新政府は任重く道遠し

周山才

 新政府は多くの問題に直面している。例えば、今年中国は経済成長7%の目標を実現できるかどうか、どのように農民の収入を増やし、就職のプレッシャーを軽減し、東部と西部のバランスのとれた発展を促進し、改革を深化させると同時に安定を保つかなどがそれである。

 3月18日に閉幕した第10期全国人民代表大会の会議で、前期の中央政府が代表たちの長時間の熱烈な拍手の中で歴史的使命を完成し、新政府が舞台に上がった。

 前期の政府は政権を担当した5年間に、アジア金融危機の衝撃、世界経済成長の低迷、国内の産業構造矛盾の突出、国有企業従業員の大量のリストラ、1998年と1999年の2年連続しての特大水害などの試練に耐えた。この一連の困難を前にして、中央政府は非凡な知恵と迫力で、一連の措置をとり、政権党の既定方針を貫徹し、13億の人口を擁する発展途上国を指導して、大局平穏という前提の下で、経済の急速な発展を保ち、改革・開放をたえず深化させ、社会諸事業を全面的な進歩をとげさせた。中国は空前の良好な発展期に入った。これらすべては次期政府のためにしっかりした基礎を築いた。

 しかし、中国の改革・発展の任務はきわめて複雑で重く、1期の政府がそれをすべて完成するのは不可能である。改革の残した一連の問題と複雑多変の国内外の新情勢に直面して、新政府は任重くして道遠しである。

経済の安定したかなり速い成長を実現

 経済発展の良好な勢いを維持するのは新政府の最も重要な任務である。

 前期政府の朱鎔基総理が3月5日に前期政府を代表して全国人民代表大会の会議で行った最後の「政府活動報告」は、過去の5年間にとった主なマクロ経済政策を回顧するとともに、新政府が引き続きそれを実行することを提案した。朱総理は「あくまで発展を党が政権を担当し国を振興する第一の重要な任務とし」、「あくまで内需拡大の方針を貫き」、「積極的な財政政策と穏健な通貨政策を引き続き実施し」、「改革をいっそう深化させ、対外開放のレベルを全面的に高める」などの内容を際立って強調した。

 前期政府が5年来一貫して実行したこれらの政策は、中国の経済にいろいろな困難が重なる状況の下で7〜8%の高い成長率を維持させた。

 当面の国際と国内の情勢に対する実際的な考慮に基づいて、マクロ経済政策の持続性を維持することが新政府が執政初期にとるべき基本的な施政方針であると考えられている。経済成長は投資、消費、輸出に頼って推進される。しかし、国際経済はすでに数年連続して低迷し、いつ回復するか分からず、国内に依然として有効需要不足、デフレの趨勢、産業構造があまり合理的でないなどの問題があり、輸出増加のスローダウンも憂慮されている。総需要が減少する状況の下では、需要を刺激する拡張的政策はほとんど必然の選択となる。

 「政府活動報告」の中では、ここ数年一貫して実施している内需拡大の方針が新政府の活動に対する提案の中で際立った位置に置かれ、消費需要を内需拡大の第1位に置くことが特に強調されている。朱総理は「当面の状況の下で、これは投資需要の増加より重要である」と述べた。

 積極的財政政策の奨励の下で、投資は一貫して重要な推進的役割を果たしているが、消費の潜在力がまだまだ十分に発掘されていない。現在、都市・農村住民の貯蓄預金はすでに10兆元近くに達し、自動車、住宅、観光、娯楽が主な消費となった。正しい政策の導きがあれば、消費需要は経済成長により多く貢献することになろう。

 今年は中国がいくらかゆとりのある社会を全面的に建設することを提出した年であり、経済成長がどれほど伸びるかは、2020年の4倍増の目標とかなり密接な関係がある。政府活動報告は今年の経済成長の所期目標を7%左右に決め、経済成長の質と効果を高め、経済構造の調整と最適化を重視しなければならないと強調している。

 ここ数年ずっと論争されている積極的財政政策の中国の経済成長に対する役割はすでに検証されたが、それが実施の6年目に新しい功績を立てられるかどうかに対し、人々は眼をこすって待っている。それと同時に、どのようにこの政策を調整し、できるだけそのマイナスの影響を減らすかも、新政府が実践の中でいちだんと検討する必要がある

改革の深化と安定の保持

 改革の深化は経済発展の必然的な要求となっている。

 中国は20年余りの改革・開放を経て、生産力が急速な発展をとげたが、生産関係の変革は相対的に立ち遅れ、経済のいっそうの発展を制約している。国務院研究発展センター発展戦略・地区経済研究部の李善同部長は、新政府の直面する改革の諸任務はきわめて困難であり、しかもさまざまなつながりがあり、金融、財政、農村、国有企業などの方面が含まれ、「一つずつ推進するのではなく、全体として推進すべきである」と指摘した。 

 現在最も注目を集める改革は、第10期全国人民代表大会第1回会議で認可されたばかりの国務院機構改革案である。

 有名な政治学専門家、北京大学政治発展・政府管理研究所所長の謝慶奎氏は、政府が交代する時に機構改革を行うのは、いくらかゆとりのある社会を全面的に建設し、諸任務を達成するために組織的保障を提供し、その意義は特殊かつ重大であると語った。

 今回の機構改革は特に市場経済の必要に適応し、政府の機能を転換する要求を強調している。国家経済貿易委員会研究センターの白津夫副主任はこう語った。以前の政府の機構改革は、基本的には機構を撤廃、合弁し、人員を削減し、政府部門の社会経済生活への不必要な制限を減らすことが主であった。今回の機構改革は「行政管理体制改革深化」の範疇に入れられたため、「政府の機能を転換し、政府の機構設置を調整し、部門の機能の分業を整理し」、政府の経済調節、市場監督管理、社会管理、公共サービスの4つの方面の機能を強化し、充実させ、社会主義市場経済体制を充実させなければならない。

 政治体制改革を推進し、法に基づいて行政を行う政策の意図も今回の改革の中で初歩的に現れた。ある専門家は、今回の政府機構の権力の再画定により、万能の政府は有限の政府に転換しつつある、これはまさに民主政治のカギであると語った。白津夫氏は、今年2月末に開かれた中国共産党第16期中央委員会第2回全体会議は、行政管理体制と機構改革が政治体制改革を促す重要な内容であり、中国の上部構造がよりよく経済的土台に適応するように促す重要な制度建設とイノベーションであり、社会主義市場経済体制を確立し充実させる客観的必要でもあることを提出したが、これは政府機構改革に対する新しい認識であると語った。

 清華大学法学院教授、中国法学会WTO研究会副会長の于安氏は次のように述べた。国と国の競争は大きな程度で制度の競争である。中国共産党第16回全国代表大会の報告は、「簡素化、統一、効能の原則と政策決定、執行、監督が協調し合う要求に基づいて、政府の機構改革を引き続き推進しなければならない。これは今回の改革の基本原則であると見なされるべきであり、その目標は行為が規範化し、協調して運行される、公正透明、廉潔高効率の行政管理体制となることにある。

 今回の国務院の機構改革は中国の改革・開放以来の5回目であるが、最後の一回ではありえない。深センなどの5都市は政府の「政策決定、執行、監督」の機能の分離をめぐってテストを始めたが、この事が今後の一歩進んでの政府機構改革のために伏線を張ったと広く考えられている。

 経済発展に従って、上部構造と経済的土台の間の深層の矛盾は次第に暴露し、諸改革はいっそう難しくなっている。どのように改革の深化の中で安定を保つのかは、新政府が慎重に対処せざるを得ない問題である。謝慶奎氏は、今回の国務院の機構改革の特徴の1つは安定しながら進歩を求めることであり、これは政府の執政の風格を反映していると語った。

3農問題は重点の中の重点

 中国は農業の大国であり、13億近くの人口のうち、60%以上が農村にいる。彼らの生活レベルが明らかに都市部の住民より低く、しかもその格差がまだ大きくなっており、特に農村はまだ3000万の貧困人口を抱えている。これが現状である。農村経済の発展を加速しないならば、中国が2020年までにいくらかゆとりのある社会を全面的に建設する目標を実現するのが難しくなる。

 ある専門家は、「3農」(農業、農村、農民)問題は改革と現代化のプロセスに影響する難題であり、同時に歴史問題、社会問題、政治問題でもあると語った。

 ここ数年は農産物の供給超過、値下がりなどの原因で、農民の収入増がスローダウンしている。農村の行政人員が過剰の現象は普遍的であり、農民の負担は重くなる一方である。中国の農業はWTO加盟後の1年目をわりに穏やかに過ごしたが、今後の衝撃は楽観を許されず、中国農業の国際競争力増強はさし迫まって待たれている。在来の家庭ごとの小生産方式は今なお広大な農村で主導的地位を占めており、農村の技術市場、人材市場、資金市場、情報市場および製品の加工流通市場は普遍的に発育が不十分である。

 どのように農民の収入を増やすか。どのように農民の各種の社会保障を確立するか。どのように農業人口の減少の目標を秩序だって実現するか。どのようにWTO加盟後の激しい国際競争が中国農村に与える影響に対応するか。どのように中国農業の現代化レベルを促進するか。どのように今後の食糧と農産物の輸出入政策を制定するかなど一連の問題は、新政府の前に置かれた重要な課題となっている。

 年初に北京で開かれた中央農村工作会議は2003年に中国共産党中央が招集した最初の重要な会議であり、会議は、農業と農村の活動は全体として「戦略的構造調整」の推進を中心任務としなければならないことを提出した。これは3農問題に対する新政府の政策の方向を判断するために重要な情報を提供した。

 国務院発展研究センターの陳錫文副主任は次のように語った。「戦略的構造調整」の内包は非常に豊富であり、栽培業の品種、品質、地域配置を最適化させる必要もあれば、牧畜、水産業、加工業をいちだんと発展させる必要もある。そして構造調整は農業だけではなく、農村経済枠組みの中に置いて考慮し、郷鎮企業と農村の第二次産業、第三次産業を大いに発展させなければならない。最後に、農村の内部で発展をはかり、国民経済全体を背景とし、農民の流動的就職と都市化の発展を推進しなければならない。農村と都市の様相面の大きなコントラストを前にして、会議は農村のインフラ建設にいちだんと力を入れ、新規増加の国債投資を主に農村の中小インフラ建設と「耕地の林地への還元」に用いることを提出した。

 今年の政府活動報告は初めて「3農」の概念を明確に提出し、「3農」問題を経済活動の重点の中の重点としている。

就職と社会保障活動をいちだんとりっぱに行う

 中国はいま、かつて見ない大きな就職のプレッシャーに直面している。1150万人の国有企業の一時帰休者、都市部で毎年新規増加する1000万の労働力、農村の大量に移動する余剰労働力はいずれも自分の就職口を探している。第10次5カ年計画期(2001〜2005)に、都市部は毎年2200余万人の就職を解決しなければならない。経済成長率が7%前後を維持することで計算すれば、現在の経済構造の状況下では、毎年新規増加する就職口は800万前後しかなく、年度の不足分は1400万前後である。労働力の需給矛盾は非常に際立っている。他方では、就職の構造的矛盾が大きく、在来業種のポストが減り、労働技能の低い人の就職が難しくなりながら、新興産業は大量の就職口を提供し、資質の高い労働力は供給が需要に追いつかないでいる。中国はすでにWTOに加盟し、国際的な経済変動と経済構造調整の影響がさらに直接的となり、そのため労働力がこの状況に適応するようにいっそう強く求められる。これらの矛盾が入り混じて、就職問題の解決を非常に難しくしている。

 それと同時に、社会保障システムは充実が待たれ、保障レベルは向上が待たれている。1998年に入ってから、中国は一時帰休者の基本的生活保障、失業保険、都市部住民の最低生活保障という3つの保障ライン制度を確立した。全国政治協商会議委員の董経緯氏は、中国の現在の社会保障システムは主に1、社会保障のカバーする面が広くなく、個人経営商工業者、私営企業の従業員と農村の人口が基本的にはまだ保障範囲に入っていない、2、社会保障資金の調達が難しく、引き受け能力がわりに弱く、財政への依存性がわりに強い、3、老齢人口と失業者が増えるにつれて、養老、医療、失業などの保険は大きなプレッシャーに直面するなどの問題がある。これらの問題は経済発展水準と関係もあれば、同時に法制、体制、政策などの各方面の要素にもかかわっている。

 社会保障システムの充実は就職の拡大と密接な関係がある。健全な社会保障システムは、就職の矛盾の社会に対するプレッシャーを緩和し、就職の効率と質を高めることができる。同じように、就職を大いに促進し、勤労者の生活も保障できれば、社会保障のコストを下げ、社会保障システムを充実させることにも役立つ。当面の就職の情勢が厳しく、社会保障システムが意に添わない状況の下で、政府の活動はかなり難しいものである。

 今年の政府活動報告は就職と社会保障を経済の持続可能な発展の高度に高めて認識している。

西部の開発を推進

 2002年の中国大陸の31の省、直轄市、自治区のGDPのランキングの中で、西部の12の省、自治区のうち第8位の成績で上位10位に入ったのは四川省だけであり、最後の10位の中に、西部の省、自治区が8つもある。これを見ても、東部と西部の経済レベルの格差が分かる。

 東部と西部の発展のアンバランス問題の解決は、社会の公平を実現し、共に豊かになり、社会の安定を維持し、国全体の発展戦略を実現するのにどうしてもしなければならないことと考えられている。

 1999年から始まった西部大開発は約70%の国土で行われている。3年来、国は西部地区のために一連の傾斜政策を実行し、西部地区への投入も前例を見ないものであり、西部は大きなチャンスに直面している。しかし、このチャンスを現実に変えるのは容易なことではない。

 この大きな未曾有の事業がどんな道を歩むべきか。この問題をめぐって、多くの専門家は市場メカニズムの構築に言及した。天則経済研究所の張曙光氏は、西部開発を推進する重要な目標は格差を縮小し、公平を促進することであるが、社会公平の目標は効率を高める方法で実現すべきである。西部大開発が成功するかどうかは政府の投入の多少によってではなく、主に計画手段をとるかそれとも市場メカニズムを実行するか、西部地区が市場化の改革を前進させることができるかどうか、単純な政府行為を政府の支持と保護下の民間行為に変えられるかどうかによって決定づけられるのであると語った。

 政府活動報告の中で、西部開発は産業構造の調整と一緒に述べられている。社会科学院西部開発研究センターの魏後凱主任は、このような提起の仕方は一方では経済学の理論的基礎があり、経済調整が産業構造の調整と地域構造の調整という2方面の内容を含んでいるため、それらが並行している。そのほか、中国の国情から言って、西部開発は東部と中部にも影響を及ぼす全国的な経済相互促進であり、そのため、産業構造の調整と同じような戦略的意義を持っている。

 国家発展計画委員会副主任、国務院西部開発弁公室副主任の李子彬氏は次のように述べた。中国の西部開発はいま基礎づくりの時期にある。中国共産党第16回全国代表大会の報告と今回の総理の政府活動報告はともに、重点を突出させ、実効を重視し、基礎をしっかりつくらなければならないと述べている。いわゆる基礎をしっかりにつくることはインフラ整備と生態環境建設を重点的に強化し、科学技術教育の発展と人材の開発を加速することである。このいくつかの方面をりっぱにやれば、西部の経済社会発展の基礎的な活動のレベルが高くなり、今後の西部の経済社会の発展のためにしっかりした基礎を築くことになろう。同時に、西部地区が特色のある経済、強みを持つ産業を積極的に推進し、西部地区の自己発展能力を絶えず増強し、経済構造の総合的実力を増強しなければならない。他方では、改革・開放を加速し、思想をいっそう解放し、観念を変え、政府の機能を変え、事務効率の向上に努力し、法によって行政を行うレベルを高め、公開、公正、公平の市場秩序を確立し、近代的な市場システムを確立し、健全にし、良好な投資環境を作り出さなければならない。