北京五輪でビジネスチャンス争奪戦

――2008年北京五輪の「市場開発計画」が9月1日、正式にスタートする。だが、巨大なビジネスチャンスに狙いを定めた熾烈な争奪戦は既に始まった。

唐元カイ

2008年開催の第29回北京五輪の大会エンブレムが発表された翌日の8月4日、このマークを印字したコカコーラが北京のカールフールなどスーパーの棚に並んだ。この日、北太平洋スーパーだけでも平日より20ケース多く売れたという。

北京オリンピック組織委員会(BOCOG)から初めてエンブレムの使用権を与えられた世界トップの賛助企業、コカコーラは市場争奪戦で先行した形だ。これにより、ビジネスチャンスを巡る争奪戦が本格化する。

コカコーラ中国飲料有限公司対外事務部の李小?部長は「世界最高級のスポーツイベント、オリンピックが巨大なビジネスチャンスをもたらすのは間違いない」と指摘。同社は今後5年間に北京への投資を拡大していく方針で、「2008年のオリンピック関連市場が照準」だ。

コカコーラ以外にも多くの企業がチャンスに狙いを定め、投資計画を既に策定あるいは策定する意向を示している。

大会エンブレムはオリンピックで最も核心となる知的財産権。文化的意味の深さにとどまらず、潜在的な商業価値は極めて高い。

実際、エンブレムの発表は、BOCOGの「市場開発計画」のプレリュードだった。BOCOGの蒋効愚副委員長は「エンブレムの影響力はどんな商標よりもはるかに大きい。市場開発の過程では、最も価値ある財産となる。使用権の譲渡は、オリンピックで必要な十数億ドルの資金を調達する最も重要な手段だ」と強調する。

国際オリンピック委員会(IOC)とBOCOGが協議した国内での市場開発計画は、内外の企業にビジネスチャンスをもたらす。計画は賛助・供給・特許の3分野に分かれる。賛助する企業は資金や実物、技術、サービスなどの面でサポートする。供給部門では、企業は設備や器材などを提供。特許部門では、一部企業にオリンピック記念品の生産を許可すると共に、特許商品の経営・管理などを任せる。BOCOGから認定された企業は、大会エンブレムを使用できる。具体的事項は、9月1日の「計画」開始時に公表される予定だ。

賛助モデルについては、IOCの「オリンピック計画」(TOP)、IOC、BOCOGの3つの賛助企業に分類される。

TOPの賛助資格を取得した企業は、世界範囲でオリンピックと関連する各種のマークを使用できるなどの特権が付与される。最も企業を魅了するのが「排他的」原則で、1業種で1企業の製品にしか与えられないことだ。

現在、2005−2008年までのTOP計画で継続契約しているグローバル企業は9社。IOC市場開発担当の高官は「これは非常に珍しいケースで、多国籍グループが北京五輪を活用した中国や世界市場での経営戦略の展開に強い自信を持っていることを示すものだ」と話している。

この数年来、TOP賛助企業は多くても12社あり、その意味ではまだ数社が「欠如」している。だが、投資額が巨大であるため、TOP賛助はこれまで世界最大手の独断場であり、申し込む企業は極めて少なかった。中国もTOPとは無縁だったが、一部実力ある国内企業も関心を示し始めた。IOC市場開発委員会のジェルハード・ハイバーグ委員長は「中国の一部の企業と交渉しているところだ」と語り、中国企業の資格獲得に期待を示した。

現在、数多くの世界一流の多国籍企業が広大な市場めざして熾烈な競争を展開しているところだ。自動車業界を見ると、交渉は既に幾度も行われており、ドイツや米国、韓国のメーカー数社が互いに譲らない状況。ビールや銀行、石油化工などでも競争はかなり厳しい。

通信業界でも多国籍企業が相次いで行動を開始した。北京オリンピックを機に中国市場に参入する考えだ。北京市貿易促進会の姚望会長は「中国への進出を希望する企業は確かに多く、その勢いははっきりと感じられる」と話す。

ビジネスチャンスを巡る競争は様々な面で展開されている。多くの国の市長や駐中国大使がBOCOGを表敬訪問し、北京との協力の機会を模索。オーストラリア商業会議所はオリンピック開催の経験を紹介すると共に、著名な財界人50名を組織して北京でビジネスシンポジウムのほか、9月に建築展を開く計画だ。フランス政府は環境保護や交通関連の一流企業からなる代表団を率いて北京で展示会を開き、受注獲得に乗り出す。

北京市発展・改革委員会の劉志副主任は「企業について言えば、指定企業になる以外にも、多方面から北京オリンピックに参与できる」と説明する。同委員会は主に、オリンピックの総合計画の策定を担当している。

北京は今後5年間で都市整備に2800億元を投入する計画で、その64%はオリンピック競技施設の建設や既存施設の改修、空港や高速道路、天然ガスや電力・給水・汚水処理施設の建設、河川浚渫、現有のテレビ施設や通信設備の整備などに充てられる。

北京はオリンピック開催時までに携帯電話普及率を現在の30%から60%以上に高め、ブロードバンド通信や競技会場、オリンピック村での通信システムの整備を公約しているが、こうしたビジネスチャンスにIBM中国公司は強い関心を示し、「豊かな経験と卓越した技術で北京五輪の成功を支援したい」と話す。

一方、世界最大のタイヤメーカーであるミシュラングループの代表は「グリーンなオリンピック、この理念に立って、環境保護タイヤやタイヤの更新、回収面での新技術や新プロセスを中国に導入したい」との姿勢を示している。

世界最大の環境保護企業であるビベンディ・ユニバーサルグループは「シドニーオリンピックで蓄積した経験を生かして、汚水処理や環境衛生、資源サービスや公共運輸など北京五輪の環境保護関連サービス面で協力していく」と表明。

スエズグループも「環境や資源サービスの多国籍グループとして、北京と組んで両者に利益をもたらしたい」と強調する。

著名な広告企業のオギルビは「グローバルな宣伝の面で北京を支援したい」と話している。

2008年オリンピックでは15の競技施設を新設する。国立スタジアムの建設は既に確定、その他の6件のプロジェクトについては現在、入札が行われているところだ。世界の著名な企業が応札しているが、ほとんどがフランスや米国、オーストラリア、英国、台湾や香港など5社を上回る企業が組んだ共同体としての応札で、まさに“世界ヘビー級”の争奪戦となっている。