中国、知的所有権保護を重視

                         唐元かい

太平洋の西海岸に位置する江蘇省の連雲港市は観光都市として、ここ数年来、一連の効果的な措置を講じて、人々のブランド意識を強め、知的所有権が侵害を受けないように努めている。

自然人の商標登録ブーム

学者ばかりでなく、一部の農民も自らの知的所有権保護を重視し始めている。福建省建?市吉陽鎮の農民、張世清さん個人が出願し、登録した「建吉」ブランドの農産物シリーズの商標は国家商標局の審査・認可にパスし、自然人商標となった。

吉陽鎮の一部の経済作物は全国各地及び東南アジアに出荷されている。過去においては、地元の人々は商標意識が乏しかったため、その特産物は各地のニセのブランド品と区別することができず、これらの製品の信用はダメージをこうむり、市場もたえず衰退するようになった。この状況に対し、建?市工商業局は個人経営者協会農産物流通分会を設置し、農民個人を助けて農産物商標を出願し、登録することにした。張世清さんは「個人の商標登録出願はかなりの効果があり、わずか数ヵ月間で、そのうちの一種の作物の輸出量は120トンに達し、外貨収入は5万余ドルとなった。

中国の新たな「商標法」が2001年12月1日に実施されたあと、自然人も企業と同じように、自らの製品とサービスの商標登録を申し出ることができるようになった。個人が登録した商標は完全に個人の資産である。商標の価値がいったん上昇することになれば、他人と新しい企業を共同で設立する際に、商標を金額に換算して株式に参加することもできる。こうして、農民が栽培する農産物もブランド品としての価値を持つようになっている。

「湯里漂」という個人商標を出願した浙江省金華市の「湯里漂タオシャオメン館」(山西料理で、棒状にこねた小麦粉を三日月形の包丁で削ってスープの中に落とし、ゆであげたもの、肉みそやあん、スープをかけて食べる)の経営者、湯良波さんは「自分の商標を登録した後、自らのチェーン店の開設にいっそうプラスとなっている」と語った。

2001年12月から昨年末の1年間において、1日あたり少なくとも一人の自然人が金華市商標事務所で個人の商標登録を出願した。現在、金華市では、同事務所に国家商標局に個人商標を出願し、登録するものが500人に達している。

湖北省商標事務所の説明によると、昨年12ヵ月足らずのうちに、同事務所が代行した自然人の商標登録出願は383件に達し、同事務所の商標出願総数の20%以上を占めている。出願者は個人経営者、民営企業の経営者のほか、その多くは定年退職したもと従業員、一時帰休者の再就職者及び自らで創業する若者たちである。自然人が出願し、登録する商標のほとんどはアパレル、家具、薬品、果物、茶、食糧、野菜などのものである。出願したサービス商標は主にホテル、レストラン、美容、教育、図書の出版・発行、コンピューター技術育成・訓練、情報コンサルタント、小薬屋、診療所、商店などとかかわりのあるものである。商品商標の出願者は主に農村部の人たちであり、サービス商標の出願者の多くは都市部の人たちである。

『中国知的所有権報』が評定した「2002年における中国知的所有権に関する十大ニュース」の第4条は自然人の商標登録出願がブームになったということである。

海賊版の取り締まり

深セン市の唐格明さんは最も早く映画館で有名な張芸謀監督の最初のカンフー映画の「英雄」を見た人の一人である。しかし、唐さんは、観客が録音の機器やビデオを持込まないように、映画館に入る観客はまるで空港での手続きのように、厳しいチェックを受けて「最悪の印象だった」と語ったが、それは海賊版を防止するためのどうしようもない最低の手段にすぎないといって、理解の気持ちを示した。

上映されてから1ヵ月足らずのうちに「英雄」のチケット収入は記録を更新して2億元に達した。しかし、さらに人々に注目されることになったのは「英雄」と海賊版製作者の間の競い合いである。この映画に対し、中国文化部は、各地が海賊版づくりを防ぎ、取り締まることを強化するようにという通達をもっばら出すとともに、「英雄」の海賊版を取り締まる専門グループを設けた。広東省飛仕影音有限公司と偉佳録音・録画製品有限公司はかつてない金額である約1800万元でこの映画の映像ソフトウェア(VCD、DVD)の著作権と発行権を取得した。海賊版の出現を防ぐため、この二つの公司はまた「英雄」の海賊版摘発に関する奨励の規則を公布した。発行されたVCD、DVDに正規の所有権番号および圧縮されたコーディングが付けられ、ケースの外側にはそれ相応のバーコードが印刷製作され、裏表紙には全国各地の取扱業者の問い合わせ電話やアドレスが印刷されていたため、消費者は上記の無料電話をかけたり、携帯電話でショートメールを送ったりしてその真偽を確かめることができた。しかし、海賊版は防ごうにも防ぎきれない状態であった。1月の初め頃に、全国で押収された海賊版「英雄」のVCDとDVDは4000万枚に達した。

事実、中国の海賊版取り締まりは数年前から始まっており、視聴者はしばしばテレビニュースを通して海賊版のVCDとDVDを大規模に廃棄し、押収するありさまを見ることができた。それにも関わらず、各都市の大通りでも路地でも、海賊版の録音・録画製品は依然としてよく目にすることができる。

「英雄」の入場券は15元から70元であるが、海賊版のCD−ROMは10元足らずであった。純正版音楽CDの値段は60元前後で、百元以上のものもあるが、大多数の海賊版音楽CDの値段は10元前後である。

「もちろん純正版を買いたいが、市場では見かけるものは本当に少なすぎ、しかも値段が高すぎる」と多くの消費者は語っている。

中国録音・録画協会の王炬常務副秘書長は、不法録音・録画製品を何度取り締まっても思う通りにいかない主な原因は純正版の供給が足りず、価格も普通のサラリーマン層、とくに録音・録画製品の主な消費層である青少年たちにとっては受け入れ難いからであると見ている。

中国録音・録画協会提供のデータによると、中国のCD−ROM販売量は年間約50億枚であるが、すべての合法的な生産ラインの生産能力は6億枚でしかない。そのため、海賊版はこの巨大なキャップを埋める機会を狙うことになったのである。

消費者が純正版を買えるようにするため、多くの取扱業者は純正版のVCDやDVDの値段をかなり低めに設定するようになり、利潤となるゆとりはわずかしかなくなった。しかし、彼らのほとんどはせいぜいまず純正版の市場を育成する以外にないと認識している。

そのほか、多くの政府機関の公務員は、国家版権(著作権)局など4つの部・委員会が共同で公布した「政府機関が率先して純正版ソフトを使用することについての通達」を支持すると表明した。同通達は政府機関は今年、専用の予算を計上して純正版のソフトを購入し、純正版ソフトを購入しなかったために起こされた権利侵害の訴訟については、民事責任を負うほか、主管する幹部と当事者の行政責任を追究すると規定している。「これは中国の各クラス政府が逐次、さまざまな使用中の海賊版ソフトを淘汰していくことを示しており、われわれは政府機関から大口発注を受けることになろう」と海賊版の苦しみを深く味わったあるソフトウェア業者はこう語った。

中国の数社のソフト企業は次々とさまざまな海賊版の値段との格差がそれほど大きくはない安価な純正版ソフトシリーズを発売し、その優れたサービスと質が消費者を引きつけている。

多くの消費者はますます純正版ソフトのうまみを味わうようになった。北京市建築設計研究院のコンピューター管理担当の沈雪梅さんは、純正版ソフトウェアを使えば、メーカーの正規の養成・訓練やアフター・サービスを受けることができ、設計者は以前使えなかった多くの機能を学ぶようにしたと語った。

北京市政府は100万余元の資金を投じて120万人の大学・高校・中学校・小学校の学生の中で、純正版を守ろうという広報を繰り広げたこともある。天津市では、「純正版を守る」ボランティア陣は大きく育っており、彼らは自覚をもって海賊版をボイコットしながら社会に向けて広報を展開している。

著作権を尊重

昨年、高い視聴率を記録した「激情が燃え上がった歳月」というシリーズ物のドラマの内容が剽窃されたと告発された。

「激情が燃え上がった歳月」には何回も「中国人民解放軍軍歌」、「解放区の空」、「延安をたたえる」など10の楽曲作品をバック・ミュージックとして、毎回10秒から6分05秒ぐらい使っている。このドラマの撮影班はこれらの楽曲を使用する前に、中国音楽著作権協会に断わってはおらず、著作権の使用料も支払わなかったため、中国音楽著作権協会はこの撮影班の製作及び録音・録画製品の出版、販売の関連者を訴え、51万元の補償を申し出た。

中国は世界音楽作品著作権協会に参加しているため、補償金の80%は著作権所有者に払われ、残りの20%は協会のものとなる。

「われわれの商店で使われているバック・ミュージックはいずれも使用料を支払っている」と北京の王府井のある商店の従業員ははっきりと語った。中国では著作権保護に関する法律に基づいて、スーパー、バー、ホテル及びその他の顧客を接待して利潤を獲得する場所で使われたバック・ミュージックに費用を徴収することにした。この費用徴収制度は逐次に民間航空と鉄道部門で実行されることになっている。

いままでのかなり長い期間において、バック・ミュージックを流している中国の商業施設は費用を払う必要がなく、これは当然のことで、何も怪しむに足りないと大勢の人々は見ている。

テレビ後期製作プロデューサーの譚平さんは「全般的に言えば、最近、中国は知的所有権の立法を充実させる面で大きな進歩が見られ、その中の重要な措置の一つは、中国の知的所有権法条例を改正したことである」と見ている。この条例は正式に発効し、しかもこの分野の秩序を正すうえで実質的な役割を果たしている。関連の法律にもインターネット、映画の発行及び文芸イベントにおける録音・録画製品の著作権保護に関する明確な条項がある。そのほか、放送、テレビが無料で音楽と文学の作品を利用する特権も廃止された。それまで、しばしば歌曲、メロディー、詩などの知的所有権のある作品を転用してきたメディアは今後、必ず作者に報酬を支払わなければならないことになる。