(その二)

中国の知的所有権保護の見通しに注する外国業者

魯皮

マイクロソフト取締役会長兼最高ソフトデザイナーのビル・ゲイツ氏は2月28日、北京でマイクロソフト社が催した記者会見の席で、数多くの記者が関心を持つ知的所有権問題について、中国の知的所有権保護の環境は確かに改善したことを認めるとともに、その見通しに楽観的であると語った。

13億の人口を擁し、2001年12月にWTO加盟を加え、中国の大きな技術市場は世界のエレクトロニクス企業の注目の的となっている。

しかし、外国の投資が今年500億ドルに達する見込みがあるにもかかわらず、中国の知的所有権保護の面で存在している意識の立ち後れ、法制の未整備の問題はある度合において外国業者が中国に進出する歩みを妨げることになっている。関係部門の統計データによると、数十社の多国籍企業の製品の商標盗用率はいずれも50%前後に達し、各会社がコピー製品取締に用いている費用は毎年50〜200万ドルにもなっている。コピー製品によってもたらされる損害は2000億元以上に達している。

WTO加盟後、中国は知的所有権の保護をますます重視し、所有権の侵害と海賊版行為を厳しく取り締まり、国外の投資家に対する保護を強化し、国外の投資家に知的所有権をめぐって内国民待遇を普遍的に与え、国内外のブランド商品に対して効果的な保護を実施している。

中国が知的所有権の保護に力を入れていることは、ますます多くの外国業者に認知されるに至っており、外国の技術会社を引きつける効果的な手段ともなっている。

中国情報安全製品テスト評定認証センターは2月28日、中国政府を代表してマイクロソフト社と「政府ソース・コードを記録にとどめる計画についての合意」に正式に調印した。中国は世界で最初にマイクロソフト社とソース・コード計画を開放した国の1つとなった。ビル・ゲイツ氏は中国政府にソース・コードを開放した措置を「今度の中国訪問の中で調印した最も重要な契約」であると述べた。

認知された知的所有権保護環境

81社の在中国多国籍企業を代表する中国外国投資企業協会名ブランド保護委員会(以下、名ブランド保護委員会と略す)は3月、中国公安部経済犯罪捜査局、税関総署政策法規司知的所有権処など22の法律執行機関に「知的所有権保護特殊貢献賞」などの賞を授与した。「われわれは中国の未来における知的所有権保護環境について自信に満ちあふれている」と名ブランド保護委員会の新任主席、米ジョンソン・エンド・ジョンソン社の法律顧問の張為安氏は語った。

名ブランド保護委員会主席、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)社政府事務総監督のジョン氏は、「名ブランド保護委員会は中国政府が知的所有権の立法を充実することと地方保護主義を取り除く面でおこなった積極的な努力に非常に賛同している。公安部門の介入はコピー製品の取締にとって極めて重要であり、それは本当の意味でコピー製品をつくり、それを販売する行為を抑制することに役立つ」と語った。

張為安氏は、名ブランド保護委員会のこの措置は中国の法律執行機関が知的所有権を保護し、消費者とブランド保有者の権益を守り、コピー製品をつくり、それを販売する犯罪行為を厳しく取り締る面での積極的な努力に感謝する意を表した。聞くところによると、ジョンソン・エンド・ジョンソン社の上海でのある工場はコピー製品の侵害を受けたため、かつて年間70%の売上高の損害となり、そのために15%の従業員が一時帰休し、工場が閉鎖の瀬戸際に立たされるに至った。中国の公安機関とその他の法律執行部門の共同の取締の下で、コピー製品の製造源を塞いだため、この会社の売上高はまた2けたの伸びを回復した。

名ブランド保護委員会の創設3年来、会員は81社となり、その中にはユニリーバ、コダック、ナイキなどの国際的に名の知られた会社も含まれており、在中国の投資総額は190億ドルを上回っている。名ブランド保護委員会が会員企業のコピー製品取締の資源、専門知識と経験の整合を通じて、関係部門が法律執行の実施能力と手段を向上させることをサポートするものである。2002年3月に入っていらい、エリー・リリー、日本タバコインターナショナル、ゼネラル・モーターズ、3Com、三洋電機、Oakleyなどの会社も新規参加した。

現在、中国の法律執行部門はコピー製品取締の面で著しい成果をあげており、共同で法律を執行するレベルはより大きく向上した。統計データによると、2001年4月から2002年末にかけて、国家品質検査部門はコピー製品をつくり、それを販売する場所を1万9757ヵ所取り締り、押収したコピー製品の価額は52億元に達したという。

内外提携によってコピー製品を取り締る

このほど、自動車の部品とコピー製品製造設備が国内のヤミ市場でひそかに取引されるだけでなく、一部のコピー製品は更に公然と市場で販売されている。コピー製品の生産と代理販売のコストは比較的低いものであり、所定の安全と環境保護の基準に達してはおらず、メーカーの知的所有権をも侵害している。

自動車産業は中国の支柱工業の1つであり、中国はそのWTO加盟の条項の中で、海外の自動車部品代理店、卸業者、小売店、保守サービス店は2005年までに中国で合弁や全額出資の会社を設立することができる、としている。多くの外国企業が中国の自動車アフターサービス・マーケットに参入することになる。どのようにして健全な経済環境をつくり出し、市場を更に規律のあるものに変え、業種の基本的資質とレベルを向上させるかについて、中国政府が非常に関心を持っている。

中国自動車メンテナンス設備業者協会(CAMETA)とイタリア自動車メンテナンス設備メーカー協会(AICA)は3月中旬に、北京で開かれたオートメカニカ・チャイナ(AutomechanikaChina)2003展覧会の開催期間に、コピー製品に反対する自動車メンテナンス設備をめぐっての意向書に調印した。

イタリア自動車メンテナンス設備メーカー協会(AICA)とオートプロモテック(Autopromotec)展覧会責任者のフランチェスコ・パラバッティ氏は、「合意は2つの部分からなる。まず、オートメカニカ・チャイナ展覧会で工業不法盗用に反対する意向書に調印し、中国でコピー製品と機械の生産と代理販売を取り締る」ことになった。

「そのほかに、中国のメンバーを組織して2003年5月ボローナで開催されるオートプロモテック展覧会を見学し、イタリアのメーカーに中国国内にもやはり数多くの合法的経営をおこない、誠実で信頼できる、イタリアから輸入する設備に興味を持つ代理店と小売店があることを認識させ、知ってもらう。その時には、双方は自動車メンテナンス設備をめぐってのコピー製品反対の合意書に正式に調印することになる」と語った。

中国自動車メンテナンス設備業者協会の張化波会長は、「中国自動車メンテナンス設備業者協会は中国の自動車メンテナンス設備のコピー製品の生産および知的所有権侵害の行為を阻止することに力を入れる」。「中国自動車メンテナンス設備業者協会の目的は市場の健全な発展を促進し、奨励し、および各方面のために公平な競争の環境をつくることにある」と語った。

特許も出願すれば商標も登録し、外国業者は権利を効果的に保護する

先般、福建省福州市工商行政管理局はフィリップスの委託代理人の告発に基づいて、福清市のある電器有限公司で「PHILIPS」のマークを使ったVCD477台、果物ジューサー1176台および果物ジューサー部品、VCDパーケージ60個を押収した。他者の登録商標の専用権を侵害した疑いがあるため、工商行政管理局はただちに上述の物品をその場で密封して保存するとともに、要訴追事案として調査することになった。

調査の結果、「PHILIPS」のマークはオランダのロイヤル・フィリップ電子有限会社が中国で登録したマークであり、被告発者はマーク専用権者の認可を得ておらず、同類の商品に「PHILIPS」のマークを勝手に使うことで他者の登録商標専用権を侵害したことになり、ただちに権利侵害製品を没収するとともに9万元の罰金を科する処罰決定を行った。

その後、フィリップスは上述の被告発者が依然として果物ジューサーを販売しつづけ、その製品と包装のうえにはもう「PHILIPS」のマークはないが、その製品の外観はフィリップスがすでに取得した外観設計特許の「ミキサー」の外観と似ており、ただちに特許権侵害を理由として福建省知的所有権局に処理申請を提出した。調査を経て、オランダのロイヤル・フィリップ電子有限会社は1998年6月に中国に「ミキサー」の特許出願を出し、1999年5月に権限を授与されているので、この特許の法律状態は有効であり、法律に依って保護されるべきである、とみなされた。

今年1月に、福建省知的所有権局の主宰の下で、双方は仲裁の合意に達した。法律執行関係者の監督の下で、被告発者はその場で在庫の半製品と部品を廃棄し、その金型もフィリップス社の代理人によって運ばれてさらに処理されることになった。

同一の製品の保護の面では、フィリップス社はマークも登録すれば特許も出願し、マークと特許保護の補完性を十分に運用し、製品のために知的所有権の立体的保護網を構築している。

中国は2001年7月に『特許法』を改正した。新しい規定は以前の『特許法』よりさらに規範化されており、たとえば権利侵害製品の販売を出す人がいただけで、すでに権利侵害の行為となることになった。

現在、中国で特許を出願する状況はすでに改善された。1999年に入っていらい、外国の会社の中国での特許出願数は急速に伸び、1999年における外国の会社の中国における特許出願数は総計2万4269件となった。2000年における出願数は25%増え、2001年には3万7800件に達した。外国の出願数の増加の原因の一つは、中国が実施した新たな『特許法』が少なくともまず理論の面で特許実行の見通しを改善したことにある。

コピー製品取締の覚書きに調印

中国のWTO加盟にもとない、中国の国境貿易はますます多ルート化し、コピー製品は中国から周辺諸国へ輸出される可能性もある。コピー製品を取り締るため、2002年に国家税関総署は中国外国投資企業協会とコピー製品の輸出入を協力して取り締ることについて了解覚書に調印し、双方はコピー製品の輸出を取り締る関連情報共有のメカニズムを構築している。

税関総署は、現在、中国における外国の投資が国外で販売される製品の生産を主とするため、中国の税関が輸出入のコピー製品を調査・処分することは事実上これらの公司の中国における生産・経営活動を効果的に保護するものである。覚書きの調印は、必然的に双方の知的所有権の税関における保護面での協力を促すことになるにちがいない。

経済のグローバル化のプロセスの加速と中国のWTO加盟に従って、知的所有権の分野で紛争が生じる状況がだんだん多くなることになろう。中国は『工業財産権保護パリ条約』の締約国であり、条約の内国民待遇の原則と独立保護原則に基づいて、国外の登録商標が中国の法律の保護を得るためにはまず登録しなければならないとともに、中国の法律の定めたやり方によって保護することしかできない。

『中国税関知的所有権保護条例』の規定に基づいて、権利者は中国税関がその出入国する貨物と関係のある知的所有権に保護を実施することを求める場合、その知的所有権を税関で記録にとどめるべきである。記録にとどめた有効期限内に、権利者がもしも権利侵害の疑いのある貨物が近く中国の税関を出入りすることを見つけたならば、現地の税関に知的所有権保護措置をとる申請を出すことができる。同時に全国各地の税関も税関総署での記録にとどめたデータに基づいて、職権に基づいて記録にとどめた権利者がその合法的権益を保護して侵害されないように主動的に助ける。疑いの手がかりを見つけたら、すすんで権利者に知らせる。

伝えられるところによると、現在、2600項目以上の国内外の知的所有権が税関総署で記録にとどめられている。昨年末現在、中国の税関はすでに1800項目以上の知的所有権侵害案件を調査・処分し、その金額は3億余元に達するものとなった。

国家税関総署は一貫して名ブランド保護委員会と密接な協力を保っており、税関の関係者に知的所有権についての関連のトレーニングを行う。名ブランド保護委員会税関委員会はそれぞれ広東省の黄浦、珠海と広西チワン族自治区の南寧でトレーニングのためのシンポジウムを3回開催した。次のシンポジウムは新疆ウイグル自治区で開催される予定で、現地の技術監督、工商部門と税関の関係者と国境貿易のコピー製品取締の協力事項について模索することになっている。