(その二)

 

最終裁決が待たれるアート紙反ダンピング案件

もと国家経済貿易委員会は2月26日、北京でアート紙反ダンピング産業損害公聴会を開いた。1年余り以来、注目されていたアート紙案件は中国がWTO加盟後に提訴した最初の反ダンピング訴訟案件である。

2001年10月末、金東紙業(江蘇)有限公司、山東省万豪紙業グループ株式有限公司、山東省泉林紙業有限責任公司、江南製紙工場などの企業4社は、もと対外貿易経済合作部、もと国家経済貿易委員会に対して韓国、日本、アメリカ、フィンランドから輸入したアート紙の反ダンピングについての調査の申し入れをおこなった。

もと対外貿易経済合作部は2001年12月29日、この案件を受理し、2002年2月6日要訴追案件として提出することを明らかにした。

1年にわたる調査、証拠固めを通じて、もと対外貿易経済合作部と、もと国家経済貿易委員会は2002年11月26日、共同で公告を発表し、韓国、日本、アメリカ製のアート紙が中国に対しダンピングをおこない、中国のアート紙生産企業にゆゆしい損害をもたらしたため、11月26日から上述3カ国製のアート紙に対し5.58%〜71.02%のダンピング保証金を徴収することを裁定した。

この案件は金額が大きく、案件の経緯が複雑なため、調査機関は訴訟案件に対してさらに入念な調査を行った。

2月26日の公聴会は関係者である韓国側のいくつかのアート紙生産企業の要請にもとづいて開かれたものである。公聴会開催を前にして、もと国家経済貿易委員会は中国国内の関係企業と輸入業者に「国内企業に対するアンケート調査」と「国内輸入業者に対するアンケート調査」をおこない、関係外国企業に対しても「国外企業に対するアンケート調査」をおこなった。一部関係者はもと国家経済貿易委員会に本案件に対する書面の意見を提出した。

中国のいくつかのアート紙生産企業およびその代理人、いくつかの案件関連国の企業と代理人、一部国内のユーザーと代理人、韓国、アメリカの中国駐在大使館の担当官ら約100人がこの公聴会に出席した。

席上、関係者各側は申し出た者の資格、製品の範囲、累積評価、国内産業が損害を受けたかどうかおよび調査される製品の輸入と国内産業の損害には因果関係があるかどうかなどをめぐってそれぞれの意見を述べ、それ相応の証拠を提出した。韓国、アメリカの中国駐在大使館の代表も本国政府の立場を明らかにした。

もと国家経済貿易委員会産業損害調査局の責任者は、今回の公聴会は公平、公正、公開の原則にのっとって、厳格にもと国家経済貿易委員会の「産業損害調査公聴規則」に基づいて開かれたものであり、案件関係者各側に意見や証拠を提出する機会を提供するものであると述べた。もと国家経済貿易委員会は調査の作業を踏まえて、今回の公聴会における各側の陳述と意見を十分に考慮し、WTOのルールと「中華人民共和国反ダンピング条例」に厳格に従って、一日も早く公正かつ公平に最終裁決をおこなうことになろう。

孫波:この案件の経緯についてみずからの体験を語る

この反ダンピング案件を自ら体験した山東省万豪紙業市場部の孫波経理は次のように語った。

2000年下半期における国内のアート紙市場の総需要量は約200万トンであったが、国内の生産能力はわずか100万トンで、供給が需要に追いつかなかった。しかし、国内のアート紙価格は一トン当たり6000元に下がり、原価の7000余元よりもはるかに低いものとなった。国内アート紙生産企業は一体どうなったのか分からなくなった。万豪グループは機械ですいた紙の生産を主とする企業で、そのうちのアート紙は目玉製品の一つであった。もともとは収益がすばらしかったが、紙価格の暴落によって企業は1年連続して賞与が出せなくなった。

最初の頃では国内企業が価格の競争をくりひろげているのではないかと思ったが、それから1カ月後に、国内のアート紙生産企業がお互いに非難し会うことをやめ、急きょ連絡しあって、原因を追究することになった。万豪、金東、泉林、江南製紙工場など企業4社は、1カ月余にわたる調査を経て、国外の企業がダンピングをおこなっているという結論を出した。

韓国、日本、アメリカ、フィンランドなどの国の一部企業のインボイスから、アート紙の一トン当たり対中国輸出価格は、いずれもその本国における価格の20%以上も低いものであった。中国の税関が提供した通関申告によると、2000年7月から2001年6月にかけての韓国のアート紙の対中輸出運賃保険料込値段(CIF)は一トン当たり678.59ドルで、国際海上運賃、国際保険料、港における諸雑費、国内運賃、国内保険料金、包装費、割引、手数料、金利、倉庫費、商品検査費、関税およびその他の費用を差し引くと、韓国のアート紙の一トン当たり輸出価格は634.16ドルであることが分かった。これと同じ時期における韓国国内市場のアート紙一トン当たり一般価格は846.02ドルであった。同じような方法で計算すれば、その期間におけるアメリカのアート紙価格はその国内価格より224.53ドル、日本は438.62ドル、フィンランドは147.57ドル低いものであった。

2000年の冬からの半年間に、数社の中国側企業は、韓国、日本のアート紙生産企業の中国駐在事務所関係者と交渉し、ダンピングをやめるよう申し入れたが、相手側はそれを認めなかった。2001年8月13日、中国企業4社と韓国企業5社が江蘇省鎮江金東グループに集まって、交渉をおこない、韓国側はダンピング行為のあることを断固否定した。中国側は税関の貨物引取書類などの証拠を提示した後、韓国側は中国に対するアート紙輸出の量を減らし、中国に輸出するアート紙の価格を韓国の国内市場価格に相当する額まで引き上げることを承諾し、8月22日以前に具体的な価格調整案を提出し、価格引き上げは9月に実行することを口頭で約束したが、韓国側は約束を実行しなかった。

4社の企業は2001年12月29日、もと対外貿易経済合作部に反ダンピングの申し入れをおこなった。

1年近く経って、調査機関はこの案件に対してそれを肯定する初歩的な裁決をおこない、韓国、日本、アメリカから輸入するアート紙製品に対する暫定反ダンピング措置をとることになった。

この案件の訴訟は外国の製品の進出を制限するものではなく、WTOが唱える公平な競争の原則を堅持するのである。

ダンピングはわずかな損失で、われわれが苦心して経営するマーケットを奪ったのである。今回のダンピングによる損失の回復はかなりの時間を要する。

案件の背景

1996年以前において、中国のアート紙市場はほとんど韓国、日本などの国から輸入したアート紙によって独占され、一トン当たり1万4000元の売値で高額の独占利潤を手にしていた。1996年以後、中国山東省の泉林、山東省の万豪、江蘇省の金東などのアート紙工場が続々と操業に入り、中国市場に対する韓国と日本の独占は次第に打破された。しかし、1999年まで、中国大陸部における60%〜70%のアート紙市場は依然として韓国、日本に独占されていた。中国のアート紙工場の台頭は韓国、日本などの国のアート紙を脅威となるようになった。

現在、中国におけるアート紙生産企業の年間生産量は約100万トンで、6、7社の大手企業が全国の総生産量の90%以上を占めている。これら企業の大部分は外国から導入した20世紀末の新設備、新技術を使用し、高い起点からスタートしたものであるが、規模はあまりにも小さい。