中国、大学卒業生の西部地区での就職を奨励

――今年、全国では5000-6000名の大学卒業生が中国西部地区での就職を願い出しており、さまざまな優遇政策を受けることになっている。

唐元ト

6月12日午前に江西漢方医学院四年生の李美萍さんは『中国青年報』に掲載された「大学生の西部地区での就職希望に関する計画」という文章にしっくり目を通した後、その日の午後に学部に求職の申込を行ったため、同学院の西部地区での就職希望者のナンバーワンとなった。

「大学生の西部地区での就職希望に関する計画」は中国共産主義青年団中央委員会と教育部が最近共同で打ち出し、実施されるものである。その具体的な規則によれば、2003年から毎年、全国での公開募集、自由意志による応募、学校側による推せんと派遣という形で行われる一定数(今年は5000-6000名)の大学卒業生が西部地区の貧しい県や郷、鎮で教育、医療・衛生、農業技術、貧困扶助などの分野で1年間ないし2年間就職することになっている。この措置は、西部地区の発展の促進と大学卒業生の就業、創業のルートの開拓に役立つものである。

李美萍さんはその求職申込の中でこう書いている。「医師になっても、教師になっても、あるいは医療関係の職業に従事しても、私は真面目にこつこつと頑張りつづけ、西部地区のために自らの青春を捧げたい。西部地区を就職先としたのは、慎重に考え抜いたうえでの選択であり、私の最も誇りとする選択でもある。これはチャンスであり、私はそれをしっかりとつかみたいと思っている」。

李美萍さんの選択は、学校で大きな反響を呼んだ。「西部地区はいつも干ばつや水不足、水飢饉に見舞われている貧困で、立ち遅れた地区である。医薬の不足も深刻である。女性であるのに自ら苦労を求めるのはなぜか」と、仲のよい友達までがなかなか納得できなかった。

クラスメートのさまざまな見方に対して、李美萍さんは「自己実現はわたしの最大の夢であり、大都市は収入が高く、生活環境もよいとはいえ、西部地区での就職なら若者は鍛えられることになり、医薬や人材の不足がひどいだけに、自分としての役割を十分に果たすことができるのではないか」と考えている。

学校の教師たちは彼女の行動に賛同の意を示し、今年度の卒業生にとって、最も重要なのは現実にマッチした就業観の転換だと見ている。教師たちはいま、社会に対する責任感を強め、意識的に末端や困難な環境で鍛えられることによって人材になるよう大学生たちを導いている。

中国の西部地区は12の省、自治区、直轄市からなり、経済の発展が比較的立ち後れ、人材の需要もかなり大きい。卒業生たちにとって、西部地区を就職先とするのは、個人の就職選択と社会の需要とを結びつける重要な道筋である。

李美萍さんが求職の申込を出した翌日、3人のクラスメート(男子)も申込を提出した。伝えられるところによると、数多くの大学卒業生が西部地区での就職希望を提出したとのこと。北京大学医学部公共衛生学院予防医学専門の莫鋒さんは福利厚生などが業界内でトップと認められている深セン疾病予防防止センターの就職をあきらめて、西部地区での就職を選んだ。

「深センは生活レベルも医療レベルも比較的高い都市である。深セン疾病予防防止センターには修士号取得者や本科卒の人たちが大勢いるため、私の就職はセンターにとってはそれほど意味はない。しかし、西部地区へ行くなら、地元の疾病予防防止センターでは草分け的存在、人々の立ち後れた考え方と生活様式転換のための指導など多くの仕事をすることができる。

中国共産主義青年団中央委員会の「青年希望者行動指導センター」の電話は最近開設されて以来、ベルが鳴りつづけている。各省、自治区、直轄市にも関連の機構が設置され、問い合わの電話が開通した。

中国共産主義青年団中央委員会書記処第一書記の周強氏は次のように述べている。

われわれは西部地区の需要に基づいて、品行と学業に優れ、献身的な精神を持つ卒業生の西部地区での就職の指導と推せんを行っている。この措置は西部地区の教育や医療・衛生など社会事業の発展の促進にとっても、近代的な科学文化知識をマスターし、末端での仕事の経験と強い社会的責任感を持つ優れた人材の育成にとっても、また大学卒業生の就業プレッシャーの緩和にとっても寄与するものである。

伝えられるところによると、西部地区での就職希望者は国が制定した優遇政策のほか、関連部門のさまざまな「優遇」を享受することになる。例えば、在職中、希望者は生活手当て(西部地区では毎月600元、チベット地区では毎月800元)、交通手当て(毎年1000元、チベット自治区と新疆ウイグル自治区は国の関連規定により別に規定する)、人身傷害保険と入院・医療保険などを享受することができる。希望者の就職先が12の省、自治区、直轄市の百以上の県に及んでいるため、管理の難度はかなり大きい。管理の仕事を強化するため、中央と地方政府は特別弁公室を設置した。また、生活手当ての期限どおりの発給を確保するため、関連部門は監督指導部門を設立し、「希望者向けキャッシュ・カード」を発行することになっている。希望者はオンライン支払いで生活費を引き落とすほか、商店やマーケットでの割引などの特典を受けることもできる。

教育部の規定では、「大学卒業生の西部地区での就職希望計画」に参加し、満期後に勤務状況が適格だと見なされたものは、大学院生を受ける場合には点数(具体的な点数はまだ決まっていない)の面で優遇措置があり、同等な条件の下では優先的に扱われる。また、優れた希望者は特別の待遇を受け、党と政府機関の公務員になることを希望するものは、採用試験でも点数の面で優遇措置が設けられ、同等な条件の下で優先的に扱われることになる。

伝えられるところによると、中国共産主義青年団中央委員会は西部地区の12の省、自治区、直轄市の求人側についての情報の調査を行った。これまでのところ、求められている就職ポストは3万2000で、そのうち、新疆ウイグル自治区だけでも3200に達した。就職ポストは主に郷・鎮の学校の教師であり、約35%を占めている。郷・鎮の医療・衛生機関関係と農業技術、企業管理、ハイテク企業の新製品開発関係の就職ポストもそれぞれ約3分の1を占めている。

西部地区では、多くの地方政府の責任者は希望者の西部地区での就職を待ち望んでおり、目下希望者のための準備作業や日常生活の手配に取り組んでいる。

関連部門の計画では、募集が終わった後、西部地区への就職希望者は8月末から9月初にかけて、それぞれの就職先に配属されることになる。