中国の不動産業に発生しているのはバブルなのか、
それとも過熱なのか

国務院の決定では、今年は不動産市場の秩序の整頓や事前警告システムの構築および不動産業の健全的な発展の確保が重点とされている。

                本誌記者 蘭辛珍

中国の不動産開発の発展はずっと急速な勢いを保ってきたため、不動産業にはバブルが発生したと指摘するものもいるが、不動産開発は過熱したにすぎないと見るものもいる。いったいバブルなのか、それとも過熱なのか、これをめぐって論争がとめどもなく続いている。

バブル論

もと国家発展計画委員会経済研究所と北京新華オンラインが共同で作成した「中国の業種景気分析レポート(2002〜2003年)」は、中国では不動産業バブルが発生しているとしている。

このレポートを作成した課題グループの王小広博士は次のように指摘している。不動産業のバブルは主に次の四つの面に現れている。@不動産投資の持続的な超高速の増加。これまでの3年間に、投資の伸び率は30%以上に達し、経済成長率の3倍強となり、年々増える傾向にある。A建売り住宅の売上高は3年間続いて27.9%の伸び率で増え、不動産消費の過熱が発生した。B住宅価格が高く、年間伸び率は2ケタを上回っている。C住民の年収と住宅価格の比例は明らかに高すぎる。東京のそれはおよそ1対4.8であるが、中国の大部分の都市は1対8から1対15となっている。これほど高い住宅価格を前にしては尻込みせざるを得ない人が多い。

また、住宅価格が短い期間に持続的に暴騰することは不動産バブルの直接の現れである。現在、数多くの沿海都市の市街区にある建売り住宅の価格は4000〜5000元/uに達し、中には1万元/u以上のものもあるが、杭州市の西湖の近くの高層ビルはさらに3万元/uの価格で人々を仰天させている。建売り住宅は価格があまりにも高くて、一般市民にとって高嶺の花にすぎない。そのため、住宅消費の増加は住宅投資と施工面積の増加をはるかに下回り、全国の建売り住宅の売上高伸び率は同期の住宅投資伸び率より9.1ポイント低いものとなっている。

専門家たちは、中国の不動産業には構造的な問題が2つあると見ている。一、高級住宅は過剰であるが、格安住宅が不足しており、空室が多すぎることである。昨年末現在、全国の建売り住宅の空室面積は1億2000万平方メートルにも達し、国際基準を上回り、2500億元以上の資金がこげついている。今年1月から4月までの全国の建売り住宅の空室面積は前年同期比9.6%増えた。二、少数の省・直轄市の投資の伸び率が大きすぎ、土地の供給と価格の値上がりが速すぎることである。例えば、北京、上海、広東、重慶、遼寧などの地域の不動産投資の年間伸び率は30%を上回り、売上高と比べてはるかに高い。

 国家統計局の統計データによると、今年1月から5月までの全国で達成された不動産開発投資は約2801億元で、昨年同期比32.9%増えた。これまでの3年間に、建売り住宅の空室率は年平均15%増となった。

 現実を無視して投資し、建設能力を超えて土地を占有し、無理に密度を大きくして建物を建てるなどによって、一部の開発業者はすでに過大な債務負担を背負い込み、開発と経営に大きな影響を及ぼしている。広州市の関係部門のデータによれば、同市の不動産会社1300余社のうち利潤を上げたものはわずか100社余りで、投資リターン率はわずか2.3%である。

不動産業バブルを招いた原因について、清華大学不動産研究所の劉洪玉所長は次の3点を取り上げている。@高級住宅が多すぎ、一般市民向けの中・低級住宅が足りない。一部の開発業者は高額所得層のみ目を向けてきたが、住宅政策が実物配分から貨幣配分の方式に改められたため、サラリーマンが次第に住宅消費の主体となっている。それゆえ、高級住宅の売れ行きが悪く、空室が多くなっている。A多くの開発プロジェクトにも問題がある。例えば、付属施設が揃わず、家屋面積が大きすぎ、交通の便が悪いのに価格が高いなどがそれである。また、デザインが時代遅れで、施設の品質がよくないなども売れ残りの原因である。新しいプロジェクトが実施されるにつれて、これらの空室はさらにさばきにくくなる。B開発投資の規模が大きすぎ、投資の増加が速すぎる。不動産業バブルのマイナスの作用が顕在化しており、バブルが引き続き膨らめば、金融システムにも衝撃を与えることになる。不動産開発業者の資金の60%は銀行融資だからである。

中国人民銀行は昨年末に一部の都市の商業銀行の不動産金融業務を検査した。その結果、規範違反融資が9.8%、規範違反金額が24.9%を占めていることがわかった。また、このような規範違反融資案件は中国人民銀行が先般発表した「2002年の貨幣政策執行レポート」の中でも暴露されている。

過熱論

不動産業バブルについては、関係政府筋と不動産業者は異なる見解を示し、中国の不動産業にはまだバブルは起こってはおらず、ただ少し過熱したに過ぎないと見ている。

海南省総商会の童石軍会長は次のように語った。過熱とバブルは市場の2つの指標を反映するものである。過熱は市場の需給関係を反映し、供給の増加が需要の増加を上回ることによって、空室率の上昇や不動産建物管理価格と賃貸料の低下が発生すると、過熱と見られる。バブルは市場価格と実際価格の関係を反映し、市場価格が実際価格からあまり乖離し、そしてこうした乖離が過度の投機によってもたらされたものであるなら、バブルが発生したことになる。

現在、住宅購入者の中で、自分が住むために購入するものが90%以上を占めており、残りの10%足らずは、自分が住むためではなく、投資として購入するものがほとんどであるが、投機の目的を抱えて購入するものは非常に少ない。したがって、現在、不動産業バブルが起こったとは言えず、過熱という方がより適切であろう、と童氏は見ている。

過熱とバブルを同一視し、過度の開発の危険性を大げさに語ってはならず、さもなければ、過度の規制に向かいかねず、市場の不景気を加速するか、または深刻化させる。また、市場の過熱に対して警戒心を緩めてはならず、適切な措置をとり、局部的なバブルを取り除くか、またはそれを合理的な範囲にコントロールし、不動産業バブルに変わることを防ぐべきである。

不動産開発の規範化 

バブルというか、それとも過熱というかを問わず、中国政府はすでに不動産開発に現れた問題に気づいている。国務院は、不動産市場の整頓と規範化を国務院の今年の整頓の仕事の重点とするよう指示している。

建設部の責任者である謝家瑾氏は、政府が市場運営における問題に適時に気づき、措置をとってマクロ規制を強化するため、建設部は不動産市場の事前警告システムの研究を完成し、年内に35大中都市と一部の代表性のある都市でそのシステムを普及する、と語った。

建設部はすでに国務院の同意を得て、国土資源部、財政部、中国人民銀行、国家税務総局、国家統計局とともに全国の不動産市場規制合同会議制度を作り上げた。それは定期的に全国の不動産市場の情勢を分析し、重点地区の市場に対する監督、規制を指導するものである。

また、中央規律検査委員会、各地の政府と大手銀行も不動産市場に存在している規範違反行為の取り調べに乗り出し、不動産市場の環境の規範化によりいっそう力を入れている。

中国人民銀行および各大手銀行は不動産業への融資を引き締めるとともに、別荘、高級住宅、ホテル、オフィスビルなどビジネス用建物への融資の金利を引き上げ、融資総額をコントロールし、大学タウン、リゾート地、テーマパークなどの不動産プロジェクトへの融資を厳禁することになった。