国民経済の守り手――中国の会計検査署

――権力への監督と制約を強化し、政府各部門の法による行政を推進し、重大な違法行為や規律違反を摘発し、取り締まるなどの面で独特な役割を果たしている。

唐元ト

中国審計署(会計検査署)は1982年12月4日に開かれた第5期全国人民代表大会第4回会議で採択された「中華人民共和国憲法」第91条の規定に基づいて、1983年9月15日に正式に設置されたものであり、その主要な職責は国の経済秩序を守り、廉潔政治制度の確立を促進し、国民経済の健全な発展を保障することである。

国が特別設置した監督機関として、審計署は「憲法」、「会計検査法」及び「会計検査法実施条例」の規定に依拠して、国務院の各部門や地方の各クラス政府の財政収支、国の財政金融機関と企業・事業体の財務収支、政府部門が管理する、あるいは国務院の委託を受けて社会団体が管理する社会保障基金、環境保全資金、社会寄付金及びその他の基金や資金の財務収支、国際機構と外国政府の援助、融資プロジェクトの執行状況と財務収支などに対する会計検査を行っている。

審計署は1983年の設置以来、重点の分野や部門、資金に対する会計検査を強化し、財政経済分野の重大な違法行為や規律違反問題及び経済犯罪案件の調査、処理を最も重要な任務として、国のために多額の損失を取り戻した。統計によると、ここ5年間で全国の会計審査機関は71万の企業・事業体に対する会計検査を行い、数多くの違法行為や規律違反問題を摘発した。調査と処理を経て国庫に上納した金額は864億元、取り戻した流用公金は1081億元、告発されて司法機関に移送された経済犯罪案件は6142件、規律検査機関と司法機関に協力して会計検査と調査を行った案件は5400余り、会計検査の中で発見された問題について分析と研究を行った上で、各クラス政府などの部門に提出された会計検査レポートと情報は50余万編に達する。

改革の深化と政府機能の転換に伴い、政府の会計検査機関の活動の重点もある程度調整され、会計検査の重点は財政資金の収入、支出、管理に置かれ、財政に対する会計検査の役割を最大限に果たせるようになった。会計検査の内容は、誤りの摘発や弊害の是正のみに限られず、内的コントロールのための制度化された会計検査、経済効果及び政策決定に対する会計検査へ転換し、移行することになった。

今年3月に開かれた第10期全国人民代表大会第1回会議で国家審計署審計長に再選された李金華氏は、重大な違法行為や規律違反の問題を摘発し、取り締まることは依然として今後5年間の会計検査の仕事の重点であることを明らかにし、また次のように述べた。会計検査の仕事は、権力に対する監督と制約を強化し、政府各部門の法による行政を推進するうえでその役割を果たすものである。会計検査による監督の強化を通じて、さまざまな違法行為や規律違反の発生を防止し、政策決定の誤りによってもたらされるさまざまな浪費などをなくし、財政資金の使用効果を高めると同時に、政府各部門の政務のより公開、公正、透明な方向への発展を促し、廉潔行政に励む政府のイメージを確立しなければならない。

会計検査の管理強化

李金華審計長は、今後5年間には多くの面から会計検査の管理を強化し、中央政府の諸改革とマクロコントロールの目標に基づいて国の財政・経済に対する効果的な監督を強化することを明らかにした。

国家審計署の劉家義副審計長は次のように説明した。

行政の効率がかなり低くて財政に対する管理が弱いことは、違法行為や規律違反の発生を招いた。審計署としては政府各部門が財政資金の管理と使用を手落ちなく行うよう促し、数年間の会計検査を通じて保有財産の状況をはっきりさせ、財政資金の管理と使用の規範化を目指さなければならない。それには、カネとモノについての政策決定や執行、監督権が比較的集中している重点的な分野と部門、重点的な資金とりわけ予算資金、重点的な内容、政策決定や執行などの権限をめぐっての重要な環という四つの面の会計検査を強化しなければならない。

審計署はこのほど中国建設銀行、20のAクラス支店と直属の分店、中国農業発展銀行及び2000余りの支店に対する会計検査を行い、目に見える成果を収めた。

李金華審計長は次のように語っている。

中国の金融に対する会計検査は「リスク、管理、効果」を重点におき、金融リスクの防止を目標とし、銀行融資の流用など重大な違法行為や規律違反問題を告発し、取り締まらなければならない。今年の重点は工商銀行と生命保険会社に対する会計検査を着実に行い、金融改革の深化を促進し、金融の安全を守ることである。

効果と利益に対する会計検査はさらに高いレベルの会計検査の目標であり、会計検査の仕事の発展方向でもあり、中国は重大な損失と浪費及び国有資産の流失に対する告発を重点として、効果と利益に対する会計検査の方法を積極的に模索する。今後、会計検査機関は財政・財務収支に対する会計検査と効果及び利益とを密接に結びつけて、財政資金の使用効果の向上を促進し、国有資産の安全と効果及び価値の維持と増大を守らなければならない。

今年は国債資金、貧困扶助資金、三峡ダムプロジェクトの建設資金及び交通、水利施設、都市インフラなどの重点プロジェクトに対する会計検査を行うことが決まった。資金の流れという主な糸口をつかんで、プロジェクトの決定、資金の支払い、管理、使用などの面から着手し、会計検査の重点を政策決定面の手落ちや管理のまずさ、職務怠慢と汚職などによってもたらされた重大な損失と浪費の調査・処理、報告に置かなければならない。

国家審計署はまた、3年ないし5年内で完備した社会保障会計検査システムを構築する必要があることを提起した。最近の審計署主催の「社会保障資金会計検査監督の枠組をめぐってのシンポジウム」では、社会保障会計検査の関連内容が提出された。つまり、社会保障についての関連政策や法規、制度の実施を監督すること、社会保障の予算の確立を推進し、社会保障資金の良好な循環メカニズムの形成を促進すること、社会保障資金の徴収・上納、管理、貯存を監督し、違法行為や規律違反などの問題を告発すること、社会保障資金の投入方向、資産の構造と運営効果及び配分を監督することなどである。

国家審計署は会計検査の法律・法規体系をいっそう充実させると同時に、会計検査技術の現代化を積極的に推し進めることになる。「会計検査情報化システム」整備のプロジェクトの着工の申請はすでに認可され、このシステムの第一期工事の建設に用いられる基本建設専用基金5000万元が関係部門から中央政府の予算に組み込まれた。

厳格に国際的な基準に基づいた外資会計検査

最近、国家審計署は、いちだんと国際的な会計検査基準に基づいて外資会計検査を強化し、中国における外資会計検査に対する監督のレベルを高め、外資利用レベルの向上を着実に促さなければならないことを明らかにした。

伝えられるところによると、ここ数年、中国の外資会計検査はある程度の成果を収めた。対外公証の会計検査レポートは適時に、正確に作成され、会計検査の規範化がいっそう充実したことがそれである。中国が外資会計検査の中で国際的な会計検査基準の採用を厳格に行ったため、会計検査レポートは世界銀行とアジア銀行から評価された。

国家審計署は次のように強調している。

今後、外資の会計検査を行う際には、何よりもまず会計検査の対象となる外国の政府とその金融機関の直接借款と担保融資、政府が無償で受け入れた国際機関の寄付金、及びこれらの資金の借入、管理、使用に当たる機関とプロジェクト実施部門、関連部門の財務の収支状況をはっきりさせなければならない。外資に対する会計検査は主に法によって外資の取得と使用、返済と効果、予算とプロジェクトの管理体制、外資利用プロジェクトの実施状況などを含む外資利用の真実性、合法性及び収益性を監督するためである。

資料

李金華氏のプロフィール

1943年7月生まれ、江蘇省如東出身、大学院修士課程終了、上級会計検査師。中国共産党第14期中央規律検査委員会委員、中国共産党第15期、第16期中央委員。

1966年、中央財政金融学院金融学部を卒業し、同年9月に就職し、西北財政経済学院の教員、航空工業部所属工場の政治部副主任、党委員会副書記、工場長を歴任。1985年5月から8月まで陝西省経済貿易庁庁長、1985年から1998年3月まで国家審計署副審計長、1998年3月に国家審計署審計長を歴任したが、2003年3月に国家審計署審計長に再任した。