民営銀行設立の規制は緩和されるか?

著名な経済学者と実業家たちが3年間を費やして作成した民営銀行5社設立試行案はすでに中国銀行監督管理委員会(以下、「銀監会」と略)の審査、認可に委ねている。結果がどうなるかに人々は注目している。

剣伐

7月23日、3年間を費やして作成された民営銀行5社設立試行案は、多くの経済学者の最終的改正を経て、銀監会の審査、認可に委ねられた。

この試行案は、長城金融研究所という民間金融研究機構の動議よって行われた。中国の経済学界の一部エリートはWTO加盟後の中国金融が直面している問題に対し共通の興味を持って長城研究所に集まったのである。

試行案が認可されるかどうかについて、推測はまちまちであるが、銀監会の認可に大きな期待を寄せるものは一部でしかない。「試行案が打ち出されたことそのものの意義は審査・認可より大きい」と長城金融研究所の徐?慶所長は強調し、「われわれは五つの試行案を作成した。これは金融制度のイノベーションであり、将来の民営銀行の参入ルールはこれらの試行案から生み出されるからである」と語った。

試行案の骨子

設立の認可を待つ民営銀行5社は、瀋陽瑞豊銀行、西安(中国)長城銀行、江陰商業銀行、仏山南華銀行、深セン民華銀行である。

――瀋陽瑞豊銀行株式制を実行し、登録資本は2億元、民営企業の出資は登録資本の50%を下回らず、自然人の出資は10%を上回らない。株主の信用貸付と抵当貸付は実際に払い込まれた資本の100%を上回ってはならない。株主に融資をするには、50%以上の独立董事の賛成を必要とする。

――西安長城銀行株式制を実行し、登録資本は5億元、すべての株主の所有する株式は10%を上回らず、西部地区に向け、新型の金融サービス業務を取り扱うことを最終目標とする。株主に対する信用貸付についての規定は瀋陽瑞豊銀行とほぼ同じであるが、株主が借金を返済しないならば、銀行には当該株主の出資によって返済を強制する権利がある。

――江陰商業銀行都市商業銀行であり、江陰市及びその周辺地区にある企業と自然人が出資して設立される。株式資本金は2億元、すべての株主が所有する株式は15%を上回ってはならない。株式の比率10%以上の株主に融資する場合、その融資額は当該株主の出資額の80%を上回ってはならない。あらかじめ外資の株式加入に5%の比率を残しているのはその際立った特徴であり、これでシティ・バンクなどの国際金融機構の株式加入を引き付ける考えである。

――仏山南華銀行有限責任制度を実行し、登録資本は2億元、株式がかなり集中しており、筆頭株主としての広東志高エアコン株式有限会社は50%の株式を所有している。株式の集中は株式の質を高め、銀行の経営や管理および意志決定の効率を保証するためである。ユーザーのベストテンに貸し出す融資総額は銀行資本総額の50%を上回ってはならない。

――深セン民華銀行民営合弁の性格を持ち、地域的中小型融資銀行であり、登録資本は5億元。企業の預金と個人の預金の自然増に頼るほか、真新しい方法をとって資金源を開拓し、つまり、資金市場から資金を借り入れることである。株主と関係のある企業は原則的に本銀行から融資を受けるか、または本銀行によって担保されることはできない。確かに融資を必要とするなら、その他の借款人の同類の借款より優先するものであってはならず、そして、担保物件は必ず規定に合ったものでなければならない。

銀監会の悩み

銀監会にとって、民営銀行5社設立試行案をいかに処理するか、またはどのぐらいの期間で処理するかは手を焼く問題である。これも銀監会の新しい行政イメージづくりにとって重要な試練であると世論は見ている。

試行案の全部または一部が銀監会の審査で認可されれば、これから銀行業界を民間資本に完全に開放することを意味することになる。中国の金融監督管理制度がまだ充実していない中、設立したばかりで、まだ機構調整中にある銀監会にとって、金融リスクを適時に防ぎ、緩和し、解決しようとすれば、人手の不足、経験の不足などの問題にぶつかるに違いない。ところが、銀監会が試行案を否定するなら、時代の流れに逆行する疑いをもたれることになろう。どの面から見ても、中国が民営銀行設立の規制を緩和する機は基本的に熟すようになり、業界の人々もはやくからこれを呼びかけているからである。

実は、銀監会ができるだけ速く解決しなければならないのは、農村信用協同組合が抱えている5000億元に上る不良資産の問題である。不良融資の比率があまねく高い(平均30%〜40%)ため、農村信用協同組合を買収するか、または再編しようと考える企業はほとんどない。しかし、政府だけに頼ってこれらの不良資産を消化するのも不可能である。

こうした情況の下で、銀監会が民営銀行設立を認可するうえでのより多くの理由は、民間資本に現有の農村信用協同組合を改造した上で民営銀行に再編させるためであろう。なぜ農村信用協同組合が今日のような境地に陥ったのか。当初、関係部門が審査・認可を厳しく行わなかったことが主因である。そのため、余りにも増えすぎた農村信用協同組合を基礎に民営銀行に編成すれば、銀監会は「厳格に審査しなかった」ためにもたらされた「手落ち」を避けることができるわけである。

しかし、中国人民銀行の昨年の調査によると、民営資本は農村信用協同組合の改造のために余りにも高いコストを支払いたくないため、ほとんどは現行の政策に基づいて民営銀行を新規設立することを主張している。

こうしたジレンマを前にして、銀監会は「真剣な検討を行ってはじめて決めることができる」と表明している。

専門家たちの懸念

総じて、業界内の専門家は原則的に中国で民営銀行を設立することに賛同している。しかし、民営銀行5社設立試行案の中の一部の重要な問題に対し、いささか懸念を抱く専門家もいる。

民営銀行設立の発起者たちのほとんどは待ちきれない気持ちである。民営銀行5社の「食欲」は大きなもので、5年後に預金残高を少なくとも50億元に、多ければ150億元以上に増資する狙いがあるという。瀋陽瑞豊銀行は「20年間で東方のシティ・バンクになるのだ」という偉大な抱負を語っている。

民営銀行設立の動議はもともと専門家たちが民営企業、とりわけ中小企業の融資問題を解決するために提出したものである。中信実業銀行の劉志強副行長は、民営銀行が規模の拡大をあまりにも求めれば、国有商業銀行のような総合銀行のいつか来た道を歩むことになりやすいと見ている。国有商業銀行と民営銀行の競争をすることになれば、金融監督管理部門が民営銀行設立認可を決意することに響く可能性もある。

規模の拡大を図る発展策略は、収益に対する発起者たちの高すぎる期待と関係がある。著名な経済学者の呉敬l氏は、銀行のような参入が厳しい業種においては利潤は確かに相対的に高いが、暴利を狙うことは民営銀行の健全な発展に影響を及ぼしかねないと見ている。

民営銀行制度のカギとなる問題は、関連融資にある。民営銀行5社設立試行案は関連融資について詳しい規定を行っているが、これに対し懸念を抱く学者もいる。天則経済研究所の張曙光研究員は、民営銀行はプロの専門家に管理してもらわなければならず、株主としての実業家によって管理されるならば、(民営銀行5社の設立試行案はそのようなものであるかもしれない)、銀行の資金は実業家によって各自の企業に流されることは避けられない、と考えている。

呉敬l氏も次のように指摘している。一部企業が民営銀行の株主となる目的は、金を取り込むためということは除外しがたい。制度にちょっとした抜け穴があれば、彼らは関連融資の形で多くの融資を手にいることになる。これは金融管理部門の最も懸念するところでもある。ちょっとした不注意から、局部的な金融リスクを招来することになりかねない。