サンプル調査から中国私営経済の発展を見る

――保育鈞全国政治協商会議委員・中国民(私)営経済研究会会長にインタビュー

本誌記者 封せい

 全国の私営企業を対象として行われた第5回サンプル調査がこのほど終了した。調査レポートは「中国私営経済年鑑」(2002年版)に収録され、一般向けに発行された。中央統一戦線工作部、中華全国工商業連合会、中国民(私)営経済研究会が一部の党、政府、工商業連合会の機関の研究、大学で理論研究に従事する学者からなる「中国私営企業研究課題グループ」は今回中国大陸部の31の省、自治区、直轄市で今回の調査を行った。

 10年前、中国民営(私)営経済研究会が正式に発足した後の最初の仕事は「中国私営企業課題グループ」を設置することであった。課題グループは中国の私営企業や企業経営者を対象として10年にわたって調査を行い、特に1993年、1995年、1997年、2000年に大規模な全国私営企業サンプル調査を4回も行った。大量のデータに基づいて行われた分析とその他の関係資料、文献をもとに編集、出版された「中国私営経済年鑑」(1994年版、1996年版、2000年版)は、新時期における私営企業の再生と発展の歴史的プロセスを記録し、内外に公認される権威ある資料の性格をもつレポートとなった。

 先日、本誌記者は保育鈞会長に単独インタビューし、今回のサンプル調査の状況について説明してもらい、以前の何回かの調査を結び付けて、中国の私営経済発展の趨勢および直面している問題について分析してもらった。

  今回のサンプル調査の結果から見て、中国の私営経済発展の全般的な状況はどうなるか。

  全般的に言って、中国の私営経済は持続的、快速、健全な発展の態勢を呈しており、次のいくつかの方面に現れている。

 1、私営経済の数量が急増し、規模が絶えず大きくなっている。2000年の第4回調査から起算して、2年らい中国の私営経済は引き続き急速に成長し、1999年末の私営企業は151万社、従業員は2021万人に達し、2001年末は203万社、2714万人に増え、伸び率はいずれも34%前後である。調査対象となった3258社の企業の払込済み資本金の中央値(すべてのデータの真中にある中央にある数値で、一般的なレベルを表す)は1999年末比66.7%増の250万元に達し、払込済み資本金1000万元以上の企業の占める比率は18.8%で、1999年末の11%より7.8ポイント伸びた。ここ3年近くの間に、調査対象となった企業の売上高、納税額、費用支出額、納税後の純利潤など四つの指標の年平均伸び率はそれぞれ24.02%、24.65%、22.74%、19.50%に達した。

 2、私営企業の経営期間が長くなっている。何回かの調査が示しているように、私営企業の経営年数は6〜20年に集中しており、平均の経営年数は1993年の5.19年から2000年の7.04年へと1.13年延び、経営期間が1〜5年の企業が著しく減った。

 3、私営企業は国有企業の体制改革、転換に積極的に参加し、それを促した。今回の調査が示しているように、一部の中小型公有制企業が私営企業に改められ、私営経済に新鮮な血液を注ぎ込んだ。調査対象となった3258社の私営企業の中に、体制改革で私営企業になった企業は837社あり、企業対象となった企業の25.8%を占めている。90.6%の私営企業は国有企業の一時帰休者を吸収し、一時帰休者が調査対象となった企業の従業員総数に占める中央値は20%であった。建築業などの業界では、出稼ぎ農民就労者は従業員総数の中で圧倒的多数を占めている。これは私営経済が急速に発展しているところでは、国有企業改革の環境がわりに緩やかで、一時帰休者の配置もそれほど難しくはなく、農民の就職ルートもいくらか広くなったことを示している。これは社会主義の初級段階において、非公有制経済の健全な発展を奨励、支持し、導くのは、公有制経済を強固にし、発展させることと矛盾しないだけでなく、統一され、互いに促進しあうものであることをも物語っている。

 4、私営企業が絶えず科学技術使用量をたえず増加し、WTO加盟後の新情勢に積極的に適応している。今回のサンプル調査が示しているように、調査対象となった私営企業の中でハイテク企業が企業総数の3.84%を占めている。前の数回の調査と比べて、ハイテク企業の占める比率は明らかに上昇した。そのほか、2001年、調査対象となった企業の43.6%が新製品、新技術、新プロジェクトの研究、開発に資金を投入し、投資額の中央値は2001年の売上高の4.5%を占める30万元に達し、調査対象となった企業の12.7%は自社の特許技術をもっている。私営企業は中国のWTO加盟を積極的に支持している。競争が平等でさえあれば怖くないと見る調査対象となった企業は46.1%を占め、自社は競争の中でよりよく発展すると見る調査対象となった企業は35.3%を占めている。国外と協力する面では、すでに海外企業と合資、合作に着手したか着手しつつある企業は22%近くあり、今後の3、5年内に海外企業と合資、合作を行う企業は30%近くある。すでに海外企業と合資、合作している企業のうち、最も多いのは製造業で、その絶対数は調査対象となった企業総数の47.8%を占めている。

  現段階の私営企業の経営管理メカニズムにどのような特徴が見られるか

  中国の私営企業の経営管理メカニズムの普遍的な特徴は資本、政策決定の管理およびリスクという三つの「高度集中」である。

 資金源から見て、私営企業の中で1人の投資は32.8%を占めており、数人の株主が共同で投資する有限責任公司でも、「大株主は一人しかいない」状態である。最近3回の調査が示しているように、経営者の個人資本の資本総量に占める比率は1996年は80.1%、1999年は80.0%、2001年は76.7%と逐次いくらか減っているが、資本が経営者に高度集中していることは依然として現段階の中国の私営企業の基本的特徴である。

 企業の経営管理から見て、現在、私営企業の主な投資家と主な管理者は依然として同じ人である。3回連続して行った調査から見て、1996年で企業の工場長あるいは経理を兼任する経営者は97.2%に達し、1999年は96.8%、今回の調査では96%となっている。

 同時に、私営企業に管理規範化という喜ばしい兆しが現れ始めた。調査が示しているように、経営者が管理権を直接握っているが、ここ10年来、経営者個人による独断専行の行為が逐次少なくなる趨勢を呈し、理事会とその他の管理要員の役割が大きくなり、組織の枠組が逐次完全なものになり、権力構造にある一定の程度の変化が生じた。企業の重要な政策決定から見て、1993年、主な投資者が行った政策決定は63.6%を占め、理事会が行った政策決定は15.2%しか占めず、主な投資者とその他の管理人員が共同で行った政策決定は20.7%を占めた。2002年になると、このような状況に明らかな変化が生じ、主な投資者が行ったものは39.7%しか占めず、理事会が行ったものは30.1%を占め、主な投資者とその他の管理要員が共同で行ったものは29.6%を占めた。

 今回の調査はまた、全般的な趨勢は、企業の規模が大きければ大きいほど、教養程度が高くなればなるほど、一人が二つの職務を兼任することを主張しない比率もますます高くなり、逆に、企業の規模が小さければ小さいほど、教養程度が低ければ低いほど、自らが直接管理し、一人が二つの職務を兼任することを主張する比率が大きくなることとなっている。

 現在の私営企業の管理体制改革については、実際から出発し、焦ってはいけないと思う。調査データが示しているように、2001年末、中国の私営企業の人数は平均13人前後で、登録資本金は90万元たらずであった。言い換えれば、現在の中国の私営企業の主体はやはり小企業で、多くの企業にまだ規範化した科層制(官僚制)管理の内在的な要求をまだ実行していない。このような総体的な情勢の下で、経営者が直接に管理するのはより便利で、高効率である。少数の大手企業は二権分離の要求を出したが、まだまだ長い道を歩まなければならない。というのは、これは完全に私営企業自体によって決まるものではなく、客観的な社会環境の制約も受けているからである。現在は信頼できる信用制度、信用環境が欠けており、プロ経営者陣も形成されていないと広く見られている。

  私営企業陣はたえず増えているが、その構造と素質も変わっているかどうか。

  私営企業家は社会主義事業建設の力の一つとして、健全に成長しており、全体の素質も絶えず向上している。

 中国の私営企業家は革新の意識と創業の精神に富む新鋭勢力である。調査データが示しているように、私営企業家の平均年齢は42.9歳で、そのうち30〜49歳の人は70%以上を占め、しかも上昇の傾向を見せている。私営企業家の社会的身分が頻繁に変わっており、最初の職業は農業に従事する農民と専門技術者が主であった。自分の立場を変え、自己価値を実現するため、彼らは危険を冒して、直接商売をしたり、まず私営企業で働き、豊富な経験や財産を積んでから経営者になった。これらの人は大胆に革新する精神がある。

 私営企業家の教養程度は絶えず高くなっている。より多くの幹部、知識人が商売をし、海外の留学生が帰国して事業を興し、国営と集団企業が次々と体制を改革するにつれ、教養水準がわりに高い私営企業家が著しく増えてきた。1993年の私営企業家の中の大学卒業生の比率は16.6%であったが、2002年には倍増の33.5%に上昇し、大学院卒業生の占める比率は1993年の0.6%から2002年の4.9%へと7.2倍増上昇した。

 ここ数年来、私営企業家の合法的に経営し、規則に通りに納税する意識が強くなっている。今回の調査が示しているように、私営企業の納税額の年平均伸び率は24.65%で、利潤額の伸び率よりはるかに高いものである。

  2001年7月1日、江沢民同志は中国共産党創立80周年記念大会の演説の中で、条件にかなった私営企業家の入党を許すと述べたが、これは私営経済および経営者個人の発展にどんな影響があるか。私営企業家の政治参与の問題は現在人々が関心をもつ問題の一つであるが、この方面の状況も調査したか。

  確かに、私営企業家がどのような組織に参加しているか、組織の状況がどうであるかは、多くの人が関心をもつ問題である。今回のサンプル調査はこれについても調査した。調査が示しているように、多くの大衆団体の中で、私営企業家が最も多く参加する組織は工商業連合会である。彼らのうち各クラスの工商業連合会に参加した人は79%に達している。政治機構の中では政治協商会議に参与する人が最も多く、各クラス政治協商会議委員となった人は35.1%に達している。政党組織の中で、中国共産党に入党した人が最も多い。以前の何回かの調査では党員の占める比率は1993年は13.1%、1995年は17.1%、1997年16.6%であった。今回の調査では、私営企業家の党員数は29.9%に達した。その原因は主にここ数年、多くの国有および集団企業が体制改革で私営企業となり、その責任者の多くは中国共産党の党員だからである。この比率を差し引けば、私営企業家の中の党員数は以前のサンプル調査の結果とほぼ同じである。このような状況は、私営企業家の組織状態が現行の政治体制の枠組の中に組み入れられて、彼らが政治に参与する主なルートである中国共産党の指導する統一戦線、工商業連合会、政治協商会議および人民代表大会は、中国共産党が彼らを政治に参与し、政治を討議するように導く重要な機構と場所であることを物語っている。

 江沢民同志の「七・一」講話は非公有制経済界の人々の中で強い反響を呼び、彼らの社会に報い、祖国により多く貢献をする情熱を引き出した。「あなたから見て、適格な建設者になるため、私営企業家は最も主なこととしてどのようなことをりっぱにやるべきかというアンケート調査の質問に対し、上位6位の回答はそれぞれ誠実と信用を重んする、税金を納める、生産の発展に努める、従業員を優遇する、政府を助けて就職難を解決する、公益事業を多くやることであった。

 現在、非公有制経済の代表の中で、政治への参与を強く求める人が一部いるが、全般的に言って、これらの人は依然として経済実力を積極的に増強し、市場経済の中で足場をしっかり固めることに努めている段階にあり、政治的な強い願望をまだ示していない。「江沢民同志の『七・一』講話の後、あなたはどんな具体的な考えがあるか」という質問に対し、「商業界にいるから、企業をりっぱに経営する」と答えた人は80.6%を占め、「日常生活の中で良好な個人と企業のイメージを樹立し、社会的に知名人になる」と答えた人は68.3%を占め、あとの回答はいずれも30%を超えなかった。

  調査で民営企業の発展が直面している際立った問題はなにか。

  調査では、私営企業の融資が難しい、東部、中部、西部地区の私営経済発展の格差が大きく、企業の内部管理は強化が待たれているなどの問題がわりに際立っていることが判明した。そのほか、私営企業の利潤率が年ごとに低下している。企業環境のいちだんの最適化が待たれている、誠実信用の原則を推進し、信用制度を確立するなどの問題は注目に値する。

  私営企業の利潤率の低下幅はどれぐらいか、その原因はなにか。

  私営企業の販売利潤率は年ごとに下がっており、1996年は7.9%だったが、1999年は5.0%に、2000年は3.6%に下がった。主な原因は市場競争が日ましに激しくなったためである。これは重視にするシグナルであり、各方面が突っ込んで検討する必要がある。

  私営企業家は企業環境の最適化について最も強い意見をもつ問題はなにか。

 答 私営企業家が最も強い意見をもつ問題は、いっそう緩やかな環境をできるだけ早くつくり出してほしいことである。彼らは競争のプレッシャーを軽減するため、貸付、土地収用、市場参入、製品輸出入権の面で国有企業と同様な権利と公平な国民待遇を享有することを要求している。政府の職能転換は独占を打破し、業種の競争を規範化させ、「三乱」(むやみやたらに資金を調達し、料金を徴収し、罰金を科ること)問題を整備するキーポイントだと彼らは見ている。彼らはできるだけ早く党中央の主張を法律、法規に改め、企業の発展のために公平かつ公正な法制環境をつくり出し、同時に、法執行陣の整備を強化し、法を執行する者が法を犯す現象をなくすことを望んでいる。調査では、一部地区の社会治安問題は同地区の企業の発展に影響を及ぼす大きな問題となっていると見る人が少なくなかった。

  東部、中部、西部地区の私営経済の発展にアンバランスをもたらした原因はなにか。

  主に各地の民営経済の経営環境には大きな違いがあるからである。経営環境の面では、中央政府が大量の仕事をしたが、問題は主に一部の地方政府の実権部門にある。例えば、国家発展計画委員会は2001年12月11日に「民間投資の促進と指導に関する若干の意見」を公布し、外国投資家に開放する分野は内部に対しても同様に開放すべきだと明確に指摘しているが、ある地方はそれを実行しているが、ある地方は実行していない。このような規定は強制的なものではなくて、指導的なものである。そのため、党と国の政策、意図の法律化は非常に差し迫っているものとなった。

 現在、各地の民営経済の発展環境に極めて大きな格差がある。例えば、上海市浦東では、民営企業の設置が極めて容易であり、他のところと比べて登録手続きも簡単で、市場参入の分野も自由化している。しかし、民営企業を差別視する地方がいまでも存在しており、企業誘致、資金導入を提唱しているが、実際にはドアは閉めたままである。それはせいぜい政府のために企業を誘致するもので、おおかたは政治的業績をつくり出すためである。

 総じて言えば、環境がわりによいところでは、民営経済の発展が速く、投資も多い。上海市は最もすばらしい都市であり、都市のインフラ整備に用いられる資本の半分は社会からきたものであり、これは全国では他に例を見ないものである。数年前、上海の民営企業は数万社しかなかったが、現在は20万社を突破している。地元の民間資本のほか、投資大部分は地方からのものである。