧など生産財と消費財も影響を受けている。専門家の話では、石油価格が1バレル当たり10ドル値上がりしたら、1つの国の経済成長率は0.1ポイント下がるが、中国はさらに1ポイント下がる可能性がある。

 中国の株式市場は国際の脈動を感じ取っている。例えば、2月10日、上海と深センの証券市場では株価が小幅に上下し、上証総合指数と深証成分指数の終値はともに1.3%下落した。

 12年前にアメリカをかしらとする多国籍軍がイラクに対し「砂漠の嵐」作戦を起こした時、国際原油価格は立て続けに高騰したが、当時はまだ石油輸出大国だった中国は利益が被害より大きなものであった。

 20余年前の中国では、石油の国内需給はバランスのとれた状態にあり、一人当たり石油年間消費量は1218.4キロという世界の平均レベルよりはるかに低い242キロであった。近年は経済発展につれて、中国の石油需要量は急速な増加を見せ、その速度は国内の石油生産量の増加よりずっと速いものであり、中国はアメリカと日本についで3番目の石油消費と石油輸入の大国となった。2001年の中国の原油輸入量は6000万トンを超えた。このような変化で、中国は世界の突発事件から影響をきわめて受けやすいようになった。

 調べによると、中国国内市場の原油供給が輸入に頼る比率は1995年の6.6%から2000年の25%へと年を追って上がっており、今年は30%前後に達し、2005年ごろには、さらに32.5%に上がり、原油輸入量は1億トンに激増し、2020年は2億トンに達し、2030年の1日当たり輸入量は現在の200万バレル足らずから980万バレルに増える、と専門家が推測している。米エネルギー省の発表した『国際エネルギー展望』も、今後の20年内に、中国の1日当たり石油輸入量は欧州の1日当たり輸入量の740万バレルに達し、アメリカにつぐ世界2番目の石油輸入大国となると予測している。

 中国石油化工グループ公司の専門家の推計によると、中国の1日当たり輸入量が200万バレルであれば、国際原油価格が1バレル当たり5ドル値上がりすると、中国は毎日1000万ドルを余計支払うことになる。

 中国石油化工グループ公司経済技術研究院経済政策研究所の曹暁所長は、急速に発展している中国経済は石油に対する依存度がますます高くなり、石油資源環境の深刻化に直面すると指摘している。

 昨年、中国石油業界でメディアと専門家に「メルクマール的事件」と称される事件が発生した。中国石油化工グループ公司と世界石油巨頭の米エクソン・モービル・ケミカル社が30億ドルの契約を結んだ。契約によると、双方は福建製油所の1日当たり8万バレルの生産能力を24万バレルに高め、中国の燃油生産量を増やすことになる。エクソン社は中国の南部にガソリンスタンドを1100カ所建設することになっている。

 中国の年寄りにとって、「モービル」は耳慣れない名前ではない。1930年代では、中国人は石油ランプのことを「モービル燈」とも呼んでいた。1960年代になると、中国が「大慶」と「勝利」油田を開発したため、中国人は「モービル・オイル」を使わないことを誇りとした。

 「モービル社が再び中国に進出したときに直面する中国の様相は完全に変わっている」と指摘する論評がある。

 国家経済貿易委員会運行局の馬力強局長によると、当面、中東やベネズエラなど石油産地の情勢が安定せず、中国国内の原油生産量が伸び悩み、原油輸入が年を追って増えているため、国内の原油生産・加工と原油輸入総量とのバランスを保ち、原油の供給を確保し、原油、製品油の合理的な在庫量を保つことは重要かつ緊迫であるように見える。

 情勢の変化によって、中国石油化学工業界と主要な中堅企業は原油輸入を増やし、原油と製品油の在庫量を合理的なレベルに保つように努めている。中国石油天然ガスグループ公司と中国石油化工グループ公司の原油と製品油の在庫量は大体1000万トン前後に保たれており、短期間内に国内の原油と製品油の供給に問題がない。

 「国際原油価格の急騰に対処するため、中国は原油の在庫量を増やすほか、石油の戦略的備蓄についての研究を加速し、輸入依存度を下げることも必要である」と馬局長は語った。

 事実上、「石油の戦略的備蓄と国のエネルギーの安全確保」という構想が早くも2001年3月に全人代で採択された国民経済と社会発展の第10次五カ年計画(2001〜2005)の中に記入されている。

 国外の原油に対する依存度の増加につれて、中国石油の戦略的備蓄制度の欠点が明るみになり、「中央政府が計画的に採掘している油田と天然ガス田の採掘を停止するか、または採掘量を減らして、戦略的備蓄資源とするのはどうしてもやらなければならなくなる」と関係筋が語った。

 しかし、戦争が爆発しても、国内の原油価格がすぐ急騰するわけでもない。というのは、一方では「フセイン政権転覆」を目標とする戦争の特性(ブッシュ大統領が戦争を発動する理由が2つあるという。1つはアメリカの国家利益から言って、中東にある石油のためであり、もう1つは彼個人の角度から言って次期の大統領選のためである)によって決定づけられ、しかも石油輸出国機構(OPEC)と産油諸国の協調能力が強いため、戦争期間に石油価格を抑えることができる。他方では、国内の価格システムによって決定づけられる(石油価格がすでに国際とリンクしているが、目下中国の石油価格は依然として国の規制可能な範囲内にあり、国際石油価格は参考にすぎない)。