国有資産のマネージャ――国有資産監督管理委員会

――国有資産監督管理委員会の設立は、中国の国有資産管理体制の改革が確固とした一歩を踏み出したことを示すものである。

唐 源

3月26日に開かれた中国国務院の常務会議では、新たに設立した「国有資産監督管理委員会」の主要な職責、機構設置と人員の編成についての方案が討論されたうえ、原則的に採択された。

4月6日、「国務院国有資産監督管理委員会」という標札が北京市宣武門西大街26号にあるもとの国家経済貿易委員会の北門に掲げられた。

より円滑な管理

国有資産は全国の各地方と各業種に分布している。国有資産の管理体制にはこれまで問題が存在していたため、数多くの国有企業は運営の効率が低く大幅な欠損が出て、経済の発展に影響を及ぼしている。国有企業の管理体制は多部門による管理であった。例えば、国家発展計画委員会がプロジェクトの決定、国家経済貿易委員会が日常の運営、労働・社会保障部門が労働と賃金、財政部が資産の登録と配置、組織人事部と大型企業工作委員会が経営者の任免をそれぞれ担当していた。新たに設立された国有資産監督管理委員会は分散した権力を統一し、国務院から権限を授けられて国を代表して法に依って出資者の職責を履行し、財産権の機能を行使し、企業の国有資産に対する監督と管理を行い、国有資産の価値の保全と増大を確保すると同時に、企業の生産経営活動には直接関与せず、中央政府の国有資産に対する管理がよりスムーズに進められるようにする。

 「実質的には、『ウルトラ株主』の性格をもつものだ」と、国有資産監督管理委員会の設立準備作業に参与したある専門家はこのように述べている。

世界銀行の高級企業再編専門家の張春霖氏は、国有資産監督管理委員会は出資者の資格で「公司法」に基づいて株主の権利を行使することになる、と指摘している。

一部の専門家の見方では、国有資産監督管理委員会の主要な任務はほかでもなく、国有資産の価値の保全と増大を実現させることであり、株主が「資産収益率の最大化」を追求してこそはじめて、国有企業の「所有者不在」、「利益をもらう人はいるが、責任を負う人はいない」というこれまでの局面に終止符を打つことができるのである。
 以前から国有企業の改革を指導していたもと国家経済貿易委員会主任の李栄融氏は国務院によって国有資産監督管理委員会主任に任命された。昨年年末に李氏は「中国の国有企業は改革以来20年このかた、改革できる問題はすでに大体解決されたが、残っているのはほとんどが難問ばかりだ」と指摘した。いまや、李氏は「難問解決」を担当する主要な責任者となったのである。

国有資産監督管理委員会の設立準備の仕事は難度がかなり大きく、一部の部門と数多くの公務員の人事異動や、機構全体の安定した交替と今後の良好な運営とかかわりのある仕事である。例えば、約千人のスタッフを抱える中央企業工作委員会は国有資産監督管理委員会の主体的部分の一つとなっていることがそれである。

中国社会科学院経済研究所研究員の張卓元氏は文章を発表し、次のように指摘している。

今回の国有資産管理体制の改革は波及する面が広く、変化が大きく、グレードが高く、部門や地方及び一部の人の切実な利益とかかわりがある。局部の利益から出発し、勝手な行動をして部門全体と他人の利益を損なうものが出る可能性がある。

一部の専門家はこう見ている。行政と企業の分離、行政と資産の分離を実現し、国有資産監督管理委員会という「ウルトラ株主」の資本収益率の最大化を実現するには、経済学などの関連学科の専門家が国有資産監督管理委員会の仕事を担当する必要がある。

国有資産の改革は価値の保全と増大のほか、国民経済全体の産業構造の調整や、おびただしい冗員の再配置といった問題とかかわりがあり、株主利益の最大化のみを追求すれば、社会全体の公平と効率の間の衝突が現われることになり、このような「ウルトラ株主」を誰が監督するのか、と疑問を提出した専門家もいる。

張春霖氏はこう見ている。国有資産監督管理委員会は三つの方面の問題を解決することになる。一、配置の調整であり、つまりさまざまな所有制経済の条件の下で、国はどのような業種と企業をコントロールするつもりなのか、どのような業種と企業を削減するつもりなのか、といった問題について新たな戦略調整を行うこと。二、経営難の国有企業のために効率のある再編メカニズムと転換メカニズムを構築すること。三、国によるコントロールを継続する国有企業の公司での構造整備を健全にすること。

10余年の努力を経て、「国有資産管理法」がまもなく公布されることになる。現在、関係部門は国有資産監督管理委員会の仕事の指導に関連する法規の制定に取り組んでいる。

構成

中国共産党第16回全国代表大会で採択された報告の提出した、権利、義務と責任を統一させ、資産と人員、業務の管理を結びつけた国有資産管理体制についての要求に従い、国有資産監督管理委員会は出資者の職責に基づいて相応の構成を設置している。

伝えられるところによると、国有資産監督管理委員会は18の専門局からなり、人事を管理する国有企業責任者管理局、業務を管理する企業改革編成局及び資産を管理する企業分配局などの部門が含まれており、国有企業の理事の任命や人員配置、企業の広報のほか、株式制改造、資産評価、持株権の譲渡、法規制定などの仕事を担当することになる。

国有資産監督管理委員会にはまた400人からなる監事会が設けられる。それはもとの中央企業工作委員会監事会であり、その機能も以前と同じで、その他の司と局の企業監事会から独立した出先機関となる。

改革の促進

国務院発展研究センター副主任、国有資産改革の専門家である陳清泰氏は次のように述べている。

国有資産監督管理委員会の設立と国有資産の改革は同一の概念ではない。国有資産の改革は複雑なシステム工学のような作業であり、国有資産監督管理委員会の設立はその措置の一つに過ぎず、成熟した国有資産の管理体制とメカニズムには、法律や会計制度、監査制度などの制定と充実がなくてはならず、国有資産監督管理委員会の設立のみでは到底できないことである。

中国共産党第16回全国代表大会の「国有資産管理体制改革の深化」についての要求に基づいて、中央政府と省、直轄市政府は国有資産管理機構を設立しなければならない。国有資産管理システムは30余の省クラス、200余の市、地区クラスの国有資産機関の設立準備に及ぶものである。専門家は、規範化した操作のために、国有資産監督管理委員会の設立後、国有資産管理に関連する法律・法規の発表後、中央の統一的な配置に基づいて、省から市、地区まで各地の国有資産機構を設立するべきだ、と指摘した。

国務院研究機構のある専門家はこう見ている。機関設置の完成は国有資産管理体制の改革を着実に推し進める第一歩に過ぎない。今後の管理の仕事の中でいかにして資産管理を人員管理、業務管理と結び付けるか、いかにして国有企業の所有者の指導を保証するとともに、企業の所有者が企業の生産経営に関与しないようにするかということは、各クラスの国有資産管理機関の責任者が直面する最大の難問となっている。

国有資産監督管理委員会副主任の李毅中氏は次のように指摘している。国有資産管理体制の改革は模索と挑戦としての性格をもつ仕事であり、数多くの困難とリスクに直面しており、国有資産監督管理委員会は国有企業の改革をいちだんと推し進め、行政と資産の分離、行政と企業の分離、所有権と経営権の分離を堅持することに立脚点を置かなければならず、企業が真に市場の主体と法人実体になるようにしなければならない。

資料

李栄融氏の略歴

1944年生まれ、江蘇省蘇州市出身

1963年 天津大学化学工学部電気化学工学学科で学ぶ

1968年7月に就職し、一般従業員、職場主任、副工場長、工場長を歴任

1986年 江蘇省無錫市経済委員会副主任、軽工業局局長、計画委員会主任、江蘇省計画経済委員会副主任

1992年6月 国務院生産弁公室生産計画局に勤務

1992年8月 国務院経済貿易弁公室対外経済合作司副司長、国家経済貿易委員会技術改造司司長、秘書長、副主任を歴任

1998年 国家発展計画委員会副主任

1998年5月―1999年12月 全国人民代表大会マカオ特別行政区準備委員会委員

1999年12月 国家経済貿易委員会副主任

2001年2月 国家経済貿易委員会主任

2003年4月 国有資産監督管理委員会主任