新聞の運命に関わる改革

李 子

行政職権を利用して新聞・雑誌の発行を割り当てる各種の行為が根本から抑制され、中国がWTOに加盟する時に行った公平な約束を実践する。党と政府機関および地方の業界協会に属するかなりの数にのぼる新聞・雑誌が圧縮され、新聞界が1歩進んで市場化に向かう。行政権力が新聞・雑誌経営活動から退くことを中心の内容とする新聞・雑誌業の整備運動は、いま中国で展開されつつある。この改革の目的は健全で、繁栄した新聞・雑誌市場を強力に推進し、新聞・雑誌業の先進国との距離をできるだけ早く縮めることであり、そのため、中国のマスコミ業は再び整備することに直面するだろう。

国家報道出版総署が下達した中央弁公庁、国務院弁公庁の「党と政府部門の新聞・雑誌の散乱、氾濫および職権を利用しての発行を一歩進んで整備し、農民と末端の負担を軽くすることについての通達」を実行することに関する実施細則によると、中央の党と政府部門が運営している新聞・雑誌は部門と「管理と運営の分離」を実行し、読者が自費で予約購読することにある。いわゆる「管理と運営の分離」とは主管部門と新聞をつくる部門が人員と財務と発行を分離することを指す。中央の同一部門の現有の新聞・雑誌のうち、内容が似通い、交差、重複しているものは、1つに合併する。国の定めた新聞・雑誌出版の質の基準に達していないが、あるいは主に所在部門の内部で発行し、読者が自費で予約購読する数量が発行総量の50%に達しない新聞・雑誌は刊行を停止する。

「細則」は、今後各省、自治区、直轄市の党委員会は党の機関紙と党の刊行物を一部ずつ主管、主宰し、各地区クラスの市は党の機関紙を1部保留する。省クラスと省クラス以下の司法、公安、財政、税務、商工、計画出産、交通、検査・検疫、環境保護、消防などの部門に所属する業界の性格を持つ協会、学会、研究会などはいずれも新聞・雑誌を発行せず、発行しているものは一律に刊行を停止すると規定している。

整備、調整、圧縮の仕事は、今年9月末以前に完成するが、これらの措置の目的はすべて、行政権力を新聞・雑誌市場の経営活動から退かせ、良性の市場競争メカニズムを構築し、新聞・雑誌の経営活動をいっそう規範化させることにある。

今日の改革で影響を最も大きく受けるのは業界紙であり、ほぼ1000余社の新聞の運命が変わるだろう。

資料によると、2002年に中国で定期刊行物が9029種、新聞が2137種出版された。この2100余種の新聞の中で、業界紙が半数近くを占めている。

アナリストの予測によると、今年下半期に、新聞・雑誌市場の構造調整、資源分配、市場効益など一連の企画が実際的な操作段階に入るが、その目的は健全で、繁栄した新聞・雑誌市場を強力に推進し、新聞・雑誌業の先進国との距離をできるだけ早く縮めることにある。

中国がWTOに加盟する時に行った約束に基づいて、現在、大陸部の図書、新聞・雑誌の小売り業務はすでに自由化し、来年は出版の卸業務も自由化する。このような情勢の下で、メディアの整合はもはや大局の赴くところとなり、それによって自由化によってもたらされる競争に対応することになろう。

市況に基づくと、西側諸国のいかなる人口10万以上の都市でも、総合的日刊紙が一つしかない場合、利潤を獲得できるはずであるが、中国の人口50万以下の都市の日刊紙のうち、欠損を出しているものが多く、利潤を獲得しているものが少なく、しかも真に市場に向けていないのである。

中国人民大学世論研究所の喩国明所長は、中国のマスコミ業は資本実力、経営理念、管理体制および人材資質の面で、世界の同業者とかなりの格差がある。それを改革しないならば、ますます激しくなる国際競争の中で日ましに失敗するだろうと見ている。

行政手段による新聞・雑誌の発行を禁止

2002年末、国家報道出版総署は2つの外国のメディアグループの中国発行市場への進出を認可した。その1つは香港泛華科技グループ有限会社であり、もう1つは李嘉誠傘下のTOMグループである。喩国明所長によると、中国がWTOに加盟する時に行った公平な約束に基づいて、行政手段を使っての新聞・雑誌発行を禁止するのは大局の赴くところである。

新聞・雑誌は割り当てを認めないことのもう1つの意味は、メディアが読者の願いを尊重し、彼らの自由な選択の権利(憲法は公民に信仰の自由を与えており、同じように彼らも閲読を選択する自由がある)を尊重しなければならず、メディアは読者を獲得するには、読者の必要に順応しなければならないことである。

割り当てを実行する新聞・雑誌はたいてい政府の管理部門のものである。例えば業界紙の発行ルート、広告の得意先、予約購読者などは大部分が業界紙の政府管理部門に頼り、自らの管理職権を利用し、公文書を発送したり、指標を出したりするなどの手段で、強行して割り当てている。

割り当てのもたらすマイナス効果は多方面にわたっている。割り当てられた者の負担を重くするほか、主宰側に多くの問題がある。例えば@行政権力を借りて小さな団体の利益をはかることは、実際には権力を貸し出すことで、社会の腐敗の風潮を助長する、A業界紙を強行利用して、自らの業績を過度に持ち上げ、仕事の面で能動的な革新意識に欠ける、B市場で自らの発行する新聞・雑誌に頼って不公平な競争を行って、新聞・雑誌市場をかき乱す、C割り当てを実行するため、収益のために頭を悩まさないで済み、これらの新聞・雑誌は市場競争に参与する必要がないため、自己改革と自己発展の原動力がなくなり、ひいては従業者の頭がかちがちになり、進取を考えないようにするなどは、そのいくつかの例である。

国の司法機関から社会の団体に至り、経済管理部門から社会管理部門に至るまで、かなりの数量の新聞・雑誌は割り当てに頼って収益をあげている。割り当てをしなければ、そのうちのかなりの新聞・雑誌は根本から生存することができない。

多数の新聞社の責任者は、これが新聞社にとってなかなかない発展のチャンスだと思っている。国家部・委員会に所属するある新聞の社長は記者に、「所属部門に人件費、経営費を出してもらうと仕事がやりつらくなり、人事管理が制約されるだけでなく、毎日大量の紙面をさいて上級指導者および部門の内部活動を報道しなければならない、このような報道は一般の読者にとって意義がなく、新聞の競争力を小さくし、発行する時に強引な割り当てに頼ることしかできない、このようなやり方は市場競争の中であまり意味がない。発行の割り当ての停止で、新聞社が市場化の構想を広げ、新聞の質を向上させるよう促すだろう。

生と死の選択

今回の新聞業界の改革は党の機関紙、党の刊行物、機関の刊行物を整理、整頓するほか、より重要なのは行政部門から離れたこれらの刊行物を市場に押しやり、損益を自己負担するよう促すことである。これに対する業界紙と機関紙の反応は異なっている。

労働・社会保障部所属の『中国労働保障報』編集長室のある関係者は、いま同社は次の段階の新聞づくりの構想を練っており、「われわれは自らの強みに頼って『職業導報』を出し、すでに市場でしかるべき地位を占めている、改革はわれわれがさらに市場化するよう促すだろう」と語った。

『中国経済導報』の関係責任者も、同紙は1996年から市場化の改革を実行し始めたが、いまでは経費面で損益の自己負担を実現したと語った。

しかし、湖南省国家税務局のある機関誌の編集者はやはり心配している。「今回は風が吹きとおるような改革でないように感じる」。自分が所在している機関誌は同類の刊行物の中で悪くはないが、「いったん政府の主管と財政上の支持から離れると、市場という大波の中でどれだけ遠く進めるか、本当に知らない」と語った。

喩国明所長は次のように述べた。業界紙は中国の新聞界の中の大きな新聞として、計画経済体制下のタテ割・ヨコ割の産物であり、それらは行政活動のチェーンに頼り、人の心理状態、編制、経費を問わず、長い間従業員に「どっちみち助けてくれる所がある」という心理状態をもたらした。このような新聞の最も際立った特徴は、発行の過程で行政による割り当ての色彩がわりに濃く、市場での生存能力がわりに劣り、改革の原動力に欠けていることである。

喩国明所長はさらに次のように言葉をつづけた。新聞業の改革が始まってから業界紙は3種の選択に直面している。つまり外来の資本を導入し、公開の新聞市場に進出し、市場化したメディアと競争するか、それとも業界で高い質をもつ専門化の新聞・雑誌をつくることに力を尽くすか、さもなければ「死」を待つだけである。

その時になると、8分の1の新聞・雑誌は機関紙の資格を保留することができるが、残りの8分の7前後の新聞・雑誌は企業法人として独立して運営しなければならない。「最終的には半分が市場から非情に淘汰される可能性があり、残ったものは依然として市場に一定の衝撃を与えるだろう。新聞業界は改革してからメディア産業全体に対しなおも1年半ひいては3年もの間影響を及ぼすだろう」。

今回の新聞業界の体制改革を通じて、どうしても一部分の業界紙誌が「刊行を停止」し、メディア市場にショックをもたらすだろう。これは疑う必要のないことである。

国家報道出版総署の柳斌傑副署長は、現在1つの新聞・雑誌を「生かす」のは非常に難しく、1つの新聞・雑誌を「死なせる」のも同じく非常に難しい。今回の新聞業界の改革は、ほかでもなく新聞・雑誌を生かせるものもあれば死なせるものもある。「生死メカニズム」は優勝劣敗メカニズムを構築することであると語った。

民間と外国の資本の進出を認める

民間資本のマスコミ業への進出は、ずっと前から一つの趨勢と見られていた。しかし、以前の政策が遅々として自由化していないため、多くの民間資本は回り道をして、「協力者」の名目で現れることしかできず、そのため、たとえ協力部門と投資取り決めを結んでも、その株主権の合法性も法律の有効な保障が得られないというリスクに直面している。2000年に『中国汽車報』の投資側と主宰側はそのため法廷で争ったが、最後に依然として投資側の敗訴で終わった。

たとえこのようであっても、危険を冒して禁止区域に立ち入る投資家が少なくない。早くも1993年に、『四川体育報』は成都の国泰琴行と「共同株式参加合弁経営議定書」に調印し、新聞社を省体育運動委員会と国泰琴行の合弁企業に改めた。ここ数年、復星グループは『21世紀経済報道』に投資し、山東三聯グループは『経済観察報』に投資したことは、とっくに業界の公開の秘密であった。

喩国明所長によると、今回の改革は新聞・雑誌を事業体から独立した企業にならせたが、実際には資本がメディアに投資する合法性を確認するために道を残している。

すでに投入された資本を法律面から承認することは、多くの業界筋に「追認」と称されているが、中国の市場化の深化につれて、これはもはや時間の問題にすぎなくなった。2001年初め、報道主管部門は「取材と編集の権力をなくしてはならない、資産制御権をなくしてはならない、人事権をなくしてはならないという「三つのしてはならない」の前提の下で、業界外資金の経営領域への進出を認める」と提起したことがある。

伝えられるところによると、国務院国有資産監督管理委員会はいまマスコミ業の経営できる資産に対し種類別に検討しているが、それによってどの部分が委託経営できる資産であり、どの部分が国有資産であるかを確定する。

今回の党と政府の新聞・雑誌の整理、整頓の機を借りて、中国出版発行業も民間資本に開放し始めた。国家報道出版総署の最新の消息によると、今年9月1日から、一定の資格をもつ民間企業も国有企業と同じように、出版物の国内総発行権と卸売権を申請することができる。以前、そのような権限をもっていたのは国有あるいは国有持株の出版発行公司だけであった。

カギは発展にある 

国家報道出版総署の石宗源署長は最近記者のインタビューに応じた際、「報道出版は実体の業種であり、発展を離れては、監督・管理の強化、繁栄の促進、改革の深化は本のない木、源のない水(基礎がないもの)になる」と指摘した。

そのため、同署長は、閉鎖した、古い思想を捨てて、外国のマスコミ産業の先進的な運営パターンと経営方式を学び、参考にし、対外開放を加速しなければならないと提起した。

これに先立ち、イデオロギーとPRを主管する中国共産党中央政治局常務委員の李長春氏は、何度も公の場で「マスコミは改革しなければならず、発展しなければならない」という見解を強調した。

喩国明所長はこのほど『新聞と伝播』誌に文章を載せ、マスコミ業のミクロ分野に発生した重大な変革と市場運行メカニズムの変化と比べ、マスコミ業のマクロ分野の改革は依然として立ち遅れており、しかも対応していない、マスコミ体制の改革はもはややらざるを得ないと指摘した。

このマスコミ学者は、濃厚な「行政」色は、マスコミ業の巨大な資源が効率の高くない空回りの中でむだにされ、よい発展のチャンスが放置され、マスコミ産業の内在する原動力が障害を受けると見ている。

調べによると、新聞・雑誌業の一歩進んでの発展を促すため、中国の関係部門は2つの評価システムづくりを考慮している。一つは新聞・雑誌の審査認可評価システムを新しく確定することであり、もう一つは新聞・雑誌の出版の質の評価システムである。前のシステムの解決する問題は、ある部門が新聞・雑誌をつくる必要性と実行可能性を量化の基準で科学的に評価することである。後のシステムの解決する問題は、大陸部の新聞・雑誌の退出メカニズムを徐々に作り上げることである。