専門家や学者、都市のCBD建設ブームを疑問視

蘭辛珍

CBD(中央ビジネス区)建設を計画する都市の数がアメリカを上回っているという正常ではない現象が中国に現れている。CBDは市場経済がかなりの程度まで発展した産物であるが、中国の経済はまだまだそこまで発展してはいない。CBDは中国の多くの都市管理者に、普通のビジネスセンターと同列視されている。

中国でCBD建設ブームが広がっている。これまでに人口20万人以上の359の都市の中でCBD建設計画を実施している都市は10分の1を占める36にも達している。その中には、北京、上海、広州などの大都市もあれば、襄樊、黄石のなど中規模の都市もある。

これに対し、清華大学建築管理学院の劉宏偉教授は、このブームはその温度を下げるべきであり、CBDの数が多すぎることは正常な発展状況ではなく、中国経済の発展に適合したものでもなく、ましてや中国のCBDは正真正銘のCBDではなく、ビジネス機能が低いものである、と指摘している。

住宅プロジェクトが多すぎる

CBDは1920年代に初めてアメリカに現れた。それはビジネス関係の機構が集積するところであり、金融、商業、貿易、文化、サービスなどの施設も揃ってはいるが、金融や貿易などのビジネス機能がその核心である。世界から見れば、ここ数年の世界の産業構造の変動につれて、都市の経済活動の中核としてのCBDの機能がますます強まってきている。例えば、ニューヨークのウォール街、上海浦東の陸家嘴などの地区のCBDがそれである。

現在、中国の都市で計画されているCBDは、上海を除いて、いずれもビジネス環境がそれほど備わってはいない。

北京市は1993年からCBDの企画に着手してすでに10年間が経ったが、建設が進めば進むほど高級住宅区に似ているように見えると言われている。「フォーチュー・センター」だけがビジネス用オフィスビルであり、その他の建物はほとんどが高級住宅(マンション)である。

統計データによると、北京のわずか3.99平方キロのCBD中核区内では、住宅が建物全体の25%を大幅に上回り、約50%にも達している。しかし、北京市のCBD企画では、これはビジネス用オフィスビルの比率であるべきである。

北京だけでなく、広州でもこのような現象が見られる。広州は1992年から市街区にある珠江ニュータウンをCBDに作り上げようとしたが、10年が過ぎた今では、57.8%の面積に住宅が建設され、ビジネス区はわずか18%しか占めていないのが現状である。

「CBDの中核区のビジネス機構が少なく、住宅が多いことは、CBDの機能を弱めている」と清華大学建築管理学院の劉洪玉教授は見ており、さらに次のように指摘した。

ビジネス機構が少なく、住宅が多い原因は、不動産開発業者の短期投資が多いことにある。また、住宅の建設周期が相対的に短く、金融面のバックアップを得やすいことも原因の1つである。これに対し、オフィスビルの建設周期が長いため、金融面のバックアップを得る難度が比較的に大きいということである。

中国都市企画設計研究院の楊保軍総設計士は、CBDはビジネス機能をもつほか、高層建物の高密度集積と高額の入居料もその特徴である。CBDは都市の中心部にあるものが多いので、建物の密度が高く、家賃も高い。しかし、家賃が高いということは、住みやすいということではない。したがって、いかなる角度から見ても、CBDは人々が永住するにふさわしい場所ではない。

北京のCBD建設の現状について、楊氏は次のように語った――現在、北京市は経済の転換期にあるため、将来の不確実性が依然として大きい。現在、CBDの形成にはまだ市場からの積極的な推進力を欠いている。CBDが企画される前から、北京の金融街(大通り)、中関村などが北京の金融面のトータルな機能を分散してしまっている。

CBDの基準

当面、CBD建設の条件が備わっている都市は中国にどれぐらいあるかというと、それについての正確なデータはまだない。

劉氏は、それは15を上回ることはない、と見ている。中国経済がアメリカに比べて大きく後れているからである。しかし、CBDの建設計画を立てた都市はアメリカを大いに超えてしまっており、これは非常に異常なことである。

劉氏はこう語る――CBDを建設すべきであるかどうか、どれぐらいの規模で建設するかは、何よりも先ず都市のマーケットとしての波及力とビジネス活動の能力によって決定付けられるものである。CBDは多国籍企業、金融機構、商業・貿易機構が集積するところであるため、人口の密度、経済の発展状況、ビジネス活動の頻度、交通、インフラなどはいずれもCBD建設に影響を及ぼす要素である。

上海は国際化した商業都市であり、ビジネス活動が非常に発達しているため、CBDの建設に成功を収めた。

清華大学の盧有傑教授は次のように指摘している。真のCBDには次の2つの条件が備わっていなければならない。@サービス施設、サービス機構、サービス環境を含む規模の取引と高効率の取引を実現できる施設が整っている。A地域に跨るビジネス活動を実現できる。CBDに集積するのは国際ビジネス機構なのか、それとも国内のビジネス機構なのか、あるいはその市のビジネス機構なのか、これはビジネス区の機能に直接影響を及ぼすことになる。そして、ビジネス活動がある都市に、必ずしもCBDを建設する必要があるとは限らず、ビジネス活動が発達するようになったときにこそ、CBDの建設が必要となるのである。

また、CBDは市場経済がかなり発展した時期における産物であり、高効率のビジネス活動を拠り所とするものであり、CBDの形成には時間と周期が必要とされる。その建設に対しては、政府は企画と指導の面で役割を果たし、具体的な建設は市場に頼り、企業のビジネス活動の促進の下で行われるべきであり、行政命令に頼ることではない。

現在、中国のCBD建設の決定的な要素は、依然として政府である。

北京中央商務区管理委員会企画建設総顧問の柯煥章氏は、CBDを建設しようとしている都市がこれほどたくさんあるが、実のところ厳格に言うならば、それは不可能である、と語った。これらの都市がそうするのはなぜか。CBDを普通のビジネスセンターと同列視していることが主因であろう。CBDには、少なくとも次の5つの特徴がある、と柯氏は見ている。

@ CBDに集積するのは、大手金融機構、保険機構、大手多国籍企業の本部またはブランチなどであり、ビジネス機能が充実し、ハイレベルで取引と交流を行うことができること。

A 都市の中で、人口の移動量と情報の交流量が最も多いこと。1日当たりの人口の移動量が最も多く、人口の変化も大きいことである。つまり、昼間の勤務時間帯には人が最も大勢集まるが、勤務時間以外の夜間には人が最も少ないことである。

B 交通の便がよい。

C サービス手段が揃っていること。経済、管理、文化、レジャー娯楽、行政の施設などがさまざまなサービスを提供することができるほか、高密度、ハイグレードの小売業が存在する。

D 土地の価格と入居料が最も高く、そのうち、商業用地か、または商業用建築物の価格と賃貸し料が最も高いものであること。

北京のCBD建設の展望

当面、北京のCBD内にある住宅プロジェクトが多すぎるため、政府は解決策を練っている。市政府は中核区内の土地を買い上げ、それに対し開発を行い、入札募集と競売を通じて土地を譲渡し、これによってオフィスビルの建設を強化することにしている。CBD管理委員会は今年上半期に、世界に向けて中核区の建築物の企画と設計の入札募集を行い、2008年五輪の開催以前に中核区の建設を完成するように努めている。

北京のCBD企画によると、CBD中核区の敷地面積は143万5000平方キロで、そのうち、ビジネス区は141万1000平方キロ、文化娯楽施設の面積は2万4000平方キロ、公共緑地の面積は1.53ヘクタールとなっている。

北京のCBD建設は主に協力、合弁の方法をとって進めることになっており、協力・合弁の年限は50年とする。プロジェクトの総投資額は20億ドル。

2008年までに、CBDに進出する多国籍企業は1000社にのぼり、その中には、世界のベスト500の中の400社が含まれており、投資収益率は20%に達する見込み、投資回収期間は6〜9年で、投資の見通しは明るい、と北京市朝陽区ビジネス中心区管理委員会は推測している。