国有企業改革推進の処方である国有資産監督管理委員会

――国有企業の改革は中国の経済体制改革の最も難しい部分である。今回政府が行う国有企業改革に大きなブレークスルーが現れ、以前の多部門による管理を一部門による管理に改め、財産権をはっきりさせ、新しい国有資産管理体制を実現する。

李 子

 今回の全国人民代表大会と全国政治協商会議では、今回の国務院機構改革の「核心部分」は「国有資産監督管理委員会」の設置にあり、同委員会の設置は中国政府が鳴り物入りで行っている国有資産管理体制改革の重要な構成部分であると見る代表、委員がいる。

 昨年11月8日に開かれた中国共産党第16回全国代表大会は国有資産管理体制改革深化の任務を打ち出し、今年1月の中央経済工作会議は「国有企業と国有資産管理体制改革の深化」を今年に行う4項目の改革の第一項に確定してから、国有資産管理体制改革は実施段階に入った。

 これを見てもわかるように、今回の国有資産監督管理委員会の設置をメルクマールとする国有企業改革は次の2つの方面に大きな突破が現れている。1、国有資本は続々と競争的業種から退出し、国は国民経済にわりに大きな影響を及ぼす独占的業種を少数保留するだけである。2、20余年も実行してきた「国家所有、分級管理」という国有資産管理体制が打破され、「国家所有、財産権分級」の管理体制がそれに取って代わった。

 「国有資産監督管理委員会」はもともと多くの部と委員会が国有企業を管理する機能を合併して、「権利、義務、責任を統一し、資産管理と人事管理、活動管理を結びつける国有資産管理体制」を実現し、国有資産の「多部門による管理」を「一部門による管理」に改める。「国有資産監督管理委員会」は中国の10兆余元の国有資産の唯一の管理者となり、数百ないし千にのぼる国際競争力をもつ大手公司と大型企業グループを発展させ、掌握し、国民経済の大局を左右しなければならない。これは中国の20年近くの困難に満ち、曲がりくねった国有企業改革が「深水区」に入り始めたことを示している。

資産管理体制は改めなければならない

 有企業改革は中国の経済体制改革で最も難しい部分である。1980年代から、中国の国有企業は請負経営からリストラによる効果増大へ、公司の構造整備から現代企業制度の確立へ様々な改革の模索を始めたが、国有企業の問題を根本から解決することができなかった。この改革は国有企業改革の中でかかわる面が広く、変化が大きく、段階が多い改革であり、国有出資者の位置づけという国有企業改革の実質的なブレークスルーにかかわる重要な環を解決すると言える。

 国有資産管理体制改革は10兆元以上の国有資産と10数万社の国有企業にかかわっている。財政部のデータによると、2001年末現在、中国の国有資産総量(純価値、以下同じ)は10兆9316億4000万元で、そのうち経営的国有資産総量は7兆3149億3000万元で66.9%を占め、非経営的国有資産総量は3兆6167億1000万元で33.1%を占めた。上述の国有資産は、全国の各地方、各業種に分布し、17万社余りの国有企業に分散している。今回の国有資産管理体制改革は天然資源などの資産にもかかわっており、そのため、上述の財政部の統計範囲を超えている。明らかに、今回の国有資産管理体制改革は面が広く、量が大きいという特徴を持っている。

 当面の国有資産管理体制に次の3つの問題がある。1、中央政府が国有資産出資者の唯一の代表として、多くの部門がばらばらに出資者の職能を行使している。つまり発展計画委員会は立件を管理し、経済貿易委員会は日常運営を管理し、労働・社会保障部門は労働と賃金を管理し、財政部は資産の登録と処理を管理し、組織人事部門と大手企業の工作委員会は経営者の任免などを管理している。これではすべての国有資産に対し出資者の職責を効果的に行使するのが難しく、国有資産に対し全面的に責任を負うのも難しい。2、国有企業に所有者空席の現象がかなり普遍的に存在している。3、一部の地方は依然として行政と企業を分離させておらず、政府が依然として国有企業の生産経営活動に干与し、そのため、企業は自主的経営、損益自己負担をすることができない。このような状況から、現行の国有資産管理体制を改革し、国有資産の管理、監督、経営メカニズムを充実させなければならない。

かかわる面が広く、変化が大きく、段階が多い改革 

 今回の改革は体制の面でもとの体制とかなり大きな違いがある。中国共産党第16回全国代表大会の報告の要求によれば、国有資産管理体制の改革は国家所有を堅持する前提の下で、中央と地方の2つの積極性を十分に発揮させなければならない。国は法律・法規を制定して、中央政府と地方政府がそれぞれ国を代表して出資者の職責を履行し、所有者の権益を享有し、権利、義務、責任を統一し、資産管理と人事管理、活動管理を結びつける国有資産管理体制を確立しなければならない。中央政府と省、市(地区)2級の地方政府は国有資産管理機構を設立する。こうした改革は3つの面に重要な変革がある。

 第1、以前は国が所有を統一し、等級に分けて管理し、国務院が国を代表して国有資産に対し所有者の職能を行使したが、新しい体制が実行するのは国が所有し、中央政府と地方政府がそれぞれ国を代表して出資者の職責を履行し、所有者の権益を享有し、権利、義務、責任を統一することである。こうすれば、中央と地方の2つの積極性を十分に発揮し、企業の財産権をはっきりさせるのに役立て、多元の投資主体と規範に合う法人管理構造を形成することができる。  

 第2、長年来実行してきたのは資産管理と人事管理、活動管理をばらばらに行う体制であり、多くの部門が自分が所有者の代表であると言い、企業に指示を出すが、いったん問題が出ると、互いになすりつけ合い、責任を負わない状況が現れやすい。新しい体制は資産管理と人事管理、活動管理を結びつけ、権利、義務、責任にバランスを保たせるので、国有資産の価値維持・増加に役立つ。これは非常に重要である。国有資産のひどい流失を含めて、今後国有資産管理に問題が出れば、最後に責任を負う機構を探し出すことができ、それによって合理的な激励と制約メカニズムを構築するのに役立つ。

 第3、中央政府と地方政府がそれぞれ国を代表して出資者の職責を履行する資産の範囲を打ち出した。つまり国民経済の命脈と国家安全にかかわる大手国有企業、インフラ施設、重要な天然資源などに対し、中央政府が国を代表して出資者の職責を履行する。その他の国有資産は地方政府が国を代表して出資者の職責を履行する。

 そのため、今回の改革は中国の国有資産管理体制にわりに大きな変動をもたらすと言える。

 今回の改革の段階が多い。国有資産管理体制の改革は財産権の改革である、つまり財産権をはっきりさせる改革が、中央政府と省、市(地区)2級の地方政府の利益および国有企業とその従業員の利益にかかわっており、多くの方面の利益関係に対する調整と充実である。

国有資産管理体制のいちだんの研究に値する問題

 国有資産監督管理委員会の機構設置案の決定は、国有資産管理体制の改革が操作面でしっかりした1歩を踏み出したと言える。しかし、もう一つの面から言って、これは第1歩にすぎない。機構が設置されてから、多くの現実的問題を整理、解決しなければならない。例えば新しい資産管理体制はいったいどのように運営するのか。国はどれだけの国有企業を効果的に管理することができるのか。国有企業の主な目標は何であるべきか。国有資産管理機構の特徴は何であるべきかなどがそれである。

 国務院発展研究センター企業研究所の張文魁副所長は先般あるレポートの中で次のように指摘した。国有資産管理体制の改革は少なくとも次の3つの肝心な問題を回避することができない。一は中国の国有企業の数量が多く、国有資産総量が大きく、国有資産に対する中央と地方政府の財産権関係を合理的に確定するのは、国有資産管理体制に関わる基本的問題である。二は新しい国有資産監督管理機構は「雇い主」の資格で現れ、このような変化はどうすれば企業を「動きがとれなくなるほど管理する」のを避けられるか。所有者は国有企業で位置づけした後、企業の生産経営自主権を確保し、多元的な投資主体が形成する公司法人の財産が随意に干与、損害されないように確保しなければならない。特にある地方政府が権限を授けられて国を代表して国有資産に対し出資者の職責を行使してから、企業に対する干与を強化し、行政と企業がまたも分離しなくなるのを防止しなければならない。もとの国有企業の所有者空席問題を是正する時に、もう1つの極端に走り、企業を動きがとれなくなるまで管理してはならない。この問題は、改革の過程で注意を引き起こすべきである。三は新しい国有資産監督管理機構がどのように企業を「管理」すべきかは、中間の公司を設立するかどうか、および中間の公司がどのように運行するかの問題にかかわっている。

 経済学者、中国社会科学院経済研究所の張卓元研究員は中国共産党第16回全国代表大会報告起草グループ経済グループ責任者として、国有資産管理体制改革・設計の重要人物である。氏は、国有資産管理体制改革を規範化させ、改革がわりに規範的かつ秩序だって行えるようにするため、できるだけ早く「国有資産法」を制定すべきであると語った。伝えられるところによると、現在、国務院で国有資産管理規範化に関する条例が制定中である。新たな国有資産管理体制建設が、「模索しながら進む」という以前の改革のやり方と違って、法規の制約下で上から下へと秩序だって行われると予想することができる。

背景

 中央政府は1988年末に国有資産管理体系を確立し、国務院は国有資産管理局を設置、当時の国有資産管理政策は「国家所有、分級管理」であった。各地も国有資産管理局と経営的国有資産経営管理公司を設立した。1998年3月の政府機構改革では、国家国有資産管理局が廃止された。各地も次々と国有資産管理局と国有資産経営管理公司を廃止した。その時の国有資産管理局の機能は財産権の認定と登録、資産の評価と認定、資産の認定、評価、譲渡の政策を制定するだけで、本当の所有権を行使する機構であるとは言えない。

 1998年、国務院が国家国有資産管理局を廃止した後、地方が国有資産管理パターンを模索するのを許され、上海と深センは国有資産管理局を保留し、国有資産を管理、運営している。2年余り以来、この2市の国有資産を管理する面で大きな成功を収めた。大手国有企業が密集している古い工業基地としての吉林省と遼寧省の国有資産管理体制の変革も幅広い関心を受けている。というのは、この2省にもそれぞれ名称は国有資産管理委員会と称しない総合的な国有資産管理機構があるからだ。

『北京週報』日本語版