政府機構の改革を推進

――今回の政府機構改革のカギは機構設置にあるのではなく、政府機能の転換にある

李 輯

 今年の全国人民代表大会と全国政治協商会議の重要な議題の一つに国務院機構改革案の審議がある。今回の政府機構改革のカギは機構設置にあるのではなく、政府機能の転換にあると評論されている。

 今回の国務院機構改革案は、「行為規範、運転協調、公正透明、廉潔高効」(行為が規範化し、協調して運営され、公正透明、廉潔高効率)という、次期国務院総理の温家宝氏の打ち出した政府改革「16字目標」に基づいて提出されたものである。中国共産党第16回全国代表大会の報告の中で提起された「簡素化、統一、効率の原則と政策決定、執行、監督が協調しあう要求」は、今回の改革の基本的原則である。

 行政管理体制と機構の改革は政治体制改革の重要な内容であり、中国の上部構造をよりよく経済的土台に適応させる重要な制度の建設と革新であり、社会主義市場経済体制を確立し、充実させる客観的必要でもある。

 全人代スポークスマンの姜恩柱氏は次のように述べた。

 改革・開放以来、中国は1982年、1988年、1993年、1998年に政府機構改革を行った。この四回の改革を経て、中国の行政管理体制は社会主義市場経済発展の要求に適応するようになった。しかし、経済体制改革の深化、中国のWTO加盟という新たな情勢の発展に伴い、現行の行政管理体制の中に依然として適応しない問題が若干存在しており、改革を深化させる過程で解決しなければならない。われわれの目標は政府の機能をいちだんと転換させ、政府の機構を調整し、充実させ、政府部門の機能を規範化させ、政府の管理水準を高め、行為が規範化し、協調して運営される、公正透明、廉潔高効率の行政管理体系を形成することである。改革のカギは政府の機能を転換させ、政府の経済調節、市場監督・管理、社会管理、公共奉仕の機能を強化、整備することである。

 今回の改革案は中国政府の今後の機構改革15カ年計画の第一歩にすぎない。改革は3段階に分けて行われ、毎期の中央政府が5年内に一部分を改革し、部や委員会など国務院の構成部門は最後には13前後に削減する。

 今回の国務院の機構改革は次期政府が発足後実施する諸改革の中で比較的重要なものの一つである。

政府機能を転換

 次期政府の機構改革は単に機構を簡素化させるのではなく、簡素化、統一、効率の原則と政策決定、執行、監督の三権分離の要求に基づいて、新しいタイプの政府を作り上げるのである。

 国務院体制改革弁公室経済体制・管理研究所副所長の李保民氏は次のように述べた。

 今回の国務院構成部門の機構改革の重点は機能の調整であり、同一の機能は多くの部門によって行使されることがなくなる。そのため、この改革は国務院構成部門の調整、再編、合併であって、1998年のような機構の撤廃、合併ではなく、しかも画一的な方法ではなく、穏健な方法を採用する。

 国務院発展研究センター企業研究所副所長、研究員の張文魁氏は、事実上、いま行われている国務院構成部門の調整は、1998年の政府の機構改革の強固と深化だと見ている。

 エコノミストの朱少平氏は次のように述べた。

 中国共産党第16回全国代表大会の「行政管理体制と機構改革を深化させる」という基本的精神に基づいて行われる政府の機構改革は、最も徹底的な改革であると言えよう。実際には国の政府機能は二つある。一つは社会管理で、もう一つは資産管理である。政府の機能については、これまでに共有制経済の発展が一方的に強調され、政府とその構成部門が国有資産と国有企業の経営と管理にかなり力を入れていたため、その社会管理機能は従属の地位に置かれた。今回の改革が最も徹底的で最も深刻だと言うのは、今回の体制改革では、政府の社会管理の機能が行政に、経済管理が資産に対する総合的管理に具現されるからである。専門の国有資産管理機構を設立し、過去各部門に分散していた機能を分離させるという国の決定は、改革の観念と構想を根本から改めた。つまり、政府は環境をつくるが、経営者ではない。国の経済管理機能は企業管理から資産管理に変わるが、これは非常に大きな転換である。これ以上企業管理に目を向けなくなることによって、政府は社会管理の機能を強化し、真に市場経済条件下の政府に向かって大きく一歩を踏み出すことができる。

 今回の機構改革の重点は各構成部門の機能を調整することにある。機構改革は突破的な進展をとげた。つまり政策決定機構が、政策決定、執行、監督が協調しあう「三権分離」という原則に基づいて推し進める要求を出したことである。ある意味では、これは現代の西側諸国の市場化政府の改革の経験を参考したことを反映し、行政機構の内部で行う権力で権力を制約する試みをも反映するものである。

 専門家の見方では、今回の機構改革を経ても、国務院の構成部門は依然としてぼう大なものである。それは中央政府には約2万8000の機能があるのに、一部の先進国では平均約3000しかないからである。

基礎を築いた四回の改革

 中国人民大学公共管理学院の毛寿竜教授は次のように見ている。

 政府の機構改革面の挙動は重視しないわけにはいかない。1982年、1988年、1993年、1998年にそれぞれ行った機構簡素化と人員削減の改革はいずれも大きな成績を残した。

 1982年の改革は成績が著しかったが、改革後の国務院の機構はまたも11増えた。1988年の改革では、国務院の構成部門は41に、工作機構は68にそれぞれ減り、人員は9700余人削減され、機構改革が政府の機能転換と結びつき始めたが、重点は行政と企業を分離させ、政府のミクロ管理機能を弱化させ、総合的管理機能を強化し、専門部門を簡素化させ、マクロコントロール部門を強化することに置かれた。今回の改革の特色は計画経済条件下の政府の機構改革の難しさを認識し、市場経済建設の需要に適応して政府の機構改革を設計、実施したことである。

 1992年から中国は市場経済建設を正式に確定し、政府の機構改革の核心の目標は政府の機能をどう転換するかに変わった。しかし、市場経済の建設が始まったばかりで、政府の機能がすぐにも転換するのは不可能である。そのため、1993年の機構簡素化の成績はそれほど大きくはなかった。例えば、国務院の構成部門は1993年に86から59に減らされたが、1997年には72に増えた。人員の簡素化も同じであった。

 1998年の改革はほぼ簡素化と膨張の循環から抜け出した。そのカギは市場経済建設の需要に着眼し、計画経済と関係のある経済部門を多く簡素化したことにある。これらの経済部門は国家経済貿易委員会所属の9つの局に変わったが、2001年2月19日にそのうちの7つが撤廃され、国家石炭生産局が国家安全生産局に改名され、国家タバコ専売局だけが保留された。このほか、一部の市場監督・管理機構が強化された。例えば、国家工商行政管理総局、報道出版総署、国家品質技術監督局、国家出入国検査検疫局は国家品質監督検査検疫局に合併された。

 改革・開放以来の四回の機構改革を総括して、政府機構と人員の簡素化には簡素化と膨張を繰り返したとはいえ、改革の成績は抹殺できないものである。

一応の成果をあげた機構改革

 ここ20年に絶えず行われてきた機構改革を通じて、中国では有限政府が逐次実現され、法治政府も建設されはじめ、政務情報が逐次公開され、政府の権力がますます中心化し、政府の政策決定もますます民主化に対する需要を現すようになった。

 中国社会科学院法律研究所の周漢華研究員は、毎回の機構改革は市場経済の形成と政府の管理方式の整備を推進するうえで重要な役割を果たした、と述べた。

 このほか、改革を通じて幹部工作の科学化、民主化制度化が大いに推し進められ、年が若く、資質の高い指導者が多数養成された。統計が顕示しているように、国務院が機構改革を行った後、公務員総数に占める40歳以下の公務員の比率は53%から59.6%に上がった。国務院の一部構成部門の公務員の平均年齢は37.5歳、司長・局長クラス幹部の平均年齢は45.7歳、処長クラス幹部の平均年齢は36歳で、いずれも前より大幅に下がった。一部の省では、機構改革を通じて、政府部門の中級幹部の平均年齢は5歳下がった。

 年齢要素のほか、内外のメディアの観察によると、技師出身より経済士出身の方がだんだん多くなったことも次期政府指導者の特徴である。例えば、上海市政府の指導者は、市長の韓正氏を含めて、経済学修士の学位を持つ人が3人おり、一番若い唐登傑副市長(38歳)は工商管理修士である。国家行政学院の杜鋼建教授は、知識構造も各クラスの政府指導者を評価する最も重要な要素の一つである、と語った。

 毎回の改革が明らかにしているように、中国の新しい世代の指導者が新しい知識と流れに非常に明るく、これは彼らが人民を率いて持続可能な発展を実現できる保障である。

『北京週報』日本語版