SARSの予防を悪習是正のきっかけに

                 任暁風

 最近、新型肺炎(SARS)の発生によって、人々は個人の衛生を重んじ、保健運動を展開することに気を配るようになった。メディアもSARSの予防をきっかけとして、悪習に別れを告げて、生活をより文明的なものにし、体をさらに健康にするように呼びかけている。

所かまわず痰を吐く行為を禁止

 SARS発生の時期において、中国政府は所かまわず痰を吐く行為を整頓することに力を入れている。北京、上海、広州、深セン、大連など多くの都市は最近、「環境衛生管理条例」を改正し、所かまわず痰を吐く行為を処罰する罰金を引き上げることになった。

 改正後の「上海市の都市外観環境衛生管理条例」は、所かまわず痰を吐く行為に最高200元の罰金に処すると定めた。また、所かまわず大小便をしたり、廃棄物を投げ捨てたりするなどその他の衛生的ではない行為に対する罰金も引き上げられた。

 統計によると、上海市の新規処罰規定が実行されてからの最初の10日以内に処罰された案件は合計約1000件、罰金は約5万5000元となった。上海市建設委員会都市建設監察処によると、新たな条例が実行された後、痰を吐く現象もどんどん少なくなった。

 ところが、痰を吐くという文明的ではない現象を根本的に防止しようとすれば、条例のみに頼ることでは不十分である。痰を吐く行為に処罰を与えるという法律執行のコストはかなり高くつくる。5月10日、広州市の1800余人の都市管理総合法律執行隊員が街頭に出かけて、公共の場所で所かまわず痰を吐き、廃棄物を投げ捨てるなどの行為を取り締まったが、今後、毎日このような処罰に従事する人の力を維持することは不可能である。しかも痰を吐くことがほんの一瞬間の出来事であるため、より多くの人力を投じても、手落ちのないようにするのは難しい。そのため、市民の文明の資質の向上が極めて重要である。

 SARSの発生によって、大きな度合において、人々の痰を吐くことの危害性に対する認識を高め、大多数の人たちは痰を吐くことに対する反感は以前のいかなる時期より大きくなった。

「分餐制」の普及をアピール

 SARSが深刻な状態にある北京などの地域のレストランは4月末いらい、次々と休業することになり、営業を続けているレストランのほとんども顧客が減った。統計データによると、4月に北京の飲食企業の売上げは昨年同期比約50%減少し、広州は約30%に下がった。

 中華料理店と比べて、ケンタッキーやマクドナルドや「ピザパイ」など洋風ファースト・フード店の顧客の数はあまりに大きな影響を受けていない。業界筋の分析によると、これは「分餐制」(各人が別々に食べるやり方)の採用と密接な関係がある。

 星クラスのホテル及び一部の高級中華料理店では、料理を各自に盛り付けるという「分餐制」が早くから採用されてきたが、ほとんどの中華料理店では、共通の食器に盛り付けるという「共餐制」の食べ方がとられてきた。その最大の弊害は病気の感染を招きやすいことである。

 中国商業連合会は4月20日、緊急通達を出し、全国の飲食経営企業が積極的に「分餐制」を推進するよう要求した。翌日、上海市商業委員会も条件のある上海市の飲食経営企業が「分餐制」を実行するかまたはバイキングのような「分餐制」を普及させるよう要求した。

 清華大学社会学学部主任・博士コース指導教官である李強氏は、SARS予防をきっかけとし、中国で「分餐制」の普及に力を入れ、逐次伝統的な「共餐制」の食べ方を改める必要があると見ている。

 実は、「分餐制」は古い話題でもある。1988年にA型肝炎が上海で広がっていたとき、「分餐制」をとる要望が強まったが、A型肝炎の流行が終わった後、この問題は未解決のまま棚上げにされた。現在、SARSの発生は再びこの問題を人々の前に提起されることになっている。

 人々は「分餐制」の様々な利点を認識したにもかかわらず、共通の食器に盛り付けるという長期にわたって形成された習慣を見直すことは容易ではない。共通の食器に盛り付ける食べ方はとても親しみを覚えるように見え、料理を各自に盛り付ければ、非常に水臭くなると考える中国の人々はたくさんいる。

 上海第2医科大学公衆衛生学院の施榕副院長は、「料理を各自盛り付ける食べ方はもちろんよいものであるが、一人当たり一つの料理を普及させるにはそれに適応する過程が必要であり、先に共用のハシを普及させることの方がかなり受け入れられやすく、それを厳しく規範化すれば、共用のハシは同じく病原菌を断ち切る役割を果たすことができる」と語った。  

 多くのウェブサイトのBBSコラムでの討論の結果が示しているように、現在、確かに「分餐」を求める人が増えている。今後、中華料理店にとって、消費者を満足させる飲食の方式を提供することは競争の新たな手段の一つとなる可能性がある。

保健がより重要視される

 SARSの発生によって、多くの人々は健康の重要さを意識するようになった。現在、毎日の朝と夕方、北京の公園や大通りと路地の空き地でさまざまなスポーツや保健活動に参加する人もより多くなっている。保健の内容としては、太極拳、太極剣、ヤンコ踊り、扇子の踊り、縄跳び、タコ揚げおよびさまざまな球技が含まれている。以前、朝と夕方に体を鍛えるものの多くは中年と高齢者であったが、現在、多くの若者もそれに参加するようになっている。

 最近、大勢の医学専門家は人々に注意を与えている。現在、SARSのワクチンがまだ開発されていない状況の下で、人間のSARSに抵抗する最もよい方法は免疫力を高めることにある。酸素を吸い込んで体を鍛えることは免疫力の向上に一定の効き目がある。

 一部の都市の地方政府もこの機会をつかんで、保健運動の展開を促そうとしている。山東省青島市では、市政府の関連部門は現在、何人かのスポーツ保健面の専門家を招いて、地域社会の市民のために科学的運動、健康、栄養に関するコンサルティングを提供し、「運動の処方箋」を書いてもらい、またスポーツ健康実演隊を選んで市民のために教え、学びやすい健康保持種目の手本を示すことにした。現在、青島市の地域社会のスポーツ指導センターとスポーツ指導員はそれぞれ1800余ヵ所、1800余人に達している。その他、青島市は多くの地域社会でいくつかの保健施設を新たにつくり、人びとが近所でスポーツ活動に参加するために便宜を図った。

 4月28日に、国家体育総局は、全国人民健康運動の国民の体位を増強し、SARSに抵抗する能力の向上をはかるという重要な役割を積極的に高めるという文書を下達した。

ゲテモノ料理はノー

 深セン市の『晶報』は5月11日、6つの部門とともにゲテモノ料理(野生動物を材料とする料理)を食べないよう提唱すると、すぐ社会各界の積極的な反響を呼んだ。布吉甘坑小学校5年生の1クラスの生徒全員が、『晶報』に深セン市の中小学生全員に向けて、「ゲテモノ料理を食べないことを自分から始めましょう」という提案書を出した。

 中国広東省などの一部の地域では、ゲテモノ料理を食べることは食文化の一つとして珍重されている。人々がそれを食べる原因は、珍味を味わおうとするかあるいは栄養があると思うかまたはそれに趣味があるかまたはそれによって、自分が金持ちであることを誇示したいからである。このようにして、フクロウ、ハクビシン、ヘビ、アリは一部の料理店の顧客の目を引く料理と見なされるようになった。国の保護を受けている一部の野生動物も不法分子によって危険を冒してまでして食卓に送られ、これらの食べ物はもちろん衛生的検疫を受けていない。

 深セン市の統計によると、同市のゲテモノ料理を経営するレストラン、料理店などは800余軒に達し、毎年、さまざまなルートを経て市場に出荷され、販売されている野生動物及びその製品は約800トン、種類は1000余種に達している。

 SARSが発生した後、多くの専門家はSARSのウィルス発生源は野生動物ではないかと非常に疑っている。新華社の5月24日付けの報道によると、専門家たちはすでにコウモリ、サル、ハクビシン、ヘビなどの動物の体内からコロナウィルスを採取した。すでに採取されたウィルスの遺伝子配列とSARSウィルスの遺伝子配列は完全に一致するものであった。その中で、ハクビシンのSARSウィルスと人間のSARSウィルスに99%以上もよく似た同源性が見られ、動物のSARSウィルスが人間のSARSウィルスの発生源であることが裏付けられている。WHO(世界保健機関)は現在、このような言い方に同意しておらず、学者たちはそれについて一段と研究を行っているが、その研究の成果はすでに「ゲテモノ」を好む者にとって厳しい忠告となっている。

 事実、野生動物を食べる危険はSARSの感染だけに限らないのである。東北林業大学野生動物資源学院の華育平教授によると、野生動物と人間がともにかかる疾病は100余種もあり、例えば、狂犬病、結核、Bウィルス、ペスト、炭疽、A型肝炎などがそれである。ここ数年来、野生動物を食べて体の健康を害したケースはよく見られているが、命の危険を恐れずそれを食べる人も依然としている。

 最近、多くの専門家はメディアを通じて、法律に基づいてゲテモノ料理を食べる習慣を見直すようアピールしている。5月14日に、梁従誡全国政治協商会議委員・「自然の友」会長はメディアに書簡を送り、「野生動物保護法」の改正を呼びかけた。この保護法は1989年3月に公表されたものである。

 国家林業局法規司の陳根長司長は、「野生動物保護法」の改正は早急にスタートすることになり、ゲテモノ料理の食用の禁止について明確な法律規定を作成し、それを最も速く採択する望みがあることを明らかにした。

 5月中旬に、深セン市は2ヵ月以内に、野生動物の狩りょう、屠殺、販売、食用の行為を規範化する地方的法規草案の起草することを決めた。