見通しの明るい中ロ経済貿易関係

――中ロ経済貿易協力は全面的な発展をとげ、マイナス要素よりもプラスの条件のほうが大きく、すでに高速発展の段階に入っている。

夏義善(中国国際問題研究所)

中ロ経済貿易関係は一時期の停滞を経て、1999年以降再び上昇の動きが現れる。現在、両国の経済貿易協力は全面的な発展をとげ、経済貿易関係と政治が平行して発展をとげるすばらしい情勢が現れている。中ロ経済貿易関係の見通しは明るい。中ロ経済貿易協力は全面的な発展をとげ、すでに高速発展の段階に入っている。

中ロ経済貿易関係は、ロシア建国10数年来、上昇、停滞、再上昇の過程を経てきた。1991年にソ連が解体して、ロシアとなり、1992年に両国の貿易額は58.62億ドル上昇し、1991年より5.01%増え、1993年には76.79億ドルに増え、31%伸びた。しかし、そのあと両国の貿易額は減少し、ずっと50〜60億ドルのレベルで徘徊している。1998年には54.8億ドルに下がった。1999年にはやや上昇し、57.2億ドルに達した。2000年には80億ドルに上昇し、2001年には106.7億ドルに上昇、2002年に120億ドルに達した。この数字は中ロ間のチャーター便輸送貿易の100億ドルは含まない。もしこの数字を加えるならば、両国の実質的な貿易額は200億ドルを上回ることになる。2001年に中ロ両国の首相がサンクトペテルブルクで中ロ首相第6回定期会合を開き、この会合の成果は両国経済貿易協力が長年の相互交流を経て、すでに急速に発展する段階に入ったことを示している。

現在、中ロ両国は第6回と第7回の首相会合を経て両国の経済貿易協力の分野、内容、規模、方向を確定するに至った。両国の経済貿易協力の分野にはハイテク、エネルギー、天然資源の開発、原子力エネルギー、金融、輸送、航空宇宙、生態環境、通信と情報技術などが含まれる。具体的なプロジェクトは@中ロ石油パイプラインの建設A天然ガスパイプラインの建設Bモスクワにおける中ロ工業パークを創設C中国向けのアルミニウム工場をつくるD森林開発の面で協力しあうE中国はロシアの民間航空機を購入し、両国は航空宇宙の分野で協力しあうF連雲港田湾原子力発電所の2つの発電ユニットの建設を完成するとともに、それぞれ2004年、2005年に稼動するGロシアの石油会社が中国の西部の天然ガスと電気を東部に送るプロジェクトに参加するH中ロは、例えばギニアでアルミニウム工場を建設するなど、共に第三国で開発協力を行うことを含む。

エネルギー分野の協力は、中ロ経済貿易協力の中で重要な位置を占め、この分野の協力は両国の経済貿易協力を新しい次元に引き上げることになる。中ロエネルギー協力分野には石油、天然ガス、原子力エネルギー、電力などの面の協力が含まれる。現在最も差し迫って必要なのはロシアのアンガールスクから中国の大慶までの石油パイプラインの建設の面での協力である。このパイプラインの研究は長年にわたってすすめられてきた。2001年の中ロ首相第6回定期会合期に『ロシアが中国で原油パイプラインの敷設を共にくりひろげるプロジェクトについての中ロフィージビリティースタディー作業のトータル合意』に調印した。2002年の中ロ首相第7回定期会合において、双方はこの石油パイプラインプロジェクトを実行に移すため、プロジェクトの審査・認可を速めることを打ち出して、認可されてからプロジェクトのフィージビリティースタディー作業トータル合意に基づいてプロジェクトを一応の設計段階に持ち込む。配置の状況によると、このプロジェクトは2003年に着工し、2005年に中国に石油の供給を始め、2010年以前に毎年石油を2000万トン供給し、2010年から毎年石油を3000万トン供給することを計画している。ロシア側の見積もりによると、このプロジェクトが全部完成すれば、中ロの貿易額を100億ドル増やすことができる。昨年末から、ロシア内部ではアンガールスクから大慶までの石油パイプラインを敷設するかそれともアンガールスクからナホートカまでの石油パイプラインを敷設するかの論争が現れた。ロシア政府は最終的にこの2本の石油パイプラインをいずれも敷設することを決定した。アンガールスクから大慶までの石油パイプラインをアンガールスクからナホートカまでの石油パイプラインの支線として、まずアンガールスクから大慶までの石油パイプラインを敷設する。こうして、ロシア内部では中ロ石油パイプライン敷設についての論争に一段落を告げ、アンガールスクから大慶までの石油パイプラインが間もなく着工されるとともに、期限どおりに中国に石油を供給することになった。この石油パイプラインの敷設と同時に、中ロはまた天然ガスパイプラインを敷設し、最終的には毎年中国に天然ガスを300億立方メートル提供することになった。そのほか、両国の間にはその他一連のエネルギー協力プロジェクトがある。これらのプロジェクトの建設によって、10ないし15年後の中ロ両国の貿易額は400ないし500億ドルに達するものとみられる。したがって、中ロ経済貿易協力の見通しはかなり明るく、エネルギー協力は中ロ経済貿易協力の中で重要な役割を果たすことになろう。

中ロ経済貿易関係の発展のプラスの条件はマイナス要素よりはるかに大きく、両国の経済貿易協力の見通しは明るいが、中ロ経済貿易関係にはいくつかのいたらない点もある。その主な内容は次のとおり。

1、両国の経済貿易協力の規模は両国の政治的関係と経済発展の潜在能力に追いつかない。両国は政治の面で戦略的協力パートナーシップの関係にあり、両国の経済の発展は速いが、中ロの貿易額は両国の輸出入総額の中でわずか2%、6%しか占めておらず、中ロの貿易額は中米貿易額のわずか1/8ないし1/10である。

2、中ロの二国間貿易の商品構造は比較的単一的で、ハイテクと高付加価値の製品の比率は高くなく、貿易のグレードも比較的低い。ここ数年来、中国の軽工業と紡績工業の製品、食品、飲み物、動植物油などの製品は対ロシア輸出の約80%を占め、機械と電子、化学工業などの高付加価値の製品は10%以下である。ロシアの対中国輸出は主に原材料と機械・電力設備であり、それにはアルミニウム材料、化学肥料、石油、木材、鋼材と機械・電力設備などが含まれている。

3、中ロの相互投資の規模はさらなる拡大を待たねばならず、投資で貿易を促すことも十分ではない。2002年のロシアにおける中国の投資総額はわすか2.82億ドルで、ロシアの対中国投資はわずか3億ドルであった。

4、中ロの貿易には規範に合わない行為と貿易のリスクがある。特に銀行の決算制度が充実しておらず、法律の仲裁制度と信用保険制度が完備しておらず、品質のモニタリング制度と国境通過制度などの貿易制度の整備は依然として立ち遅れており、協力の履行率が低く、債務の引き延ばしなどの現象が時々発生している。これらは大きな度合いにおいて中ロ貿易の拡大に影響を及ぼしている。

しかし、中ロ貿易関係には次のような多くのプラスの条件がある。

1、中ロの政治的関係はすばらしい。両国は戦略的協力パートナーシップを結び、両国の指導者は両国の貿易を発展させることを非常に重視している。

2、中ロは2つの偉大な隣国の間柄であり、両国の間には長い国境(4300キロ)があり、これは両国が経済貿易関係を発展させる地理的優位となっている。

3、中ロ経済相互補完性が強く、ロシアの強みは天然資源とハイテクであり、中国の強みは軽工業と紡績工業、家電、労働力と市場である。

4、中ロは政治が安定し、経済が発展をとげ、両国の経済貿易協力の発展のためにチャンスをもたらしている。ロシアはここ数年すでに危機の影から抜け出し、経済は3年連続して全面的に伸びている。中国の経済は急速な成長をあげ、市場の容量がたえず拡大しており、ロシアの商品の重要な潜在的な市場となっている。

5、経済のグローバル化は大局の赴くところであり、中ロ両国は世界経済の一体化の潮流に流れ込むべきである。そのため、中ロはまず自らにとっての最大の隣国関係を発展させなければならない。中国はWTOに加盟し、WTO加盟国と同じようにロシアに対しても関税を引き下げることを約束した。ロシアはWTO加盟を申請しており、ロシアのWTO加盟後には、関税の引き下げも可能となり、これは両国の貿易と相互間の投資を拡大することに役立つ。

6、ロシアは極東、シベリアを開発するにあたって隣国を必要とし、中国の参与を含み、両国の協力の展開の分野も拡大した。

中ロ両国の政府はそのために措置を取りつつあり、両国の経済貿易関係の中のマイナス要素を克服し、両国の経済貿易関係の順調かつ急速な発展のためにより多くのプラスの条件を作り出すことに努めている。今年の5月末には、胡錦涛主席がロシアを訪問し、今年の下半期には、温家宝総理がロシアを訪問して中ロ首相第8回定期会合に出席することになった。経済貿易協力の発展はこれらの訪問の重要な内容の1つである。これらの訪問は中ロ経済貿易協力の発展を大いに促すことになる。われわれは中ロ経済貿易協力の見通しに対して自信満々である理由はここにある。