アメリカの対イラク戦争は中国石油業に波及

――中国はできるだけ損失を減らし、リスクを軽減する対策を実行

唐縁

 アメリカの対イラク戦争は石油など多くの方面から中国経済に影響を及ぼしている。

 現在、中国の石油輸入量は一日当たり200万バレル近くに達し、戦争が始まって石油が値上がりすれば、それによって、中国は毎日1000万ドル損失することになる。

 中国銀河証券有限責任公司業界と公司部の肖漢平氏は「石油の値上がり、特に持続的値上がりは、国民経済に影響を及ぼす」と語り、コストにおける原油の構成が異なるため、異なる業界と上場企業には程度の異なる影響を及ぼすと見ている。具体的に言えば、石油価格の変動が石油採掘業、石油化学工業、石炭業、石炭化学工業、自動車業、紡織業およびこれら業界の上場公司に影響を及ぼす。

 石油価格の変動は石油公司に大きな衝撃を与える。たとえば、中国石油化学工業グループ公司は精油化学工業を主とする石油化学工業製品メーカーであり、中国最大の石油公司の一社として、石油価格の変動はその利潤、業績に対する影響が著しい。全般的に言って、同公司の業績により大きな影響を与える要素は精製油と化学工業製品の市場価格である。

 直接原油を原料とする化学工業企業にとって、原油価格の変動はコストの変動をもたらす。中間製品を材料とする公司にとって、原油価格の変動はただちにコストの変動をもたらすわけではない。なぜなら、中間製品の価格が市場の需給に基づいて決まるからである。肖氏は「大型総合石油化学工業企業は製品の多元化とスケールの強みによって、原油価格のリスクを分散させる能力は単一の石油精製企業より優れている」と指摘した。

 化学繊維は在来の天然繊維に取って代わって重要な紡績工業原料となり、化学繊維生産の基礎材料は石油、石炭、天然ガス資源で、石油の値上がりは繊維製品の生産コストをアップさせるが、他方では繊維品消費の弾力的係数はわりに高い。そのため、中国の紡績業にとって、石油の値上がりは非常に不利である。

 中国の医薬業界、特に化学製薬業界は、その材料のほとんどが石油化学工業製品であり、石化製品が値上がりして、生産コストも上がるが、薬品消費の弾力的係数が小さいため、価格の転換能力がわりに強い。

 中国の電力業界、特に火力発電業界にとって、石油の値上がりは石炭価格を上昇を促進するため、電力の生産コストも高くなり、電気価格が変わらない情況の下で、電力業の利潤が減る趨勢を見せる。

 当面の供給過剰の国際、国内市場において、中国の航空業、自動車運輸業および石油化学工業などの産業は石油の値上がりによって高くなった生産コストをすべてあるいは大部分のその製品を使用する企業あるいは消費者に転嫁することができないため、各業種の収益レベルは減少し、はてはゆゆしく欠損する。企業は生産規模を縮小し、全社会の経済活力に影響を及ぼす。一般消費者は石油の値上がりによって、中国の民用航空、鉄道、都市の公共交通、タクシーなど石油を使用する業種にもたらすマイナス影響を肌で感じとっている。

 中国現代国際関係研究所の宿景祥氏によると、ここ数年来、世界でイラクの石油に対する依存性が大きくないが、アメリカがイラクに武力行使すれば、中東地区全域は影響を受けることになる。このような情況の下で、もしアメリカが「フセイン政権打倒」で成功をおさめ、イラクで親米政権を樹立し、続いて間接的に石油源と世界の石油価格をコントロールすれば、ヨーロッパおよび中国を含む東アジアの一部諸国がアメリカにけん制されることになる。他の視点から見れば、アメリカがイラクをコントロールできなくても、中東地域は混乱状態に陥り、石油価格がもっと大きな変動に直面する。現在、中国が輸入する原油の60%は中東地域から輸入されている。

 中国石油化学工業グループ公司経済技術研究院の朱和高級技師によると、当今の国際舞台で、石油分野における競争は純粋な商業の範囲を超えて、大国が経済、軍事、政治闘争を行う武器となり、世界の石油消費と石油生産に異常な状況が現れる。つまり、石油の生産が中東、ロシアおよび他のOPEC諸国に集中し、石油の消費が西欧、北米とアジア諸国に集中し、そのため、アメリカの対イラク戦争は今後国際社会の石油競争をいっそう激しいものにすることになろう。

 「西側の多国籍企業はアジア投資戦略を実施し、周辺諸国と地域の石油化学工業が急速な発展をとげることは、中国の石油化学工業にきわめて大きなチャレンジとなっている」。もと国家発展計画委員会(現在は国家発展と改革委員会に改組)中国経済情勢と政策研究センター「2002石油化学工業業界景気分析と2003年の動きの予測」課題グループの専門家劉国燕氏がそのように語った。

 ここ数年来、世界の石化工業の生産能力が過剰し、大多数の製品は供給が需要を超え、通常の石化製品市場のニーズが飽和しているため、欧米などの大手石化会社は積極的にアジアを主とする発展途上国で市場を開拓し、アジア市場でのシェアを高めている。劉氏はアメリカの対イラク戦争後、市場の枠組みが中国にとって引き続き不利となると語った。

 経済の急速な発展にともなって、中国の石油に対する需要量はますます大きくなる。1993年、中国は石油製品の純輸入国となり、1996は原油純輸入国となり、2000年の石油輸入量は5000万トンを上回り、2002年は7000万トンに達した。専門家によると、一国の石油輸入量が5000万トンを上回ると、国際市場の市況の変化はこの国の国民経済運営に影響する。輸入量が1億トンを超えれれば、石油供給の安全を保証するため、外交、経済、軍事の措置をとらなければならない。

 これまで、中国は世界石油市場の問題にあまり明るくなく、参与が限られ、その間に多くの要因による石油価格の変動に対し、ほとんど受動的に受け入れることしかできず、大きな代価を払った。アメリカの対イラク戦争の発生および中国が関係ある応急メカニズムを構築する過程で、関係部門はこれを重視し始めている。

 アメリカの対イラク戦争開始前後、世界石油市場の原油価格に対する予測はずっと中国の各機関が関心を持つ焦点である。中国政府は全力あげて経済の成長が石油問題によって減速しないように保証している。

 国土資源部石油天然ガス資源戦略研究センターの張大偉副主任によると、大規模な戦争に照らして、中国はできるだけ損失を減らし、リスクを軽減する一部の対策を実行し始めた。一は輸入先を多元化させる、すなわち中東地域の原油輸入割合を安定させると同時に、市場が相対的に安定しているロシア、東南アジア諸国の原油輸入の割合を大きくする。二は中国が多くの先進国で行われている「石油供給応急メカニズム」を構築し始め、石油備蓄建設を速めている。三は国土資源部が全国範囲において展望性のある石油天然ガス資源戦略地域10カ所を確定し、国内でこれらの地域の石油探査開発に力を入れいる。

 中国航油(シンガポール)株式有限公司の執行董事兼総裁の陳久霖氏は、国際石油の先物市場を通じて「リスクを伴う買付」を行い、現在の防御型の体制から主動的出撃型の体制に転換し、国際市場競争に参与し、多元化の協力体制を作り上げることを提案している。

 また、省エネ、石油製品の利用率の向上、天然ガス開発・利用の強化はいずれも専門家たちが言及した中国が石油によるマイナスの影響を小さくする方法である。中国は天然ガス、クリーンコール、原子力発電、水力発電、風力発電などのエネルギー開発と利用に力を入れているという。