専門家たちの観点

――新興成長企業向け株式市場(日本のマザーズ、アメリカのナスダックに相当、文中は新興企業株市場と略す)についての提案が出されると、たちどころに専門家たちの関心を集めることにある。

賛成新興企業株市場はできるだけ早く構築したほうがよい

全国政治協商会議委員、著名な経済学者の肢ネ寧氏は次のように語った。

できるだけ早く創設したほうがよい。新興企業株市場はできるだけ早く創設したほうがよく、遅くなると損害が出る。上場企業は重要な資源の一つで、国内の新興企業株市場を開放しなければ、よいハイテク公司は国外で上場する以外になく、これは資源の流失である。よい企業の流失でもたらされる損失は補いにくい。新興企業株市場がなければ、完備した店頭取引システムがなければ、創業投資基金の退出とはいえず、健全な退出メカニズムがなければ、創業投資基金の大発展などは語りようがない。新興企業株市場が一日も早くつくられてこそはじめてハイテク産業特に民営ハイテク産業が急速な発展をとげることができるのである。今では新興企業株市場をつくる条件が成熟しており、タイミングもよい。

著名な経済学者の董輔?氏は次のように語った。

遅々として創設することができないならば損失をもたらすことになる。新興企業株市場は民営企業の資金調達を解決するカギであり、同時にベンチャー投資のために適切な退出ルートを提供するものでもある。新興企業株市場を創設することは中国における資本市場発展の必然であり、各国の新興企業株市場は自国の経済、科学技術の発展を促進するうえで大きな役割を果たしている。当面の経済発展の勢いと中小企業発展の実際の必要からみて、新興企業株市場の創設のいろいろの準備がすでに基本的に出来ており、各方面の認識が一致しさえすれば、新興企業株市場はいつでも創立することができる。新興企業株市場が遅々として創設できないために、国内の民営科学技術の発展はすでに大きな障害を受け、国内の民営科学技術企業は現在まだ科学技術のイノベーションと科学技術成果の商業化の需要を満たすことができていない。急速な発展をとげた中国のベンチャー投資業も大きな打撃を受け、昨年中国のベンチャー投資機構は昨年同期より三分の二も減ったという。

新興企業株市場のリスクはコントロールできるものであり、例えば産業構造の面で実体の経済をもつハイテク公司の上場を多く手がけ、上場の敷居を高くし、推薦者の責任の度合いを増大させ、上場企業のディスクロージャー制度などを強化する、などがそれである。

全国政治協商会議委員、著名な経済学者の呉敬l氏は次のように語った。

監督、管理が上手に行われるならば、積極的に創設すべきである。新興企業株市場はどう見ても積極的に開放すべきであり、わたしはそれがメーンボードの株式市場の資金を他に分流するのを恐れ、メーンボードの株式市場における株価下落を恐れるがゆえにその開放を阻止することには賛成せず、株式市場の創設はメーンボードの株式市場における投資者の利益を保護するためではなく、資本の配置の最適化を実現するためである。人々には多くの懸念があり、たとえばメーンボードの株式市場の混乱、店頭株式市場(新興企業株市場)の混乱の可能性、香港における創業ボードの不成功などから、国内における新興企業株市場の創設が成功するかどうかを懸念しているのである。わたしは監督、管理が上手におこなわれるならば、香港の経験と教訓を汲み取って、積極的に創設すべきであると見ている。

中国証券監督管理委員会初代主席の劉鴻儒氏は次のように語っている。

準備はすでに十分にととのっている。新興企業株市場はすでにかなり長い歳月をかけて研究されており、具体的な案、方法、法律、規則制度はすでに十分な準備がととのっており、そのため、新興企業株市場をどのようにして登場させるかという問題の検討に力を入れるべきである。中国の多くの中小企業、特にハイテク企業は、資本市場が資金調達の場所を提供することをさし迫って必要としている。そのほか、新興企業株市場を含む多層的な証券市場の創設は国内の資本市場の発展の客観的必要であり、リスクが存在しているために新しい市場を創設する勇気を失うことはよくない。

深セン市創業投資同業公会秘書長の王守仁教授は次のように語っている。

国外の店頭株式市場の低迷はわれわれがそれを創設しない理由とはならない。アメリカのナスダックの暴落、香港の創業ボードの長期低迷、ドイツにおける新興企業株市場の閉鎖、世界の創業投資の萎縮などは、中国が新興企業株市場の開設を遅らせる理由となるべきでないし、それとは逆に、国外市場におけるパフォーマンスの低迷のため、かえって流出した大量の資金を中国市場に還流させることができる。今、新興企業株市場を創設するならば挑戦とリスクよりもチャンスのほうが大きいといえる。もしこのような機会を逃すならば、中国の新興企業株市場の創設は依然として引き延ばされ、資本市場の完ぺきな発展に影響を及ばすだけでなく、前途のあるハイテク創業企業の発展に役立たず、中国の経済の発展、科学技術の進歩、総合的国力の増強に直接ひびくことになる。

反対新興企業株市場は創設できない

全国政治協商会議委員、著名な経済学者の林毅夫氏は次のように語った。

新興企業株市場はロマンチックな幻想にすぎない。現在、多くの人びとが新興企業株市場の創設を呼びかけているが、その主な理由は次の2つである。一、わが国は国際競争に参与する中でハイテク産業を発展させなければならず、アメリカのナスダックはハイテク産業を発展させるうえで非常に重要な役割を果たした。二、中国の多くの民営中小企業がメーンボードの株式市場に上場することは難しく、銀行から資金を獲得するのも生易しいことではなく、新興企業株市場を通じるなら資金を調達することができる。「わたしはこの2つの観点は間違いであると見ている」。まずわれわれの企業の開発レベルはまだ技術の最先端に達しておらず、多くのハイテク企業はまったく自分たちのコア・コンピタンスを持っていない。次に、新興企業株市場に頼って中小企業の資金調達の難題を解決することは適切ではない。企業のコストについて言えば、上場は企業の最も高コストの資金調達方式である。この問題を解決するには、わたしは最も重要なことは民営の中小銀行を開設することであると見ている。

全国人民代表大会常務委員会副委員長の成思危氏は次のように語った。

新興企業株市場は市場における投機を深刻化させる。わたしの調査によると、現在新興企業株市場を通じて上場を申請している数百の企業のうち、70%は1999年以後うわさを耳にして創設されたものであり、これらの「危険な」企業の上場のリスクは言わずもがなのことである。店頭株式市場は敷居が低いため、中国の株式市場がこのような過度の投機の状況の下で、店頭株式市場を創設するならば過度の投機がさらにひどくなり、監督と管理も更に困難となり、投資者の合法的権益を保障しにくくなる。

店頭株式市場が確かに成長途上のハイテク企業に資金調達の機会を提供できるが、それはハイテク会社の上場条件を適切にゆるめるだけのことであり、現存の株式市場の内部において科学技術のボードをつくり、ハイテク企業の上場をサポートすることは、店頭株式市場の概念とまったく異なっている、これは市場の小さな一部分であり、ボードではない。市場の小さな一部分として、いくつかの企業が合格すれば上場すればよいのであり、ボードともなれば、多くの企業を集めなければならなくなり、香港の創業ボードのように、初めから50社もあるようになり、中国の店頭株式市場は少なくとも400社の上場企業がなければ人気が盛り上がらず、それでなければ創設などできたものではない。

証券研究専門家の張衛星氏は次のように語った。

店頭株式市場はどんなことがあっても開設してはならない。わたしは現段階において、メーンボードの株式市場で歴史的に残された大きな問題が解決されていない前に新興企業株市場を開設することに断固として反対する。

中国のA株市場そのものが規範に合わず、歴史的に残された多くの大きな問題が解決されておらず、旧い問題が解決されていないのにまた2つ目の市場をつくることになるではない。例えば子供を一人生んで、遺伝の問題があることに気がつき、病気にかかって重くて全快しないうちに、二人目の子供を生むことを考えるならば、誰が新たに生まれる子供がよりましか、問題がないかを保証できるのか。もし問題があったらどのように治療するのか。メーンボードの株式市場の問題がよく解決されていない状況の下で、人々は店頭株式市場に問題があっても上手に解決されると信じているのか。

メーンボードの株式市場の投資者に責任を負うことができず、メーンボードの株式市場の投資者の利益が保護されていないのに、全国のその他の投資者に責任を負うとどのように話すつもりなのか。どのように全国の投資者の利益を保護するのか。メーンボードの株式市場の10年余りの実践は資本の配置の最適化を実現するに至っていないのに、どのようにして店頭株式市場がこのような重責を担えることを証明するのか。

店頭株式市場にはより良い代替解決案がなければならない。中小のハイテク企業の直接資金調達とそれと関連のあるいくつかの過去から積み残された問題の解決案については私と何人かの人がたずさわっており、まもなく提出することになっている。われわれの案のやり方はさらに巧妙なもので、運用しやすく、効果もずっとよく、決して店頭株式市場を開設するように簡単なものではない。

財政経済論評家の水皮氏は次のように語った。

新興企業株市場は時宜に合わない。否定できないのは、日に日に多元化する中国では、人民代表大会代表といい、政治協商会議委員といい、いずれも異なった利益の人々の代表者、代弁者であるべきであり、全人代と全国政協の開会期間の提案、議題、発言は、言論の自由の表れでもあれば、民意の集まるところでもあり、政府当局はぜひこまかに調べなければならず、話を聞いてくれないようではならず、一方に偏った判断をしてはならず、そのまま受け入れてもいけない。

新興企業株市場を創設することに反対する理由は簡単で、時宜に合わないということである。

新興企業株市場の成熟したマーケットでの実験は、失敗に終わった革新の品種であることを宣告するものであり、われわれはどうしてまた回り道をするのか。

証券監督管理委員会が設計中である新興企業株市場はハイテクの市場であるばかりでなく、成長性のある中小企業も含む。1999年の全国人民代表大会常務委員会で採択された『公司法』改正についての決議は、ハイテク公司の上場条件について、適切に緩和してもよいが、いわゆる成長性のある中小企業は含んでおらず、つまり新興企業株市場の創設は少なくとも現在において法律的な拠り所はなく、人民代表大会常務委員会という敷居を避けて通ることはできない。

メーンボードの株式市場は誰もが目にして、2年らいの暴落と人為的にバブルを抜き取ることを経て、気勢がそがれたとは言うまでもなく、投資者の自信もかつてない試練に直面し、取引が低迷し、人びとの見方は意気消沈、業界全体も損失をもたらし、投資者、証券業者、基金を問わず、全部塩漬けとなり、中国の資本市場は鋭気を養うことを急ぎ必要とし、こうした時に新興企業株市場を創設するならば下心があるのでなければ、投資者の利益を根本から無視し、新しい政府と証券監督管理委員会にとって面倒なことになる。

2002年11月4日、任期切の近い朱鎔基総理はカタールの首都のドーハで記者の取材を受けた際に、新興企業株市場はメーンボードの株式市場が整え終わる前に創設される可能性はないことを明らかにした。これは責任のある立場の総理が語った責任感のある言葉である。

李志林博士は次のように語った。

新興企業株市場はまだ準備がととのったというには程遠い。わたしは新興企業株市場にずっと反対しており、「今期の政府は近いうちに新興企業株市場を創設する可能性はない」と大胆に断言した。

現在、広東省、深セン市の一部の代表と著名な経済学者は新興企業株市場ができるだけ早く創設されることを再び強く呼びかけており、「新興企業株市場を開設するすべての準備は整っている」としている。わたしはととのっているというにはまだ程遠いと感じている。

第一、機能の位置づけが正確ではない。当面多額の貸付残高を抱えている銀行がなぜこれらの中小企業に融資しないのか。彼らの業種が強大でなく、資産が少なく、担保がなく、リスクのコントロールが難しいからにほかならない。このようなリスクは自分自身から、そして銀行から人びとに転嫁し、社会に押しつける新興企業株市場の機能の位置づけは、実際はあとあとまで問題を残すことになる。

第二、上場は業績の基準を必要としない。新興企業株市場の開設は、これらの業績のない、ひいては赤字の企業が上場して資金を調節するために「青信号」をともすことである。

第三、創業の性格は判断しにくい。新興企業株市場に上場しようとする企業は、一般に自分の技術がどのように先進的なものか、企業がどのように前途があるか、今後の経営効率と利益がどのように多いかを標榜することになる。

第四、大株主が株価を操作することは避けられない。

第五、社会の安定を脅すことになる。もし19の国と地域の新興企業株市場の下落幅が70〜90%の状況のようなことになれば、多くの上場企業は札を上場廃止となく、市場は閉鎖を余儀なくされ、中国の投資者はそれに耐えることができるのか。新興企業株市場がいったん開設されれば、メーンボードの株式市場の資金は必ず部分的にそこに流れ込み、メーンボードの株式市場の大勢の投資者が証券市場から離れていくことになり、メーンボードの株式市場と新興企業株市場の同時暴落を招くことになろう。そうなると、上海の金融センターとしての地位が崩れ去るばかりでなく、国全体の経済を引きずり込むことになり、金融危機、経済危機、社会危機を誘発することになり、誰がこの責任をとるのか。

第三の観点新興企業株市場のコンセプトを放棄して三番目の道を探ること

著名な株式制の専門家、首都経済・貿易大学公司研究センター主任の劉紀鵬教授は次のように語った。

2段階の戦術をとることができる。新興企業株市場の問題は三年来ずっと人々の関心の的となっているが、2年来新興企業株市場は開設されるに至っておらず、新株発行も停止し、深セン証券取引所は進退きわまる状態に陥っている。多くの有識者から見ると、これは深セン経済の発展に影響を及ぼすばかりか、やがては珠江デルタが深センという金融のリーダーによる牽引を必要としていることにも障害をもたらすであろう。そのため、深セン証券取引所の運営状況をよくし、受身の状態を抜け出すようにという声がだんだん大きくなっている。

同時に、現在中国の資本市場の組織構造が調整という戦略からみて、ひとつの証券市場による独占の局面は打破しなければならない。第二、今までのところ、1000余社の公司が列をなして上場を待ち、数多くの企業は一本しかない丸木橋を渡ろうとしていることは、中国の資本市場の健全な発展をゆゆしく束縛しているのである。

中国の資本市場は競争による繁栄を実現しなければならない。そのため、深セン証券取引所の新興企業株市場は開設しておらず、A株の発行停止の状態をできるだけ早く終わらせなければならず、深セン証券取引所をもう一度スムーズに運営することを中国全体の資本市場の発展の大戦略の中に置いて考えなければならない。

こうした背景の下で、かつてのような新興企業株市場のモデルを簡単に打ち出すか、それともA株の発行を回復するか、この2つの案は、いずれもさまざまな抵抗に直面している。

新興企業株市場を開設するための4つの条件はまだ備わっていない。新興企業株市場を簡単に打ち出すことは、資本市場から見て抵抗が非常に大きい。深センは最初に新興企業株市場の基準を打ち出し、たとえば申請する企業は2年間の営業記録のみを必要とし、収益の記録は必要とせず、発起人の株式は1年以内に全部流通させることができ、申請する企業の有形純資産は800万元だけを必要とし、無形資産の占める割合が非常に大きいなどの規定の実施はいずれも現在絶対に備わることのない条件である。もしこのような新興企業株市場を開設するならば、リスクはあまりにも大きく、開設の抵抗は必然的に大きなものとなり、市場の多くの人たちの反対に直面することになる。

他方、簡単に引き返して、追加発行を回復するならば、われわれが以前深セン証券取引所の新株の上場を停止したことが誤りであったと認めたことに等しい。この2つの方法は見たところ、いずれも難しさが伴う。そのため、われわれは三つ目の道を探すことができるかどうか、つまり深セン証券取引所の中小企業を主とする戦略的位置づけも実現すれば、新興企業株市場が中国では当面国情に合わず、その他の国ではあまねく失敗に終わり、リスクが大きすぎ、敷居が低すぎる欠陥も回避することはできないか。

既定の伝統的意識の下で、上場のための敷居が低いコンセプトが新興企業株市場といわれているのであり、今日新興企業株市場に簡単に言及することは抵抗が非常に大きくなろうし、中国の資本市場全体の発展に役立たないばかりか、さらにはメーンボードの株式市場の完全な運営など一連の中国の資本市場の特殊な問題の解決に対して障害を設けることになる可能性がある。西側の産物を簡単にそのまま丸写しにするようなことはしてはならず、改良しなければならない。改良された新興企業株市場は敷居が低くない中小企業の資本市場であり、既存の証券監督管理委員会の認可・審査基準に対してあまりに大きな調整を行わないという前提の下で、直ちに現行の手続きおよび政策とドッキングすることができる。

上記の戦略的目標を実現したいならば、できるだけ早く新興企業株市場のコンセプトを放棄しなければならない。具体的に言うと、深セン証券取引所をもう一度スムーズに運営することは2段階に分けて行うのである。まず敷居が低くない中小企業の資本市場をスムーズに運営し、既存の体制とドッキングさせ、しかるのちに、更に適切な時に新興企業株市場の方向に向かって前進することである。

ここで深センの関係者に、この3年間における新興企業株市場を開設しようとしてきた経験と教訓を真剣に総括すべきであり、深セン証券取引所を国全体の深セン証券取引所に築き上げなければならず、敷居が低くはない中小企業市場、改良の新興企業株市場を全国人民の新興企業株市場と見なして、このマーケットの開拓を中国の資本市場の長期的発展戦略の重要な一環として全体として考えてこそはじめて、深センと深セン証券取引所の願いができるだけ早く実現することが可能となる、と懇切に申し上げたいと思う。